BtoBデジタルマーケティングの課題|どの程度効果があるのか定量的な指標で測れていない

BtoB企業のデジタル活用どの程度効果があるのか?を定量的に測る考え方
Last Updated on 2025年7月27日 by 荻野永策

BtoBマーケティングでは、「デジタルを活用してみたものの、どの程度効果があるのか定量的な指標で測れていない」といった課題が多々発生する。実際に弊社のお客様からも以下のような相談が来ている。

従来からの営業活動に比べてデジタルマーケティングがどの程度効果があるのか、定量的な指標で測れていない(製造業 株式会社O社)

そこで今回のコラムでは、デジタル活用の定量的な効果測定の考え方についてご紹介する。

なぜBtoB企業では効果測定が難しいのか?

BtoB企業において、デジタルマーケティング施策の効果を定量的に測定することは容易ではない。これは、BtoCとは異なる購買プロセスの複雑さと、関与するステークホルダーの多さに起因している。

まず、BtoBの購買プロセスは長期にわたる傾向がある。検討から契約までに数ヶ月、場合によっては1年以上かかることも珍しくない。その間に複数の接点が存在し、WEBサイトの閲覧、ホワイトペーパーのダウンロード、メルマガの開封、セミナー参加、営業担当の説明、技術担当の説明など、様々なタッチポイントが発生する。これらの接点が最終的な商談や受注にどのように寄与したのかを明確にするには、高度なトラッキングとデータ統合が必要となる。

さらに、意思決定に関与する人数が多い点もBtoBの特徴である。技術部門、購買部門、経営層など、複数の部署が関与するため、1人のリードが受注に直結するとは限らない。このようなプロセスでは、どの施策がどのフェーズに影響を与えたのかを定量的に把握することが難しい。

加えて、オフライン施策との連携も効果測定を複雑にする要因である。展示会や営業訪問など、リアルな接点が商談化に大きく寄与する場合、デジタル施策単体での評価は不十分となる。たとえば、展示会で名刺交換した相手が後日WEBサイトを訪問し、資料をダウンロードした場合、その行動は展示会の影響か、WEB施策の成果かを切り分けることは困難である。

このように、BtoB企業におけるデジタルマーケティングの効果測定は、単純な数値では語れない構造的な課題を抱えている。だからこそ、施策と成果をつなぐ指標設計や、営業部門との連携によるデータ統合が不可欠となるのである。

また、このような課題はデジタル活用に限った話でもない。展示会、セミナー、営業担当の説明など、デジタル以外の施策においても、「実際に効果があったのか?」を定量的に測定することは難しい。デジタルであろうがなかろうが、「購買プロセスの長さ」「意思決定に関与する人数の多さ」「オンラインとオフライン施策の連携の影響」というのは変わらないためだ。

効果を定量的に測るための考え方

理想論をいえば、●●●万円の売上(もしくは利益)を得るために、オンライン施策は■%貢献、オフライン施策は▲%貢献というように、貢献率を算出できると理想的だ。そして、オンライン施策の■%をさらに、ホワイトペーパーが★%、メルマガが◆%という具合に細分化できるとマーケティングの投資に対して、どれだけの利益が得られたか?も具体化できるだろう。

しかし、上述したように、「購買プロセスの長さ」「意思決定に関与する人数の多さ」「オンラインとオフライン施策の連携の影響」がある以上、非常に困難である。すべての受注案件でここまで精密な計算をしようと思うと、それだけでも膨大な工数がかかりそうである。

そこで、正確な効果測定は難しいが、どのように効果測定すべきか?の考え方をご紹介しよう。基本的には「何をもって効果とするか?」を決める必要はあるが、このコラムでご紹介する考え方が、御社のヒントになれば幸いである。

リード獲得の安定性や効率性で評価する

1つ目の考え方は、「リード獲得の安定性や効率性で評価」だ。これは「リード獲得」の施策で活用できる考え方である。現在、御社は、さまざまな施策でリード獲得しているはずだ。WEBサイト(SEOやLP、ホワイトペーパーなど)や、展示会、セミナー、電話営業などだ。こういったリード獲得施策の安定性や効率性で評価するとデジタル活用の定量的な指標での効果測定ができる。

まず、以下の表を見てほしい。

リード獲得の安定性や効率性で評価する

リード獲得の安定性や効率性で評価する

これは、WEBを使ったリード獲得の施策(CV獲得の施策)と展示会によるリード獲得の施策(名刺交換)の実績を記入した表だ。WEBはNヶ月で合計196CV獲得している。展示会は合計200社の名刺を獲得している。

このとき、合計件数では展示会の方が多いが、安定感と効率性はWEBの方が高いと言える。展示会は出展しない限りリード獲得できないためだ。WEBの運用コストは、時間経過とともに低下する傾向がある(WEBコンテンツが時間とともに充実するため)が、展示会は、毎回、必ず出展に工数がかかる。つまり、WEB施策は作成したコンテンツが資産になるが、展示会やセミナーは「開催すれば終わり」という特性があるのだ。

