BtoB製造業のデジタルマーケティング成功事例「ニッチな製品でもWEB活用はできるのか?」

WEB活用が難しいBtoB製造業の成功事例「小さな成功が大きな一歩」
Last Updated on 2024年9月7日 by 荻野永策

BtoBの製造業では、BtoBマーケティングのデジタル化(デジタルマーケティング)に悩んでいる企業が多い。特に、WEB活用・WEB運用だ。WEBを活用して、新規リード獲得(リードジェネレーション)を実現したいと考え、様々な取り組みを行うも、うまくいかないケースがある。

うまくいかない理由は、大きく2つあると考えている。

1つ目の理由は、集客の難しさである。BtoBの製造業の場合、製造している製品がニッチであるため、検索が発生しにくい。これは、製品がニッチであればあるほど、その傾向が強くなる。検索が発生しないと新規リード獲得が非常に困難になる。

2つ目の理由は、社内理解である。1つ目の理由や過去のWEB活用・運用の失敗など、様々な理由から、社内理解が低いケースが多い。

こういった理由から、WEB活用の取り組みが後手後手にまわり、なかなか進まず、うまくいかないといった状況になる。当然、リソースも少なくなるので、できる範囲も限られてしまう。

そこで、今回のコラムでは、こういった課題を抱えながらも、WEB活用を徐々に進め、小さな成果が大きな一歩となったBtoBの製造業のデジタルマーケティング成功事例(弊社のクライアント事例)をご紹介しよう。

デジタルマーケティングの社内啓蒙の進め方
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デジタルマーケティング成功事例「A社のご紹介」

ご紹介する企業は、売上は約250億、従業員数は約200名(記事執筆時点でA社のWEBサイトにて確認)のA社だ。A社の役員、Bさんから、弊社にご相談をいただいたのが弊社との出会いのきっかけである。

A社の製品は、非常にニッチで、工場や病院、建設現場などで使われる機械などの部品や消耗品である。WEBサイトは当然もっているが、会社として活用しようというような方針はなく、会社概要のサイト(カタログサイトのようなイメージ)という形で公開されている。

デジタルマーケティングの取り組みを阻む2つの壁

Bさんからは、最初、今後のデジタルマーケティングの可能性を判断したいので、社内セミナーをしてほしいと依頼があった。弊社は様々なテーマでデジタルマーケティングに関連する社内セミナーを実施しているため、Bさんと内容を調整の上、15名の部下も交えて、デジタルマーケティングについてセミナーをさせていただいた。

セミナー終了後、ディスカッションしながら、A社のデジタルマーケティングの取り組みについて意見交換した。様々な議論を行なったが、最終的には、A社のデジタルマーケティングの取り組みを阻む壁が2つあることが確認できた。

デジタルマーケティングの取り組みを阻む壁「検索回数の少なさ」

取り組みを阻む1つ目の壁は、「検索回数」である。セミナーの際にも、皆さんがおっしゃっていたのは、「弊社の製品はニッチでWEBで検索されることがない」である。

そのため、その場でA社が想定している様々なキーワードで調査を行なったが、どれもこれも、検索回数が少なすぎて、本当に効果が出るのか?という判断が難しい状況だった。

デジタルマーケティングの取り組みを阻む壁「社内理解と現状のWEB運用体制」

A社はマーケティング部門がなく、WEBサイトの管理は総務部が兼務で行なっている。そのため、WEBにかけられるリソースも少ない。その結果、CV件数も年間で数件という形で、成果も低い状況だった。社内のWEBに対する期待値は低いのである。

さらに、A社の場合、過去にWEB制作会社にサイト制作を発注し、リード獲得を試みたが失敗し、苦い経験として社内に根付いていた。そのため、社内理解も少なく、WEB運用の体制も乏しい状況であった。

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デジタルマーケティングの取り組みをどう進めるか?

セミナーとディスカッションで課題点を共有できたので、その後、Bさんとは個別に意見交換を進めた。「何かデジタルマーケティングに取り組める方法はないか」を論点に様々な方法を検討した結果、弊社から下記のプロセスをBさんにご提案した。

(1)リソース・検索回数が少ないので集客強化は一旦あきらめCVRの改善に集中
(2)本当にCVRが改善できそうか、現在のサイトの詳細な分析をする
(3)分析結果から、どう改善すべきか?の改善プランを提示し実行
(4)改善後、効果がどうなったかを数ヶ月後にレビュー

(1)リソース・検索回数が少ないので集客強化は一旦あきらめCVRの改善に集中

この判断に至った理由は、A社の場合、デジタルマーケティングの対象製品のWEBページに毎月800UUほどのアクセスがあったからだ。そのため、仮にCVRが1%でれば、年間数件だったリード獲得件数も、月数件レベルに大きく向上する可能性があった。

さらに、検索回数はどのキーワードを調べても少ないので、SEO対策やリスティング広告に予算を使うよりも、CVR改善に予算を活用した方がA社にとって大きな価値を生むと考えた。限られた予算をうまく使い、最大の効果を得たかったというのがその判断の大きな理由である。

(2)本当にCVRが改善できそうか、現在のサイトの詳細な分析をする

(1)を前提に進める場合、問題は、既存アクセスの「価値」の判断である。月間800UUほどのアクセスがあるとはいえ、訪問者の顔がみえるわけではないため、どんな訪問者なのかを正確に把握する必要があった。そこで、Googleアナリティクスを活用し、訪問者の分析を行った。

