BtoBデジタルマーケティングでは、SEOコンテンツやホワイトペーパー、動画、メルマガ、LPなどさまざまなデジタルコンテンツの作成を行う。しかし、マーケティング部門、営業部門、技術部門、事業部門という具合に部門が分断されているため、このコンテンツ作成がうまく進められないケースが多い。実際に弊社にも以下のようなご相談を多くのBtoB企業から頂戴している。

- 社内の担当者にWebコンテンツ作成を依頼しても協力してくれない・後回しにされる
- Webコンテンツ作成が社内でうまく進められない(時間がかかる・コンテンツの質が低い)
- コンテンツ作成を他部門と連携するときの注意点は何か?
そこで今回のコラムでは、デジタルコンテンツ作成が社内でうまく進められない主な要因とその要因を解消する各社の取り組みについてご紹介する。
デジタルコンテンツ作成が社内でうまく進められない主な要因
デジタルコンテンツ作成が社内でうまく進められない主な要因は、以下の4つが多い。
- リソースが足りず後回しにされるケース
- 思いが強すぎるケース(こだわりがつよく顧客目線でないケース)
- 社内にWEBマーケティングの知識がないケース
- マーケティング部門に技術的な知識がないケース
この4つの要因について、詳しく解説しよう。御社でも該当するケースがないか、確認して欲しい。
リソースが足りず後回しにされるケース
リソースが足りず後回しにされるケースとは、他部門にコンテンツ作成の依頼をしても、「誰がやるのかでもめる」「担当者が決まっても、その担当者が忙しくていつも後回しにされる」「時間が経過してしまい結局何をどうするのかのリマインドや確認作業ばかりが続く」といったケースだ。その結果、なかなかデジタルコンテンツ作成が進まない。
ある特定の技術者や責任者に知識やスキルが集中してしまっている場合に発生しがちな要因である。
思いが強すぎるケース(こだわりがつよく顧客目線でないケース)
思いが強すぎるケースとは、技術者のこだわりが強く、顧客目線やリード目線のコンテンツに仕上がらないケースだ。具体的には、「難しい言葉ばかりのコンテンツで理解ができない」「顧客の課題や悩みを解決するコンテンツになっていない」などである。
このような場合、仮にコンテンツができあがったとしても、そもそも検索エンジン対策もできていないため、誰も見ないサイトになる傾向がある。そうなるとリードジェネレーションやリードナーチャリングは非常に困難になる。こういったコンテンツばかり公開していると、一部のマニアにしか刺さらず、その結果、成果につながりにくくなり、「デジタルマーケティングは成果がない」と社内で決断されてしまうこともありえる。
社内にWEBマーケティングの知識がないケース
社内にWEBマーケティングの知識がないケースは、社内でコンテンツ作成や確認をする際、「なんでうちのサイトでこういうコンテンツを公開するのか?」「内容が自社のターゲットと合っているのか?」といった疑問が噴出し、コンテンツ作成と公開が全く進まなくなるケースだ。
何度説明してもコンテンツの重要性や狙いを理解されず、公開へと辿り着けない。辿り着けたとしても、当初とは違うコンテンツになってしまい、狙った施策展開ができなくなることもあるだろう。
これは、WEBマーケティングというある程度専門的な知識が必要な業務において、その知識のない人がコンテンツを確認したり作成したりするとこういったことが発生する。
特にSEO対策やホワイトペーパー作りで発生する傾向が強い。検索ユーザーは基礎的なことをネットで調べる傾向が強いため、どうしてもSEOコンテンツやホワイトペーパーは、基礎的な内容になる。そのため、社内でSEOコンテンツやホワイトペーパーの制作や確認を進めようとすると、「こんな一般論を調べるような人はターゲットじゃない」などと言われ、コンテンツの作成や公開が進まなくなる。
マーケティング部門に技術的な知識がないケース
マーケティング部門に技術的な知識がないケースは、「コンテンツチェックをいつも技術部門の責任者に確認してもらっている」というケースだ。マーケティング部門が企画したコンテンツを、公開する前に技術部門が必ずチェックするというような公開フローがある場合、そのチェック業務がネックとなって公開が進まなくなる。これはマーケティング部門に技術的な知識がないことによって発生するケースだ。
