営業とマーケティングの連携強化|対立の要因と協力体制の構築アイディア

営業とマーケティングの連携を強化する6つのアイディア
Last Updated on 2024年9月9日 by 荻野永策

BtoBマーケティングと営業の連携がうまくいかない、そんなBtoB企業が増えてきている。BtoBマーケティングと営業のデジタル化・DXが推進されるようになると、なおさら増えてきている。実際に弊社にも下記のようなご相談があった。

当社はWEBの担当者と外回り部隊が別々。どのように協力体制(外回りとWeb担当との接点)を作るのか?(T社K氏)
実際にお客様をフォローする営業のデジマ施策の認知向上・認識改善(F社S氏)
営業とマーケの連携強化方法を知りたい(H社K氏)

以前から多くの相談があったが、現在も変わらず多い。この営業とマーケティングの対立や連携不足というのは、各企業の社風や文化もからんでいるため、解決策は非常に難しい。しかしリードや顧客から見れば、そんなことは関係ない。淡々と自社にあった製品やソリューションを探しており、導入検討を進めているため、対立している場合ではない。

そこで、今回のコラムでは、営業とマーケティングの連携強化をテーマに、対立の要因と協力体制の構築方法について6つのアイディアをご紹介する。

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営業とマーケティングの対立や連携不足はなぜ発生するのか?

営業とマーケティングの対立や連携不足の要因は、「役割の違いによる視点の違い」にある。

営業は、いわずもがな、「売上を作る」ことが役割であり、確度の高い商談を欲する。実際に売らなければならないのが営業だ。このため、営業が見ているのは「売上」で、売上に近いリードかどうか?を見ている。

マーケティングは「売れる可能性を高めること」が役割であり、差別化戦略の策定や、顧客の課題調査、市場分析や顧客分析、リードジェネレーションやリードナーチャリングなどをマーケティング施策として展開しなければならない。このため、マーケティングが見ているのは「売れる可能性があるかどうか?」だ。その上で、さまざまなマーケティング施策を展開して「売れる可能性が高まった」と判断すれば営業に送客する。

このように、営業とマーケティングは役割が違うため、見ている視点も違う。例えば、営業は「すぐ買うリード(今すぐ客)」を、マーケティングは「時間かかるけど買うかもリード(よちよち客)」を見ていたら、互いの視点はいつまでも合わず、対立は深まる。

さらに、視点の違いはまだある。営業は自社製品を売らなければならないため、当然ながら「自社目線」になる。自社製品の特長や機能、スペック、仕様など、製品紹介をする。逆にマーケティングは、いわずもがな、「顧客目線」だ。顧客の課題を解決する方法を模索し、顧客目線で顧客と対話する。

この自社目線か顧客目線かでも対立の要因になるだろう。マーケティングから見れば、「営業は自社製品の紹介しかしない」というように見えるし、営業から見れば「マーケティングは課題解決というけど、解決プロセスが不明確で本当に解決できるのか?」と見える。

このような2つの視点の違いが営業とマーケティングの対立や連携不足を発生させていると考えられる。

営業とマーケティングの対立を解決する理想案

ではこの視点の違いを解消するために、どのような解決方法があるだろうか?

解決策の1つの方法としては、「営業担当者(もしくは管理者)にマーケティング思考を、マーケティング担当者(もしくは管理者)にセールス思考を習得させる」があるだろう。こうすれば、それぞれがそれぞれの視点を持つことができ、対立解消と連携強化につながる可能性がある。

特に営業とマーケティングの管理者が両方の視点を持つのは重要だ。いくら現場担当者が両方の視点を持っていても、管理者がその視点をもっていなければ、施策の良し悪しの判断もできないため、施策展開されなくなる可能性がある。

しかし、この案はあくまで理想案になるケースが多いように感じる。今すぐに対策できるようなことでもない上に、向き不向きもあるためだ。中長期的な視野で、企業の人材戦略の一環として取り組んでいくのが良いと考える。

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営業とマーケティングの対立を解決する6つのアイディア

では、比較的すぐにできそうなアイディアはないのだろうか?弊社がさまざまなお客様の現場で感じたことをベースに6つのアイディアをご紹介しよう。

ターゲティング条件を共有してみよう

1つ目のアイディアは、「ターゲティング条件の共有」だ。営業にもマーケティングにも、製品を売る「ターゲット」が必ず存在する。そのターゲットの中でも、「質の高いリードの条件」を具体的に定義したのがターゲティング条件だ。

「質の高いリードの条件」とは、(1)年商、業種、従業員数などの企業条件、(2)そのリードが解決したい課題は何か?の課題条件、(3)BANT条件の3つから考えると良い。

「企業条件」は自社製品を購入後、LTVが高くなる可能性があるかどうか?の判断材料になる。「課題条件」は、自社製品でその課題を解決できるかどうか?の判断に活用でき、実際に解決した事例があれば受注率に大きく影響する。そして、「BANT条件」は言わずもがな、確度を判断する条件そのものだ。具体例としては下記のイメージだ。下記は、品質検査ソリューションをもつIT企業のターゲティング条件例であるが、弊社がサンプルとして定義したものだ。

