営業担当者が成果を出すためには、さまざまなスキルを身につけておく必要がある。どのようなスキルが必要なのか知らずに営業活動をおこなっていると、自分に足りないスキルに気づかずに非効率な営業活動となってしまうだろう。そこで、本記事では成果を出すために営業担当者が身につけるスキルについて解説。また、営業担当者がスキルを向上する方法なども紹介する。
なお、営業担当者と共有すべき営業戦略の立て方については、下記のコラムを参照いただけたらと思う。
成果を出すために営業担当者が身につけるスキルとは
成果を出すために営業担当者が身につけておくべき基本的なスキルを紹介する。
- コミュニケーションスキル
- ヒアリングスキル
- マネジメントスキル
- トラブル対応スキル
- クロージングシナリオスキル
コミュニケーションスキル
営業担当者にとって、コミュニケーションスキルは必要不可欠である。顧客の課題や悩みを上手に聞き出し、最適な解決策をわかりやすく伝えるコミュニケーションスキルや、時には場を盛り上げるようなユーモアあるコミュニケーションスキルも必要となる。
ヒアリングスキル
ヒアリングスキルとは、顧客の課題を引き出すスキルのことだ。効果的な提案ができるかどうかは、ヒアリングでどれだけ顧客の抱える課題を引き出せるかが重要だ。「顧客の課題を引き出す」といっても、重要性・緊急性の高い課題を引き出すことができれば、商談につながる可能性が高くなる。そのため、ヒアリングを成功させるポイントは、「顧客が解決したい重要かつ緊急性の高い課題」をどう引き出せるか?である。
また、ヒアリングの際はBANT情報を聞き出すことも重要である。BANTとはBtoB営業で活用するフレームワークであり、以下の頭文字を取ったものだ。
- Budget(予算)
- Authority(決裁権)
- Needs(必要性)
- Timeframe(導入時期)
BANT情報を聞いておくと、成約に至る確度を把握できるため、どの顧客に優先してアプローチすべきか判断できる。また、社内で情報を共有しやすくなり、部署全体で円滑に営業活動をおこなえる。
ただし、BANTや重要性・緊急性の高い課題を聞き出すには、それなりの信頼関係が必要であり、すぐには聞き出せないといったジレンマを抱えることが多い。
マネジメントスキル
営業におけるマネジメントスキルとは、自分のリソース(主に時間)を自分で正しく管理するスキルのことだ。
営業担当者は、顧客リストの作成や提案書の作成・商談の準備、営業日報の作成などやるべきことが多岐にわたっている。このため、優先順位をつけて取り組むことが重要だ。例えば、複数の商談を同時に抱えている場合、「売れる可能性の高い商談」や「LTVが高い商談」といった判断基準から、タスクの優先順位を決め、時間を効率的に使うなどだ。
「売れる可能性の高い商談」ではなく、「売れる可能性の低い商談」に時間を取られてしまうと、営業活動をやってもやってもなかなか売れないといったことが発生する。つまり、確度の低い見込み客に振り回されるのだ。そのため、売れる可能性の高い商談かどうかを判断し、時間を有効活用するスキルが必要となる。
また「LTVが低い商談」に時間を使ってしまうと、商談成立しても「売上金額」が少なく、目標売上に到達するには「より多くの受注」が必要となってしまう。その結果、売上件数を追い求めることになり、時間が足りなくなっていく。
このように、マネジメントスキルがなければ、時間をうまく使うことができず、なかなか成果に繋がらないといった事態を引き起こす。「売れる可能性の高い商談」や「LTVが高い商談」など、さまざまな判断基準で時間を有効活用できるよう、マネジメントスキルを身につけておこう。
トラブル対応スキル
トラブル対応スキルとは、商談開始から成約に至るまでに起こるトラブルに対応するスキルのことだ。
営業活動をおこなっていると、予測していなかったトラブルが発生することがある。その際に重要なことは、顧客の信頼を失わないように行動することであり、トラブル対応スキルが問われる。例えば、「アポイントの日時を勘違いしすっぽかした」、「顧客からもらった資料を誤って別の顧客に誤送信してしまった」など、トラブルは何かしら発生する。
表面的な謝罪でその場を切り抜けるのではなく、トラブルが起こった原因を特定して、再発防止策を講じたうえで謝罪することが重要である。不測のトラブルが発生したとしても、誠実に行動することで、顧客と信頼関係を構築することが可能だ。
クロージングシナリオスキル
