One to Oneマーケティングとは?具体的な手法や成功事例を解説

One to Oneマーケティングとは?BtoBの成功事例や手法と目的を解説
Last Updated on 2025年1月7日 by 荻野永策

インターネットの普及や顧客ニーズの多様化により、近年One to One(1to1)マーケティングの重要性が増している。特にBtoBマーケティングBtoBセールスの領域ではOne to One(1to1)の傾向が非常に強い。

そこで、本記事では、One to Oneマーケティングの概要や具体的な手法について解説する。MAツールの活用方法も紹介するため、参考にしていただけたらと思う。

One to One(1to1)マーケティングとは

One to One(1to1)マーケティングとは、顧客一人ひとりの購買傾向のデータを活用し、個々のニーズに合わせて最適化されたコミュニケーションを展開するマーケティング手法だ。従来の画一的なアプローチではなく、顧客の興味や関心に基づいて、最適なタイミングで最適な情報を提供することで、より効果的な販売促進や顧客との信頼関係の構築を目指す。

たとえば、過去の購入履歴のデータから関連商品を提案することや、Webサイトの閲覧履歴に基づいて個別化されたWEBコンテンツやメルマガを配信するなど、一人ひとりに合わせたアプローチを実現する。

One to Oneマーケティングの目的

One to Oneマーケティングの主な目的は、顧客との継続的な関係構築とファンの創出だ。個々の顧客が本当に求めているものを理解し、適切なタイミングで最適な提案を行うことで、顧客満足度を高め、リピーターやロイヤルカスタマーへと育成することを目指す。また、顧客一人あたりの生涯価値(LTV)を最大化することも重要な目的のひとつだ。

マスマーケティングとの違い

マスマーケティングとOne to Oneマーケティングの主な違いは、目的と発信方法である。マスマーケティングは、不特定多数の人々に同一のメッセージを発信し、商品やサービス、企業を広く認知してもらうことを目指す。具体的には、テレビCM、新聞広告、雑誌広告などのマスメディアでメッセージを発信する。

一方、One to Oneマーケティングは、個々の顧客に最適化されたコミュニケーションを行うことで、顧客に商品を自ら選んでもらうことを目的としている。顧客の行動履歴やニーズを分析し、一人ひとりに適切な情報を届けることで、その目的を達成する。

このように、両者の目的と発信方法の違いから、マスマーケティングは「広く浅く」を軸としたアプローチと言え、One to Oneマーケティングは「狭く深く」を軸としたアプローチと言える。

One to Oneマーケティングが注目される背景

One to Oneマーケティングが注目される背景には、主に3つの要因がある。

第一に、インターネットの普及により、Cookie情報や行動履歴など、個々の顧客の情報を収集・分析することが可能になった技術的進歩が挙げられる。以前は個別対応のためのデータ収集自体が困難であり、マスマーケティングが主流とならざるを得なかった。

第二に、顧客ニーズの多様化が背景にある。例えば、食品分野では価格や味覚だけでなく、サステナブルかどうか、SNSで話題となっているかといった新たな価値基準が生まれている。このため、画一的なアプローチでは対応が難しい。

第三に、インターネットやスマートフォンの普及により、顧客は多くの情報を簡単に入手できるようになった。これにより選択肢が大幅に増加し、個々のニーズに合致した商品でなければ選ばれない時代となっている。表示される広告や商品情報も膨大になる中で、顧客一人ひとりに最適化されたアプローチの重要性が高まっているのである。

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One to Oneマーケティングの具体的な手法

One to Oneマーケティングでは、個々の顧客の特性やニーズに合わせた最適なアプローチを実現するために、さまざま手法を組み合わせて実施する。具体的な手法は、以下の通りだ。

One to Oneマーケティングの具体的な手法
  1. レコメンデーション(商品推奨)
  2. リターゲティング広告
  3. LPO(ランディングページ最適化)
  4. メール配信
  5. DM送付
  6. Web接客

レコメンデーション

レコメンデーションは、ECサイトなどで活用される個別化された商品推奨の仕組みだ。主に以下の4つの手法がある。

レコメンデーションの手法概要
協調フィルタリング類似した行動履歴を持つユーザーの購買パターンを分析して商品をすすめる
コンテンツベース閲覧中の商品と類似性の高い商品を提案する
ルールベース事前に設定したルールに基づいて商品をすすめる
ベイジアンネットワークAI技術を用いて次の購買行動を予測して商品をすすめる

