インサイドセールスの営業戦略「展示会で獲得した見込み客のリードナーチャリング3つの手順」

ソリューション提案を軸にしたリードナーチャリングの営業戦略
Last Updated on 2024年9月7日 by 荻野永策

BtoBマーケティング営業戦略において、展示会はリード(見込み客)を獲得する手段の1つとして非常に重要である。日本全国で数多くの専門性の高い展示会が開催され、おそらくはほぼ毎月のようにあると言ってもよいだろう。

そんなBtoBの営業戦略で重要な展示会の目的は「商談を作り出すこと」であり、最終的には「新規顧客の開拓」や「販路開拓・販路作り」が大きな目的となる。しかし、展示会といえども、すぐに自社製品が売れるということはほとんどない。その結果、下記のような営業課題が発生する。

展示会後のフォロー営業でよく発生する3つの課題

(1)アポが取れない

1つ目はアポが取れないである。展示会場で名刺交換した見込み客に対し、メールや電話でアポイントを取ろうとするが、返事がない、連絡が取れないなどの理由でアポがとれないのである。

(2)商談ができない・進まない

2つ目は、アポがとれて対面できても、「検討しますで終わる」である。検討状態からなかなか進まず、検討状況の確認をするも、結果どうにもできなくなり、最終的には放置状態になる。

(3)成約にならない

3つ目は、成約できないである。要するに競合他社に負けてしまったというようなケースだ。これは商品力の差も当然あるが、クロージングの仕方に問題があるケースもある。提案の内容や仕方が悪いという具合だ。

このような3つの課題が発生してしまうと、どうにも商談を進めることができなくなり、成約に至らない。成約に至らなければ、当然展示会としての効果も低くなる。

そこで、今回のコラムでは、この3つの課題を解決する展示会後のフォロー営業に焦点をあて、 インサイドセールスの営業戦略についてご紹介したい。展示会で獲得した見込み客のリードナーチャリングにおける効果的な3つの手順についてご紹介するので、御社の課題解決にぜひ役立ててほしい。

ただし、これらの課題を100%解決できるというような方法論ではなく、あくまで解決のヒントになる方法論である。解決できる可能性を少しでも高めている方法論なので、こういうやり方でもやってみるかというイメージで、参考にしていただければ幸いだ。

展示会で獲得した見込み客へのフォロー営業で重要なこと

3つの手順をご紹介する前に、展示会で獲得した見込み客へのフォロー営業で最も重要なポイントをご紹介しておく。それは2つある。

1つ目は、見込み客の展示会場への来場目的を知ることだ。下記のリンクはすべて、このコラムを執筆している2016年4月26日時点でネットで調査した展示会場への来場目的の調査結果である。

http://www.jasa.or.jp/etwest/2012/archive/guest.html#q6
http://eco-pro.com/eco2015/result/survey1.html
http://www.logistics.or.jp/lsf/r-ankert.html
http://www.jecafair.jp/2016/exhibit/enquete.html
http://www.kyushu-tf.com/repo_question.html

この調査結果からもわかるように、来場者の来場目的で最も多いのは、製品調査などを含めた情報収集である。情報を収集しに来ている見込み客に対して、売り込みをするのはタイミング的に時期尚早。まだ買うかどうかも決めていないのに見積もりしましょうか、提案しましょうかなどはナンセンスである。

そのため、売り込むよりも先に、「情報収集している理由」を知ることの方が重要である。

2つ目は、買うと決めている人がいたとしても、その顧客から見れば、御社から買う理由はない。ただ、どこから買うのか?を検討するための検討先リストを作っている可能性は十分にある。そう考えると、売り込むのではなく、「どういう基準で検討先リストを作り、どういう基準で選定するのか?」をある程度つかむことが重要である。

