営業戦略とは?フレームワークによる戦略の立て方と具体例やPDCAの回し方、営業手法を詳しく解説

営業戦略とは?フレームワークによる戦略の立て方と具体例やPDCAの回し方、営業手法を詳しく解説
Last Updated on 2025年9月28日 by 荻野永策

BtoBの営業戦略と営業計画の立案手順、PDCAの回し方について動画とパワーポイントテンプレートやエクセルテンプレートでわかりやすく解説する。さらに、ターゲティングやセールスメッセージの決め方、営業戦略の立案具体例、BtoB企業の具体的な営業手法についても解説する。

営業戦略とは?

営業戦略とは、自社の営業リソース(人、もの、予算、時間、情報など)を効率よく活用し、効果的な売り方で営業目標を実現する方策のことだ。

わかりやすく一言で言えば、「自社の持っているリソースを効率よく使って、売上を最大化するにはどうすればいいか?の方策を考えること」と言える。

営業戦略と営業戦術の違い

営業戦術とは、具体的な営業の手法やツール・手段のことをいう。営業戦術は、営業戦略を立案する際に必ず検討しなければならないものだ。営業戦術は予算・人・時間といったリソースを使うため、そのリソースを効率よくどう活用すればいいのか?を考える必要があり、それが営業戦略である。

営業戦略と営業戦術の違い

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営業戦略を「作戦・戦術・計画」に分解して戦略立案する手順書(営業計画などの4つのテンプレート付き)

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BtoB営業戦略の立て方「4つのテンプレート」

BtoB営業戦略の立て方「4つのテンプレート」

営業戦略の責任者が知っておくべき「営業の軸」となるセールスメッセージの決め方

営業KPIを改善し、営業の軸となる「セールスメッセージ」をどのように決めていくべきか、その手順や考え方をまとめたPDF資料です。営業を根本から見直ししたい時に参考になります。

フレームワークによる営業戦略の立て方6つのステップ

それでは営業戦略を立案する手順・ステップをご紹介する。営業戦略を立案する手順としては主に以下の6つの手順がある。

  1. 営業戦略の目標(KGI・KPI)を決める
  2. フレームワークを活用し営業課題や現状を分析をする
  3. 差別化戦略を具体化する(ターゲットの具体化とセールスメッセージ)
  4. 営業方針を決める
  5. 営業を作戦・戦術に分解し営業戦略と計画(アクションプラン)を策定する
  6. 営業戦略のPDCAを回す(KPIを可視化する)

それでは各手順について詳しくご紹介しよう。

手順1:営業戦略の目標(KGI・KPI)を決める

営業戦略の目標は、売上、受注件数、シェアなどが設定されることが多い。この時、自社目線で決める決め方と市場目線で決める決め方がある。自社目線の決め方は、「欲しい売上」が基準となり、市場規模を考慮せずに決めてしまうといつまでも達成不可能な目標となってしまう。このため営業目標を決める時は注意が必要だ。詳しい営業目標の決め方については下記のコラムで解説している。

営業目標の立て方。KGIを決める方法とKPIを設定する方法

営業目標の立て方|営業の目標設定方法(KGIとKPI)と具体例

BtoBの営業戦略で活用されるKPIは、ターゲット率、リード獲得コスト、APO率、商談率など、無数のKPIが存在する。しかも営業戦術(手法)別に存在するため、全てのKPIをリストアップすると非常に大変だ。

そこで、弊社であらかじめKPIとして選定すると効果的なKPIを108個リストアップした。営業戦術(手法)別にリストアップしている。詳細は下記のコラムでまとめているので参照してほしい。

BtoB営業戦略の108のKPI一覧表

営業KPIとは?108個の営業活動KPI例と設定方法、指標の決め方

手順2:フレームワークを活用し営業課題や現状を分析する

営業戦略を立案するには、自社の内部の分析と、競合や顧客、市場などの外部の分析が必要となる。内部分析と外部分析をさらに細かく分けると、下記の5つの営業分析が必要となる。

営業分析の主な種類
競合分析競合分析とは、自社製品・サービスと競合する製品・サービスの特長や強み、価格、シェアなどを分析すること。
市場分析市場分析とは、自社が参入しようと考えている市場の動向やトレンド、特性、市場規模などを分析すること。
顧客分析顧客分析とは、顧客の購買行動や課題を分析すること。顧客の購買行動を分析して全容を把握すれば、営業戦略を立案する際にどのようなシナリオを組めばよいのか検討しやすくなる。
売上分析売上分析とは、自社の売上データを分析し、最優良顧客の把握や、今後の売上予測を行う分析のことだ。数値から行う顧客分析といえる。
自社分析(営業課題分析)自社分析とは、自社の営業リソース、今の営業の状況を分析することだ。営業の現状を把握し、今の営業課題を正確に把握することが大きな目的となる。

