BtoB企業の特徴とは?BtoC企業とのマーケティングプロセスや営業戦略の違いを解説

BtoB企業の特徴と戦略の立て方、BtoC企業との違い
Last Updated on 2023年12月2日 by 荻野永策

BtoB企業の営業には、BtoC企業とは異なる特徴がある。BtoB企業が営業を成功させるには、BtoBならではの特徴を理解し、適切に営業活動を行うことが重要だ。今回のコラムでは、BtoB企業の特徴について解説する。BtoBマーケティングのプロセス営業戦略の立て方についても説明しているため、参考にしてほしい。

BtoB企業とは

BtoB企業とは、企業間取引を主なビジネスモデルとしている企業のことだ。「Business to Business」を略したもので、B2Bと表記することもある。

BtoB企業と聞くと、製造業や卸売業の企業をイメージする人も多いだろう。しかし、商品だけではなく、オンラインサービスやコンサルティングサービスなどサービスを他社に提供している企業も、BtoB企業に含まれる。

BtoC企業との違い

BtoC企業とは、「Business to Consumer」企業の略であり、直接一般消費者に商品やサービスを提供する企業のことだ。商品を提供しているスーパーや百貨店・飲食店の他にも、サービスを提供している旅行会社や保険会社もBtoC企業に含まれる。

BtoB企業とBtoC企業は、主に顧客の種類、マーケティング戦略、取引金額・規模の点に違いがある。

顧客

BtoB企業の顧客は企業で、BtoC企業の顧客は一般消費者だ。

BtoB企業の顧客は企業であることから、購買プロセスには多くの人が関わる。商品・サービスを選ぶ人、意思決定する人、承認する人などが関わり、実際に商品・サービスを利用する人が常に意思決定をしているわけではない。そのため、購買までにかかる期間は長い傾向にある。

一方、BtoC企業の顧客は一般消費者であり、利用する本人が商品・サービスを選び、購入の意思決定を行うことが一般的だ。購買までに関わる人数が少ないため、購買までにかかる期間は短くなっている。

マーケティング戦略

BtoB企業は、業界や部門、課題などの切り口でターゲティングを行いマーケティング施策を展開する。

BtoB企業で扱う商品・サービスの単価が高く、購買プロセスに多くの人が関与することから、購買プロセスが長期化しやすい。そのため、アプローチする業種や業態を明確にしたうえで顧客企業を絞り込み、購入を検討してもらえる部署まで特定する必要がある。そして、電話やメール・訪問などの手法で定期的にアプローチを続けて、信頼関係を構築するのが主なマーケティング戦略だ。

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一方、BtoC企業で扱う商品・サービスの単価は一般的に低く、購買プロセスに関与する人が少ないことから、購買プロセスは比較的に短い。趣味やライフスタイルなどの属性で顧客を絞り込み、不特定多数のセグメントにアプローチするのが主なマーケティング戦略だ。

取引金額・規模

BtoB企業はBtoC企業に比べて、取引金額が大きく、市場規模も大きい。一般的に一度の取引で動くお金は、BtoB企業の場合は数千円〜数億円程度であるのに対し、BtoC企業の場合は数百円から数十万円程度だ。

経済産業省が実施した「令和3年度 電子取引に関する市場調査」によると、令和3年の国内のBtoC-EC市場規模は20.7兆円であったのに対し、BtoB-EC市場規模は約18.6倍の372.7兆円となっている。ただし、このデータは電子商取引に限定したものであり、全体の市場規模はさらに大きい。

なお、下記の記事ではBtoBとBtoCの違いについてより詳しく解説している。

BtoBとは?BtoCとの違いや他のビジネスモデル形態について

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BtoB企業の特徴

BtoB企業の特徴には、以下のようなものがある。

  • 受注までのリードタイムが長い場合が多い
  • 1件あたりの予算・金額が大きい
  • 営業の対象者は「担当者」と「意思決定権者」

BtoB企業は購買プロセスに多くの人が関与するため、受注までのリードタイムが長い傾向にある。1件あたりの取引金額が大きく、顧客企業は慎重に商品・サービスを選ぶことからも、定期的なアプローチで信頼関係を構築することが重要だ。