これらの2つのことをしっかりと掴みながら、製品・商品提案を行い、クロージングの確度を高めていこう。

展示会で獲得した見込み客のリードナーチャリング3つの手順

それでは、上記の重要な2つのことをふまえて、展示会で獲得した見込み客のリードナーチャリング3つの手順についてご紹介しよう。

その手順は下記の通りである。

(1)展示会場でどのような情報を知りたかったかを聞く(リサーチ)
(2)なぜそのような情報が欲しいのかを聞く(リサーチ)
(3)課題の解決方法を提案してアポイントをとり商談化する(ソリューション提案)

それでは各手順について詳しくご紹介しよう。

(1)展示会場でどのような情報を知りたかったかを聞く(リサーチ)

最初の手順は、展示会場でどのような情報を知りたかったかを聞く「リサーチ」である。

リサーチの対象となる見込み客は、展示会場で名刺交換などを行った見込み客の中で、「すぐに商談したい」「見積もりが欲しい」というような見込み客を除いたすべての見込み客である。

何を聞き出すかというと、「展示会場でどのような情報が知りたかったのか?」「展示会に来られて必要な情報収集はできたかどうか?」である。

そしてこれらを聞き出すために、「自社の製品に限らず、私(弊社)が持っている情報は最大限にご提供したいので教えて欲しい」と連絡しよう。この「私(弊社)が持っている情報は最大限に提供したいので教えてほしい」が聞き出す時の秘訣である。

要するに、売り込みではなく、相手(見込み客)がちゃんと展示会で情報収集できたかどうか?を確認しつつ、自分が持っている情報はたくさんあるから、知りたいことがあるなら教えて欲しいと連絡するのである。

このような内容で、メールもしくは電話すると、見込み客は「こういう機能がほしいんだけど・・・」や「このくらいの納期でできるか知りたい」「こういう事例があったら知りたい」など、様々な「知りたかったこと」を伝えてくれるだろう。

100%確実に聞き出せる方法など存在しないため、100%を求めることはできないが、何か色々教えてくれるかも?という期待感があるため、答えてくれる可能性は高くなる。

(2)なぜそのような情報が欲しいのかを聞く(リサーチ)

手順(1)で「展示会場でどのような情報が知りたかったのか?」を知ることができたら、その情報を提供する準備をしながら、さらに追加で質問をする。その内容が「そもそもなぜそのような情報が必要なんですか?」である。

機能面、納期面など製品・サービスの情報を収集しているのには何かしらの理由があるはずだ。その理由には、見込み客が抱えている課題が含まれている可能性が高く、その課題を知ることがこの手順の目的である。

見込み客の課題を知ることができれば、展示会への来場理由や検討先リストからどのような基準で選ぶのか?などを知ることにもつながるため、この手順2で得られる情報は、クロージングに向けて非常に重要な情報となる。

そのため、手順2では、「なぜそのような情報が欲しいのか」を確認し聞き出そう。当然、手順1で言われた情報は提供しつつ聞き出すようにしよう。さらに、この段階では、すでにメールや電話でやりとりを継続しているため、返事がこないということはほとんどないだろう。そのため、聴き出しやすい状況も作れていると考えてよい。

(3)課題の解決方法を提案してアポイントをとり商談化する(ソリューション提案)

手順(2)で「なぜそのような情報が欲しいのか」を聞き出せたら、その中身に見込み客の課題がある(可能性が高い)ので、その課題を自社製品で解決する手順や自社製品だから解決できる理由を見つけ出そう。

例えば、下記のようなイメージだ。

「当社の製品には他社にはないこういう特徴があるから解決できる」
「当社には納入後こういうアフターサービスがあるから解決できる」

こうすることで、見込み客の抱えている課題に対して、自社だから解決できることを的確に伝えることができ、商談化しやすくなる。

課題もわからず、製品の特徴を手当たり次第伝えるよりも、効率的な方法である。というより、見込み客は自分の課題を解決すること、自分の要求を満たすことが目的であるため、的確な提案をもらう方が選定しやすいのは当然の話である。