BtoB向けでは、閲覧した製品カテゴリーに関連するホワイトペーパーや事例資料の表示、企業規模や業種に応じた最適なソリューションや解決事例の提案、過去の問い合わせ内容に基づく関連サービスの紹介などが効果的だ。AI技術の進化により、より精度の高い推奨が可能になっている。

リターゲティング広告

リターゲティング広告は、自社サイトを訪れたユーザーが他のWebサイトを閲覧している際に、関連する広告を表示させる手法だ。過去の閲覧履歴や興味関心に基づいて広告を出し分けることで、効率的にアプローチできる。

BtoB向けでは、自社サイトで閲覧した製品・サービスの具体的な導入事例を広告として表示する、資料ダウンロード後に関連するセミナーや展示会の告知広告を配信するなど、顧客の検討段階に応じた広告展開が重要だ。

ただし、自社の製品・サービスを知っている人に繰り返し広告が表示されるため、ユーザーに嫌悪感を与えてしまう可能性があるため注意が必要だ。

LPO(ランディングページ最適化)

LPOは、ユーザーの属性や行動履歴に基づいてランディングページの内容を最適化する手法だ。訪問回数、流入元、ユーザー属性、使用デバイスなどの条件に応じて、表示内容やデザインを変更する。

BtoB向けでは、訪問企業のIP情報から業種を判別し、その業界に特化した導入事例や実績を強調して表示する。また、過去の閲覧履歴から関心の高い機能や特徴を優先的に表示したり、スマートフォンやPCなどアクセスデバイスに応じて、資料請求フォームの配置を最適化したりすることも効果的だ。

効果検証にはA/Bテストを実施し、継続的な改善を行うことで、より高い成約率を実現できる。A/Bテストでは、元のランディングページと最適化したランディングページを用意し、一定期間ランダムに表示させる。その後、各ページの成約率や離脱率、滞在時間などの指標を比較し、優れた結果を示したページを採用する。

メール配信

メール配信は、顧客の属性や行動履歴に基づいて、個別最適化されたメールを届ける手法だ。新規登録者、既存顧客、休眠顧客など、セグメント別に異なる内容のメールを配信し、購入履歴や閲覧履歴に応じて配信タイミングや頻度を調整する。

効果的なメール配信を行うには、配信タイミングと頻度の設定が重要である。たとえば、新規登録者には、登録直後にサンクスメールを送り、その後数日間は製品やサービスの特徴を紹介するメールを配信するのが効果的だ。既存顧客には、購入サイクルに合わせて、新商品の案内やおすすめ商品の紹介メールを送ることで、リピート購入を促せる。

BtoB向けの施策には、事前にアンケートやヒアリングを実施し、把握した課題に対する具体的な解決事例をメールで紹介するという方法がある。また、過去にダウンロードした資料と関連性の高いコンテンツを段階的に配信したり、ウェビナー参加者の質問内容や関心事項に応じたフォローアップ情報を提供したりすることも有効だ。

DM送付

DM送付は、顧客の属性や行動履歴に基づいて、個別最適化されたDMを送付する手法だ。送料や制作費は必要だが、紙媒体ならではの高級感や特別感を演出できる特徴がある。

効果的なDM施策を企画するには、デジタルデータとの連携が不可欠だ。例えば、ウェブサイトでの閲覧履歴やメールの開封状況など、オンライン上の顧客行動データを分析することで、顧客の関心事や課題を把握できる。これらのデータを活用し、顧客のニーズに合わせたDMの内容や提案を検討することが重要である。

DM施策の実施には、ターゲット選定、DM制作・送付、レスポンス分析といった一連の流れを適切に管理することが求められる。顧客データベースから送付対象を選定し、属性や行動履歴などに基づいてセグメンテーションを行う。そして、顧客のニーズに合わせた情報や提案を盛り込んだDMを制作・送付し、明確な行動喚起を促す。送付後は、問い合わせ先への反応や専用ランディングページへのアクセス状況を詳細に追跡し、DMの効果を測定・分析しよう。

