BtoBマーケティング施策を展開するには、ニーズ分析、コンテンツ作成、メール配信などを行うマーケティングツールの導入は必須である。しかし、マーケティングツールの導入には費用もかかる上に、活用方法の習得などさまざまな壁があることも事実である。特にBtoBマーケティングにおいては、特殊な市場であるケースが多いため、マーケティングツールの選定や導入は非常に慎重に行わなければならない。
実際に弊社にも下記のようなご相談をいただいている。
そこで、今回のコラムでは、こういったBtoB企業のために、マーケティングツールの選び方・導入検討の方法について解説する。
マーケティングツールの種類
マーケティングツールには、さまざまな種類のツールがある。例えば、顧客ニーズを分析するテキストマイニングツールや、ニーズ調査を行うアンケートツール、リード育成を行うMAツールなどだ。こういったツールを大別すると、下記のようなツールに分けることができる。
- WEBマーケティングツール
- メールマーケティングツール
- 営業支援・顧客管理のマーケティングツール
- データ分析マーケティングツール
それぞれどのようなツールなのか解説しよう。
WEBマーケティングツール
WEBマーケティングツールとは、WEBマーケティング活動の生産性や効果を高めるためのツールのことだ。主に下記のようなツールがある。
CMS(コンテンツマネジメントシステム)ツール | CMS(コンテンツマネジメントシステム)ツールとは、自社のWEBサイトのコンテンツを作成・管理するためのツール。WEBページ制作だけでなく、LP作成やフォーム作成なども可能。 |
SEO対策ツール | SEO対策ツールとは、SEO対策のキーワード選定やコンテンツ設計、分析、コンテンツ改善を行うためのツール。 |
キーワード分析ツール(検索意図分析ツール) | キーワード分析ツール(検索意図分析ツール)とは、ある特定のキーワードの検索ニーズや検索意図を分析するツール。サジェストワードの取得や検索回数の調査、共起語の調査などが可能。 |
競合サイト分析ツール | 競合サイト分析ツールとは、自社の競合企業のWEBコンテンツを分析するツール。どのようなSEO対策をおこなっているのか?などを解析可能。 |
アクセス解析ツール | アクセス解析ツールとは、その名の通り、自社サイトのアクセス数を分析するツール。Googleアナリティクスなどが有名。 |
メールマーケティングツール
メールマーケティングツールとは、メールの一斉配信やステップメール・シナリオメールの配信を行うツールのことだ。主に下記のようなツールがある。
MA(マーケティングオートメーション)ツール | MA(マーケティングオートメーション)ツールとは、リードナーチャリング(見込み客の育成)と、リードクオリフィケーション(購買意識・確度の高いリードの選別・抽出)の業務を効率化することを主軸においたITツール。詳細は「マーケティングオートメーションとは?」を参照 |
メルマガ配信ツール | メルマガ配信ツールとは、見込み客に一斉にメールを配信するためのツール。見込み客の管理、メール配信、開封率やクリック率の確認などが可能。ステップメール(フォローアップメール)の配信・設定も可能。 |
営業支援・顧客管理のマーケティングツール
営業支援・顧客管理のマーケティングツールとは、営業部門の活動(商談や顧客管理)を支援するマーケティングツールのことだ。主に下記のようなツールがある。
SFAツール | SFAツールとは、営業支援システム・商談管理システムのこと。営業部門の商談状況や営業日報を管理できる。 |
CRMツール | CRMツールとは、顧客関係管理システムのこと。既存顧客のデータを管理し、優良顧客化するためのさまざまな営業活動を支援するツール。 |
PRMツール | PRMツールとは、パートナーリレーションシップマネジメントを支援するツールのこと。自社製品の販売パートナーの販売力を強化するために活用する。リードの管理や営業ツールの管理などが可能。 |
名刺管理ツール | 名刺管理ツールとは、さまざまな営業活動で獲得した名刺を一元管理できるツール。 |
セミナー管理ツール(イベント管理ツール) | セミナー管理ツールとは、オンラインセミナーやリアルセミナーの申し込みフォーム作成や申込者の管理などを行うツール。 |
オンライン商談ツール | オンライン商談ツールとは、WEB会議システムの一種で、オンライン商談に特化した機能が付与されたツール。 |
データ分析マーケティングツール
データ分析マーケティングツールとは、顧客やリードのニーズデータを定量的・定性的に分析するためのツールだ。主に下記のようなツールがある。
アンケートツール | アンケートツールとは、アンケートフォームを作成し、データの集計を支援してくれるツール。 |
テキストマイニングツール | テキストマイニングツールとは、顧客やリードのアンケート回答(フリー記入のデータ)を定量的に分析できるツール。テキストマイニングを支援するツール。 |
マーケティングツール導入の3つの悩みどころ
このようにBtoBマーケティングの活動を支援するマーケティングツールは無数に存在する。だからこそ、何から導入した方がいいのか?悩むことになる。そして特に悩むポイントとしては下記の3つであろう。
- どのツールから入れるか?
- 本当に導入すべきタイミングなのか?「ツールが先か、プロセスが先か」
- 事業部別か全社か
どのツールから入れるか?
