新型コロナウイルス感染症(COVID-19)が発生し、世界中に大きな影響を与えているのは、いわずもがな、ご承知の通りだ。一刻も早く収束することを心から願い、医療従事者などのエッセンシャルワーカーの皆様に心から感謝したい。
そんな状況下でも、営業戦略やBtoBマーケティングに関わる弊社としては、どのようにして新型コロナウイルスの感染を予防し、エッセンシャルワーカーの皆様に迷惑をかけないようにしながら、営業やマーケティングを活性化させていくべきか?というのは常に考え続けなければならない。
そこで今回のコラムでは、「新しい生活様式」、「アフターコロナ」、「Withコロナ時代」など様々なキーワードが生まれる中、BtoBの営業戦略やマーケティング戦略はどうしていくべきか?を考察したい。その上で今(記事執筆時点2020年5月24日)すべきことは何か?を考えたい。
コロナが与えた営業戦略やマーケティング戦略への影響
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)は、世界中の経済や文化に大きな影響を与えている。その影響は計り知れないものがあるが、BtoBの営業戦略やマーケティング戦略に絞って考えると、下記の3つの影響が大きいと考えられる。
(1)リアルのセミナー・展示会などのイベントでのリード獲得
(2)訪問営業・対面営業・電話営業でのリード育成や顧客維持
(3)クロージング(受注・成約)
それぞれ、詳しく考察してみよう。
(1)リアルのセミナー・展示会などのイベントでのリード獲得
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)により、ご承知の通り、様々なイベントが中止・延期となっている。そのため、BtoBのリードジェネレーションの主力的な営業手法であった、セミナーや展示会もその影響を受けており、弊社の知る限りではほとんど中止か延期となっている。その結果、リードジェネレーション(新規の見込み獲得)ができなくなっている。
(2)訪問営業・対面営業・電話営業でのリード育成や顧客維持
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)により、「新しい生活様式」が政府から打ち出されている。詳細は政府Webサイトを確認していただければと思うが、三密の防止、ソーシャルディスタンス、テレワーク、ローテーション勤務といった、働き方に関する提案も含まれている。
その結果、訪問営業お断り、対面営業お断りといったことが発生する(している)。例えば、弊社のお客様から聞いた話では、「訪問営業するなら、何かあったときに責任を取るという誓約書を書いて欲しい」といったことを顧客から言われたケースもあるようだ。
さらに、電話営業においては、ローテーション勤務や在宅勤務、テレワークにより、担当者につながらないといったことも発生するだろう。
これにより、せっかく獲得した見込み客を育成し商談・案件を作ろうにも作れないといった事態が発生する。さらに、顧客維持のための訪問もできなくなり、顧客の流出といった事態も発生する。
(3)クロージング(受注・成約)
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)により、経済は大きな打撃を受けている。その結果、投資が抑制され、企業も個人も財布の紐が堅くなっている。
ただでさえ、訪問営業・対面営業・電話営業が難しい状況下で、財布の紐が堅くなるというのは営業から見れば非常に辛い。顧客は、無駄な物は買わない、今買う必要がない物は買わない、、、事業を継続するために必要なものだけ買う、そういう予算の使い方をする傾向が強くなるだろう。
例えば、飲食店では、来店による商売ができなくなったため、事業を継続するためにテイクアウトに切り替えている。その結果、テイクアウト容器の購入が増大している。下記は「テイクアウト容器」のGoogleでの月間検索回数であるが、その伸び率がとんでもないことになっているのがお分かりいただけるだろう。
(Google キーワードプランナーにて調査)
2020年2月までは月間700回から800回くらいの検索回数であったが、3月に2400回、4月はなんと22200回にまで伸びている。30倍にまで膨れ上がっている。事業を継続するためにお金を使うという良い例であろう。
このように、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)により、BtoBの営業手法、マーケティング手法は変わらざるを得ないという状況だ。では、具体的にこの3つの影響に対してどうすべきか、その対応策を検討しよう。具体的にどんな営業手法、マーケティング手法があるのだろうか。
BtoB営業戦略やマーケティングの課題の対応策
新規リード獲得(リードジェネレーション)の対応策
リアルが使えないなら、デジタルで実施という流れになるだろう。そのため、セミナーや展示会は全てオンライン化していく必要がある。オンラインセミナーやバーチャル展示会である。
下記の様に、オンラインセミナーの検索回数はテイクアウト容器と同様の動きをしているため、セミナーのオンライン化を進めている証拠と言えるだろう。
(Google キーワードプランナーにて調査)
また、バーチャル展示会も同様だ。
(Google キーワードプランナーにて調査)
さらに、新規リード獲得(リードジェネレーション)では、自社のWebサイト活用も今後重要性が増大するだろう。製品やサービスの情報収集において訪問による説明ができないため、Webでの情報収集が増加することは想定できる。そのため、自社のWebサイトでの新規リード獲得(リードジェネレーション)は必ず必要になるだろう。
