アップセル・クロスセルとは?違いや進め方・成功事例からわかる施策のポイントを解説

アップセル・クロスセルとは?おすすめのプロセスと成功事例
Last Updated on 2024年4月1日 by 荻野永策

営業の現場で使用されることが多い「アップセル」と「クロスセル」。アップセルとクロスセルは、それぞれ重要な理由があるからこそ広く採用されており、これらをうまく活用した企業が成功を収めている例も存在する。

この記事では、BtoBの営業戦略におけるアップセルとクロスセルの基本的な概念、その違い、重要性、実施の方法、注意点について解説する。

営業戦略の立て方を一問一答で解説!営業分析やターゲティングと差別化の仕方、営業計画の決め方、PDCAの回し方

営業戦略とは?フレームワークによる戦略と計画の立て方とPDCAの回し方、効果を可視化する分析方法

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PDF資料の主な内容

  1. 営業目標(KGI・KPI)の決め方
  2. 立案の前にやっておくべき競合・市場分析などの5つの分析
  3. 営業戦略の立て方(立案用パワポテンプレートと戦略俯瞰シートサンプル付き)
  4. デジタルも含めたBtoBの営業戦術一覧と戦術別の主なKPI例
  5. アクションプランの策定方法(エクセルテンプレート付き)
  6. PDCAの回し方(KPIツリーのテンプレート付き)
  7. デジタルを活用した戦略立案の具体例
  8. 営業デジタル化(営業DX)のメリット・ポイントと取組事例

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アップセルとは

アップセルとは、現在顧客が契約・購入している商品、もしくは、契約・購入を検討している商品よりも上位のグレードやプランに変更することを提案する営業手法である。その狙いは、1回の取引における商品単価(購入金額)の向上である。既存顧客や新規提案中の顧客が対象となり、購入履歴や検討状況などを基に提案を行う。

例を挙げると、会計ソフトの契約をしている顧客がいるとしよう。その顧客が現在ライトプランで契約している場合、適切なタイミングでさらに上のプラン(スタンダードプランなど)を提案するのがアップセルである。

クロスセルとは

クロスセルとは、一つの製品やサービスの購入意向を示す顧客に対して、関連する別の商品を追加提案する営業手法だ。その狙いは、顧客の購入点数や購入回数の増加だ。

例を挙げると、在庫管理システムを導入している既存顧客に対して、「需要予測システム」や「販売管理システム」などを追加提案するのがクロスセルである。関連する製品を提案することで、追加購入を狙うことができる。

アップセルとクロスセルの違い

アップセルとクロスセルの違いをより明確にするために、以下の表にそれらの違いをまとめた。

アップセルとクロスセルの違い
アップセル クロスセル
目的 より高い製品を購入してもらうこと 購入点数や購入回数を増やすこと
対象顧客 既存顧客・新規顧客の両方 既存顧客・新規顧客の両方
主なアプローチのタイミング例
  1. 既存顧客の場合は、新しい上位プランができたタイミングで、今使っているプランよりも有益であることを提案する。
  2. 新規顧客の場合は、購入検討のタイミングで顧客が検討しているプランよりも上位のプランを提案する。
  1. 既存顧客の場合は、今、顧客が使っている製品・サービスとセットで使うとより便利になる商品・サービスの販売を開始したタイミングで提案する。
  2. 新規顧客の場合は、購入検討のタイミングで、顧客が検討している製品・サービスに対して追加の製品やサービスを提案する。
メリット LTVを向上できる LTVを向上できる
デメリット
  1. 単価が高くなるため離脱の可能性も高くなる
  2. 単価が高くなるため購入回数や購入点数が減る(クロスセルしにくくなる)
購入点数が増えるため高い商材を売りにくくなる(アップセルしにくくなる)

アップセルは、「より高い商品・サービスを購入」してもらうことでLTV向上を狙っているのに対し、クロスセルは「より多くの商品・サービスを購入」してもらうことでLTV向上を狙っている。このため、アップセルは「購入単価の向上(より高いものを売る)」を、クロスセルは「購入点数の向上(より多く買ってもらう)」を狙った施策と言える。

アップセルを行うと、単価が高くなるため、追加購入(購入点数の増加や購入回数の増加)が難しくなる。逆にクロスセルは購入点数や回数が増えるため、商品単価を上げにくくなるという傾向がある。

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  8. 営業デジタル化(営業DX)のメリット・ポイントと取組事例

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アップセル・クロスセルの重要性

アップセルとクロスセルは営業戦略の一部として非常に重要である。その理由は2つある。

まず、最もわかりやすいのは、アップセルとクロスセルは、成功すれば、いわずもがな、売上向上につながる。しかも、広告や展示会、セミナーのように、成果(売上)から遠い営業手法(実際に売れるまで時間がかかる営業手法)ではなく、売上に近い営業手法(提案が成功すると売れる可能性が非常に高い営業手法)であるため、比較的短期間で売上向上が期待できる。アップセルやクロスセルを取り入れると、1回の商談で得られる平均客単価が向上し、売上の底上げが期待できるのだ。