1つ目は、「どのツールから入れるか?」だ。BtoBでも最近ではMAやSFAといったツールの導入が盛んであるが、導入しても使いこなせるのか?そもそもなんで導入するのか?など、どのツールから導入すればいいのか?の判断ができず悩むことになる。
このツールから導入すべきといったようなBtoB業界標準の導入プロセスがあるわけでもないため、自社の社内状況を的確に分析できなければ、ツールを導入することがゴールとなってしまい、導入後、誰も使いこなせないといったようなことになる。
導入タイミングで悩む「ツールが先か、プロセスが先か」
2つ目は、導入タイミングの見極めだ。「ツールが先か、プロセスが先か」で悩む。
「ツールが先」とは、とりあえずツールを先に導入するという考え方だ。まずは導入し使ってみるというイメージである。
ツールがあるので、そのツールを使っていろんなマーケティング施策を試行錯誤できる。そして試行錯誤の結果はノウハウとなって蓄積され、マーケティングプロセスとして完成していく。これができれば理想的である。しかし、「ツールを使いこなし効果に繋げられるか?」がポイントで、もしできなければツールは埃をかぶることになる。「ツール導入=効果向上」ではないため、使いこなせるかどうか?がポイントになるだろう。
「プロセスが先」とは、自社のマーケティングプロセスを構築し、その上でプロセスの生産性を高めるためにツールを導入する。
ツール導入は後で検討し、まずは自分たちでマーケティング施策を展開する。ツールを使わないため生産性は悪くなるが、そのかわりマーケティング現場の泥臭い業務を体験でき、マーケティングノウハウが蓄積できる。
そしてマーケティングノウハウが蓄積された段階で、自社のプロセスに最適なツールを選定し導入する。こうすれば、ツール導入により、マーケティング活動の生産性が大きく向上し、より革新的な業務に集中することができる。
しかし、「まずは自分たちでマーケティング施策を展開する」ため、マーケティングに精通した人材がおり効果の出るプロセスを作り出していくことが実現できなければならない。闇雲にいろんな施策を打つのではなく、ある程度マーケティングに精通した人材が主導権を持ってプロセスを作り出していけるかどうか?が成功・失敗の分岐点になるだろう。
「事業部別か全社か」で悩む
これも非常に悩ましいポイントだ。社内に複数の事業が存在する場合、事業部ごとにマーケティングプロセスが異なることがある。その場合、全社統一のツールを導入すると、使いやすい事業部と使いにくい事業部が出てくる可能性がある。かといって事業部ごとにツール導入を進めると無数のツールが散在することになる。
全社統一にする場合は、全事業のマーケティングプロセスを理解し、高額でも1つのツールで対応できるかどうか?を見極めることが重要だ。イコール、そういった見極めができる人間が社内にいなければだめだということである。
事業部ごとにする場合は、各事業部が自事業のマーケティングプロセスを理解し、最小限の機能のツールを導入することが重要になるだろう。もし同じツールを活用できると言った事業があれば、複数の事業で1つのツールを共有で使うなどの工夫も検討すべきである。
マーケティングツール導入のポイント
このようにツール導入には悩みどころが多く存在する。ではどういった視点で導入を検討すれば良いだろうか?そのポイントを解説する。
マーケティングプロセスの完成度により導入の仕方を変える
BtoBマーケティングではさまざまなマーケティング施策・活動が展開される。そういった活動において、「効果につながっている活動」と「そうでない活動」にわけて、ツールの導入方法を変えるのである。
例えば、弊社では、BtoBマーケティングを下記の8つの活動に分解し、BtoBマーケティングサイクルとして定義している。
このようにBtoBマーケティングの活動を分類した時、あなたの会社で現在「効果につながっている活動」と「効果につながっていない活動(全くできていない活動)」があるだろう。まずはこの2つに分類してほしい。
その上で、「効果につながっている活動」はそのプロセスは正解であるため、生産性を高めるためのツールを探し、導入すると良い。つまり「プロセスが先」のパターンで導入するのだ。こうすれば「効果につながっている活動」の生産性を高めることができ、より大きな効果が出るようになる。
逆に「効果につながっていない活動(全くできていない活動)」はまだプロセスが確立していないため、「ツールが先」のパターンで導入するのだ。
ツールが先になると、ツールのメーカーからも色々情報が仕入れられる。そのため、自社の事業に近い導入の成功事例を聞き出し、ノウハウとして蓄積していけば、「効果につながっていない活動(全くできていない活動)」も徐々にできるようになる可能性がある。加えて、仮に失敗しても元々弱い部分であるため、効果が下がることはない。
このような導入の仕方でツール導入を検討すると後悔する可能性は低くなるのではないだろうか?
導入後、効果が出るまで時間のかかるツールから先に入れる
次に、「ツールが先」のパターンで導入すると、「効果が出るまで時間がかかる」というデメリットを抱えることになる。しかし、逆を言えば、「早めに導入しておけばよい」と言い換えることもできる。そのため、「ツールが先」のパターンで導入するツールから順次導入していく方が効率的である。
クロスセルができるなら「共通化」する
最後に、「事業部別か全社か」であるが、判断基準はクロスセルができるかどうか?が1つの基準となるだろう。
社内の全事業において各事業の顧客に対してクロスセルができるのであれば、全社共通のマーケティングツールの方がよいだろう。LTVを高くすることができる可能性があるからだ。
逆に、クロスセルができないのであれば、事業部ごとにマーケティングツールを導入する方がいい可能性がある。業界特性・顧客特性が異なるため、同じマーケティングツールを使うというのは、難しい可能性がある。ツールの機能にもよるが、事業部ごとで見極めていく必要があるだろう。
マーケティングツール導入の仕方まとめ
以上、BtoB業界のマーケティングツール導入の仕方や導入時の検討ポイントを解説した。あくまで弊社の考察であるため、各社事情も異なるため一概にあてはまるとも言い難いが、1つの参考にしていただけたら幸いである。
少なくとも、マーケティングツールは導入することがゴールではなく、導入したからといって必ず効果が出るというわけでもない。どう使いこなして効果に繋げていくか?が重要である。これはどのような事業でも共有のポイントと言える。