ペルソナマーケティングとは?意味・作り方・設定に必要な情報の集め方をわかりやすく解説

BtoBのペルソナの作り方!具体的な企業像・顧客像を設定する方法
Last Updated on 2024年10月19日 by 荻野永策

価値観が多様化している現代では、顧客ニーズを曖昧にしたまま製品・サービスを販売すると、その特徴が曖昧なものとなり、顧客に訴求できないままとなる可能性がある。顧客ニーズは、顧客の解像度をどこまで高められているかで、正しく把握できるかどうかが決まるだろう。そして顧客の解像度を高めるための手法として注目したいのが、今回解説する『ペルソナマーケティング』だ。

今回のコラムでは、BtoBマーケティング向けにペルソナを設定する目的や設定例を紹介する。ペルソナマーケティングに必要な情報の集め方や注意点も説明する。営業戦略の立案にも役立つのでぜひ参考にしてほしい。

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ペルソナマーケティングとは

ペルソナマーケティングとは、架空の人物像(ペルソナ)に合わせて施策を最適化するマーケティング手法のことだ。BtoBでは、ターゲットのイメージ像を具体化しにくい傾向があるため、ペルソナマーケティングによりターゲットのイメージ像を具体化することには大きな意味が生まれる。

ペルソナとは?

ペルソナとは、自社製品・サービスのターゲット像を具体的に描いた人物像・人物モデルのことであり、年齢や性別、役職、部門といった個人像や、業種、年商、従業員数などの企業像を具体的に設定する。

年齢や性別といったデモグラフィック情報の他にも、所属企業像、部門、役職、普段の業務内容など、まるで実在する人物かのようにあらゆる面から人物像を描き出す。ターゲットとしている企業や人物のモデルを作るイメージだ。

細かに設定したペルソナを活用することで、より効果的なマーケティング施策を打ち出すことができる。例えば、ペルソナの抱える悩みや課題を解決するように商品やサービスを開発・設計したり、ペルソナのライフスタイルや関心に合わせたアプローチ方法を選択するなど、「この人に刺さるものは何か」という視点で考えられる分、意思決定もしやすい。

ペルソナマーケティングは、ターゲットユーザーを深く理解し、より効果的なマーケティング施策を打ち出すための重要な手法になるというわけだ。

ペルソナを設定する目的

ペルソナを設定する目的は、主に以下の2つだ。

  1. 顧客像を共有・統一する
  2. 顧客ニーズを明確にする

組織内で顧客像にバラツキが生じないように、顧客像を共有・統一することが重要だ。また、顧客に自社の製品・サービスを訴求するためにも、ペルソナを設定して顧客ニーズを明確にしておく必要がある。

顧客像を共有・統一する

ペルソナは、年齢や性別、役職、部門といった個人像や、業種、年商、従業員数などの企業像を具体的に設定する。これにより、ペルソナを共有した関係者の間での顧客像のズレを防ぎ、顧客像を統一できる。

例えば「食品製造業の生産計画を立案している35歳の男性」と聞いても、Aさんは「エクセルで生産計画を立案するエクセルの達人」を想像し、Bさんは「生産管理システムを使いこなす人」と別々のことを想像するかもしれない。このように、ターゲットイメージをざっくりした内容だけで共有すると、認識の齟齬が発生する。こういった齟齬を最小限にするためにペルソナを設定する。

組織内で顧客像を共有・統一すれば、マーケティングチームや製品開発チーム、営業チーム、カスタマーサポートチームなどが同じ顧客をイメージした状態で、それぞれの業務を遂行することが可能だ。これは、コミュニケーションやプロジェクトの進行の円滑化につながる。

逆に、顧客像を共有できていない状態でプロジェクトを進めると、開発やマーケティングの方向性にぶれが生じるリスクがある。部門を跨いでコミュニケーションする際に話が進みづらいこともあるだろう。これは、社内合意をとるときに大きな弊害となり、製品・サービスを開発する時間の長期化と機会損失にもつながる。

こういった事態を防止するためにも、ペルソナを設定し、社内や関係各所で顧客像を共有・統一することは非常に重要なのだ。

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顧客ニーズを明確にする

先述した通り、ペルソナは年齢や性別、役職、部門といった個人像や、業種、年商、従業員数などの企業像を具体的に設定する。さらに「普段どのような業務をどのように進めているのか?」や「普段、情報収集するときは何を使っているのか?」なども設定することで、日々、「どのような課題に悩んでおり、何について情報収集しているのか?」まで具体化できる。つまり、ペルソナのイメージ像を具体化すればするほど、どんな課題があるのか?といった「ニーズの具体化」につながっていく。曖昧だった顧客ニーズが、ペルソナというモデル人物を通して、より鮮明に、具体的になっていくのである。

ペルソナ設定の例

ペルソナマーケティングにおける、ペルソナの設定方法をお伝えする前に、まずはその例をお見せしよう。

ペルソナ例

下記は、業務システムを開発・販売するIT企業が、ターゲットイメージを具体化するために作成したペルソナの例だ。社内の情報システムの担当者をモデル化したペルソナ設定シートとなっている。ペルソナシートのサンプルもダウンロードできるので、ダウンロードしたエクセルを見ながら下記、読み進めて欲しい。