このような営業分析を行う時にはさまざまなフレームワークや分析手法を活用する。

営業分析に必要な5つの分析と分析フレームワーク

営業戦略フレームワーク「戦略立案や分析に活用できるフレームワーク」

手順3:差別化戦略を具体化する(ターゲットの具体化とセールスメッセージ)

ターゲティングとは、自社の強みを活かせる市場を選ぶことだ。わかりやすい表現に変えれば、「自社製品やサービスと相性の良い顧客(市場)を絞り込むこと」だ。

ターゲティングは、差別化戦略を具体化する上でも非常に重要だ。差別化は「顧客から見た強みは何か?」であるため、その顧客を絞り込み、具体化できると、差別化しやすいのである。

顧客を絞り込んでいくため、ターゲティングは「売りたい相手」と「売り込まない相手」を決めることになる。ターゲティングにより「売りたい相手」のイメージ像が具体化できていれば、その相手に対して自社の強みをフル活用し、自社のリソースを集中投下することで、シェアと売り上げを拡大していくことができる。営業リソースをどう使うか?という戦略的視点から見てもターゲティングは非常に重要だ。

BtoBターゲティングのやり方

BtoB営業のターゲティングは、一般的には「会社属性情報(業種、部門、従業員数、年商、拠点数など)」と「担当者の属性情報(所属部門、役職、業務内容、課題など)」を具体化しターゲティングを進める。例えば、「年商300億円以上の食品製造業で生産部門に所属する課長以上の人」というイメージだ。

しかしこれだけではまだまだターゲティングというと抽象的であるため、さらに「高いLTVが期待できそうかどうか?」「どんな課題を抱えているか?」などといった内容も加えていくと、より鮮明なターゲット像が具体化できる。

そのターゲティングの主なプロセスは以下の通りである。

BtoBターゲティングの主なプロセス
  1. (1)LTVを高めるKPIと顧客リストを作成
  2. (2)顧客を分類
  3. (3)顧客の課題調査と課題分析
  4. (4)ターゲティング
  5. (5)ペルソナの設計と作成

このプロセスの詳細な説明をPDF資料にまとめているので、「BtoB企業のターゲティングの仕方質の高いリードを獲得するためのターゲティングとペルソナ設計プロセス」をぜひ参照してほしい。

具体例も交えながら高いLTVが期待できるBtoBターゲティングのやり方を詳しく解説している。

BtoB営業のセールスメッセージの決め方

セールスメッセージとは、自社製品やサービスの「価値(強みがもたらす顧客にとっての価値)」を具体化した営業のメッセージのことだ。自社製品やサービスの強みや特長、アピールポイントを「一言で言うとどうなるのか?」を具体化するイメージである。ただし、すべての顧客に刺さるセールスメッセージなど存在しないため、ターゲティングした顧客ごとにセールスメッセージを変えていくといった工夫も必要だ。

セールスメーセージは営業の軸となるものであり、この軸がしっかりしていると、営業KPIの改善に貢献する可能性が高くなる。

セールスメッセージは、「自社の強み」や「ターゲティング」と密接に絡み合っているため、「自社の強み」と「ターゲティング」を具体化してから検討するとよい。

セールスメッセージの決め方についても、その手順をPDF資料にまとめた。特に自社の強みが生きるセールスメッセージをどのように決めていくか?に焦点を当てた内容となっており、以下のような手順でセールスメッセージを決める。

PDFで紹介しているセールスメッセージの決め方
  1. 顧客・リードの課題を調査
  2. 顧客の課題分析
  3. 自社分析(自社の強みか解決できる課題の分析)
  4. 相思相愛表を作成
  5. セールスメッセージを具体化

この手順を詳しく解説したPDF資料「営業戦略の責任者が知っておくべき「営業の軸」となるセールスメッセージの決め方」を無料配布しているので、詳しく知りたい方はぜひ参考にして欲しい。