クロージングスシナリオスキルとは、自社の製品・サービスを受注するまでの営業シナリオを描き、そのシナリオを実現するスキルのことだ。主に、ある特定の顧客に向けてのクロージングスキルと、売りたい商品に対するクロージングスキルの2つに分類できる。
特定の顧客に向けてのクロージングスキルとは、売り込みをしたい相手が決まっており、その相手に対して、個別にクロージングのシナリオを考えることだ。アカウント営業の担当者は必須である。相手が明確であるため、どのようにヒヤリングを行い、そこからどういう提案をし、どのように商談を作っていくか?を描いていく必要がある。
売りたい商品に対するクロージングスキルとは、売り込みしなければならない注力商材に対して、どのようなシナリオで受注を獲得するかのシナリオを考えることだ。どのような顧客に売れそうか?どんな課題を解決する商材なのか?などを具体的に理解した上で、シナリオを立案しなければならない。
営業担当者がスキルを向上する方法
営業担当者がスキルを磨く方法として、以下の6つを紹介する。
- 自己分析を定期的に行い得意を伸ばす
- 明確に目標を設定する
- PDCAを回す
- 社内でノウハウを共有する
- 研修やセミナーに参加する
- ロールプレイングをおこなう
自己分析を定期的に行い得意を伸ばす
営業スキルを全て同時に高めていくことは難しい。なぜなら各営業スキルはシーソーゲームになるからだ。例えば、マネジメントスキルを向上させると、「時間の使い方」が上手くなる。上手くなる反面、各業務を時短で実施するような思考になってしまう。その結果、ヒヤリングスキルの向上とジレンマを引き起こす。なぜなら、ヒヤリングは時間のかかる業務だからだ。ヒヤリングしたくてもヒヤリングに時間をかけたくないといった営業スキル間のジレンマが発生するのだ。
このため、全ての営業スキルを高めようとするのではなく、自己分析を行い、自分の特長にあった営業スキルに絞って、得意な営業スキルを伸ばしていくことが重要である。自分の得意な営業スキル以外は、平均点くらいあればいいという考え方で得意なスキルに絞って効率良くスキル向上しよう。
明確に目標を設定する
効率的に営業スキルを向上させるのであれば、必ず目標を明確に設定しておこう。業務における目標を明確にすることで、今何をすべきか判断できるようになり、成果が上がりやすくなる。さらには、モチベーションの向上にもつながる。
各営業スキルの目標は、数値で設定すると営業スキルが向上したかどうかを判断しやすい。例えば下記のような目標数値を参考にご自身で設定してほしい。
コミュニケーションスキル | わかりやすく説明できる課題解決の方法の数 |
ヒアリングスキル | 効率良くヒヤリングする質問の仕方のパターン数 |
マネジメントスキル | 優先度を決める判断材料の数 |
トラブル対応スキル | トラブル発生から解決までの時間 |
クロージングシナリオスキル | クロージングシナリオの数 |
商材や営業手法にもよるので、上記は一例であるが、こういった目標をきめ、特に磨きたい営業スキルに集中してスキルアップを目指そう。
PDCAを回す
営業活動が成功したかどうかに限らず、必ず活動を振り返る癖をつけておく。そうすることで、なぜ成功したのか、なぜ失敗したのかという理由を特定できるからだ。
営業活動の失敗した内容によっては、忘れてしまいたいこともあるだろう。しかし、失敗からは多くを学べるため、営業スキルを向上するために改善点を探すことが重要である。失敗しない営業担当者はいないため、失敗したことを落ち込み続けるのでなく、PDCAを回していこう。
PDCAを回すには、自分がどんな活動をしたのか?を後で思い出せるようにすることが重要だ。そのため、SFAツールがあるなら、正確な営業記録を付けてく必要がある。営業日報・営業記録は会社への報告だけでなく、営業スキルアップのPDCAにも使えるのである。営業の活動履歴を記録するのは面倒であるが、正確に記入すると後から大きな財産になるのである。
社内でノウハウを共有する
社内でノウハウを共有することで、営業活動が営業担当者個人のスキルや勘に依存しなくなり、業務の属人化を解消できる。それにより、部署全体の営業スキルが向上するのだ。
社内でノウハウを共有する方法には、さまざまな方法があるが、代表的なものは商談事例の共有である。商談事例の共有方法としては、SFAに各営業担当者が正確な情報を記録し共有する方法や、オンライン商談であれば、商談を録画し共有するといった方法もあるだろう。
オンライン商談の録画は、会話の内容をテキスト化しテキストマイニングなどで分析すれば、営業スキルアップのポイントなどを効率良く抽出できる可能性もある。
