このコラムでは、戦略立案フレームワーク「作戦・戦術・計画フレームワーク」を活用したBtoB営業戦戦略の立案例をご紹介する。具体的な立案例としては、(1)人材活用を中心としたリアルの営業戦略立案例、(2)デジタル活用を中心としたオンラインの営業戦略立案例、(3)人とデジタルのハイブリッドの営業戦略の立案例の3つをご紹介する。
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営業戦略の立て方について
本コラムの立案例は、コラム「営業戦略の立て方・基礎」でご紹介した内容がベースとなっている。そのため、コラム「営業戦略の立て方・基礎」をまだご覧いただいていない場合は、下記の営業戦略の立て方・基礎のページをご確認いただいてから、本ページをご参照いただけたらと思う。
もし、コラムを読む時間がない方は、下記の動画でも営業戦略の立案方法を解説している。
人材活用を中心としたリアルの営業戦略の立案例
1つ目の具体例は、人材活用を中心としたリアルの営業戦略立案例だ。この立案例では、売上・シェア拡大のために、「人」を最大限に活用して、人によりone-to-oneの営業対応を最大化し、売上向上、LTV向上を狙う戦略をイメージしている。
上記の立案例の詳細は下記表の通りだ。
認知拡大作戦 | APO数をKPIとし、電話営業、展示会、広告を活用して営業展開する。電話営業はターゲットとしている企業の法人リストを作成し、上から順に電話する。展示会では来場者と名刺交換し、フォロー営業する。広告は業界紙などに広告を出し反響を待つ。 |
興味づけ作戦 | 案件化(個別相談など)数をKPIとし、対面営業(主に商品提案)を行う。認知拡大作戦で獲得したAPOに対して対面で自社製品やサービスの紹介を行う。 |
信頼性向上作戦 | 興味づけ作戦と並行して行い、信頼関係を作りながら継続的なAPO獲得を狙う。ニュースレターはなかなか案件化しないリードに対する育成施策として展開。継続的にニュースレターを送付し信頼関係を深めていく。電話営業は継続的に電話して検討状況などを確認する。 |
リサーチ作戦 | リードの課題や悩み事を把握することをKPIにする。案件化率や商談化率の向上のため、課題や悩んでいることを電話や対面で調査・ヒヤリングする。ヒヤリングした内容はソリューション提案作戦、購入動機づけ作戦に反映させる。 |
購入動機づけ作戦 | 案件化(個別相談など)数をKPIとし、自社製品の導入事例、成功事例を紹介する。リサーチ作戦でリードの課題や悩みを確認できていれば、その課題解決の事例を紹介すると非常に効果的。 |
ソリューション提案作戦 | 受注数をKPIとし、リードにソリューションを提案して商談化し、商談を進める。リサーチ作戦でリードの課題や悩みを確認できていれば、その課題解決のプロセスを事例とセットで紹介すると受注率の向上につながる。 |
顧客満足度調査作戦 | 既存顧客に対して、満足度をKPIとし、対面でヒヤリング調査を行う。自社製品やサービスの不満点や改善点だけでなく、今後挑戦してみたいことなどを聞き出すことで、追加提案と流出防止策の具体化に活用できる。 |
課題発見作戦 | 顧客満足度調査で調査した結果を分析し、顧客の課題分析を行う。そこから対面営業で追加の個別提案などを行いLTVの向上を狙う |
すべて人中心のため、非常に柔軟な営業施策が展開できる反面、顧客毎に時間を取られてしまい、各作戦が中途半端になってしまう可能性がある。この営業戦略のメリット・デメリットをまとめると下記の表のようになる。
メリット |
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デメリット |
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このため、この営業戦略は「顧客1社1社に対して、より密着した営業を展開する」といった営業方針と相性がよいだろう。つまり、シェア拡大などはあまり狙わず、限られた顧客と長い付き合いをすることに重点をおいた営業戦略と言え、「ニッチで専門的でターゲット企業も少ない」ような製品・サービスや、アプローチする顧客を絞り込み、特定の顧客との関係性を深めて商談を作っていく「アカウント営業」と相性がよい。
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デジタル活用を中心としたオンラインの営業戦略の立案例