メインで行った分析は、「訪問企業分析」と「企業別閲覧ページ分析」の2つである。

「訪問企業分析」は、ある特定のページを閲覧している企業名を分析することだ。「企業別閲覧ページ分析」は、その企業がどのページを見たのか?を分析することだ。

「訪問企業分析」と「企業別閲覧ページ分析」により、「本当にA社のリードとなり得る企業がWEBに訪問しているのか?」と「訪問しているならその企業はどのページを見てどんなニーズを満たしているのか?」の2つを確認することができる。

これを判断材料にして、CVRが改善できそうかを判断した。

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(3)分析結果から、どう改善すべきか?の改善プランを提示し実行

(2)の分析結果から、「A社のリードとなり得る企業からの訪問があること」、「各リードがどのようなページを見て何を知りたがっているのか?」の2つが確認できたため、具体的なWEBページの改善策を立案した。

特に力を入れたのは、「リードが欲しがっているコンテンツの準備」である。判断材料は少なかったが、ないよりはマシであるため、営業部門にもヒヤリングをしながら、予算をうまく活用し、WEBページの一部改定を行った。予算も限られたいたため、最小限の改定というイメージである。

(4)改善後、効果がどうなったかを数ヶ月後にレビュー

WEBページの改定作業は数ページ程度であったため、制作会社にかかった費用も少なくすみ、期間も1ヶ月程度で終了した。そして、改定後、2ヶ月間、様子を見て、いよいよ効果のレビューである。

レビュー当日、Bさんにお会いすると、「予想以上に問い合わせが来ている」とおっしゃり、データを見せていただけた。すると、2ヶ月で14件程度の問い合わせがあり、すでに商談に入っているリードもいくつかあった。

年間で数件しかなかった問い合わせが、2ヶ月で14件である。しかも、商談も発生している状況だ。そのため、施策は大成功と判断いただき、小さな改善であったが、A社としては大きな第一歩を踏み出せた結果となっている。

この結果を受けて、A社では、今後どのようにWEBを活用していくかの検討が始まっている。社内のリソースの問題や他の事業部でも応用できるかなど、様々な検討がなされている。

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BtoBの製造業におけるデジタルマーケティングの取り組みを進めるポイント

以上が、A社の成功事例のご紹介である。A社が成功できたポイントは3つある。

1つ目は、「検索キーワードみつからず集客できなくても既存アクセスをうまく使う」ことだ。少なくともWEBページが存在している以上は、何かしらアクセスがある。A社の場合は展示会や営業部の提案営業など、リアルの活動があったので、その効果がWEBアクセスとして出ているのだ。

2つ目は、「既存アクセスにリードとなり得る企業の訪問があるのかを分析し、そこからニーズを掴む」ことだ。BtoBである以上、アクセスが多いからといって、全訪問者がリードとは限らない。そのため、Googleアナリティクスで分析を行い、リード獲得の可能性があるかどうかを判断しなければならない。可能性がありそうなら、どんなニーズがあるのかも分析する必要がある。A社ではこの分析で判断材料をつくることができたので、成功できたと考えられる。

3つ目は、「ニーズに合わせたコンテンツを準備してCVRを改善する」ことだ。リードの企業名別の訪問ページを分析し、どういう製品の何を見ているのか?を詳細に把握しよう。そこから、どういうコンテンツにニーズがあるのか?が読み取れるはずだ。コンテンツニーズを材料に、WEBを予算内で改定すれば、CVRを改善できる可能性が高くなる。

この3つのポイントは、1つ目の「既存アクセスをうまく使う」ができたからこそ、実現している。これはA社だけに限った話ではなく、御社でも何かしら分析ができるかもしれない。

もっと言えば、「検索キーワードが見つからない」や「社内理解がない」といった状況でも、既存のリソース(予算や人材だけでなく、既存アクセスのようなリーソス)をうまくみつけだし、活用できれば、何か進められる可能性がある。

そう、工夫すれば何かできる可能性があるのだ。A社の成功事例は、工夫の重要性に気づかせてくれる事例といえる。

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WEB戦略の立て方・デジタルマーケティングの成功事例

弊社には、A社以外にもたくさんのデジタルマーケティングの成功事例がある。その内容の一部をまとめたPDF資料があるので、ご興味ある方はぜひダウンロードしていただければと思う。

WEBを活用したリードジェネレーション6つの成功事例
〜CVRを3倍、4倍に激増させたIT関連企業と製造業のWEB改善施策〜
https://btobmarketing.aluha.net/contact/white-paper/#r01

また、弊社の成功事例を支えているWEB戦略のフレームワークについて説明しているPDF資料もある。こちらも合わせてダウンロードしていただければ、参考になると思う。CVRを改善するための「WEB戦略の立て方」を詳しくご紹介している。

BtoBのWEB戦略の立て方(WEB戦略の年間計画シートのサンプル付き)
https://btobmarketing.aluha.net/contact/white-paper/#r16

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ABOUTこの記事をかいた人

株式会社ALUHA代表取締役。1979年兵庫生まれのBtoBマーケティングコンサルタント。金沢工業大学大学院にて情報工学を専攻し2003年4月にALUHAを創業。2008年からBtoBに特化したマーケティング支援、営業戦略支援を開始。BtoBマーケティングや営業戦略の戦略立案から、計画実行とPDCA、そして人材育成を伴走型で支援。デジタルとリアルを融合させた戦略設計が得意。毎月全国各地の様々な企業でBtoBマーケティングセミナーを実施中。100社以上でのセミナー講演実績を持つ。大手IT企業、製造業(日立Gr、富士フイルムGr、キヤノンGr、積水Grなど)を顧客に持つコンサルタント。→セミナー講演実績→コンサル実績