BtoB向けでは、既存顧客の契約更新時期に合わせて新機能や上位プランの案内を送付したり、業界特化型の展示会に参加した企業に対して具体的なソリューション提案書を届けたりする。また、季節性のある製品について、昨年の購入実績に基づいた案内を送付するのもよいだろう。

Web接客

Web接客は、Webサイトを訪れたユーザーに対して、ポップアップやチャットボットを活用して個別対応を行う手法だ。視認性の高いポップアップ型と、対話型のチャット型の2種類があり、対話型は人による対応とAIによる自動対応を使い分けられる。

BtoB向けの施策としては、サイトの訪問頻度が高いユーザーに対して、製品専門家との個別相談チャットに誘導するのが効果的だ。また、製品比較ページなどの特定コンテンツに長時間滞在しているユーザーには、詳細な比較資料のダウンロードを提案するとよい。

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One to Oneマーケティングのメリット・デメリット

One to Oneマーケティングの主なメリット・デメリットをまとめると、以下のようになる。

One to Oneマーケティングのメリット
  1. 費用対効果が高い
  2. 顧客との信頼関係を築きやすい
  3. 顧客満足度の向上が期待できる
  4. リピート率・継続率が上がりやすい
  5. 顧客単価の上昇が見込める
  6. MAツールにより業務をある程度は自動化できる
One to Oneマーケティングのデメリット
  1. データ量が増えると分析が複雑化する
  2. MAツール導入後も人による運用が必要
  3. 高度な情報収集・分析スキルが求められる
  4. 個人情報の取り扱いに細心の注意が必要
  5. 顧客数の増加に伴い工数も増える
  6. 潜在顧客へのアプローチが困難

このようなメリットとデメリットがあるため、「ニッチな市場」で「専門性が高く」、「客単価も高い」といった商材と相性が良い傾向がある。

One to Oneマーケティングのメリット

One to Oneマーケティングの最大のメリットは、顧客一人ひとりに最適化されたアプローチによって高い費用対効果が得られることだ。既存顧客の興味関心や購入履歴に基づいたコミュニケーションを行うことで、効率的なマーケティング活動を実現できる。

また、適切なタイミングで必要な情報を届けることにより、顧客との信頼関係を築きやすくなり、その結果として顧客満足度の向上やリピート率の上昇につながっていく。さらに、MAツールを活用すれば、これらの施策を一定程度自動化できるため、従来の手法と比較して運用の手間を大幅に削減することが可能だ。

One to Oneマーケティングのデメリット

One to Oneマーケティングの主な課題は、データの収集と分析に関する問題である。顧客データの量が増加するにつれて分析や活用が複雑化し、適切な分析基盤の整備が不可欠となる。また、MAツールを導入したとしても、シナリオ設定やチューニングは人手による作業が必要であり、完全な自動化の実現は困難だ。

さらに、このマーケティング手法では潜在顧客へのアプローチが難しいという特徴があり、新規顧客を開拓するには他のマーケティング手法と組み合わせる必要がある。

近年は個人情報保護の観点から、Cookieなどを用いた行動追跡に対する規制が強化されており、プライバシーに十分配慮した運用が求められている。加えて、初期投資として高額なMAツールの導入が必要となるため、費用対効果を慎重に見極めて導入を検討しよう。

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MAを活用したOne to Oneマーケティングの施策

MA(マーケティングオートメーション)は、オンラインマーケティング活動を体系的に自動化し、見込み客の獲得から成約までのリードナーチャリング、さらには顧客データの管理までを効率的に実行するためのツールである。

One to Oneマーケティングを実践する上では、個々の顧客に最適化されたアプローチを実現するために膨大な作業が必要となる。MAを活用することにより、これらの作業を効率化・自動化し、より効果的なOne to Oneマーケティングを展開できる。データの収集・管理も効率化できるため、One to Oneマーケティングを実施する場合にはMAを導入することがおすすめだ。

施策の効率化・自動化

MAツールを活用することで、One to Oneマーケティングにおけるさまざまな施策を効率的に自動化できる。たとえば、メール配信では顧客の属性や行動履歴に基づいて最適なタイミングで自動配信を行い、開封率やURLクリック率を測定することが可能である。