受注までのリードタイムが長い場合が多い

先述した通り、BtoB企業では購買プロセスに多くの人が関与しており、その結果受注までのリードタイムが長い場合が多い。なかなか検討してもらえないからと放置すると、検討段階で候補から外れるリスクがある。そのため、電話やメールなどを通じて定期的にアプローチを行い、信頼関係を構築することが重要だ。

また、リードタイムが長いと、その分、営業工数が増大する可能性がある。営業工数を減らすためには、非対面営業であるインサイドセールスの導入が効果的だ。移動時間を削減できるうえに、訪問営業のようなアポ取りが不要であることから、営業工数削減の効果を期待できる。

1件あたりの取引金額が大きい

BtoB企業の扱う商品・サービスの単価は比較的に高く、一度の取引で扱われる商品数も多いことから、取引金額は高額になることが多い。顧客企業にとっては高額な投資となるため、慎重に選ぶこととなる。顧客に選んでもらうためには、顧客と信頼関係を構築し、安心して利用できそうと思ってもらうことが重要だ。

信頼関係の構築には、リードナーチャリングが効果的である。リードナーチャリングの概要や取組方法については、下記のコラムを参照してほしい。

リードナーチャリングとは?顧客育成の成功事例と手法、マーケティングツールを解説

営業の対象者は「担当者」と「意思決定権者」

BtoB企業が営業する相手は「担当者」や決裁権を持つ「決裁者や意思決定権者」となる。企業規模が大きな顧客になると、窓口の担当者と商談を行い、その後、窓口の担当者が決裁者に商品・サービスの導入を相談する流れが一般的だ。

自社商品・サービスの魅力を窓口の担当者に伝えることは重要だが、窓口の担当者が決裁者に十分に魅力を伝えられなければ、受注にはつながらない。そのため、決裁者に直接アプローチする手法や、窓口担当者が決済者に「説明しやすくするための支援」を具体化しておくことが重要だ。

BtoBマーケティングのプロセス

マーケティングプロセスとは、マーケティング戦略を立案し、実行する一連の流れのことだ。BtoB営業で受注率を高めるためにも、どのように営業活動を進めるのか理解しておこう。

BtoBマーケティングのデマンドジェネレーション

BtoBマーケティングのデマンドジェネレーション

上記は、デマンドジェネレーションを図解したものである。デマンドジェネレーションとは、顧客を獲得し、購買意欲を高めた後、営業部門に引き渡すプロセス全般のことだ。このプロセスには、リードジェネレーション(顧客の獲得)、リードナーチャリング(顧客の育成)、リードクオリフィケーション(顧客の選別)を含んでおり、いずれもリードタイムの短縮や受注率の向上に重要な役割を担っている。

BtoBマーケティングサイクル

BtoBマーケティングサイクル

上記は、BtoBマーケティングサイクルを図解したものである。単に売れる商品を作るだけではなく、見込み客を獲得し、育成、案件化・商談化する段階が必要であることを表している。さらに、受注後の顧客維持も重要で、顧客満足度調査を通じて顧客のニーズを把握し、それを商品開発に反映することがBtoBマーケティングの一連の流れだ。

なお、下記の記事ではBtoBマーケティングの基礎や役割についてわかりやすく解説している。BtoBマーケティングの勉強に役立つ本も紹介しているため、ぜひ参考にしてほしい。

BtoBマーケティングの基礎!戦略立案、始め方、手法、効果分析の仕方、成功事例を一問一答で解説

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リードジェネレーション

リードジェネレーションとは、見込み顧客を獲得するためのマーケティング施策のことだ。休眠しているリードや顧客を掘り起こしてリード化することも含む。単に集客数を増やすのではなく、売上につながるように、自社の商品・サービスを購入してもらえそうな顧客を獲得することが目的だ。