2つ目の具体例は、デジタル活用を中心としたオンラインの営業戦略立案例だ。この立案例では、売上・シェア拡大のために、「デジタル」を最大限に活用して、少人数体制で効率よくシェア拡大を狙うことをイメージした戦略となっている。
上記の立案例の詳細は下記表の通りだ。
認知拡大作戦 | WEBサイトを活用して認知拡大を実現する。オンライン上にオウンドメディアを構築し、SEO対策、SNSなどのオンライン広告を活用してアクセス数を増やす。 |
興味づけ作戦 | 自社のWEBサイトに集客したら、ホワイトペーパーを使ってCV獲得(資料請求獲得)を狙う。CV獲得後はソリューション提案作戦へと移行し、受注獲得を狙う。受注しないリードについては、信頼性向上作戦や購入動機づけ作戦などを継続的に実行する。 |
信頼性向上作戦 | 導入事例、成功事例を紹介するコンテンツを動画、PDF、WEBページで公開し、製品・サービスの信頼性を高める。既存リードに対してメルマガで継続的に事例を案内し、製品・サービスの信頼性を高める。 |
リサーチ作戦 | リードの課題や悩み事を把握することをKPIにする。案件化率や商談化率の向上のため、課題や悩んでいることをメルマガとアンケートフォームで調査する。調査した内容はソリューション提案作戦、購入動機づけ作戦に反映させる。 |
購入動機づけ作戦 | 自社製品の導入事例、成功事例を紹介し、事例に関する問い合わせ獲得を狙う。リサーチ作戦でリードの課題や悩みを確認できていれば、その課題解決の事例を紹介すると非常に効果的。 |
ソリューション提案作戦 | リードの課題を解決する方法を記載したソリューションページをメルマガなどで案内し、受注獲得を狙う。リサーチ作戦でリードの課題や悩みを確認できていれば、その課題解決のプロセスを事例とセットで紹介すると受注率の向上につながる。決済システムがあれば、その場ですぐに受注となる。 |
顧客満足度調査作戦 | 既存顧客に対して、満足度をKPIとし、アンケートフォームで調査を行う。自社製品やサービスの不満点や改善点だけでなく、今後挑戦してみたいことなどを聞き出すことで、追加提案と流出防止策の具体化に活用できる。 |
課題発見作戦 | 顧客満足度調査で調査した結果を分析し、顧客の課題分析を行う。分析した課題を解決するコンテンツをWEBサイトで公開し、製品・サービスの継続利用を狙う。カスタマーサクセスを重要視し、ユーザー会などを開催するのも効果的。 |
すべてデジタル中心のため、少人数で大きな営業展開が実現可能だ。かつ、長期間、継続すればするほど、作成したデジタルコンテンツは営業資産となり、再利用も可能だ。その反面、人材活用に比べるとone-to-oneの営業活動が行いにくく、かつ、信頼性獲得も難しい。さらに、デジタル活用と商材の相性の問題もあり、すべての製品・サービスで実現できるとは限らない。IT企業の中でもSaaSビジネスを展開している企業は相性が良い。
メリット |
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デメリット |
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このため、この営業戦略は「少人数でより多くの顧客に製品・サービスを長期間利用してもらう」といった営業方針と相性がよいだろう。つまり、認知拡大、リード獲得と顧客維持を重要視し、少人数体制で効率よくシェア拡大したいといった場合に活用できる。しかし、製品・サービスとの相性問題が現時点の日本では発生するため、注意が必要だ。
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営業KPIを改善し、営業の軸となる「セールスメッセージ」をどのように決めていくべきか、その手順や考え方をまとめたPDF資料です。営業を根本から見直ししたい時に参考になります。
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人とデジタルのハイブリッドの営業戦略の立案例
3つ目の具体例は、人とデジタルのハイブリッドの営業戦略の立案例だ。この立案例では、売上・シェア拡大のために、人とデジタルの特性をうまく活かす営業戦略をイメージしている。「デジタル化できる部分はデジタル化しよう」をコンセプトにした営業戦略と言える。BtoB企業では比較的多い形態の戦略だ。