手順4:営業方針を決める

営業戦略の立案における営業方針(営業活動方針)とは、営業戦略を立案するにあたり、営業リソース(人材やコネ、予算など)をどう活用すべきか?の活用方針を決めることだ。自社の現状とリソースを把握し、その上で、営業の何を優先すべきか?どんな戦術(営業手法)を活用すると効率化いいか?などの全体的な方針を決める。事前に決めておくと営業戦略を立案し具体化する際にスムーズに進められる。

例えば、営業分析の「KPIツリー分析」により、現状の営業プロセスが「図:KPIツリー分析の例」のような状況だったとしよう。

図:KPIツリー分析の例

図:KPIツリー分析の例

この場合、見込み客を獲得しても育成につながっていないことがわかる。ここが営業のネックだ。この時、営業活動の方針としては、「2つの選択肢例」が考えられる。

育成専任チームを設置する場合は、「人中心」のリソース活用となる。人材に余力がある場合は問題ないが、余力がない場合は、商談化・受注・顧客維持といった重要な業務の時間を削減し、育成に割り当てることになる。

デジタルを活用した育成チームを構築する場合は、マーケティング部門などと協力し、育成をデジタル化することとなる。育成専任チームよりも臨機応変な対応は難しいものの、デジタルを使うことで営業部門の人材は商談化・受注・顧客維持といった重要な業務に集中できるようになる。

このように選択肢を作り、そこからどういう方針でいこうか?と事前に決めておく。これが営業戦略における営業方針の例だ。

2つの選択肢例
  1. 見込み客の育成をより強化するために育成専任チームを設置し育成を強化する
  2. 見込み客の育成段階では「売れるかどうかがわからない」ケースが多いためデジタルを活用した育成チームを構築する

手順5:営業を作戦・戦術に分解し営業戦略と計画(アクションプラン)を策定する

ここまで準備できたら、いよいよ営業戦略と営業計画(アクションプラン)の立案だ。その立案手順は主に3段階あり、以下の流れで進める。

営業戦略と営業計画(アクションプラン)の立案手順
  1. 戦略を作戦に分解する
  2. 作戦毎に戦術を選定する
  3. 営業アクションプラン(営業計画)を立案し実行する

立案手順の詳細は後ほど、動画で詳しく説明するが、先に各手順の概要のみご紹介する。

戦略を作戦に分解する

営業戦略を作戦に分解する段階では、営業目標を達成するために実現しなければならないことを作戦として分解していく。営業目標は売上の向上であるため、そこから逆算すると、例えば以下のような作戦に分解できる。

  1. 見込み客を獲得する作戦
  2. 見込み客を育成する作戦
  3. 営業案件を創出しクロージングする作戦
  4. 獲得した顧客を維持する作戦

作戦毎に戦術を選定する

次に、作戦ごとに戦術(営業手法)を選定する。ここでは、営業方針に従って、各作戦をどんな手法で実現するか?を考えていく。戦術選定という段階だ。人中心であれば、全ての作戦は人が実施することとなる。逆に人手不足であれば、何かの作戦をデジタル化していくことを考えなければならない。

営業アクションプラン(営業計画)を立案し実行する

作戦に対して戦術が決まれば、あとは「誰がいつまでにやるか?」という計画を策定する。これが営業のアクションプランだ。この時、各戦術にはKPI(その戦術で達成すべき指標)があり、それを達成するためにどう動くか?どのようにPDCAを回すかを考えていくこととなる。営業計画(営業アクションプラン)の立て方については以下のコラムでも詳しく解説している。

営業アクションプランを立案・具体化するプロセスとエクセルフォーマット

営業計画(営業アクションプラン)の立て方|営業計画書のテンプレート付き

以上が3段階の手順の概要だ。立案方法の詳細については、以下の10分程度の動画でわかりやすく解説している。また動画をご覧いただく前に「営業戦略の立案用パワーポイントテンプレート」を事前にダウンロードしておこう。動画を見ながらぜひ戦略立案を進めてほしい。

この動画の内容については、同じ内容をPDF資料にもまとめている。PDF資料には、戦略立案に必要なパワーポイントのテンプレートや、営業計画立案のエクセルテンプレート、KPI可視化のエクセルテンプレートなどもあるので、ぜひ戦略立案に活用してほしい。

