IT企業のデジタルマーケティング手法「競合製品からのリプレイス機会を作る6つのプロセス」

リードの不平不満の収集から始めるリプレイス機会作り
Last Updated on 2023年2月18日 by 荻野永策

BtoBの営業戦略において、自社製品・サービスを提案する際に、クロージングや商談進行の障壁となるのが、「リードが今使っている競合製品や代替手段」である。

なぜなら、何かしらの製品やサービスを提案する場合、必ずリードは「リードが今使っている競合製品や代替手段との比較」を行うからだ。特にBtoBはその傾向が強い。

リードジェネレーションの段階では、「リードが今使っている競合製品や代替手段」があるために、なかなかリード獲得ができないし、リードナーチャリングの段階では、「リードが今使っている競合製品や代替手段」があるがゆえに、「商談が進まない」といった状況に陥る。

その代表例が、IT製品だ。例えば在庫管理システムの場合で考えてみよう。「現在、エクセルで在庫管理しているリード」に対して、在庫管理システムを提案する場合、リードは「今のエクセルの方法と比べてどうなのか?」を判断する。「現在、他社の在庫管理システムを活用しているリード」であれば、「今使っている他社の製品と比べてどうか?」を判断する。

このような障壁は、特にニッチ産業で飽和している市場であればあるほど強くなる。事実、弊社のアンケート調査でも、下記のような回答を頂いている。

ニッチ産業で市場が飽和しつつある。競合製品からのリプレイスを狙う機会も増えてきているが、有効な戦略が立てられていない。
(2019年5月22日 IT企業 Gさんからの回答)

そこで今回のコラムでは、IT製品を例にして、デジタルマーケティングを活用した「競合製品からのリプレイス機会を作るプロセス」についてご紹介しよう。

リプレイス機会を作るデジタルマーケティングプロセス

今回ご紹介するデジタルマーケティングプロセスは、既存のリードから「リードが今使っている競合製品や代替手段」に対する不平不満を聞き出し、そこからリプレイス機会を作り出していくというプロセスだ。リードナーチャリングだけでなく、リードジェンレーションにも応用できるプロセスとなっている。

リード「個人」の不平不満は、その不平不満がだんだん大きくなり、部門全体に広がっていくと、部門の不平不満に変わっていく。ここまでくれば、「部門の業務課題」として課題認知され、製品の見直しを検討し始めるレベルになる可能性が高い。

そのため、部門として課題化する前の不平不満をリードから聞き出すことが、リプレイス機会を作ることにつながるのである。

それでは、具体的なデジタルマーケティングプロセスをご紹介しよう。全部で6段階ある。プロセスの1から5は、既存リードからの不平不満を聞き出すプロセス、そしてプロセス6でリプレイス機会を作り出すことを狙う。

IT製品のリプレイス機会を狙うデジタルマーケティングの6プロセス
  1. 自社製品を使っていないターゲットリストを作成(個人情報が分かっていることが条件)
  2. ターゲットリストをマーケティングオートメーションに登録
  3. ターゲットリストに対する課題調査のアンケートを設計しアンケートフォームを作成
  4. マーケティングオートメーションからアンケートメールを配信
  5. アンケートの結果を集計しリードの課題を分析
  6. 課題別のソリューション提案資料を作成しリードに提案する

それでは、各プロセスの具体的な内容をご紹介しよう。その後、実際に実行して成果を上げた弊社の事例(IT企業の事例)もご紹介しよう。

(1)自社製品を使っていないターゲットリストを作成(個人情報が分かっていることが条件)

最初のプロセスは、「自社製品を使っていないターゲットリストを作成」だ。個人情報(社名、名前、メールアドレス)が分かっているリードを、自社が保有するハウスリストから抽出しよう。例えば、在庫管理システムであれば、在庫管理担当者のリストとなる。過去の名刺データを整理して作ってみよう。

(2)ターゲットリストをマーケティングオートメーションに登録

次に、作成したターゲットリストをマーケティングオートメーションに登録しよう。マーケティングオートメーションを導入していない場合は、メール配信システムでもよい。メールを一斉配信できる状態を構築できればOKである。

(3)ターゲットリストに対する課題調査のアンケートを設計しアンケートフォームを作成

マーケティングオートメーションなどに登録したら、ターゲットリストに対する課題調査のアンケートを設計しアンケートフォームを作成(マーケティングオートメーションでも作成できる)しよう。

ターゲットリストのリードは現在、御社の製品以外の何らかの手法で業務を進めている。そのため、ターゲットリストに対して下記のようなアンケートを行うと良い。

アンケートの内容
  • いつから他社製品を使っているか?(必須)
  • その製品の名前は?(任意)
  • その製品の良い点は?
  • その製品の不便だと思う点は?

