BtoBマーケティングにおけるリードナーチャリング施策では、MAツールなどを活用してメールマーケティングが展開されている。しかしながら、BtoB企業のMA活用やメールマーケティングでは、さまざまな課題が発生している。
ここでは、2019年から弊社が独自に実施しているBtoB企業のリードナーチャリングやMA活用の課題に関する調査結果をご報告する。
調査方法と概要
調査期間 | 2019年6月17日から2024年12月31日 |
調査方法 | 弊社WEBサイトによるアンケート調査。社名、名前、連絡先などの記入を必須としたため、BtoB企業以外(個人や個人事業主も含む)の回答は全て除外済み |
質問内容 | MAツールやメールマーケティングを活用したリード育成について課題は何か?を質問 |
回答人数 | 262名 |
主な回答者 | BtoB企業のマーケティングの担当者、責任者(主に、IT企業、製造業が中心) |
調査実施企業 | 株式会社ALUHA(ALUHAのBtoBマーケティングコンサルティングサービスの概要ページ) |
結果サマリー
調査の結果は以下のとおりとなった。なお、各課題について、他のBtoB企業ではどのように課題解決に取り組んでいるのか?を詳しくお話しすることも可能だ。ご興味あれば、こちらから問い合わせいただければ、解決の取り組み例や成功例をお話ししよう。

BtoB企業のリードナーチャリングやMA活用の課題調査【2019年から2024年までの集計】
最も多いのが「商談創出できる育成戦略や配信計画が立案できない、KPIによるPDCAが回せていない」である。BtoBのリードナーチャリングでは、営業部門へ確度の高いリードを送客し、営業との連携が必要になるが、そのためには、メールを起点とした商談の創出が重要になる。それが計画的に実行できていないという課題を持つ企業が非常に多いことがわかる。
それでは各課題について、その詳細な内容をご紹介する。
商談創出できる育成戦略や配信計画が立案できない、KPIによるPDCAが回せていない
本調査を開始した当初は少なかったが、時間経過とともにだんだんと増加し、2022年をピークに高止まりしている。具体的なアンケート回答例としては以下のような回答があった。
- 電話を使わずメール主体で商談創出できるのか?(製造業)
- 休眠リード・顧客から商談創出につながるコンテンツにはどのようなものがあるか(製造業)
- メルマガによるリードナーチャリングから、商談(アポイント)への着地のさせ方がわからない。現在は、「定期的な業界のニュース配信」と 「セミナー告知」を行っているが、セミナーも実施頻度が高いためか反応が薄く、 メルマガから商談に繋がるためのきっかけが弱い(製造業)
- ホットリードへと育成するメルマガ配信計画の立て方(IT企業)
MAツールなどを導入しメールマーケティングやスコアリングなどを開始したものの、なかなか商談創出ができず、悩み続けているBtoB企業が多いことが伺える。デジタルマーケティングと営業の連携がうまく行かず、社内からも成果を求められているのではないかと想定される。
ホットリード抽出方法、営業連携方法、送客後の成果追跡方法がわからない
本調査開始直後から、毎年一定数の回答があるのが「ホットリード抽出」「営業連携」「成果追跡方法」だ。この課題はBtoB企業を悩ませる大きな課題と言える。
具体的には以下のような回答があった。
- MAのデータ(スコア・行動履歴)を分析してホットリードを抽出する方法がわからない(IT企業)
- LTVが高いホットリードを抽出するコツがわからない(製造業)
- ホットリードを抽出しても営業部門にて購買につながらない(リサーチ業)
- メールによるリードナーチャリング、MA活用法、営業連携といった部分を課題に感じております。高額なもののため、検討期間が長いことから 勝ちパターンをなかなか掴めない実情です。(製造業)
- BtoBマーケティングにおいて営業部門との連携がスムーズにいっていないため、 潜在顧客から顕在顧客への掘り起し、育成がとぎれとぎれとなっている。(IT企業)
- リード育成の費用対効果試算方法(製造業)
- ホットリード判定から商談化までのKPIを管理する方法(製造業)
- メールマーケティングが商談創出に貢献しているかを把握する方法がわからない(IT企業)
中でも営業部門との連携は非常に大きな課題だ。「営業部門に協力をお願いするには目に見えた成果が必須」であるにもかかわらず、「成果を得るには営業部門の積極的な協力が必須」という状況であるため、なかなか連携がうまく行かないケースが多い。つまり、営業部門と連携するには、成果を求められるが、その成果を得るには連携しなければならないというジレンマが存在することになる。
各社、今までの歴史や社風、企業文化などがあるため、このジレンマを乗り越えるには苦労が絶えないだろう。
メールの開封率やクリック率が伸び悩んでいる
本調査開始直後から、毎年一定数の回答があるのが「クリック率や開封率に関する課題」だ。BtoB企業のメルマガ担当者の現場目線の課題と言える。具体的には以下のような回答があった。
- 最近のメルマガは前月分の新着記事を掲載するという作業になっているだけで、開封率もクリック率も徐々に下がり続けています。もちろん開封率が増加するようにメールタイトルも工夫はしていますが、大幅に開封率が増加するようなことはありません。(製造業)