PDF資料の主な内容
  1. 営業目標(KGI・KPI)の決め方
  2. 立案の前にやっておくべき競合・市場分析などの5つの分析
  3. 営業戦略の立て方(立案用パワポテンプレートと戦略俯瞰シートサンプル付き)
  4. デジタルも含めたBtoBの営業戦術一覧と戦術別の主なKPI例
  5. 営業計画の策定方法(エクセルテンプレート付き)
  6. PDCAの回し方(KPIツリーのテンプレート付き)
  7. デジタルを活用した戦略立案の具体例
  8. 営業デジタル化(営業DX)のメリット・ポイントと取組事例

手順6:営業戦略のPDCAを回す(KPIを可視化する)

営業戦略のPDCAを回すプロセスは以下の通りだ。

営業戦略のPDCAの回し方プロセス
  1. PDCAレポートのフォーマットを作成
  2. KPIの計算方法をルール化
  3. ベースKPIを算出
  4. 営業計画(営業アクションプラン)に従い営業活動を展開
  5. 再度KPIを測定しベースKPIと比較
  6. 改善すべきKPIを選定し具体策を検討
  7. やるべきことを実行し再度KPIの計測へ

各プロセスの概要についてご紹介しよう。

PDCAレポートのフォーマットを作成

PDCAレポートとは、継続的に測定すべきKPIを可視化するレポートのことで、KPIツリー(ロジックツリー)とも呼ばれている。営業戦略のKPIダッシュボードのようなものであり、計測すべき数値を俯瞰することが可能だ。

例えば、WEBを活用して新規リード獲得を実行するという場合、PDCAレポートを作成すると以下のようになる。

PDCAレポートのフォーマット

営業のPDCAレポートのフォーマット

このようなフォーマットを営業の戦術毎に作り、レポートのフォーマットとして準備しておこう。

KPIの計算方法をルール化

PDCAレポートのフォーマットを作成したら、次は、KPIの計算・算出方法のルール化だ。KPIは数値化される必要があるため、数値の算出方法(どんなツールを使って、どのような条件・ルールで計算するか?)を細かく決めなければならない。

ベースKPIを算出

計算方法を決めたら、ベースKPIの算出だ。ベースKPIとは、PDCAサイクルのベースとなるKPI(初期のKPI)のことで、わかりやすく言えば、「現段階のKPIの実測値」のことである。PDCAサイクルは改善を繰り返すサイクルであるため、今のKPIを基準値にすることで、改善できているかどうか?営業活動に効果があるかどうか?を数値で確認できようになる。

営業計画(営業アクションプラン)に従い営業活動を展開

ベースKPIの算出が完了したら、営業計画(営業アクションプラン)に従い営業活動を展開しよう。実際に活動するのである。各KPIを高めるためにやるべきことを実行する段階だ。営業活動を展開しながら、次にKPIを測定する日時を決めておくと良いだろう。

再度KPIを測定しベースKPIと比較

営業活動を展開したら再度、PDCAレポートのフォーマットと計算ルールに従い最新のKPIを算出する。最初に算出したベースKPIと最新のKPIがどう変化しているか?を比較する。

改善すべきKPIを選定し具体策を検討

比較したらどこかが悪くなっていることや、数値が伸びていないといったことがわかるようになる。そういった箇所が戦術のネックとなり、戦略のネックとなっているため、改善策を検討しよう。

やるべきことを実行し再度KPIの計測へ

改善策を検討したらその改善策を実際に実行する。そして再度、日時を決めてKPIを測定し、ベースKPIや前回KPIとの比較を行う。これを繰り返すことで、営業戦略のPDCAサイクルを効果的・効率的に回すことができる。

営業戦略のPDCAの回し方については、以下のコラムでもより詳しく解説している。以下のコラムでは、営業KPIの可視化レポートのエクセルサンプルを交えながら、PDCAの回し方について解説している。

