前回、BtoBマーケティングや営業戦略の差別化戦略には、4つの目線による4つの差別化があることをご紹介した。まだご覧いただいていない方は、前回の下記の記事をまずはご覧いただきたい。その後、本記事をご覧いただければと思う。
BtoB企業の差別化戦略の立て方!4つの目線による「差別化の図り方」
今回は、前回ご紹介した下記の「4つの差別化」に関して詳細をご紹介する。
(1)「物・自社」の差別化
(2)「価値・自社」の差別化
(3)「物・顧客」の差別化
(4)「価値・顧客」の差別化
なお、わかりやすく説明するために、「あなた」が飲食店の店長であると仮定し、新規顧客を獲得するための営業展開を考えているシーンを想定してご紹介する(BtoBではないがわかりやすく説明したいためご了承いただきたい)。
BtoB企業の差別化戦略「4つの目線による4つの差別化」
「物・自社」の差別化
これは、「あなた・御社」が「比較対象」と「物目線の比較項目」を決めて、差別化を具体化する方法である。
飲食店を例にすると、あなたが「飲食店AとB」が比較対象(競合)であると自分自身で決める。さらに、「物目線」で比較項目も決める。例えば、「値段」と「お店までの距離」を比較項目としよう。
このように決めると・・・
「A店には値段ではまず勝てないし、このエリアのお客様には距離でも勝てない(A店の方が近くて便利)ので、勝負できないな。でも、B店は値段は同じくらいだけど、このエリアのお客様には距離で勝てる。よし、じゃ、このエリアを中心に新規顧客を開拓しよう。近くて便利という切り口で攻めてみよう。」
という具合に戦略を展開できる。これが「物・自社」の差別化となる。ポイントは自分で比較対象を決め、自分で比較項目を決めてから戦略に展開していくことだ。逆説すれば、勝てる比較項目は何か?ということにもなるだろう。
「価値・自社」の差別化
これは、「あなた・御社」が「比較対象」と「価値目線の比較項目」を決めて、差別化を具体化する方法である。比較対象は上記と同じであるが、比較項目が価値目線なので、項目が上記とは異なる。
飲食店を例にすると、上述同様、あなたが「飲食店AとB」が比較対象(競合)であると自分自身で決める。さらに、「価値目線」で比較項目も決める。例えば「楽しい食事」を比較項目としよう。
このように決めると・・・
「A店は値段が安い分、回転率も早く楽しい食事の時間を過ごすのは慌ただしいため難しい。だから、勝てそうだ。しかしB店は楽しい雰囲気作りをしているお店なので勝負は難しい。となると、A店近くのエリアには、楽しい食事ができるという切り口で新規顧客開拓をしよう」
という具合に戦略を展開できる。これが「価値・自社」の差別化となる。ポイントは上記と同様、どのような項目なら勝てそうか?を決めた上で、戦略に展開することである。
「物・自社」・「価値・自社」の差別化まとめ
以上、「物・自社の差別化」と「価値・自社の差別化」をご紹介したが、この2つの差別化は、あなた自身が自分で決めることができる差別化といってもよい。そのため、考えやすいといえば考えやすいが、1つ落とし穴がある。それは、「本当にその比較対象で良いのか?」や「その比較項目に顧客のニーズはあるのか?」である。
すべて「自分中心」の目線による差別化であるため、このような落とし穴がどうしても生まれてしまう。そこで、それを少しでも防ぐために、下記の2つの差別化がある。それが「物・顧客の差別化」と「価値・顧客の差別化」である。
「物・顧客」の差別化
これは、「あなた・御社」の「顧客」が決めた「比較対象と比較項目」を使って、差別化を具体化する方法である。これを実行するには、顧客が比較対象としてどこを選定しているのか?そして何を比較項目にしているのか?を知る必要がある。これを知らなければ、差別化できない。
飲食店を例にして考えると・・・
「以前、顧客アンケートに「C、D店と比べて値段・接客が良い」って書いてあったな。よし、そしたらC、D店の近くのエリアには値段・接客のよさを打ち出した営業展開を考えよう」
という具合に戦略を展開できる。これが「物・顧客」の差別化となる。ポイントは、「顧客が自社とどこを比較しているのかを聞き出すこと」と「顧客が物目線でどんな項目で比較しているのかを探ること」の2つである。これらの情報を収集できなければ、この差別化は具体化できない。
「価値・顧客」の差別化
これは、「あなた・御社」の「顧客」が決めた「比較対象と比較項目」を使って、差別化を具体化する方法である。「物・顧客目線」の差別化と同じであるが、価値目線なので、比較項目が異なる。
飲食店を例にして考えると・・・
「顧客アンケートに「以前、E店に結婚記念日で行った時、苦手な食べ物を聞いてくれず、ちょっと嫌な思いをした」って書いてあったな。よし、そしたらE店の近くのエリアには「苦手なメニューを事前に申告でき、好きなメニューに変更できる」を打ち出した営業展開を考えよう。記念日の利用などで集客したら、思い出に残る食事の提案ができそうだな」
という具合に戦略を展開できる。これが「価値・顧客」の差別化となる。ポイントは、「物・顧客」の差別化と同様で、「顧客が自社とどこを比較しているのかを聞き出すこと」と「顧客が価値目線でどんな項目で比較しているのかを探ること」の2つである。これらの情報を収集できなければ、この差別化は具体化できない。