次に、アップセルとクロスセルは顧客の満足度を高めるための手段となる。これらの手法を通じて、顧客が求めている製品やサービスを提供するだけでなく、その要望を実現する価値を提供することが可能となる。これは結果として顧客のロイヤルティを高め、継続的なビジネスにつながっていく。

アップセル・クロスセル施策のおすすめの進め方

アップセルやクロスセルの弊社おすすめの進め方をご紹介する。ここでご紹介するのは、既存顧客へのアップセル・クロスセルの進め方だ。既存顧客の場合、すでに御社製品を購入済みであるため、成功率が高く、かつ、アポイントも取りやすいため、比較的短期間で成果につながる可能性がある。

アップセル・クロスセル施策のおすすめの進め方
  1. アップセル・クロスセルの対象顧客をリスト化
  2. 顧客満足度調査を実施
  3. 調査結果を集計し既存顧客の課題を把握
  4. 課題解決の方法を提案しアップセルかクロスセルを行う

アップセル・クロスセルの対象顧客をリスト化

最初に、アップセル、クロスセルしたい顧客をリスト化する。この時のポイントは、「アップセル・クロスセルの可能性の見極め」だ。見極めるコツとしては、BtoBの場合、「予算の規模」と「社内展開の可能性」の2つがある。

「予算の規模」は、アップセルをする場合、それだけ多くの予算が必要になるため、支払い能力があるかどうかの見極めが重要だ。「社内展開の可能性」の社内展開とは、「A部門」で使っている製品を「B部門にも提案しにいく」など、顧客企業の部門を超えて営業展開できるかどうかを意味する。このように複数の部門や事業所・拠点に対して提案ができるようになると、クロスセルの可能性が非常に高くなるのだ。

この2つの観点でどの顧客が可能性があるかを検討し、リストアップしてみよう。

顧客満足度調査を実施

リストアップしたら、顧客満足度調査を実施する。この調査の目的は、顧客ごとにアップセル・クロスセルで提案する内容を決めることにある。主に聞く内容は、今使っている製品・サービスに関連する課題や要望だ。「もっとこういうことがしたいのにできない」や「今後こういうふうに使っていきたい」などを満足度調査で聞き出す。

満足度調査は、より確実に行うなら、BtoBは対面調査がおすすめだ。効率的にやるなら、精度は落ちる可能性があるが、アンケートフォームを作りアンケート形式で調査するのもよい。

調査結果を集計し既存顧客の課題を把握

顧客満足度調査を行なったら、回答結果を下記の3種類に分類し対応方針を決めていく。

1つ目は、「クレーム回答」だ。今の製品・サービスに対してクレームのような回答があると、これはアップセルやクロスセル以前の問題で、大至急、対応しなければ顧客流出につながる可能性がある。そういった回答の場合は、製品開発部門や技術部門なども巻き込み、対処方法を考えるしかない。

2つ目は、「対応不能回答」だ。顧客から課題や要望を聞き出したものの、すぐに対応できないような回答の場合は、対応が不可能となる。アップセルやクロスセルの提案すらできない回答であるため、時間をかけて対処方法を考えるしかない。

3つ目は「クロスセル・アップセルの対象回答」だ。クロスセル・アップセルの提案につながる回答で、すぐに営業フォローすればクロスセル・アップセルが実現する可能性があるものだ。1つ1つ回答を見て営業提案書を作成し、アポイントを取り、クロスセル・アップセルに繋げていく必要がある。

このように、回答内容を3つに分類し、対応方針を決め対応していく。1つ目の回答は製品の改善(商品力強化)に、2つ目の回答は今後のニーズの把握に、3つ目の回答はクロスセル・アップセルに活用できる非常に重要なマーケティングデータとなる。

調査結果を3つに分類したら、3つ目の「クロスセル・アップセルの対象回答」を参照しながら、営業提案書を作成する。顧客が抱える課題や実現したい要望が顧客満足度調査で判明しているため、その内容をベースに、どのように課題解決するかや、どのように要望を実現するかを提案書にまとめるのだ。この営業提案書が、クロスセルやアップセルの大きな武器となる。

課題解決の方法を提案しアップセルかクロスセルを行う

営業提案書が完成したら、実際にクロスセル・アップセルを実行に移す。主な手段として以下の方法があるが、どの手段でも、営業提案書の内容を顧客に提案し、購入を検討していただくこととなる。

