BtoB企業では、デジタルを活用したBtoBマーケティング施策が活発に展開されている。デジタルを活用したBtoBマーケティングでは、WEBやメールなどのデジタルコンテンツの拡充が非常に重要な業務となる。しかし、デジタルコンテンツ作りでは、部門間・関係者間で「なかなか推進できない」といった課題が発生する。実際に弊社にも下記のようなご相談をいただいた。
そこで今回のコラムでは、部門間・関係者間でデジタルコンテンツを作るときの2つの課題とその課題を解決するポイントについて解説する。
部門間・関係者間でデジタルコンテンツを作るときの2つの課題
部門間・関係者間でデジタルコンテンツを作るときには、主に下記の2つの課題が発生することがある。
- なんのために作るのか?の目的(KPI)が曖昧で共有および納得できていない
- 目的(KPI)を達成するためのコンテンツ制作プロセスが曖昧
この2つの課題は、「あるKPIを改善すべくコンテンツ作りを進めたいと考えている担当者」と「実際にコンテンツ作りを行う担当者」、そして「コンテンツの内容やマーケティング全体を確認・管理している責任者」との間での「コンテンツ作りの意図の共有」ができていないことが要因で発生する課題と言える。
この2つの課題により、デジタルコンテンツ作りが効率よく進まず、マーケティング施策が遅れてしまうこととなる。
なんのために作るのか?の目的(KPI)が曖昧で共有および納得できていない
BtoBマーケティング施策において、デジタルコンテンツ作りには、必ず目的(KPI)がある。たとえばWEBコンテンツであれば、「アクセス数の増加」や「CVRの改善」だ。
この目的(KPI)を関係者間・部門間で明確に設定しなければならない。これが曖昧だと、コンテンツを作る担当者は「自分が書きたい内容を書く」ことになり、仕上がったコンテンツを確認する担当者は、「思っていたコンテンツと違う」といったことになる。
さらに、目的(KPI)を明確に設定するだけでは足りない。その目的(KPI)を改善しなければならない理由の共有も重要だ。つまり、「なぜ目的(KPI)を改善するのか?」である。ここに説得力がなければ、「施策の重要性」が伝わらず、後回しにされてしまう。
そのため、「目的(KPI)の明確化」、「改善する理由の具体化」、「それらの共有」がおろそかになると、デジタルコンテンツ拡充は遅々として進まない。
目的(KPI)を達成するためのコンテンツ制作プロセスが曖昧
「目的(KPI)を達成するためのコンテンツ制作プロセスが曖昧」とは、本当にそのプロセスで進めてKPIが改善されるのか?客観的な論拠が少ないプロセスのことを言う。
このようなプロセスでデジタルコンテンツ作りを進めると、コンテンツを作る担当者は「自分が思うやり方」でコンテンツ作りを進めてしまう。「自分が思うやり方」で目的(KPI)が改善されるのであればよいが、改善されなければ、コンテンツを作る担当者は「デジタル活用は効果がない、効果がなかった」と判断してしまう。
そうなると、マーケティング施策を展開するたびに、「前回効果がなかった」と言われるようになり、結果的に進まなくなる。
2つの課題を解決するポイント
では、この2つの課題を解決するためのポイントをご紹介する。
ポイント1:目的(KPI)の選び方・設定の仕方を工夫
「なんのために作るのか?の目的(KPI)が曖昧で共有および納得できていない」の課題を解決するには、目的(KPI)の選び方がポイントとなる。
デジタルコンテンツには、様々な目的(KPI)が設定されるが、目的(KPI)には、「重要性」という重みがある。
たとえば、WEBからのCV件数をKGIとしたとき、「アクセス数」「CVR」「滞在時間」「直帰率」「離脱率」などのKPIでは、どれが最も重要なKPIと言えるだろうか?最も重要なのは当然、CVRだ。なぜなら、CVRを改善すればCVが増えるからだ。KGIに直結する(直接影響のある)KPIだからこそ、重要度が高いのである。これが重要性である。
この重要性は連鎖(例:KPI:Aを改善するにはKPI:Bも改善しないといけないなど)していくため、「連鎖したKPIの中からピンポイントで重要なKPIを見つけ出し、そのKPIに焦点を当ててKPIを選定する」こととなる。
言い方を変えれば、「どのKPIを改善すれば最も効率がいいか?」をしっかり考えているかどうか?である。その考察こそが「KPI選定の根拠」を作り出し、関係者への説得力強化にもつながっていく。
御社のKPI選定、KGIを改善するために最も効率のよいKPIを選べているのか、今一度、検証してみてほしい。
ポイント2:施策のプロセスに客観的なエビデンスと成功体験をつける
ポイント1ではKPI選定の重要性をご紹介した。重要度の高いKPIを選定することで、関係者に対してそのKPIを改善しなければならない理由を明確に説明できるようになる。
これができたら、次は「施策のプロセスに客観的なエビデンスと成功体験をつける」だ。選定したKPIを改善するためのプロセスに「客観的なエビデンスと成功体験」を付与していくのである。
まず、「客観的なエビデンス」とは、そのプロセスで進めると効果が出そうと関係者が思えるだけの論拠のことだ。たとえばWEBコンテンツを作る場合の客観的なエビデンスの例としては、下記の2つが挙げられる。
- 検索キーワードのサジェストワードから検索ユーザーの検索意図を分析したデータ
- WEBに力を入れている競合サイト(WEBで成果を出していることが条件)のWEBコンテンツの分析データ
上記2つの例はすべて「検索ユーザーのキーワードデータ」「競合企業のWEBサイトデータ」という客観性のあるデータだ。こういった客観的なデータを根拠として示し、こういう根拠があるからこそ、こういうプロセスで進めなければならないと示すのである。
こうすることで、「コンテンツ作りのプロセス」に「確かにこのプロセスで進めれば、選定した重要なKPIが改善しKGIも改善するかも」という期待値を高めることができる。
そして、さらに、そのプロセスに、過去の成功体験があれば付与しておくと良い。成功体験とは、「過去に同じプロセスで進めたらこういう結果になった」という社内の過去の成功事例である。これがあれば、ますますプロセスに対して説得力、実現性、確実性が向上し、信頼性も高くなっていく。
以上、この2つのポイントがコンテンツ拡充を進める重要なポイントとなる。
まとめ
BtoBマーケティングのデジタル活用において、デジタルコンテンツ作りの弊害となる2つの壁とその壁を突破するポイントについて解説した。
ポイントを再度まとめると下記のようになる
- KGIに対して重要度の高い(影響力の高い)KPIを選ぶこと
- 選んだKPIを改善するコンテンツ作りのプロセスに「客観的なエビデンス」と「成功体験」を付与すること
「1」でKPIの選定をミスすると「コンテンツを作ってもなかなかKGIが改善しない」となり、効率が悪くなる。「2」でミスすると「仕上がったコンテンツに対して何か違う」という無用な議論を展開することとなりスピード感が落ちてしまう。
だからこそ、このポイントは重要だ。ぜひ御社でもこのポイントに対処できているか、確認してほしい。