このコラムでは、BtoBマーケティングの戦略・計画の立て方について、戦略立案フレームワークを活用した方法を解説する。また具体的な立案例もご紹介する。
- BtoBマーケティングの重要性浸透とリテラシー向上の進め方「社内浸透・意識改革をどうするか?」
- BtoBマーケティング戦略の立て方「作戦・戦術・計画」に分けて戦略を立てる方法とデジタル活用術
- BtoBの営業戦略の立て方(営業戦略のサンプルシート付き)
- BtoBのWEB戦略の立て方(WEB戦略の年間計画シートのサンプル付き)
- BtoBデジタルマーケティングの実行計画の立て方「5段階プロセス」
BtoBマーケティングとは?
BtoBマーケティング(B2Bマーケティング)とは、企業対企業(企業間取引、B2B)に特化したマーケティングのことで、「企業に対して顧客価値を創出する戦略や仕組み、そしてそのプロセス」のことである。BtoBマーケティングの基礎・基本については下記のコラムを参照いただきたい。
BtoBマーケティング戦略とは?
BtoBマーケティング戦略とは、BtoBマーケティングを実践する際に、自社のリソース(お金・人・時間など)を効率よく活用するための方策のことである。KGIやKPIを設定し、効率的なリソースの使い方を具体化することで、BtoBマーケティングの戦略が立案できる。そして、KGI・KPIからマーケティングアクションプラン(行動計画)に落とし込むことで、BtoBマーケティング計画が立案できる。
BtoBマーケティング戦略を立案するフレームワーク「作戦・戦術・計画」
本コラムでは、戦略立案フレームワーク「作戦・戦術・計画」を活用した立案手順をご紹介する。戦略立案フレームワーク「作戦・戦術・計画」とは、営業戦略やマーケティング戦略などのビジネス戦略を立案するフレームワークだ。戦略を「作戦と戦術と計画」に分解して立案・具体化し現場に落とし込んでいく。

BtoBマーケティング戦略とは?戦略を「作戦・戦術・計画」の3つの分解
戦略立案フレームワーク「作戦・戦術・計画」については、下記のコラムにて詳しく解説している。事前に確認いただきたい。
- BtoBマーケティングの重要性浸透とリテラシー向上の進め方「社内浸透・意識改革をどうするか?」
- BtoBマーケティング戦略の立て方「作戦・戦術・計画」に分けて戦略を立てる方法とデジタル活用術
- BtoBの営業戦略の立て方(営業戦略のサンプルシート付き)
- BtoBのWEB戦略の立て方(WEB戦略の年間計画シートのサンプル付き)
- BtoBデジタルマーケティングの実行計画の立て方「5段階プロセス」
フレームワークを活用したBtoBマーケティング戦略の立て方プロセス
それでは、戦略立案フレームワーク「作戦・戦術・計画」を活用し、BtoBマーケティング戦略を立案してみよう。BtoBマーケティング戦略の立案手順は下記の通りだ。
- BtoBマーケティングを作戦に分解する
- 作戦毎に戦術を選定し使命(KPI)を具体化する
- マーケティング計画(マーケティングアクションプラン)に落とし込む
BtoBマーケティングを作戦に分解する
最初のプロセスは「BtoBマーケティングを作戦に分解する」だ。弊社では、BtoBマーケティングを下記の「BtoBマーケティングサイクル」として定義している。この定義をそのまま活用すると、BtoBマーケティングを8つの作戦に分解することができる。

BtoBマーケティングサイクル
BtoBマーケティングサイクルは弊社式の作戦への分解例であるが、これを参考に御社なりに作戦に分解すると良い。当然、このまま活用いただくのもOKだ。
作戦 | やること |
顧客のニーズを知る | 顧客満足度調査や見込み顧客(リード)のニーズ調査で蓄積されたさまざまなニーズを分析し、顧客や見込み顧客(リード)が解決したい課題は何なのか?を知ること。 |
売れる商品を作る | 「解決したい課題」に対して、自社の強みを生かしながら、製品やサービスを開発・改善していくこと。もしくは既存製品・サービスに付加価値をつけていくこと。この段階でマーケティングにおける差別化や競合優位性、独自性などが強化されることになる。 |
リードジェネレーション | 開発した製品・サービスの見込み顧客(リード)を獲得すること。展示会、セミナー、電話営業、Webサイト活用などさまざまなマーケティング手法がある。BtoBマーケティングでは、リードジェネレーションと呼称されている。見込み顧客(リード)へのアプローチをどれだけ効率よく行えるか?が重要となる。 |
リードナーチャリング | 獲得した見込み顧客(リード)に対して、中長期的に接点を構築し、信頼関係を作り上げていくこと。BtoBマーケティングでは、リードナーチャリングと呼称されている。見込み顧客(リード)が解決したい課題を調査(ニーズ調査)し、その解決策の提案(ソリューション提案)なども行う。BtoB企業は購買プロセス・検討プロセスが長いため、中長期的なリードナーチャリングの重要性・必要性は非常に高い。 |
案件化・商談化 | 育成した見込み顧客(リード)の中から、確度の高い見込み顧客(リード)を抽出・選定し、案件化・商談化していくこと。BtoBマーケティングでは、確度の高い見込み顧客(リード)を抽出・選定することを、リードクオリフィケーションと呼称している。 |
受注 | 案件・商談化した見込み顧客(リード)に対して見積りなどを行い、実際に受注を獲得すること。この段階で見込み顧客(リード)が新規顧客になる。 |
顧客維持 | 新規顧客を維持して、優良顧客化していくこと。LTVを高め利益や売上を最大化していくこと。顧客の流出防止のための施策を展開し、購入回数の増加(新規案件の獲得)、購入点数の増加など既存顧客からの売上を最大化する。クロスセル、アップセルを展開していく。 |
顧客満足度調査 | 既存顧客に対して、自社の製品やサービスの満足度(良い点や不満点)を調査し、自社製品が持つ課題を明確にすること。 |
以上がBtoBマーケティングサイクルの具体的な内容だ。BtoBマーケティングサイクルを8つの作戦として活用した場合は、下記のような戦略俯瞰図となる。

