BtoBの営業戦略においてソリューション提案が重要なことは言うまでもない。
ソリューション提案とは、「顧客の課題を解決する方法」を提案することで自社製品を売り込むという営業手法である。ソリューション提案において、顧客が購入しているのは、「自社の課題の解決方法」であって、製品は「その手段」でしかない。これがソリューション提案の基本的な考え方である。
このソリューション提案を行うには、「顧客の課題」を知る必要があるが、「顧客の課題」は顧客それぞれによって異なるため、なかなかつかみにくい。あなたもソリューション提案したいと思っていても、課題がわからないから効果的にできないといった悩みがあるのではないだろうか?この「顧客の課題をつかむ」ことが、ソリューション提案営業では大きな課題になる。
そこで、このコラムでは、IT関連製品のソリューション提案を例にして、「顧客の課題」について深く考えてみたい。漠然としている「顧客の課題」をどのようにして掴むのかをご紹介する。そしてそこからどのようなソリューション提案をすべきか?を具体的にご紹介しよう。
もしあなたがソリューション提案をしたいのであれば、まずは顧客の課題とはなんぞや?を理解してから、ソリューション提案の方法を考えてみよう。その方が効果的なソリューション提案を軸にした営業戦略を立案することができるだろう。
グループウェアを題材に顧客の課題の掴み方を考える
「顧客の課題の掴み方」を、わかりやすくご紹介するために、グループウェアを例にする。
グループウェアとは、企業が社員の「情報共有を効率化する」ために導入するソフトウェアの1つで、無料のものから高額なものまで様々な製品が存在する。このグループウェアを例にして、顧客の課題をどのように掴むのか、ご紹介しよう。
課題を4つに分類して顧客の課題をつかむ
まず、顧客の課題をどのように掴むか?であるが、グループウェアに限らず、上述したように顧客の課題は様々で掴みづらい。既存顧客などであれば、ヒヤリングすることで掴むことができるが、新規見込み客は対面すらしていないので、掴みにくいのである。
そこで、まずできることは、「課題を分類する」ことだ。
課題を分類することで、顧客の課題のわけて考えることができるようになる。その結果、自社が売り込みをしたい顧客のイメージがつきやすく、さらにはどのようなソリューション提案をすべきかも考えやすくなる。
では、どのように顧客の課題を分類するのかというと、顧客の課題を2つの軸で分類する「4象限マトリクス」を作ると良い。例えば下記のような4象限をつくり課題を分類する。
上記の場合、横軸は「状況軸」で、「運用」と「乗換」の2つに分類している。縦軸は、「製品軸」で「競合製品」と「代替手段」の2つに分類している。
「状況軸」は顧客の今の状況を分類しており、「運用」は何らかの方法で社内の情報共有の仕組みが運用されている状況を意味する。当然、このような顧客が最も多い。「乗換」は今の情報共有の仕組みに不満があり、他の方法を探して切り替え・乗り換えを検討している状況を意味する。
「製品軸」は顧客が今使っている情報共有の製品・手段を分類しており、「競合製品」は自社で扱うグループウェア以外の他社製品を使っていることを意味し、「代替手段」はグループウェアは導入されておらず、他の方法(例えば社内報を印刷するなど)で情報共有していることを意味する。
このように4象限マトリクスの軸を定義した場合、顧客の課題は4つに分類できる。この分類した課題ごとにどのようなソリューション提案をすべきか?を考えるのである。当然、どこを狙うか(ターゲティング)も必要になる。
余談であるが、軸の設定は御社の業界特性や製品特性、顧客特性などに合わせて、定義すると良い。重要なのは顧客の課題という漠然とした情報を、分類して考えて整理することで、ソリューション提案の確度を高めていくことだ。そしてその上で効果的な営業戦略を具体化していくことが重要なのである。
それでは、分類した4つの顧客課題についてそれぞれどのようなソリューション提案をしていくべきか、考えてみよう。
顧客課題1「競合製品の運用課題」
この課題を持つ顧客の状況
この分類に属する顧客は、すでにどこかの競合製品を導入済みで今運用中の顧客となる。すでにある程度競合製品の操作性やUIなどにもなれ、会社としてもそのグループウェアがないと事業継続できないというようなレベルに達している可能性もある。
顧客の課題の概要
顧客は上記のような状況であるため、なかなかソリューション提案はしにくい。しかし、何もできないというわけではない。なぜなら、運用中である以上、「運用課題」が必ず発生するからだ。運用課題は、支店支社の増減、新規事業の開始など、時間と共に変化していく傾向が強いため、その運用課題に対する解決方法の提案ができれば、チャンスを作り出せる可能性がある。
どのようなソリューション提案をすべきか
この顧客には、今運用中のグループウェアに対する不満・課題を知り、その上で自社製品での解決方法を提案すべきである。よって、このソリューション提案による営業戦略で重要なのは、「時間と共に変化する顧客の運用課題の調査」となる。これができなければ、ソリューション提案のチャンスは作り出せない。いきなりソリューション提案をするのではなく、まずは定期的な運用課題の調査が必要なのである。
顧客課題2「競合製品からの乗換課題」
この課題を持つ顧客の状況
この分類に属する顧客は、すでにどこかの競合製品を導入済みで、今まで運用してきたが、何らかの理由で乗換を検討している顧客となる。今まで使っていたグループウェアが何らかの理由により使えなくなったので、その何らかの理由を解決することが重要になる。
顧客の課題の概要