研修やセミナーに参加する
全国各地で、営業担当者向けの研修やセミナーが数多く開催されている。そういった研修やセミナーに参加することも、営業スキルの向上には効果的だ。
研修やセミナーに参加することで、効果的なクロージング方法などすぐに営業活動に活かせる知識を教われる。また、同じような悩みを抱える営業担当者に出会うこともでき、悩みを共有してスキルアップにつなげることもできる。
ロールプレイングをおこなう
営業のロールプレイングとは、営業をおこなう側と受ける側の担当に分かれて、役割を演じながら営業トークの練習をすることを意味する。ロールプレイングをおこなうことで、これまで気づかなかった癖などに気づくことができ、営業品質を改善できる。
なお、ロールプレイングには以下の4つの種類がある。
- ●ケース型ロールプレイング
- 顧客の属性などを詳細に設定して、実際の商談に近い形でおこなう形式。一通りロールプレイングが終わった後、フィードバックを受けられるため、営業課題を認識できる。
- ●グループロールプレイング
- グループ内で役割を交代しながらおこなう形式。営業を受ける側の立場にも立てるため、顧客の視点から見た魅力的な提案とはどういったものかを理解できる。
- ●問題解決型ロールプレイング
- 実際に起きている、または起こった問題を取り上げておこなう形式。どのように対応するか話し合うことで、新たな解決法を発見する場合がある。
- ●モデリング型ロールプレイング
- 代表者のロールプレイングを他の者が真似する形式。成績の良い営業担当者の真似をすれば、営業が成功するイメージを持つことが可能。
営業担当者が自分のスキルを確認する方法
営業担当者が自身の営業スキルを確認する方法としては、スキルマップシートの活用がおすすめである。スキルマップシートとは、営業活動に必要なスキルを一覧にまとめたものだ。力量管理表や技能マップとも呼ばれる。スキルごとに営業担当者を評価するため、誰がどのスキルを保有しているのかを一目で把握することが可能だ。
スキルマップシートは営業担当者のスキルを把握できるだけではなく、項目の設定により評価基準が明確になるため、人事評価に用いることもできる。
スキルアップ以外で営業成果を高める方法
営業スキルアップ以外で営業成果を高める方法として、以下の2つを紹介する。
- 社内制度を見直す
- ITツール(営業支援や商談管理など)を導入する
社内制度を見直す
報酬制度や評価制度といった社内制度が十分に整備されていない場合、見直すことで営業担当者のモチベーションを向上させられる。なかなか評価されないという理由から優秀な営業担当者が社外に流出するといった事態を防止することが可能だ。
最近では、営業のデジタル化(営業DX化)も推進している企業が多いため、商談につながるデジタルコンテンツ作成に関わった営業を評価する社内制度を作るとよいだろう。
例えば、新規リード獲得につながったWEBコンテンツを作った営業担当者に対して、何らかの形で社内評価するといった制度である。クロージングシナリオスキルの高い営業担当者が、こういったデジタルコンテンツ作成に関わると、効果の高いコンテンツ作成につながるケースが多い。
こういった時代の流れにあった社内制度を柔軟に取り入れることで、営業スキルのある営業担当者のモチベーションを維持し、営業変革につながっていくだろう。
ITツール(営業支援や商談管理など)を導入する
営業担当者個人の努力によって成果を上げることも重要だが、成果を上げやすい組織体制も必要である。営業活動を効率的におこなえるITツールを導入することで、部署レベルで効果的な営業活動を実施できるようになり、営業効率の大幅な改善が期待できる。
導入によって営業の成果向上が期待できるITツールは、以下の通りだ。
- ●SFA
- 営業活動をサポートする機能が搭載されているITツール。案件や商談の進捗を一目で把握できる機能が搭載されており、マネージャーは営業担当者に効果的な指示出しをおこなえる。
- ●CRM
- 顧客情報を一元で管理できるITツール。蓄積した既存顧客の情報を分析することで、顧客の購買傾向を把握できる。
まとめ
本記事では、成果を出すために営業担当者が身につけておくべきスキルをご紹介した。
- コミュニケーションスキル
- ヒアリングスキル
- マネジメントスキル
- トラブル対応スキル
- クロージングシナリオスキル
どれも営業担当者として活動するうえで重要なスキルである。自己分析を行い、自分と相性の良いスキルに絞って、得意分野を伸ばすイメージでスキルアップを検討いただけたら幸いである。