営業戦略のPDCAの回し方とレポートフォーマット

営業戦略のPDCAの回し方を具体例とあわせて解説【サンプルシート付】

営業戦略の立案や営業改善・強化に関する無料のPDF資料

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BtoB営業戦略の立て方「4つのテンプレート」

BtoB営業戦略の立て方「4つのテンプレート」

営業戦略の責任者が知っておくべき「営業の軸」となるセールスメッセージの決め方

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営業戦略の立案に使えるフレームワークとその具体例

それでは、営業戦略の立案において、各種分析に活用できるフレームワークの概要とその具体例をご紹介する。

営業戦略の立案に使える8つのフレームワークや分析手法
3C分析「Customer(市場・顧客)、Competitor(競合)、Company(自社)」の分析から外部環境を把握し、自社の事業を成功させる要因を特定できるフレームワーク
4P分析製品・サービスをProduct(自社製品・サービスの価値)、Price(価格)、Place(提供方法)、Promotion(販促方法)の4つの視点から分析するフレームワーク
SWOT分析自社の内部環境と外部環境をプラス要因とマイナス要因に分けて分析するフレームワーク
PEST分析外部環境が自社に与える影響について分析するフレームワーク
ファイブフォース分析外部環境を5つの要因から分析することで競争状況を把握するフレームワーク
セグメンテーション分析顧客をさまざまな切り口で分類し、分類した顧客ごとに顧客を分析する手法
テキストマイニング膨大なテキストデータから有益な情報を発掘する分析手法
USP分析顧客から見た自社製品・サービスの強みを分析する手法

上記のように8つのフレームワークがあるが、ここでは、特に代表的な3C分析、4P分析、SWOT分析の3つのフレームワークの概要と具体例をご紹介する。残りについては、以下のコラムを参照いただきたい。

営業分析に必要な5つの分析と分析フレームワーク

営業戦略フレームワーク「戦略立案や分析に活用できるフレームワーク」

3C分析

3C分析

3C分析

3C分析とは、市場や競合・自社を分析する手法だ。Customer(市場・顧客)、Competitor(競合)、Company(自社)の3つを分析することから、頭文字を取って3C分析と呼ばれている。

3C分析の特徴は、3つのCの視点から営業戦略に必要な差別化戦略や、価値提案の具体化などが行える。では、実際にクラウドサービスを展開するBtoBのIT企業を例に、3C分析の具体例を考えてみよう。

BtoB企業の3C分析の具体例
Customer(市場・顧客) ・DX推進やリモートワークなどの影響で、クラウドサービス市場は成長が期待できる
・直感的な操作、IT運用のコスト削減、セキュリティーに対してニーズが強い
Competitor(競合) ・圧倒的な認知度とブランド力、そしてサービスラインナップを持つ大手企業が数多く存在している。
・しかし、複雑な仕組みと料金体系で専門知識が必須なサービスが多い
Company(自社) ・自社社員の中に、不動産関連法案と不動産の賃貸業務に詳しい社員が数多くいる

この例では、自社の強みとして「不動産業界の知識の豊富さ」を挙げている。そして、自社の強みを活かし、かつ、市場・競合に対抗するには、「不動産の賃貸業務に特化した直感的で低コストで導入できるクラウドサービスの展開」という戦略の方向性が見えてくる。つまり、ニッチな領域でNo1を目指すという戦略だ。

このように3C分析を行うことで、営業戦略の目標である「売上拡大」にむけて、自社の強みをどう活かすのがよいか?を考えることができる。

4P分析

4P分析

4P分析

4P分析とは、製品・サービスを 4つの視点から分析する手法だ。Product(自社製品・サービスの価値)、Price(価格)、Place(提供方法)、Promotion(販促方法)の4つを分析することから、4P分析と呼ばれている。

4P分析は、営業戦略の一貫性を確認する際に非常に便利なフレームワークだ。4Pは、互いに複雑に関連し合う要素であるため、個別に考えると戦略に一貫性がなくなってしまう。たとえば、高品質・最新技術を取り入れた製品を開発しても、低価格で売ることは難しい。さらに、通販で手軽に購入といった提供方法も難しいだろう。

では、実際にクラウドサービスを展開するBtoBのIT企業を例に、4P分析の具体例を考えてみよう。

4P分析の概要
Product(自社製品・サービスの価値) 【売れる製品・サービスを開発すること】
例:不動産の賃貸業務に特化した直感的で低コストで導入できるクラウドサービス
Price(価格) 【売れる値段で売ること】
例:地場の不動産会社でも導入しやすくするため1人500円/月で使える
Place(提供方法) 【売れる場所で売ること】
例:不動産専門サイトでの広告、「物件管理」「不動産契約管理」などのようなキーワードでのSEO対策とリード獲得、不動産業向け展示会でのリード獲得など
Promotion(販促方法) 【売れる売り方で売る】
低価格であるため人による営業を行うと工数がかかる。デジタルを中心とした営業戦略が必要。不動産関連業務に対してどれだけ効率的に業務が進められるか?を説明した動画を充実させ、できる限りネットでの営業完結を狙う施策を継続的に展開。