リードナーチャリング3つの手順の良い点・悪い点

以上、展示会で獲得した見込み客のリードナーチャリング3つの手順についてご紹介した。この3つの手順には良い点と悪い点がある。

まず良い点は、下記の2つである。

(1)課題を知った上で製品特性と一緒に解決方法を提案できる
(2)数回程度、メールや電話でやり取りができるので信頼関係がある程度構築できる

手順1、2の段階では、聞き手にまわり、見込み客の課題を知ることができる。そのため、電話やメールで何度かやり取りすることになるが、短期間でやりとりを密にすることで、単純接触効果が発生し、信頼関係が深くなる。そのため、親密な相談相手になればなるほど、関係性を深めることができる。その結果アポも取りやすい。

さらに、課題を知った上で提案ができるので提案内容の確度が高くなる。購入先の検討リストにはいる可能性も高くなるだろう。

悪い点は時間がかかることである。営業目線でいえば、すぐにでも売り込みしたいはずだが、手順1、2を踏むことで、時間と手間がかかることになる。このような時間と手間をかけずとも、いきなり提案したら売れる可能性もゼロではないため、無駄な時間と判断されることもあるだろう。

このように考えれば、正誤の問題ではなく、ただの結果論でしかないが、少なくとも、アポが取れない、商談ができない・進まない、成約にならないなどの課題があるならば、こういう方法もあるという1つの選択肢になるはずだ。もし展示会の見込み客に対するリードナーチャリングでお悩みなら、一度試してみてはいかがだろうか?

3つの手順をメールで実行する場合の文例

ご紹介した3つの手順をメールで実行する場合の文例をPDFにまとめたので、下記よりダウンロードして参考にしてほしい。

3つの手順をメールで実施するときのメールの文例

簡単な文例なので、営業部で共有し営業担当全員で御社にあったメール文章に変換していただければ幸いだ。また、このコラムのPDFも下記からダウンロードできるようにしているので、社内で共有するときは、このコラムも合わせて共有すると便利である。

このコラムのPDFダウンロード

見込み客を育成するインサイドセールス担当者が実行すべき2つの営業戦略

ご紹介した3つの手順はインサイドセールスの「展示会のフォロー営業」に焦点を当てた手順であるが、本来、インサイドセールスは2つの営業戦略を実行しなければならない。この2つの営業戦略については下記の無料資料にまとめてあるので、ご興味があれば無料でプレゼントするのでお申し込みいただければ幸いだ。

見込み客を育成するインサイドセールス担当者が実行すべき2つの営業戦略

電話やメルマガでフォローするだけでは見込み育成(リードナーチャリング)はできないので、「売る」につなげるためのインサイドセールスのあるべき姿と、その営業戦略の概要について簡単にまとめている。

部下の育成やご自身のスキルアップに活用していただければ幸いである。

BtoBリードナーチャリングの基礎コラム


レビューをお願いします


このサイトの評価
4.3
とても参考になった43%
参考になった43%
そこそこ参考になった14%
あまり参考にならなかった0%
参考にならなかった0%
今後のコンテンツ公開のヒントにさせていただきたいので、あなたのレビューをお待ちしています。お気軽にレビューください。(レビューはこちらから

ABOUTこの記事をかいた人

株式会社ALUHA代表取締役。1979年兵庫生まれのBtoBマーケティングコンサルタント。金沢工業大学大学院にて情報工学を専攻し2003年4月にALUHAを創業。2008年からBtoBに特化したマーケティング支援、営業戦略支援を開始。BtoBマーケティングや営業戦略の戦略立案から、計画実行とPDCA、そして人材育成を伴走型で支援。デジタルとリアルを融合させた戦略設計が得意。毎月全国各地の様々な企業でBtoBマーケティングセミナーを実施中。100社以上でのセミナー講演実績を持つ。大手IT企業、製造業(日立Gr、富士フイルムGr、キヤノンGr、積水Grなど)を顧客に持つコンサルタント。→セミナー講演実績→コンサル実績