BtoBのペルソナシートの例

BtoBのペルソナシートの例

上記はBtoBマーケティングで活用できるよう、弊社にて作成したサンプルのペルソナシートである。これを参考にしながら、御社の商材に合わせて項目などを自由にカスタマイズしてもらえたらと思う。

それでは、上記の例をベースに、ペルソナの作り方を解説する。

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ペルソナの作り方

上記のペルソナはあくまで例であり、設定する項目もこれがすべてではない。商材や顧客特性によってさまざまな項目が必要になるだろう。そこで、最も簡単なペルソナの作り方を1つご紹介する。本来は、「セグメンテーションとターゲティング」を行った上で、ペルソナを作成するとよいが、非常に説明が長くなるため、簡易的な方法を1つご紹介する。その方法が下記の方法だ。

  1. 既存の顧客リストを作成し顧客分析をする
  2. 分析結果からペルソナを設定する

既存顧客を分析してペルソナを設計するという、エビデンスもしっかりした作り方なので、ぜひ参考にして欲しい。

既存の顧客リストを作成し顧客分析をする

この手順では、まずは顧客リストを作成することから始まる。ペルソナのイメージを具体化しやすいような項目を作り、既存顧客のリストを作成してみよう。例えば下記のようなリストだ。

ペルソナ作成の準備「顧客リストのサンプル」

ペルソナ作成の準備「顧客リストのサンプル」

上記のリストを作ったら、顧客ごとのある期間(例えば1年間など)の取引金額(自社と顧客の取引金額)を計算し、記入しよう。そして取引金額の多い順に並べ替えてみよう。そうすると、優良顧客は表の上に、一般顧客は表の下に表示されることとなる。

この状況で、「どういう業種でどのくらいの規模(年商や従業員数)の企業を狙うべきか?」「役職はどのレベルがよいか?」「どんな課題を持っている企業がよいか?」といったデータを既存顧客リストから分析する。こういった顧客分析をすることで、ペルソナ設計の基準を作り上げることができる。ペルソナ設計の基準は、下記のようなイメージでまとめるとわかりやすいだろう。

BtoBのペルソナ設定の基準表のサンプル

BtoBのペルソナ設定の基準表のサンプル

分析結果からペルソナを設定する

ペルソナ設計の基準を作成したら、この内容をベースに具体的な人物像へと肉付けしていく。まずは企業像から肉付けしていこう。業種、従業員数、年商などの基準データがあるので、そこからより具体的な企業イメージを作り上げていく。実在する既存顧客を思い浮かべながら進めるとよい。

下記は弊社にて肉付けした企業像のサンプルである。社名や代表者名は本コラムでは、便宜上「●」で記載しているが、架空の社名・人物名を入れてもよい。

BtoBのペルソナ作成のサンプル「企業像のサンプル」

BtoBのペルソナ作成のサンプル「企業像のサンプル」

次に、人物像を同様に肉付けしていく。課題や部門、役職などの基準データがあるので、そこからより具体的な個人イメージを作り上げていく。実在する既存顧客の担当者を思い浮かべながら進めるとよい。下記は弊社にて肉付けした個人像のサンプルである。

BtoBのペルソナ作成のサンプル「個人像のサンプル」

BtoBのペルソナ作成のサンプル「個人像のサンプル」

このように、既存顧客のデータを基準にペルソナを設定していくと具体性のあるペルソナを作成できる。

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ペルソナマーケティングに必要な情報の集め方

次項からは、ペルソナマーケティングに必要な情報の集め方について説明する。具体性・信憑性のあるペルソナを作成するために、どれも必要な情報収集方法であるため、できる限り実施してほしい。

  1. 自社の顧客データ
  2. カスタマーサポートの対応履歴
  3. 既存顧客の担当者へのヒアリング
  4. アンケート調査

自社の顧客データ

ペルソナマーケティングで最も需要な情報源は、自社の顧客データだ。どのような企業・個人像の顧客が多いのか?の分析に活用できる。さらに、商談履歴や名刺データをしっかり残していれば、どういう課題を持っている顧客が多いか?どんな部門のどんな役職の方が多いかなども具体的に分析が可能だ。そのため、自社の顧客データ(顧客リストや名刺情報、過去の商談記録など)をできる限り収集し、ペルソナ作成に活用しよう。

カスタマーサポートの対応履歴

カスタマーサポートの対応履歴もペルソナ作成で活用できる。どんな問い合わせが多いか、何に悩んでいるのかなど具体的なデータが蓄積されているため、そのデータを確認することで、具体性のあるペルソナを作成できる。

「顧客の声」を直接吸い上げているカスタマーサポートのデータは非常に貴重である。ペルソナは実在するかのように人物を設定するため、カスタマーサポートの対応履歴があるかないかで解像度は大きく異なるだろう。

既存顧客の担当者へのヒアリング

ペルソナは実在するかのように人物を設定するため、実在する人物(既存顧客の担当者)に直接話を聞いて、情報を集めると、具体性と信憑性が高くなり、精度の高いペルソナが作成できる。