品質検査ソリューションをもつIT企業のターゲティング条件例
  1. 年商:300億円以上
  2. 業種:食品製造業
  3. 従業員数:800名以上
  4. リードが解決したい課題:異物混入の精度向上
  5. BANT:1年以内、予算500万円以上

この3つの条件を具体的に定義しておけば、この条件に該当するリードは、「重要リード」となり、営業もマーケティングも注力してフォローしなければならないリードとなる。特に、リードが解決したい課題に対して、実際に解決できた事例がある場合は、商談化する可能性が高く、超重要リードとなるだろう。さらに、リードが解決したい課題の解決方法に、自社の独自性がある場合は、理想的なターゲティング条件となろう。

マーケティング部門は、ターゲティング条件に該当する新規リードをどのようなマーケティング手法で獲得し育成するかを計画立てていき、営業は、その前提でフォローを行う。こうすることで、互いに同じターゲティング条件を見ながら、施策展開でき、連携強化につながる可能性がある。

ペインポイントを共有してみよう

ペインポイントとは、「顧客がお金を払ってでも解決したい課題・不安・悩み」のことでだ。顧客が解決したい課題の中でも、重要度と緊急度の高い課題がペインポイントになる。

顧客のペインポイントは、実際に解決できた事例などがあれば、受注率の向上に貢献できる。そのため、営業やマーケティング活動において、その事例コンテンツは、非常に強力な武器になるのだ。このペインポイントを「ターゲティング条件」に入れておくことで、より精度の高いターゲティング条件となり、営業とマーケティングの連携強化につながる可能性がある。

デジタル起点で成約した成功体験を共有してみよう

3つ目のアイディアは、いわずもがな、成功体験の共有だ。営業部門に送客後、案件化、商談化、受注に至った事例をマーケティング部門が収集し、それらをまとめて営業部門に共有する。このとき、実際に成功事例を体験した営業担当に、「どのように商談を進めたのか?」「デジタル起点のよかった点は?」「デジタル起点だからこそ工夫した点は?」などを聞き出して、まとめておく。

こうすれば、その体験が社内に広まり、マーケティングの重要性・有用性を認識してもらえる可能性がある。

デジタル側で正確な確度判断してみよう

4つ目は「確度判断の精度向上」だ。展示会やWEBなど、さまざまなマーケティング施策でリードジェネレーションを行うが、その際に、「確度確認」をできるだけ具体的に実施してみよう。

具体例としては、「確度確認アンケート」の実施だ。例えば、WEBからCVを獲得するときに、フォームに「確度確認アンケート」を仕込んでおく。「確度確認アンケート」では、先にご紹介したターゲティング条件に該当するかどうかを確認するアンケートを入れておく。入力項目が増え、CVRが下がる可能性は否定できないが、確度判断の材料が手に入るため、より質の高いリードを送客できる可能性は高くなる。

営業リソースに合わせて連携条件を調整してみよう

営業リソースは、時間と共に変化する。年度末・年末など営業部門が時期的に忙しいときは、送客するリードの条件を絞り込み「質重視」にする。逆に、比較的リソースが空いている時期は、「量重視」で送客する。

「質重視」か「量重視」は、先にご紹介したターゲティング条件を緩和するか、強化するかで調整できる。緩和すれば送客するリードの量が増え、強化すれば、量が減るかわりに質が向上する。こういった調整がマーケティング部門で自在にできれば、連携強化につながる可能性がある。

送客したリードの結果を共有してみよう

最後のアイディアは、「送客したリードの結果を共有」だ。案件化した・しなかった、売れた・売れなかったを営業部門からフィードバックをもらおう。営業結果をベースに連携条件を見直さなければ、いつまで経っても同じ条件で送客され、対立解消は難しい。そのため、営業部門は営業の結果・ステータスを常に共有することと、マーケティング部門は共有された結果を見て連携条件を調整することが重要だ。

以上、営業とマーケティング部門の連携について、対立要因と解消アイディアをご紹介した。この対立問題は企業文化や社風も絡むため、なかなかすぐに解消とはいかないが、今後、デジタル化が加速し、人手不足などが深刻化すると対立している場合ではなくなる。このコラムのアイディアが少しでもヒントになれば幸いである。

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ABOUTこの記事をかいた人

株式会社ALUHA代表取締役。1979年兵庫生まれのBtoBマーケティングコンサルタント。金沢工業大学大学院にて情報工学を専攻し2003年4月にALUHAを創業。2008年からBtoBに特化したマーケティング支援、営業戦略支援を開始。BtoBマーケティングや営業戦略の戦略立案から、計画実行とPDCA、そして人材育成を伴走型で支援。デジタルとリアルを融合させた戦略設計が得意。毎月全国各地の様々な企業でBtoBマーケティングセミナーを実施中。100社以上でのセミナー講演実績を持つ。大手IT企業、製造業(日立Gr、富士フイルムGr、キヤノンGr、積水Grなど)を顧客に持つコンサルタント。→セミナー講演実績→コンサル実績