あくまで1つの例であるが、どんな企業にどんな商材をどんな値段でどう売るのか?の4つのPが連動していることがお分かりいただけるだろう。

SWOT分析

SWOT分析

SWOT分析

SWOT分析とは、自社の内部環境と外部環境をプラス要因とマイナス要因に分けて分析する手法だ。内部環境のプラス要因をStrength(強み)、内部環境のマイナス要因をWeakness(弱み)、外部環境のプラス要因をOpportunity(機会)、外部環境のマイナス要因をThreat(脅威)として分析することから、頭文字を取ってSWOT分析と呼ばれている。

自社の強みと弱みだけではなく、外部要因の機会や脅威も洗い出すため、偏った視点からのマーケティング施策の立案を防止できる。

では、実際にクラウドサービスを展開するBtoBのIT企業を例に、SWOT分析の具体例を考えてみよう。ただし、弊社にて具体的な調査を行なったわけではないため、あくまで例として参考にしてほしい。

BtoB企業のSWOT分析の具体例
内部要因外部要因
プラス要因 【強み】
・不動産業務に特化し法規制などにも即座に対応可能
・中小零細企業でも導入しやすい
【機会】
・脱ハンコ、ペーパーレスの推進
マイナス要因 【弱み】
・業界特化であるため認知度・ブランド力が低くなる
・リソース不足により大手不動産会社を対象にしたビジネスができない
【脅威】
・法規制によるシステム修正の影響
・認知・ブランド力のある大手クラウドサービス企業の不動産業界への参入

SWOT分析を行うと、自社の強みをどう活かすか、自社の弱みをどうカバーするか、そして今後の脅威と機会に対してどう対応していくか?を俯瞰しながら検討することができる。

営業戦略の具体例

ここでは、営業戦略の見本・具体例をご紹介する。以下、3つの営業戦略の具体例を解説するので、ぜひ御社の戦略立案のヒントにしてほしい。

営業戦略の具体例
  1. 人材活用を中心としたリアルの営業戦略の立案例
  2. デジタル活用を中心としたオンラインの営業戦略の立案例
  3. 人とデジタルのハイブリッドの営業戦略の立案例

詳細は以下のコラムでも解説している。

営業戦略の具体例「人・デジタル活用の3つの立案例」

営業戦略の立案例一覧|デジタル・リアル活用の3つの具体例

2023年6月10日

人材活用を中心としたリアルの営業戦略の立案例

1つ目の具体例は、人材活用を中心としたリアルの営業戦略立案例だ。この立案例では、売上・シェア拡大のために、「人」を最大限に活用して、人によりone-to-oneの営業対応を最大化し、売上向上、LTV向上を狙う戦略をイメージしている。

人を最大限に活用した営業戦略の全容図

人を最大限に活用した営業戦略の全容図

すべて人中心のため、非常に柔軟な営業施策が展開できる反面、顧客毎に時間を取られてしまい、各作戦が中途半端になってしまう可能性がある。この営業戦略のメリット・デメリットをまとめると下記の表のようになる。

人を最大限に活用した営業戦略のメリット・デメリット
メリット
  1. 人中心のためより柔軟で臨機応変な営業が展開できる
  2. 顧客に寄り添った営業が展開できる
デメリット
  1. 人中心のため営業ノウハウが属人化する(=スキルのある営業担当が退職すると売上に影響がでる)
  2. 人中心のため人による営業品質に差が生まれる(=顧客満足度にも影響する)
  3. 顧客により密着した営業となるためリソース不足になりやすい(=シェアが広がらない)
  4. 営業利益を人件費が圧迫する

デジタル活用を中心としたオンラインの営業戦略の立案例

2つ目の具体例は、デジタル活用を中心としたオンラインの営業戦略立案例だ。この立案例では、売上・シェア拡大のために、「デジタル」を最大限に活用して、少人数体制で効率よくシェア拡大を狙うことをイメージした戦略となっている。

デジタル活用を中心としたオンラインの営業戦略立案例

デジタル活用を中心としたオンラインの営業戦略立案例

すべてデジタル中心のため、少人数で大きな営業展開が実現可能だ。かつ、長期間、継続すればするほど、作成したデジタルコンテンツは営業資産となり、再利用も可能だ。その反面、人材活用に比べるとone-to-oneの営業活動が行いにくく、かつ、信頼性獲得も難しい。さらに、デジタル活用と商材の相性の問題もあり、すべての製品・サービスで実現できるとは限らない。IT企業の中でもSaaSビジネスを展開している企業は相性が良い。