こういった観点でデジタルマーケティングの効果を定量的な指標で測ってみるのも面白いだろう。

リードの質と量で評価する

次に、リードの質と量で評価という考え方だ。ここでいうリードの質とは、以下の表の通り、2つの条件を満たすリードのことだ。

リードの質
自社製品と相性がいいリード自社で解決できる課題とリードが解決したい課題が合致しており、商談化すれば真剣に検討する可能性が高いリード
高いLTVが期待できるリードクロスセルやアップセル、ホワイトスペース開拓のポテンシャルがあるリード(企業規模が大きい、拠点が複数あるなど)

このような条件を満たすリードを獲得できれば、商談化したとき、営業も「質が高い」と判断し、重点的に営業フォローする可能性が高い。そうなれば、結果的に、デジタル施策で獲得したリードは質が高いと判断され、売り上げへの貢献度も自ずと向上する。

上記表のような条件を満たすリードのことをICP(理想的な顧客像)として定義し、上述した表にICP率を加えるとことで質と量の評価が可能となる。

質と量の評価

質と量の評価

上記表では、1月のデータを見ると、WEBで30件のCVを獲得し、そのうち3件がICPに該当するリードとなる。そのためICP率は10%だ。2月の展示会のデータでは、同様に10件のICP該当リードを獲得できており、ICP率は9%である。

このように評価することで、より質の高いリードを獲得できている施策は何か?デジタルで質の良いリード獲得はできているのか?などを定量的に評価することができる。

営業への貢献度で評価する

最後が営業への貢献度だ。営業が最も喜ぶリードというのは、「意思決定にかかわるメンバーとの接点ができており、購入を真剣に考えていて近々導入する予定で、もし売れたらLTVが高くなる可能性のあるリード」であろう。質を重視する営業から見れば最も喜ばれるリードと言える。数を重視する場合は、「意思決定にかかわるメンバーとの接点ができており、購入を真剣に考えていて近々導入する予定のリード」で、LTVの優先度は下がる。

このように考えたとき、デジタル施策で上記のようなリードをどのように獲得するか?がポイントになる。これがデジタルにおける営業の貢献度だ。

この営業の貢献度を測るには、受注に近いか遠いかで判断ができる。以下の図をご覧いただきたい。

受注に近いか遠いか

受注に近いか遠いか

上記図では、リードがホワイトペーパーにCVしてから、製品デモを受け、見積もり依頼に至り、受注となる流れを簡易的な図で表現している。このとき、ホワイトペーパーの資料請求は受注から遠く、確度は低いと言える。しかし、見積もり依頼は、受注に近い。

こう考えれば、どこまでデジタル施策でやるか?で貢献度が変わる。ホワイトペーパーのCV段階で営業連携すると、リードの数は多い反面、質(確度)が悪い。その結果、営業の工数は大きくなり、営業への貢献度は数でしか示せない。

逆に見積もり依頼までデジタル施策で実現すると、数は少ないが質は高い。営業への貢献度も高くなる。営業は内容を整理し見積書を作成し、クロージングするだけで良くなる。デジタル活用をしたことによって、製品説明や製品デモの仕事が削減されたことになる。

しかも、「質の高いリード」からの見積もり依頼であれば、営業部門から見れば非常に嬉しいデジタル活用ということになるだろう。

「見積もり依頼が何件獲得できたか?」「その見積もり依頼は質の良いリードなのか?(ICP率はどのくらいか)」を定量的に測ることで、デジタル活用の効果測定が可能になる。

まとめ

以上、効果を定量的に測るための考え方を3つご紹介した。デジタルでいくら売れたのか?を正確に判断するのは、「購買プロセスの長さ」「意思決定に関与する人数の多さ」「オンラインとオフライン施策の連携の影響」がある以上難しい。しかし、この3つの考え方を取り入れることで、デジタルも効果があるのでは?と社内で評価されるのではないだろうか?

BtoBデジタルマーケティングの基礎コラム

ABOUTこの記事をかいた人

株式会社ALUHA代表取締役。1979年兵庫生まれのBtoBマーケティングコンサルタント。金沢工業大学大学院にて情報工学を専攻し2003年4月にALUHAを創業。2008年からBtoBに特化したマーケティング支援、営業戦略支援を開始。BtoBマーケティングや営業戦略の戦略立案から、計画実行とPDCA、そして人材育成を伴走型で支援。デジタルとリアルを融合させた戦略設計が得意。毎月全国各地の様々な企業でBtoBマーケティングセミナーを実施中。100社以上でのセミナー講演実績を持つ。大手IT企業、製造業(日立Gr、富士フイルムGr、キヤノンGr、積水Grなど)を顧客に持つコンサルタント。→セミナー講演実績→コンサル実績