このアンケートで最も聞きたい点は、「いつから使っているか」「製品の名前」「不平不満」の3つである。製品の名前については、コンプライアンスの関係で回答できないケースもあるため、一応任意回答にしておこう。

「いつから使っているか」を知ることで、製品の入れ替え時期かどうかの判断ができる。導入して間もないのであれば、リプレイスは難しい可能性が高い。「製品の名前」を知ることができれば、これが御社の最大の競合製品となる。その製品のWEBサイトを調べ、自社製品との差を分析しよう。リプレイス提案の際に役にたつ。そして、最も重要なのが不平不満だ。これを知ることができれば、少なくともそのリード個人が抱えている製品の不平不満がわかる。「この機能のこの部分が使いにくい」など、いろんな不満がでてくるだろう。

このような狙いでアンケートの質問を設計しよう。そして、アンケートフォームを作成する。アンケートフォームはWEBフォームを作成できる製品があれば誰でも簡単に作成できる。

(4)マーケティングオートメーションからアンケートメールを配信

アンケート設計とアンケートフォームの作成が完了したら、アンケートメールをライティングする。

例えば在庫管理システムであれば、「在庫管理業務で活用する製品に関するアンケートのお願い」といった件名でメールをライティングしよう。回答率を高めたいのであれば、何か回答のお礼をつけるのもよい。

(5)アンケートの結果を集計しリードの課題を分析

メールをライティングしたら実際に配信を行い、アンケート回答があれば集計しよう。「今活用している製品」を回答してくれている場合は、今活用している製品ごとに不平不満を整理すると良い。そうすれば、競合製品別の不平不満リストが完成する。これは営業戦略、差別化戦略上、大きな武器になるだろう。

逆に、今活用している製品がわからない場合は、不平不満をリストアップして、不平不満をカテゴライズしていこう。たとえば、在庫管理システムであれば、「問題在庫の早期発見に関する不平不満カテゴリ」という具合だ。このほか、「機能Aに関する不平不満カテゴリ」といった機能別のカテゴライズでもOKだ。

ここまでのプロセスで、「リードが今使っている競合製品や代替手段」に対する不平不満を収集することができる。そしてここからがリプレイスの勝負どころだ。

(6)課題別のソリューション提案資料を作成しリードに提案する

競合製品別の不平不満リストや、カテゴライズされた不平不満リストが完成したら、そこから、解決策の提案書を作成しよう。その提案書は、下記のような構成にすると良い。

在庫管理の場合の例
  1. 在庫管理業務でこんな不平不満ありますよね?
  2. その課題、弊社のこの製品ならこういう風に解決できます。
  3. なぜならこういう仕組み・特長があるからです
  4. 不平不満を放置しなくてよかったという解決事例の紹介。
  5. 実際に弊社製品を導入する場合の手順(リプレイス手順)

「1:在庫管理業務でこんな不平不満ありますよね?」については、競合製品別の不平不満リストや、カテゴライズされた不平不満リストからピックアップして作成する。できるだけ個人の不平不満に焦点を当てた泥臭い不満を書いていくと良いだろう。注意点は、競合製品名を提案書内に記載しないことだ。「この製品を使っていてこういう不便さありますよね?」などと記載すると、いわずもがな、非常にまずい。あくまで、製品名は掲載せず、今使っている製品でこういう不満ありませんか?というレベルにとどめておこう。

「2:その課題、弊社のこの製品なら解決できます。」「3:なぜならこういう仕組みがあるからです」については、その名の通り、定義した不平不満を御社の製品でどう解決できるのか?を画面イメージ、操作イメージを交えながら丁寧に説明する。現在使っている製品とはここが違うという点を、リードの不平不満に合わせてピンポイントで紹介するのだ。