デジタル活用を中心としたオンラインの営業戦略のメリット・デメリット
メリット
  1. 少人数で大きな営業展開が実現可能
  2. デジタルコンテンツが資産となる
  3. 営業が属人化しにくい
  4. 人件費を最小化できるため営業利益が向上する
デメリット
  1. one-to-oneの営業提案がやりにくい
  2. 対面営業(人材活用)よりも信頼性が得にくい
  3. デジタル活用と製品・サービス、そして顧客特性の相性の問題がある
  4. デジタルコンテンツ作りがかなり大変。継続的な作成が必要

人とデジタルのハイブリッドの営業戦略の立案例

3つ目の具体例は、人とデジタルのハイブリッドの営業戦略の立案例だ。この立案例では、売上・シェア拡大のために、人とデジタルの特性をうまく活かす営業戦略をイメージしている。「デジタル化できる部分はデジタル化しよう」をコンセプトにした営業戦略と言える。BtoB企業では比較的多い形態の戦略だ。

人とデジタルのハイブリッドの営業戦略の立案例

人とデジタルのハイブリッドの営業戦略の立案例

この営業戦略は、デジタル活用と人材活用のいいとこどりをしたイメージで、双方のメリットをある程度活かせる営業戦略となる。その反面、デジタルとリアルの連携が必要となり、デジタルマーケティングと営業部門の連携で課題が発生する(フォローしても受注にならない、営業部門がフォローしないなど)。

人とデジタルのハイブリッドの営業戦略のメリット・デメリット
メリット
  1. 少人数で大きな営業展開が実現可能
  2. デジタルコンテンツが資産となる
  3. 営業の属人化を最小化できる
  4. 営業利益の改善も可能
  5. ソリューション提案作戦が人中心のためone-to-oneな営業提案ができる
  6. 顧客に寄り添った営業が展開できる
デメリット
  1. デジタルマーケティングと営業部門の連携の課題が発生しがち
  2. デジタル活用と製品・サービス、そして顧客特性の相性の問題がある
  3. デジタルコンテンツ作りがかなり大変。継続的な作成が必要。
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BtoB営業戦略の立て方「4つのテンプレート」

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営業戦略の責任者が知っておくべき「営業の軸」となるセールスメッセージの決め方

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営業戦略を効率化する営業戦術(営業手法)

次に、BtoBの営業戦略ではどのような営業戦術(営業手法)が活用できるのか?をご紹介する。営業戦術の選定は営業戦略の効率化にもつながり、非常に重要な業務だ。そのため、まずは営業戦術としてどのような戦術があるのかを知り、その中から自社にとって最適な戦術を選定しよう。

BtoBの営業施策は主に「新規リード獲得(リードジェネレーション)」、「リード育成(リードナーチャリング)」「案件化・商談化と受注(クロージング)」「顧客維持」の4つに分解できるため、この4つの営業施策別に営業手法をご紹介しよう。より詳細な手法の解説は下記のコラムで詳しくご紹介している。

BtoBで使える具体的な39の営業手法.やり方をまとめたPDF資料のダウンロードも

営業手法39種類を一覧で紹介|各営業方法のメリット・デメリットやKPIを解説

新規リード獲得(リードジェネレーション)する営業手法・方法

新規リード獲得(リードジェネレーション)の営業手法・方法としては、デジタル活用(WEB営業など)とリアル活用(電話営業や飛込営業など)の2種類がある。

オンライン(デジタル)活用の営業手法一覧

  • WEB営業(自社のWEBサイトで営業する)
    • SEO対策
    • オンライン広告
    • SNS
    • メルマガ
    • オウンドメディア
    • SP(ソリューションページ)
    • ホワイトペーパー
  • リードジェネレーションサイト・マッチングサイト
  • WEB展示会・バーチャル展示会
  • ウェビナー・オンラインセミナー
  • 営業問い合わせ(自動・手動)

オンライン(デジタル)を活用する場合のポイントは2つある。1つは、自社サイトの有効活用だ。自社サイトでの新規リード獲得が実現すると、毎月安定した見込み開拓が可能になる。やればやるほど成果につながる商材もあるため、コツコツと進めていくと効果的な営業資産となる。2つ目は、質と量のバランスだ。オンライン(デジタル)活用の場合、どうしても量を重視しがちになるが、質の高いリード獲得をおろそかにすると、リード獲得してもなかなか売れず、受注率や商談化率が悪化する。質を狙ったリード獲得も視野に入れ、デジタル活用を進めなければならない。