訪問営業
直接顧客を訪問し、営業提案書を見せながらアップセル・クロスセルを実行する。顧客と対面で商談できるため、顧客の表情や現場の雰囲気を直に感じて提案できる。事前のアポイントが必要になるほか、やり方を間違えると押し売りのようになってしまう点には注意が必要だ。
電話営業
電話で営業提案書の内容を説明しアプローチをする。電話の前に営業提案書をメールなどで事前送付しておくと電話営業しやすい。訪問しなくて良いため、数が多い場合は効率がよい。しかし、顧客の顔が見えないため、訪問営業に比べると効果は落ちる可能性がある。
オンライン営業
オンライン会議でアプローチをする方法。訪問営業と電話営業のいいとこ取りをした手法。訪問営業ほどの臨場感はないものの、画面共有で営業提案書を見せることも可能。IT製品であればデモもできるだろう。訪問しなくてよいため、移動時間も削減でき効率が良い。しかし、名刺交換ができないなどのデメリットがある。
メール営業
営業提案書をメールで送信し営業する手法。顧客が好きな時間に資料に目を通せるのがメリット。ただし、メールは埋もれやすい他、読まれない可能性が高い。

それぞれメリット・デメリットがあるため、顧客のロイヤリティに応じたアプローチ方法を実践しよう。

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アップセル・クロスセルの注意点

アップセルとクロスセルを実施する際に注意したいのが、「押し売り」である。

押し売り

アップセルとクロスセルは、成功すれば売上向上につながる良い手法である。しかし、やり過ぎると押し売りになってしまう。顧客にとって不要なプランや製品を提案するといったことになり、購入後の解約や顧客流出につながる可能性がある。しつこく提案が続くような場合は、「しつこい営業」というレッテルを貼られ、最悪の場合、悪評がたち、ブランドイメージの毀損に繋がっていく。

だからこそ、本コラムで紹介したように、顧客の課題に合わせてアップセルとクロスセルを実施する必要がある。

アップセル・クロスセルの成功事例

それでは、最後に、アップセルとクロスセルの成功事例をご紹介する。

株式会社ALUHA(BtoBマーケティングコンサルティング)

最初にご紹介するのは、弊社(株式会社ALUHA)の自社事例だ。弊社は、BtoBマーケティングコンサルティングの事業を行っており、既存顧客へのクロスセルに力を入れている。

弊社は、BtoBマーケティング営業戦略のDXやデジタル化を支援しており、戦略立案から実行支援、人材教育までをコンサルの範囲としている。そのためコンサルティングの中で、主に下記のようなクロスセルを行っている。

1つ目は、SEOコンテンツ制作だ。お客様の課題が「自社サイトのアクセス数が弱い」と判明した時のみ、弊社から提案している。主にSEO対策のためのSEOコンテンツのライティングを提案し、請け負っている。

2つ目は、PDF資料作成だ。商談創出したいといった場合はセミナー資料を、CVRを改善したいという場合はホワイトペーパーのPDF資料を弊社にて作成している。

このほかにもコンサルティングを通して、課題が明確になれば、クロスセルを意識しながら、弊社で対応できるメニューを顧客に提案している。

情報共有ツールを開発・販売するIT企業A社

次にご紹介する事例は、コミュニケーションツール(情報共有ツール)を開発・販売するIT企業A社の事例だ。A社は弊社のお客様で、無料版の情報共有ツールを公開しており、無料版ユーザーの有料版への移行が大きな狙いだった。そのため、無料版のユーザーを有料版にアップセルする、もしくは、有料オプションを追加購入してもらうクロスセルを狙っていた。

A社は早速下記のプロセスでクロスセル・アップセルを行った。

  1. 無料版リードの社名、メールアドレスをクレンジングしターゲットリストを作成
  2. ターゲットリストに対する課題調査アンケートを設計しメールでアンケート調査を実施
  3. アンケート回答結果を集計しリードの課題をリストアップ
  4. リードの課題に対して解決方法をPDFでまとめ提案資料化
  5. PDFの提案資料が自由にダウンロードできるページを作成しターゲットリストに配信
  6. ダウンロードのあったリードを営業やインサイドセールスに送客

数が多いためデジタル中心の施策であるが、上記の施策で30件程度の案件・商談創出に成功している。

まとめ

アップセルもクロスセルも、LTV向上を狙う上では重要な営業手法である。しかしやり方や切り出し方を間違えると、押し売りに感じさせてしまうためデメリットも含むが、うまく活用して成功を収めている企業があることも事実だ。

ただ漠然とアップセル・クロスセルを顧客に提案するのではなく、顧客ニーズやロイヤリティなどを明確にし、そのうえで実行することは不可欠である。顧客との接触頻度などにも注意し、双方がWin-Winの関係で契約やできるのが理想的だ。

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