また、Webパーソナライズ機能により、過去の閲覧履歴に応じてランディングページの内容を出し分けたり、適切なタイミングでポップアップを表示したりすることが可能だ。新商品の案内メールでは、「開封して商品を購入」「開封して商品ページを閲覧したが未購入」「開封したが商品ページを閲覧していない」「未開封」といった反応に応じて、次のアプローチを自動的に振り分けることが可能だ。

このように、MAツールを活用すれば、人手では困難な細かなセグメント分けと、それに応じた最適なアプローチを自動的に実行できる。

データの収集・管理

MAツールを活用したデータ収集・管理では、MAツールのフォーム作成機能が効果的だ。MAツールでホワイトペーパーの資料請求フォームや問い合わせフォームなどを作成し、リードや顧客の個人情報を収集する。

収集したデータはリード管理機能によって整理され、質の高いデータベースを構築することが可能だ。また、データベースに登録されている顧客のWEB閲覧の行動履歴を数値化しホットリードを抽出する「スコアリング機能」も活用できる。

このように、MAツールを活用することで、散在しがちな顧客データを統合的に管理し、効果的な活用を実現する。

One to Oneマーケティングの成功事例

それでは、BtoB企業のMAを活用したOne to Oneマーケティングの成功事例をご紹介する。ご紹介するのは、日立ソリューションズ東日本様の事例だ。

MAを使ってナーチャリングシナリオを自動化

日立ソリューションズ東日本様の具体的な成功事例は、「BtoBデジタルマーケティング成功事例「リード獲得、MA活用、商談創出、差別化を伴走型で支援」」のページで詳しくご紹介しているが、ここでは、その内容の概要を解説する。

実施したことWEBサイトでリード獲得後、そのリードを育成するためにMAのシナリオメールを活用してOne to Oneを送付
得られた効果「必要な人に必要なコンテンツが自動で届くようにしてあるので、興味を持った人がアクションを起こしてくれます。このようにMAが見込みのお客様に対してソリューション導入の検討を促進してくれるので、仕事が効率化しただけでなく最終的な契約の確度が高まりました」

MAのシナリオメールを使う時のポイント

MAのシナリオメール機能を活用しOne to Oneマーケティングを展開するときは、リードや顧客の課題に合わせてシナリオを設計することがポイントになる。例えば、「在庫管理業務」を行なっている顧客がおり、その顧客の課題が「過剰在庫」だとすると、「過剰在庫を見つける方法」「過剰在庫を解消するプロセス」「過剰在庫を解消できた成功事例」などをメールで配信する。

このように、BtoBの場合は課題に合わせてメールコンテンツを設計すると良い。

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まとめ

One to One(1to1)マーケティングは、デジタル技術の進化とともに実現可能となった、個別最適化されたマーケティング手法だ。レコメンデーション、リターゲティング広告、メール配信など、さまざまな手法を組み合わせることで、顧客一人ひとりのニーズに応じたアプローチが可能となる。また、MAツールを活用することで、これらの施策を効率的に実施し、データの収集・分析も自動化できる。

ただし、完全な自動化は難しく、シナリオ設計や運用面での人的リソースは必要となる。今後ますます重要性が増すOne to Oneマーケティングだが、自社の状況に応じて段階的に導入を進めていただけたらと思う。

BtoBマーケティングの基礎コラム

ABOUTこの記事をかいた人

株式会社ALUHA代表取締役。1979年兵庫生まれのBtoBマーケティングコンサルタント。金沢工業大学大学院にて情報工学を専攻し2003年4月にALUHAを創業。2008年からBtoBに特化したマーケティング支援、営業戦略支援を開始。BtoBマーケティングや営業戦略の戦略立案から、計画実行とPDCA、そして人材育成を伴走型で支援。デジタルとリアルを融合させた戦略設計が得意。毎月全国各地の様々な企業でBtoBマーケティングセミナーを実施中。100社以上でのセミナー講演実績を持つ。大手IT企業、製造業(日立Gr、富士フイルムGr、キヤノンGr、積水Grなど)を顧客に持つコンサルタント。→セミナー講演実績→コンサル実績