BtoBマーケティング戦略を8つの作戦に分解した例
作戦毎に戦術を選定し使命(KPI)を具体化する
作戦に分解したら、次は各作戦ごとに「戦術」を選定しKPIを設定する。ここが自社のリソースをどう活用するか?を考える重要な局面となる。BtoBマーケティングの各作戦における戦術・手法は複数あり、自社のリソースや顧客の購買プロセスなどに合わせて選定する必要がある。BtoBマーケティングの戦術・手法については下記のコラムを参照いただければと思う。
このようにさまざまな戦術があるため、自社にとって最も効率のよい戦術を選定し、戦略を具体化していこう。このとき、戦術に合わせて、各戦術のKPIも設定すると良い。KPIを設定すると下記例のようになる。下記例では作戦に対して1つの戦術を割り当てているが複数の戦術を割り当てても良い。

BtoBマーケティング戦略の戦術選定とKPI策定例
戦術選定が完了したらその戦術を実行するに相応しい人物をアサインし担当者としよう。そしてアサインされた担当者は、「自分が達成すべきKPI」と「なぜそのKPIを達成しなければならないのか?の意図」を理解し、マーケティング計画へと落とし込むと良い。
マーケティング計画(マーケティングアクションプラン)に落とし込む
マーケティング戦術の選定と実行担当者の決定が完了すれば、いよいよ現場への落とし込みだ。つまり、作戦・戦術毎にマーケティング計画(マーケティングアクションプラン)を策定する。マーケティング計画(マーケティングアクションプラン)とは、戦術をいつまでにやるのか?具体的にどう展開するのか?を決めることである。いきなり成功するとも限らないため、PDCAをどう回していくか?も考えなければならない。
実行担当者には、使命(KPI)と具体的な戦術が与えられている。実行担当者からみれば、「この手法(戦術)を使ってこの使命(KPI)を向上させてほしい」と指示が来ることになる。
このため、実行担当者は戦術と使命(KPI)を見ながら、具体的なタスクをリストアップし、マーケティング計画(マーケティングアクションプラン)に落とし込んでいく。縦軸が行動(TODO)、横軸が日付の計画表を作成することになるだろう。
- BtoBマーケティングの重要性浸透とリテラシー向上の進め方「社内浸透・意識改革をどうするか?」
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- BtoBの営業戦略の立て方(営業戦略のサンプルシート付き)
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- BtoBデジタルマーケティングの実行計画の立て方「5段階プロセス」
BtoBマーケティング戦略の立案ポイント
以上が戦略立案フレームワーク「作戦・戦術・計画」を活用したBtoBマーケティング戦略の立案プロセスだ。
- BtoBマーケティングを作戦に分解する
- 作戦毎に戦術を選定し使命(KPI)を具体化する
- マーケティング計画(マーケティングアクションプラン)に落とし込む
本プロセスのポイントは3つある。下記の点に注意しながら戦略立案を進めていただければと思う。
MECE(ミーシー)な作戦にすること
BtoBマーケティングを作戦に分解する際には、できるだけMECEな作戦に分解しよう。こうすることでリソースを効率よく活用できるようになる。
デジタル活用かリアル(人)活用か
作戦ごとの戦術選定では、デジタル活用をうまく取り入れていこう。リアル(人)活用は戦術が属人化するだけでなく、PDCAを回しにくいという戦術特性がある。また人材不足、DX推進、コロナ禍、顧客の購買プロセスの変化といった外部要因もあるため、デジタル活用を積極的に検討することをおすすめしたい。
関係者での共有
BtoBマーケティング戦略は営業部門や開発部門、マーケティング部門といった関係者が多く関わる戦略である。そのため、部門間・関係者間で戦略を共有し、戦術・KPIもしっかり共有しておくことが重要だ。各関係者が「独断で勝手な行動」をとるとベクトルが合わず、部門間で軋轢が発生してしまう。
BtoBマーケティング戦略の立案例
それでは最後にBtoBマーケティングの戦略立案例を1つご紹介する。弊社のお客さまの立案例を公開することはできないため、BtoBマーケティングコンサルティング事業を展開する弊社(株式会社ALUHA)のBtoBマーケティング戦略を例としてご紹介しよう。

BtoBマーケティング戦略の立案例
弊社は「デジタル化へのチャレンジ」という戦略方針のもと、BtoBマーケティング戦略のデジタル化を自社内で推進している。そのため、デジタル活用中心の戦術選定となっている。
デジタル活用を中心にしているため、各戦術のKPIを「KPIツリー(マーケティングダッシュボード)」として可視化できており、KPIが悪化している戦術の特定と改善をスピーディーに実施できるようにしている。
本コラムの戦略立案プロセスや、弊社の立案例が御社のBtoBマーケティング戦略立案の参考になれば幸いである。
- BtoBマーケティングの重要性浸透とリテラシー向上の進め方「社内浸透・意識改革をどうするか?」
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- BtoBのWEB戦略の立て方(WEB戦略の年間計画シートのサンプル付き)
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