リードジェネレーションの手法は、デジタル活用とリアル活用に大別できる。主な手法は、以下の通りだ。

デジタル活用 リアル活用
  • WEBサイト
  • リードジェネレーションサイト・マッチングサイト
  • WEB展示会
  • ウェビナー・オンラインセミナーv
  • 営業問い合わせ
  • リアル広告
  • DM(FAX・郵送)
  • 電話営業
  • 飛込営業
  • 紹介営業
  • ビジネス交流会
  • リアル展示会
  • リアルのセミナー
  • リード獲得代行・営業代行サービス

上記で紹介した方法には、いずれもメリット・デメリットがある。例えば、WEBサイトのSEO対策で集客を行う方法には、安定したアクセス数を確保できる、費用対効果が高いというメリットがある反面、定期的にメンテナンスが必要というデメリットがある。

下記の記事で、リードジェネレーションの手法別にメリット・デメリットを説明している。自社に合った方法を選ぶために、ぜひ参考にしてほしい。

リードジェネレーションの基礎!手法・やり方・プロセスと効果分析の仕方、成功事例を一問一答で解説

BtoBマーケティングのリードジェネレーションとは?リードナーチャリングとの違いや戦略・手法、成功事例を解説

リードナーチャリング

リードナーチャリングとは、新規で獲得したリードや顧客の購買意欲を高めるマーケティング施策のことだ。リードや顧客にとって価値のある情報を提供し、信頼関係を構築することで受注確度を高める。リードや顧客の購買意欲を高め、最終的に受注につなげることが目的だ。

リードナーチャリングの手法は、デジタル活用とリアル活用に大別できる。主な手法は、以下の通りだ。

デジタル活用 リアル活用
  • WEBコンテンツ
  • メルマガ
  • シナリオメール
  • 動画
  • ウェビナー・オンラインセミナー
  • ホワイトペーパー
  • アンケートフォーム
  • リマーケティング広告・リターケティング広告
  • ニュースレター
  • 訪問営業・対面営業
  • テレマーケティング
  • セミナー

下記の記事で、リードナーチャリングの手法別にメリット・デメリットを説明している。役立つツールも紹介しているため、ぜひ参考にしてほしい。

リードナーチャリングとは?顧客育成の成功事例と手法、マーケティングツールを解説

リードクオリフィケーション

リードクオリフィケーションとは、リードナーチャリングで育成したリードの中から、受注確度の高いリードを抽出するマーケティング施策のことだ。受注確度の高いリードを営業部門に引き渡せれば、営業部門は受注確度の高いリードにのみアプローチすることとなる。受注確度の低いリードにアプローチする時間や手間を削減して、スムーズに受注につなげることが目的だ。

リードを抽出する方法には、さまざまな方法がある。例えば、インサイドセールスでリードに電話をかけて、その内容から受注確度を判断することが可能だ。また、MAのスコアリング機能や行動履歴の分析機能を活用すれば、受注確度を数値化できる。

下記の記事では、リードクオリフィケーションの手法や事例について解説しているため、ぜひ参考にしてほしい。

リードクオリフィケーションとは?リード選定の7つの判断材料と判断基準を決めるポイント

リードクオリフィケーションとは?事例・方法・リード選定条件を決めるときの3つのポイント

2021年12月25日

BtoB企業の営業戦略の立て方

営業戦略とは、営業目標を達成するための中長期的な計画・方針のことだ。何の計画も立てずに行動すると、途中で方針がブレてしまったり、無駄な行動が発生したりする可能性が高くなる。効率よく目標を達成するためには、営業戦略を立ててから行動する必要がある。