オフライン活用(人など)の営業手法一覧

  • 展示会
  • セミナー
  • リアル広告
  • DM(FAX・郵送)
  • 電話営業
  • 飛込営業
  • 紹介営業
  • ビジネス交流会
  • 見込み客獲得代行・営業代行サービス

オフライン活用(人など)する場合は、よりOne-to-Oneの営業施策が展開できるため、特定企業を狙ったリード獲得などと相性が良い。特定企業を狙う場合は、電話営業、DM、紹介営業などが効果的である。

また展示会やセミナーはBtoB営業の代表的な手法であるが、量を重視してしまうと、質の悪いリードばかりとなり、受注率や商談化率の悪化につながる可能性があるため注意が必要だ。

リード育成(リードナーチャリング)する営業手法・方法

リード育成(リードナーチャリング)の営業手法・方法としては、デジタル活用(メルマガなど)とリアル活用(電話営業など)の2種類がある。

オンライン(デジタル)活用(メルマガなど)の営業手法一覧

  • WEBコンテンツ
  • メルマガ
  • シナリオメール(MAシナリオ)
  • 動画
  • オンラインセミナー・ウェビナー
  • ホワイトペーパー
  • アンケート(WEBフォーム)
  • リマーケティング広告・リターゲティング広告(追跡型広告)

オンライン(デジタル)活用する場合は、メール活用が効果的だ。特に最近ではマーケティングオートメーションツールなどを活用できるため、メールを活用したリード育成をある程度自動化することもできる。

しかし、リアル活用に比べてOne-to-Oneの対応が難しいため、大量のリードを育成する場合や、まだ購入段階に遠いリードを対象にする場合などで活用すると良い。

オフライン活用(人など)の営業手法一覧

  • セミナー
  • ニュースレター
  • 訪問営業・対面営業
  • テレマーケティング(電話営業)
  • アンケート(対面)

オフライン活用(人など)する場合は、よりOne-to-One化したリード育成が可能だ。例えばセミナーもある特定企業のためだけの個別セミナーをするといったことが可能になる。ニュースレターも営業部門が売り込みしたい企業への訪問理由にすることもできるだろう。そのため、特に売り込みしたい企業に対するリード育成においては、オフライン活用は効果を発揮する傾向がある。しかし、その反面、数をこなすことができないため、注意が必要だ。

案件化・商談化と受注(クロージング)獲得する営業手法・方法

案件化・商談化と受注(クロージング)獲得の営業手法・方法は一覧表の通りだ。BtoBの場合、現時点においてはデジタル活用の手法が少ない傾向がある。ECサイト化できる商材であれば、ECサイトも営業手法として活用は可能であるが、BtoBの特性上、なかなか難しいことが多い。

  1. スコアリング
  2. ソリューション提案
  3. 事例紹介営業
  4. 個別相談・製品デモなどの営業オファー

顧客維持する営業手法・方法

顧客維持(クロスセル・アップセル)の営業手法・方法は一覧表の通りだ。デジタルを活用する方法としては、顧客向けのメルマガが代表例であろう。それ以外は営業担当者による活動が多い傾向がある。

  1. メルマガ
  2. ニュースレター
  3. 定期訪問
  4. 課題調査
  5. レコメンド
  6. 会員サイト

まとめ

以上、営業戦略の立案について、詳しくご紹介した。ぜひこのコラムを参考に、戦略立案を進めてほしい。また、自分だけではできない、プロのアドバイスがほしいという場合は、こちらからお問い合わせいただけたらと思う。

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BtoB営業戦略の基礎コラム

ABOUTこの記事をかいた人

株式会社ALUHA代表取締役。1979年兵庫生まれのBtoBマーケティングコンサルタント。金沢工業大学大学院にて情報工学を専攻し2003年4月にALUHAを創業。2008年からBtoBに特化したマーケティング支援、営業戦略支援を開始。BtoBマーケティングや営業戦略の戦略立案から、計画実行とPDCA、そして人材育成を伴走型で支援。デジタルとリアルを融合させた戦略設計が得意。毎月全国各地の様々な企業でBtoBマーケティングセミナーを実施中。100社以上でのセミナー講演実績を持つ。大手IT企業、製造業(日立Gr、富士フイルムGr、キヤノンGr、積水Grなど)を顧客に持つコンサルタント。→セミナー講演実績→コンサル実績