普段の業務内容、課題、これからやりたいこと、主な情報収集方法など、聞けることはたくさんあるので、ヒヤリングできる関係性が構築できている場合は、ペルソナ作成の前にヒヤリングをしておこう。

アンケート調査

ヒヤリング調査が難しい場合はアンケート調査も効果的である。アンケートフォームをWEB上に作り、そこで普段の業務内容、課題、これからやりたいこと、主な情報収集方法などを調査する。ヒヤリング同様、具体性・信憑性のあるデータが収集できるため、アンケート調査はぜひ実施することをお勧めする。

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ペルソナマーケティングの注意点

ペルソナマーケティングを実施する際は、以下の3点に注意する必要がある。

  1. 自社起点で都合の良いペルソナを作成しない
  2. データに基づいて作成する
  3. 少数の意見を強く反映させない

自社目線で都合の良いペルソナを作成したり、少数の意見を強く反映させたりすると、実際の顧客像からかけ離れたペルソナを作成してしまう。そのようなペルソナをもとにマーケティング施策を実施しても効果は見込めないため、なるべくデータに基づいてペルソナを作成しよう。

自社起点で都合の良いペルソナを作成しない

ペルソナマーケティングを実施する際、自社の製品・サービスに都合の良いペルソナを作成することは避けるべきだ。都合の良いペルソナは、自社にとって「こういう人がいてほしい」といった願望が含まれることとなる。極論ではあるが、「自社製品は課題Aを解決できるので、課題Aを持つ人をペルソナにしよう」という具合だ。そのため、ペルソナが実際のターゲット像と乖離し、真の顧客ニーズを見落とす可能性がある。

ペルソナを作成する過程では、詳細を作りこむあまり「こういう人なら都合が良い」と気付かぬうちに考えてしまうことが少なくない。ペルソナは、あくまで顧客のニーズから想像を広げていかなければならない。

製品・サービスから逆算したペルソナを使用すると、自社の製品・サービスが顧客にとって本当に価値のあるものか評価できず、結果的に受注に至らないという事態を招きかねない。そのため、顧客はこうあるべきという先入観は捨てる必要がある。

データに基づいて作成する

ペルソナマーケティングにおいて、データに基づいてペルソナを作成することは非常に重要だ。主観や推測だけではなく、実際の顧客データや意見などを根拠として、信頼性の高い顧客像を作成すべきである。

データに基づかないペルソナを作成すると、実際の顧客像と乖離したターゲット像を作成してしまう。自社起点で都合の良いペルソナを作成してしまう可能性も高めやすい。

先述した通り、下記の4つのデータを中心にペルソナ作成を進めよう。

  1. 自社の顧客データ
  2. カスタマーサポートの対応履歴
  3. 既存顧客の担当者へのヒアリング
  4. アンケート調査

少数の意見を強く反映させない

ペルソナマーケティングを実施する際、組織内で権力を持つ個人の意見をペルソナに強く反映させてはいけない。少数の意見を強く反映させると、仮にその者の仮説が大きく乖離していた場合に収集がつけづらくなるだろう。

もちろん、根拠や意見があって声が大きくなっていることもあるだろう。しかし、ある意見の声が大きいからといって、他のどんな意見もふさぐ必要はない。ペルソナは、議論の余地が多いほど最終的には全員が納得できるものに仕上がるためだ。

直接コミュニケーションをとっている分、むしろ現場の人間の方が顧客について理解している場合も多いだろう。営業戦略を立てる人間と、より顧客に近い立場で業務している人間でディスカッションできることが理想だ。

まとめ

ペルソナを設定すると、顧客像を組織内で共通・統一できる。また、顧客ニーズを明確にできるため、顧客に強く訴求できる製品・サービスがどのようなものかわかる。

自社起点で都合の良いペルソナを作成したり、少数の意見を強く反映させたりすると、実際のターゲット像からかけ離れたペルソナを作成してしまい、ペルソナを作成した意味はなくなる。そのため、顧客データやカスタマーサポートの対応履歴などの情報を収集し、データに基づいてペルソナを設定することが重要だ。

本コラムで紹介したBtoBマーケティング向けのペルソナシートのサンプルを参考に、御社のペルソナを作成し、ペルソナマーケティングを進めていただけたらと思う。

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BtoBマーケティングの基礎コラム


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ABOUTこの記事をかいた人

株式会社ALUHA代表取締役。1979年兵庫生まれのBtoBマーケティングコンサルタント。金沢工業大学大学院にて情報工学を専攻し2003年4月にALUHAを創業。2008年からBtoBに特化したマーケティング支援、営業戦略支援を開始。BtoBマーケティングや営業戦略の戦略立案から、計画実行とPDCA、そして人材育成を伴走型で支援。デジタルとリアルを融合させた戦略設計が得意。毎月全国各地の様々な企業でBtoBマーケティングセミナーを実施中。100社以上でのセミナー講演実績を持つ。大手IT企業、製造業(日立Gr、富士フイルムGr、キヤノンGr、積水Grなど)を顧客に持つコンサルタント。→セミナー講演実績→コンサル実績