上記の立案例の詳細は下記表の通りだ。
認知拡大作戦 | WEBサイトを活用して認知拡大を実現する。オンライン上にオウンドメディアを構築し、SEO対策、SNSなどのオンライン広告を活用してアクセス数を増やす。 |
興味づけ作戦 | 自社のWEBサイトに集客したら、ホワイトペーパーを使ってCV獲得(資料請求獲得)を狙う。CV獲得後はソリューション提案作戦へと移行し、受注獲得を狙う。受注しないリードについては、信頼性向上作戦や購入動機づけ作戦などを継続的に実行する。 |
信頼性向上作戦 | 導入事例、成功事例を紹介するコンテンツを動画、PDF、WEBページで公開し、製品・サービスの信頼性を高める。既存リードに対してメルマガで継続的に事例を案内し、製品・サービスの信頼性を高める。 |
リサーチ作戦 | リードの課題や悩み事を把握することをKPIにする。案件化率や商談化率の向上のため、課題や悩んでいることをメルマガとアンケートフォームで調査する。調査した内容はソリューション提案作戦、購入動機づけ作戦に反映させる。 |
購入動機づけ作戦 | 自社製品の導入事例、成功事例を紹介し、事例に関する問い合わせ獲得を狙う。リサーチ作戦でリードの課題や悩みを確認できていれば、その課題解決の事例を紹介すると非常に効果的。 |
ソリューション提案作戦 | 受注数をKPIとし、リードにソリューションを提案して商談化し、商談を進める。リサーチ作戦でリードの課題や悩みを確認できていれば、その課題解決のプロセスを事例とセットで紹介すると受注率の向上につながる。人による提案のため、より個別具体的な提案に落とし込み、one-to-oneを重視する。 |
顧客満足度調査作戦 | 既存顧客に対して、満足度をKPIとし、対面でヒヤリング調査を行う。自社製品やサービスの不満点や改善点だけでなく、今後挑戦してみたいことなどを聞き出すことで、追加提案と流出防止策の具体化に活用できる。人による活用のため、課題や要望をより深く聞き出し、顧客への密着度を高めていく。 |
課題発見作戦 | 顧客満足度調査で調査した結果を分析し、顧客の課題分析を行う。そこから対面営業で追加の個別提案などを行いLTVの向上を狙う |
この営業戦略は、デジタル活用と人材活用のいいとこどりをしたイメージで、双方のメリットをある程度活かせる営業戦略となる。その反面、デジタルとリアルの連携が必要となり、デジタルマーケティングと営業部門の連携で課題が発生する(フォローしても受注にならない、営業部門がフォローしないなど)。
メリット |
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デメリット |
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このため、この営業戦略は「営業効率とone-to-oneのバランス」を重視する営業方針と相性がよいだろう。one-to-oneを強化すればするほど、人の介入が多くなり、営業効率が悪化していく。そのため、デジタルの良さを取り入れて、one-to-oneを維持しながらも営業効率の改善を狙っている戦略と言える。現在、多くのBtoB企業では、営業部門の人材不足の対応、コロナ禍やDXによるデジタル活用の推進の両方を目指し、この営業戦略の実現が進められている。
まとめ
営業戦略の立案例を下記3つご紹介した。
- 人材活用を中心としたリアルの営業戦略の立案例
- デジタル活用を中心としたオンラインの営業戦略の立案例
- 人とデジタルのハイブリッドの営業戦略の立案例
それぞれ、自社製品や顧客特性などとの相性、そして、自社リソースとの相性があるので、どの方向性で進めるか、本コラムを参考に検討してほしい。なお、弊社では、今後、顧客側の購買プロセス(製品やサービスを購入・検討するプロセス)にデジタル活用がさらに活用されると考えている。人手不足がより深刻化すると、製品やサービスの購入に時間をかけることも難しくなるため、デジタルで効率よく情報収集する可能性があるためだ。
そのため、現時点では、「人とデジタルのハイブリッドの営業戦略」をおすすめする。
御社の営業戦略は、どの具体例が近いだろうか?そして将来、どのような方向性を目指すべきだろうか?人手不足、デジタル化が加速する中、今の営業戦略のままでよいかどうか、今一度、見直ししてみよう。
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