- クリック率・開封率を高めるメルマガライティングテクニックを知りたい(IT企業)
- ナレッジの周知と無料トライアルやセミナー案内のメルマガを送信していますが、開封していただいた後のサイトボタンへのクリック率が低迷しています(IT企業)
- BtoBメルマガの開封率・クリック率を高めるための手法や配信時間や配信曜日はいつが適切かを分析する方法(BtoBサービス業)
メルマガは継続的な運用が必要になるため、「ネタがない」「マンネリ化する」といった背景も絡んでいると思われる。
メルマガライティングテクニックをPDFでチェック「BtoBメルマガの開封率・クリック率を高める7つの法則」〜MA活用の効果を高めるメールマーケティングテクニック〜
MAを導入したものの自動化の恩恵が少なく生産性が上がらない
本調査開始直後に、非常に多かった課題だ。2019年あたりにピークを迎え、徐々に減少している。弊社の仮説であるが、MAを導入したものの、「思ったほど生産性が上がらない」と感じたためではないかと考えられる。実際にアンケート回答でも以下のような回答があった。
- パーソナル化されたMAシナリオを細かく設定することは工数的にも難しい(製造業)
- シナリオの作り方をある程度自動化できないか?(製造業)
- 分岐ステップメールの設定工数を削減するリードナーチャリングシナリオの設計方法(製造業)
- メルマガのターゲットは絞るべきでしょうか?絞った場合、コンテンツもターゲット毎に決めるのがいいのかと思いますが、そうすると工数がかかりそうでやれるか心配(製造業)
MAツールのシナリオ設定の難しさや、BtoBメルマガ配信の工数などが大きく影響し、思ったほど自動化の恩恵がないと考えている傾向がある。
しかしながら、徐々に回答数は減ってきているため、「MAベンダーの技術的・機能的な進化」と「顧客側の操作能力向上」といった要因で、回答が減ってきているのではないかと考えられる。今後、MAとAIなどが連動し、さらに自動化が加速すれば、この課題は解消される可能性がある。
リードの課題調査のやり方がわからない(課題を把握できない)
本調査の開始当初から、継続的に、一定数の回答がある課題だ。BtoBならではのニーズ把握の難しさがあり、その結果が定期的に課題化していると考えられる。具体的には以下のような回答があった。
- 新製品開発におけるニーズ調査および、社内展開をどのように行うのか(製造業)
- 新製品の開発のためのニーズを拾いたいが、なかなか具体例がまずないとヒアリングすらできないが、具体例を用意するにもお金がかかる。(製造業)
- 製造業(食品原材料)の「問屋の先の食品製造業のニーズ等が把握できない」を解決する方法(製造業)
- 「顧客ニーズを正確につかむ方法」があれば知りたい(IT企業)
BtoBの場合、「顧客との関係性ができていないと良い回答が得られない」「チャネルが複雑化すると最終顧客のニーズが掴めない」といった課題があり、定期的に「ニーズ把握に関する課題」が発生すると思われる。
メール配信担当者の人材育成やノウハウ共有の体制がない
2022年あたりから回答者が増えてきた課題だ。本調査開始当初は少なかったが、だんだんと増加している傾向がある。MAツール導入を行い現場の運用が確立して行く中で、人事異動なども発生し、ノウハウやスキル育成などに課題を感じるようになったと考えられる。具体的には以下のような回答があった。
BtoBのデジタルマーケターをどのように育成してくことが望ましいのか(製造業)
インサイドセールスメンバーの人材育成(IT企業)
人材育成がうまくいっていない。(IT企業)
マーケティング部門の人材育成を推進する社内フレームワークの作り方(製造業)
回答者の属性を見ていると、「マーケティング業務に関わる責任者や管理者」および、「成功を体験した担当者」が多い傾向がある。社内にノウハウを共有し横展開していきたいという意図がうかがえる課題だ。
製品・事業ごとのメール施策が展開できていない
この課題は、2019年あたりにピークを迎え、徐々に減少している。具体的には以下のような回答があった。
- 商材が多くメルマガ配信ターゲットが絞れないときのメルマガ配信計画の立て方(製造業)
- 全社レベルでメルマガ配信しているが範囲が広すぎて活用できていない(IT企業)
- 複数製品を1つのメールで配信するときのメルマガの考え方(IT企業)
こういった課題が発生する要因としては2つ考えられる。1つ目は、社内リソースの問題だ。メルマガ担当者のリソースが少なく、製品や事業ごとにメルマガ配信ができないのである。
2つ目は、メルマガの配信リストの問題だ。データ整理が行われていないと、誰がどの事業や製品のリードか?がわからなくなり、その結果、全員に配信する形になってしまう。データクレンジングやリードデータベースの項目設計を行わなければ、解決できない。しかし件数も多くなるとなかなか難しいため、非常に工数のかかる問題を抱えることになる。
まとめ
以上、BtoB企業のリードナーチャリングやMA活用の課題調査の概要をご紹介した。時間経過とともに、増加している課題、減少している課題、高止まりしている課題、常に発生している課題があり、その変化が非常に面白い。今後、MAツールが進化し、AIなどとも連動するようになると、課題がどう変化して行くのか、継続的に調査を続けたいと思う。