価値目線の場合は、飲食店なら来店の動機、選んだ理由などを聞き出すとそこにヒントがある可能性が高い。こういったアンケートの設計ができるかどうかがポイントになるだろう。
BtoB企業の差別化戦略「4つの差別化に必要な情報」
以上が4つの差別化の概要である。これら4つの差別化を具体化していくことで、様々な競合に対して、「勝てるポイント」がそれぞれ明確になるため、WEBサイトにしても、営業ツールにしても、顧客のニーズに応じて様々な魅力・特長を打ち出せるようになる。
これが、リードジェネレーション(新規見込み獲得)やリードナーチャリング(見込み客の育成)、クロージングなどで非常に効果を発揮する。では、この4つの差別化をどうやって具体化するか?具体化するためにどんな情報・判断材料が必要になるか?をご紹介しよう。
BtoB企業の差別化戦略「まずは自社目線から始める」
4つの差別化を具体化するには、まずは自社目線から始めると良い。手順は簡単で、下記の3段階になる。
(1)自社目線で自社の競合他社をリストアップ
(2)物目線での比較を行うために物目線の比較項目を自分で定義する
(3)価値目線での比較を行うために価値目線の比較項目を自分で定義する
物目線の項目例は、製品や業界特性にもよるが、導入前のサービス内容、導入後のフォロー内容、機能面、性能面、品質面、値段、納期などのような項目が考えられる。
価値目線の項目例は、BtoBの場合は、「自社製品で解決できる課題(ただし、物目線は排除)」である。「自社製品で解決できる課題」というと、「安く買いたいという課題を解決できる」と答える方もいるが、これは物目線である。「安く購入できることで、どんな課題が解決するか?」を考えなければ、価値目線にはならない。
この価値目線がBtoBでは非常に難しい。ソリューション提案を日々行って、日々考えていなければ、なかなかアイディアとしては出てこないだろう。
BtoB企業の差別化戦略「最も困難なのは顧客目線」
自社目線が終了したら今度は顧客目線である。顧客目線も自社目線同様、3段階の手順となる。
(1)顧客がどこを比較対象にしているのか、競合他社を調査
(2)顧客がどういう物目線で比較しているのかを調査
(3)顧客がどういう価値目線で比較しているかを調査
これらのヒントは、日々顧客と会話している営業部や、アフターフォローに関連する部門などに情報が眠っている可能性がある。営業日報、顧客のアンケートなどを見直ししてみよう。営業日報に「お客様が比較検討している企業・製品名」というような入力欄があると、そこを見るだけで、顧客目線の比較対象が絞り込める。もしこういった項目がないなら、項目として作れば良い。今からでも遅くはないので、すぐに作ってみよう。
また、WEBでの問い合わせを獲得できているなら問い合わせフォームに設置している「ご相談内容」などを入力する欄の入力内容を分析してみよう。
例えば、「**製品と比較していますが、御社の特長を教えてください」のような記入があれば、比較対象の1つになる。さらに、「**と**を選定の重要項目にしています。」のような記入があれば、比較項目にもなる。
そのため、過去の問い合わせ内容を分析するのも1つの手である。
このように、比較対象、比較項目をいろんな方法で収集し、顧客の目線で分析をしてみよう。すると、思いがけない差別化戦略の具体案がでてくることもあるだろう。
顧客目線の差別化を具体化する「顧客ニーズ調査」の方法とは?
顧客目線による差別化を具体化する際には、「顧客アンケートによるニーズ調査」を実行することをお勧めしたい。既存顧客に対して、アンケートを実行し、回答を得てそこからヒントを得るのである。
アンケートの取り方がわからない方は、下記の資料を参考にしてほしい。ニーズ調査の仕方について詳しく解説している。
ニーズ調査のやり方と調査すべき3つのニーズとは?〜マーケティングと営業がうまくいかないときにやるべきニーズ調査〜
自社製品・サービスが売れないときは、顧客目線の差別化が抜けている!?
以上、4つの差別化について、前編と後編の2回にわたってご紹介した。あなたも、4つの差別化のうち、どれかの目線が抜けていることはないだろうか?
特に抜けがちなのが、顧客目線である。これが抜けると、いざ売るという時に、なかなか売れない。なぜなら、比較対象・比較項目が顧客目線ではないため、「差別化できているかどうか?」が不明確のままだからだ。他社に負ける失注が多いようであれば、顧客目線の差別化をよく検討すると良いだろう。
同様に、価値目線も抜けがちである。これは課題解決という本質を見ておらず、これが抜けてしまうと、価格競争に陥ってしまう可能性がある。
これらは、上述したように顧客目線の情報をどれだけ収集できるか?にかかっている。あなたは顧客のニーズをどれだけ収集できているか、一度、見直ししてみてはどうだろうか?
ニーズの収集の仕方については、下記の資料が参考になるので、御社でもニーズ調査に挑戦して見て欲しい。
ニーズ調査のやり方と調査すべき3つのニーズとは?〜マーケティングと営業がうまくいかないときにやるべきニーズ調査〜