「4:不平不満を放置しなくてよかったという解決事例の紹介」については、そのまま、解決事例を紹介する。これが課題解決の客観的な根拠となる。上述したように、個人の不平不満はそのうち、部門の業務課題化していく可能性が高い。そのため、早めに対処できてよかった(放置しなくてよかった)というような事例だと、リードにとって非常に読み応えのある事例コンテンツとなるだろう。このような事例がない場合は、今後の事例インタビューの際にヒヤリング項目として追加しておこう。

そして最後に「5:実際に弊社製品を導入する場合の手順(リプレイス手順)」だ。これは実際に御社製品をリプレイスする場合の手順を説明すると良い。この手順があれば、リードが上長や関係者に提案書を展開しやすくなり、リプレイスの検討も進めやすくなる。

このような提案資料を不平不満の数だけ作成し、アンケート回答してくれたリードに展開しよう。そうすれば、「詳しい話が聞きたい」といったコンバージョンを獲得できる可能性が高くなる。これが、リプレイス機会となり、リードナーチャリングにもつながる。

「ソリューション提案資料」を横展開してリードジェネレーションに活用

以上がリプレイス機会を作るプロセスだ。そして、さらに、このプロセスには「続き」がある。プロセス(6)で作成した「ソリューション提案資料」を横展開するのだ。

どういうことか、具体的にご説明しよう。

「ソリューション提案資料」は、ある競合製品を使っているリードの不平不満を解消する提案書となっている。そのため、既存のリードにだけでなく、未知のリードに対する提案書としても活用できるのだ。なぜなら、あるリードが持っていた不平不満は、他のリード(未知のリード)も同じように持っている可能性があるからだ。

たとえば、展示会で自社ブースに来場した未知のリードに、「ソリューション提案資料」を配布するのもアリだ。来場したリードは「何かしらの製品をつかっているはず」である。自社ブースに来場しただけでは、その製品はわからないが、「ソリューション提案資料」を来場者が見た時、「うちにもこの不満あるんだよ」となれば、商機である。そのまま、その不満の具体的な内容をその場で聞き出し、「ソリューション提案資料」を用いながら、自社製品の紹介をしよう。そうすれば、未知のリードへのリプレイスも可能となり、リードジェネレーションにも繋がるだろう。

これが「ソリューション提案資料」の横展開だ。

リードナーチャリングでリプレイス機会を作った実際の事例

このようなプロセスを実際に実行したIT企業がある。その詳細は下記のコラムで概要をご紹介しているので、ぜひご覧いただければと思う。2500件のリードに対して、最終的に約30件の案件を創出することができた(ただし全部がリプレイスではない)。

BtoB(IT企業)のリードナーチャリング事例「成功の秘訣は課題調査」

リードナーチャリングの成功事例「課題調査から案件創出する方法」

2019年3月30日

デジタルマーケティングでリプレイス機会を作る方法のまとめ

デジタルマーケティングでリプレイス機会を作るプロセスをご紹介した。ポイントは4つある。

1つ目は、今リードが使っている製品・サービスを知ることだ。これが最大の競合となる。それと比較してどうか?を提案し、リプレイスを狙おう。

2つ目は、リードの不平不満を「部門課題化」する前にキャッチすることだ。早いタイミングで接点が作れていれば、実際に導入・クロージングの際に先行者利益が発生し、受注率も上がるだろう。

3つ目は、リードの不平不満に合わせたソリューション提案書を作成することだ。「あなたの不満を解決する」と個人レベルにまで落とし込めれば、提案書としては御の字である。

4つ目は、ソリューション提案書を展示会などで配布し、リードジェネレーションのフックとして活用しよう。そうすれば、リプレイス機会を横展開できる。

この4つのポイントを意識しつつ、リプレイスの機会創出を作っていただければと思う。

今、この瞬間もリプレイス機会を逃しているかもしれないので、まずはターゲットリストの作成から始めてみよう。このプロセスの流し方がわかり、成功体験を手に入れれば、様々な自社製品で活用できるプロセスになるため、一度実行してみてはいかがだろうか?


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