顧客は上記のような状況であるため、競合製品との比較検討をしている可能性が強い。その比較検討の基準は、上述の何らかの理由である。そのため、何らかの理由を聞き出すことがソリューション提案の第一歩になる。
どのようなソリューション提案をすべきか
上述の乗換をする何らかの理由を知ることが重要であるが、競合他社との比較検討に勝つには、それだけではソリューション提案力が弱い。なぜなら、比較検討されている競合他社にも、当然何らかの理由を顧客は伝えるだろうし、競合他社もそれを知った上で提案してくる。そうなると、「何らかの理由を解決できることは当たり前」になるのだ。そのため、下記のような差別化が必要になる。
(1)解決する方法で差別化
解決できることは当たり前なので、その解決方法(プロセス)で差別化する。
(2)付加価値をつける
解決できるだけでなく、さらにこういう課題も解決できるというような付加価値をつける。たとえば、何らかの理由が「部門の増加によってグループウェアを切り替える」という内容であれば、付加価値としては、「部門だけでなく支店が増えても大丈夫。さらに支店は海外でも大丈夫」というように、価値を高めていくのである。
どちらも、解決できることは当たり前という前提の上で、さらにプラスアルファの提案をしている。これがこの顧客には重要になる。
顧客課題3「代替手段の運用課題」
この課題を持つ顧客の状況
この分類に属する顧客は、グループウェアのシステムは使っておらず、何か他の方法で社内の情報共有を行っている顧客である。印刷した社内報、社内掲示板、定期的な会議など、アナログ的な手法を使って情報共有している。
顧客の課題の概要
この顧客の課題は、大きく分けて2つある。1つは、「アナログ的な情報共有の効率化」である。たとえば、エクセルで何かの資料を作りそれを印刷して配っているような場合、「エクセルで綺麗に資料を作る」こと自体が課題になるのだ。つまり、エクセルを活用して情報共有をしているなら、「エクセルの効果的な使い方」が課題になる。
もう1つは、「アナログ的な情報共有そのものの課題」である。いくらエクセルを効率よく活用できても、生産性の向上や情報共有の効率化には限界がある。これについては、顧客自体が気がついていないという可能性もあるので、課題そのものに気がつかせるということも重要となる。
どのようなソリューション提案をすべきか
上述したように2つの課題があるのでそれぞれでソリューション提案が違う。
1つ目の「アナログ的な情報共有の効率化」の場合は、例えばエクセルの業務効率化がソリューション提案になるため、「エクセルで社内報を作るときのエクセルテンプレート」のようなものを提案し、無料で差し上げるくらいのイメージで良いだろう。無料で差し上げることで、名刺交換のきっかけになり、リード獲得にもつながる。
2つ目の「アナログ的な情報共有そのものの課題」の場合は、「グループウェアだから解決できる情報共有の課題」を顧客に伝えることが重要だ。今のアナログ的な状況では生産性や情報共有の効率化の向上には限界があることを伝え、グループウェアの導入を提案するのである。
顧客課題4「代替手段からの乗換課題」
この課題を持つ顧客の状況
この分類に属する顧客は、顧客課題3の顧客同様、グループウェアのシステムは使っておらず、何か他の方法で社内の情報共有を行っている顧客である。しかし、そのアナログ的な方法に限界を感じ、グループウェアの導入を検討している顧客となる。
顧客の課題の概要
顧客は上記のような状況であるため、競合製品との比較検討をしている可能性が強い。その比較検討の基準は、今の代替手段からスムーズに移行できるかどうか?や全従業員が使いこなせるかどうかなどであろう(著者の想像の範囲なので間違っている可能性も高い)。
つまり、コスト面だけでなく、人材の育成や活用面なども関わってくる。
どのようなソリューション提案をすべきか
この顧客に対するソリューション提案では、まずは今の代替手段の業務の流れを知り、そこからスムーズに移行できるようなプロセスを提案するのが良い。
ただ、顧客課題2と同様に、比較検討している可能性もあるため、競合他社も、当然のように、スムーズな移行プロセスは提案してくる。そのため、顧客課題2でも示した、下記の2つの差別化が重要になるだろう。
(1)解決する方法で差別化
(2)付加価値をつける
4つの顧客課題は軸次第
ITソリューションのグループウェアを例にソリューション提案における顧客課題を4つに分類してどのようなソリューション提案をすべきか?をご紹介したが、この4つの分類は軸次第でいろいろ分類できる。
加えてどこの顧客を狙うか?などのターゲティングも重要で、それ次第ではソリューション提案の営業資料も変わってくる。たとえば、展示会などえあれば、「乗換」よりの見込み客と名刺交換できる可能性は高いし、WEB活用であれば、キーワード次第で「運用」でも「乗換」でもどちらでも見込み獲得できる。
重要なのは軸の定義による分類と営業現場に合わせたターゲティング、そしてそれに対応したソリューション提案である。これができなければ、効果的なソリューション提案とは言えないだろう。
御社の場合、どのような分類ができそうか、まずは考えてみてはいかがだろうか?
ITソリューションの課題から製品を探すページ
最後に、ITソリューションを販売する企業のWEBには、見込み獲得の施策の1つとして、「課題から製品を探す」というようなページが存在する。今回のコラムは、このページをどう作るべきか?という意味では非常に良いヒントになるだろう。
また、本コラムに関連する内容として、下記のようなノウハウレポートを無料でプレゼントしている。ITソリューションの営業やマーケティングに関わる方であれば、無料で差し上げるので、ぜひお申し込みいただければ幸いだ。