確かに、専門的すぎる内容や有資格者でなければチェックできないコンテンツもある。しかし、デジタルコンテンツは基礎知識などをコンテンツ化することも多いため、そういったレベルの内容であれば、わざわざ他部門にチェックを依頼せずとも、部内で完了できるようにしておいた方が効率的である。
要因を解消するためのアイディアやBtoB企業の取り組み
ではこれらの要因を解消していくためのアイディアや他のBtoB企業の実際の取り組み例をご紹介しよう。御社の参考にしていただけたら幸いだ。
デジタルコンテンツの設計書をマーケティングスキルのある人が作る
デジタルコンテンツは、動画やLP、SEOコンテンツ、ホワイトペーパー、メルマガ、ウェビナーなどさまざまな種類があるが、どれもコンテンツである以上、タイトルと見出しで構成される。そのタイトル案と見出し案をデジタルマーケティングのスキルのある人が最初に設計するようにしよう。そして設計案を他部門に展開し、さまざまな目線で修正をかけていく。
こうすることで、以下のようなメリットが生まれる。
- どんなデジタルコンテンツを設計すればいいか他部門が考える必要性がなくなり、他部門の工数削減につながる
- こだわりが強い技術者に対する対策になる
実際に弊社のお客様でも取り組みが進んでいる企業がある。その企業では、ウェビナーの企画設計を技術部門や事業部門が行うのではなく、マーケティング部門が最初に企画設計し、それを技術部門や事業部門に展開して修正するという流れにしている。
当然、マーケティング部門はリードのニーズを把握した上でウェビナーを企画設計している。そのため、ニーズをエビデンスにして「こういうセミナーをすると効果が出る可能性がある」という形で、他部門に企画案を展開している。そしてその案を受けて、細かい調整を行い、ウェビナー施策を展開している。
生成AIで初稿を完成させる
デジタルコンテンツは、動画・画像・文章で構成されるため、それらを人間が作るのではなくAIに作ってもらうという方法がある。これにより、「リソースが足りず後回しにされるケース」に対処可能だ。
実際に弊社のお客様では、SEOコンテンツやホワイトペーパーの原稿作成を生成AIが行なっている。あくまで初稿作成のみを行い、AIが作成したコンテンツをそのまま公開することはないが、コンテンツ作成の効率化にはつながっている。完成したコンテンツは、知識のある担当者がチェックと修正を行い、公開している。
社内勉強会を実施し知識レベルを底上げする
次に社内勉強会に取り組んでいる企業もある。その企業では、マーケティング施策の会話をする際に、マーケティングスキルに差があると、会話にならないということを実感し、マーケティング部門が主催する社内勉強会を開催している。対象者は他部門の担当者だ。
この勉強会の狙いは、デジタルコンテンツ作成をスムーズに進めること、デジタルマーケティングをスムーズに展開することだ。マーケティングスキルの差を少しでも埋めることができれば、「社内にWEBマーケティングの知識がないケース」にも対処しやすくなる。
また、この勉強会は逆も然りである。マーケティング部門が技術の最低限の知識を勉強する場を技術部門にセッティングしてもらうのもありだ。こうすると「マーケティング部門に技術的な知識がないケース」にも対処できるようになる。
退職したベテラン社員との連携
上述の社内勉強会は時間がかかるのが難点であるため、定年退職したベテラン社員との連携を並行して考えるのもありだ。具体的には、技術部門に長年在籍したベテラン社員が定年退職したとき、その社員に個別に連絡を取り、コンテンツ作成や確認の相談をするのだ。「マーケティング部門に技術的な知識がないケース」に即座に対処できるアイディアである。
コンテンツ作成や確認の相談をしながら、マーケティング部門に技術的な知識の習得支援も行ってもらえれば、一石二鳥である。さらに、定年退職した元社員には、謝礼も支払うことで、互いにWinWinになれる。元社員であるため依頼もしやすい上に、社内事情も詳しいためスムーズにコンテンツ制作を進められるだろう。
まとめ
以上、他部門と連携したコンテンツ作成がうまく進められない時の対処法や取り組み例をご紹介した。御社でも活用できるアイディアがないか、ぜひヒントにしていただけたら幸いである。