ここでは、BtoB企業の営業戦略の立て方を紹介する。

  1. 戦略を作戦に分解する
  2. 作戦毎に戦術を選定する
  3. 営業アクションプラン(営業計画)を立案し実行する

戦略を立ててすぐに実行すると、目標達成のために必要な行動を取れない可能性が高い。戦略を作戦と戦術に分解して、具体的な営業アクションプランを立案する必要がある。

戦略を作戦に分解する

BtoB企業の営業戦略を立てる第一段階は、戦略を作戦に分解する段階である。作戦とは、営業戦略の目的を達成するために実現しなければならないことだ。言い換えると、営業戦略は複数の作戦で構成していることになる。

BtoB企業の営業は、「見込み客の獲得」「見込み客の育成」「クロージング」「顧客維持」という4つのプロセスに分かれる。そのプロセスについて、弊社で作戦に分解した。

プロセス 作戦 KPI
見込み客を獲得する 認知拡大作戦 自社の製品のことを知ってもらうこと
興味付け作戦 自社製品に興味を持ってもらい見込み客になってもらうこと
見込み客を育成する 信頼性向上作戦 自社のことを信頼し頼ってもらうこと
リサーチ作戦 お客様の課題・ニーズを知ること
購入動機付け作戦 自社製品を買おうかどうか検討してもらうこと
クロージングする ソリューション提案作戦 実際に売ること・クロージングすること
顧客維持する 顧客満足度調査作戦 満足度を高めファンになってもらうこと
課題発見作戦 今の課題を把握し次の提案につなげ購入してもらうこと

上記のように、戦略を作戦に分解したら、「作戦・戦術・計画」フレームワークに落とし込む。上記の作戦とKPIを記入すると、下記図のようになる。

BtoBマーケティング戦略を8つの作戦に分解した例

BtoBマーケティング戦略を8つの作戦に分解した例

作戦毎に戦術を選定する

戦略を作戦に分解したら、作戦毎に戦術を選定する。戦術とは、KPIを実現するための方法論や具体的な手法のことだ。分解した作戦に対して、どのような手段でKPIを達成するのかを検討する。

営業戦術を検討する際は、営業力の強い組織作りを実現するために、属人化しない戦術を選ぶことが重要だ。1つの作戦に対して複数の戦術を使用することもあれば、1つの戦略を複数の作戦に使用することもある。実際に営業戦術の例を記入すると、下記図のようになる。

BtoBの営業戦略の戦術選定例

BtoBの営業戦略の戦術選定例

作戦毎に戦術を選定したら、次はKPIの具体化を行う。進捗状況をモニタリングできるように、定性的なKPIを設定することが重要だ。これまで紹介した例でKPIを具体化すると、下記図のようになる。

BtoBの営業戦略の戦術に合わせたKPI設定

BtoBの営業戦略の戦術に合わせたKPI設定

営業アクションプラン(営業計画)を立案し実行する

作戦毎に戦術を選定し、KPIを具体化できれば、営業アクションプランを立案・実行していく。実行責任者を決めて、「戦術に対して、どのようにすればKPIを達成できるのか」を考えてアクションプランに落とし込もう。実行責任者は、戦術に詳しい人材を選ぶことがおすすめだ。

なお、下記の記事では営業戦略の立て方についてより詳しく解説している。興味がある方はぜひ参考にしてほしい。

営業戦略の立て方を一問一答で解説!営業分析やターゲティングと差別化の仕方、営業計画の決め方、PDCAの回し方

営業戦略とは?戦術との違いや営業戦略を立てるフレームワーク|PDCAの回し方や効果分析方法も解説

まとめ

BtoB企業には、購買プロセスに多くの人が関与することから、リードタイムが長い場合が多いという特徴がある。また、1件あたりの取引金額が大きく、顧客は慎重に購入を検討する。これらの特徴から、BtoB企業の営業においては、定期的にアプローチして信頼関係を構築することが重要だ。

このコラムではBtoB企業の特徴のほかにも、BtoBマーケティングプロセスや営業戦略の立て方について説明した。いずれもBtoB企業の営業において重要な内容となっているため、BtoB営業を成功させたい方はぜひ参考いただければと思う。


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