つまり、オンラインセミナー、バーチャル展示会、自社のWebサイト活用の3つがまずは目先の対応策と言える。
リード育成(リードナーチャリング)の対応策
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)により、訪問営業・対面営業・電話営業が難しくなるため、リード育成(リードナーチャリング)が困難になる。その対応策としては、2つあると考えら得る。
1つ目は、打ち合わせのデジタル化である。つまり、オンライン会議(Web会議など)の活用だ。オンライン会議であれば、テレワーク・在宅勤務であっても担当者と打ち合わせが可能だ。Web会議システムの検索回数も下記の様に増加しているため、企業が導入検討しようとしている証拠と言える。
(Google キーワードプランナーにて調査)
こういったツールを活用すれば、訪問回数を削減でき、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に効果的と言える。
もう1つは、訪問・対面営業のポリシー策定であろう。BtoBの場合、どうしても訪問して対面しないと説明できないといった商材(実物を見ないと判断できないケースなど)がある。そういった際に、リードや顧客が安心して御社の担当者を受け入れられるように訪問・対面営業のポリシーを策定し、事前に告知しておくのだ。
具体的には、三密を避けるための工夫、説明時間を短縮するための工夫、咳エチケットのような訪問エチケットの策定といったものだろう。そういったポリシーをWebサイトなどで公開しておき、訪問の際には、相手に事前に伝えておくと安心していただける可能性が高いと考えられる。
クロージング(受注)の対応策
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)により、投資に対する意識が低下し、企業も個人も財布の紐が堅い。そのため、いくら新規リード獲得(リードジェネレーション)とリード育成(リードナーチャリング)を実施できても、最後の「売上」の部分でつまずいてしまう。しかし、物やサービスを「いつ買うか?」を決める権利は「リードや顧客」にあるため、絶対に売れる方法など存在しない。
しかし、それでも、対応策として今からでもやれることが2つある。
1つは、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)が落ち着き、通常に戻った時の対策として、上述した「新規リード獲得(リードジェネレーション)の対応策」や「リード育成(リードナーチャリング)の対応策」をしっかりやっておくことだ。新型コロナウイルス感染症(COVID-19)次第であるが、中長期的な対応策として必須であろう。
そして、もう1つは、短期的な対応策として、自社製品・サービスの「事業継続に必要なもの化」だ。上述した様に、コロナ禍でも「テイクアウト容器」「Web会議システム」といった製品・サービスは売れている。その共通点は、「事業継続に必要なもの」だ。
そう考えれば、自社製品・サービスの「事業継続に必要なもの化」が実現できれば、「テイクアウト容器」「Web会議システム」のように、御社の製品の価値があがり、コロナ禍でも売れる可能性が高くなる。
しかし、「事業継続に必要なもの化」は非常に難しい。
御社のお客様が、事業を継続するためにどんな課題があり、その課題を解決するために自社の製品やサービスがどう役立つのか?を明確にする必要がある。課題調査から解決方法の具体化、そこからの営業手法への落とし込みが必要になるため、短期的な対応策とはいうものの、結局時間がかる可能性もあるだろう。過去のしがらみをすっ飛ばすような、新しい価値観で「事業継続に必要なもの化」を進めなければならないだろう。
ただ、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)が長期化するのであれば、今すぐにでも、「事業継続に必要なもの化」を検討しなければならないことは明確である。
何から始めるべきか?
対応策をまとめると下記の3つになる。
(1)新規リード獲得(リードジェネレーション)
・セミナー・展示会のオンライン化
・自社Webサイトの活用強化
(2)リード育成(リードナーチャリング)や顧客維持
・Web会議などのオンライン会議の活用
・訪問営業・訪問打ち合わせのポリシー策定
(3)クロージング(受注・成約)
・事業継続に必要なもの化(長期化にそなえて・・)
この3つを俯瞰すると、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)が長期化するかどうかで大きく影響されそうであるが、長期化するしないにかかわらず、絶対すべきなのは、(1)と(2)であろう。新しい生活様式、アフターコロナという時代において、対応しておかなければならないことだ。
問題は「事業継続に必要なもの化」だ。新型コロナウイルス感染症(COVID-19)が長期化する可能性が高いのであれば、その重要性はますます高くなっていく。短期的に収束するのであれば、徐々に元に戻るため、考える必要はないかもしれない。
判断が難しいが、いつ収束するか明確になるまでは考えておいた方がよいのではないだろうか。であるならば、(1)(2)をやりながら、(3)を並行して考えるというプロセスが理想的ではないだろうか?あなたは、御社の場合はどうだろうか?