コロナウイルスの影響もあり、BtoB企業においてもBtoBマーケティング戦略や営業戦略を見直す動きが活発になっている。特に客先訪問ができない(しにくい)ためデジタル活用が着目されており、デジタルマーケティングで案件・商談を創出し、営業部門がクロージングするといった営業戦略を組み立てている企業も多くなってきている。
そんな中、先日、弊社に下記のようなご質問をいただいた。
営業戦略の目的は、見込み客を獲得(リードジェネレーション)し育成、そして受注することである。そのため、営業戦略を立案するには、マーケティングに関する知識は必須となる。その知識として何があるのか?をリストアップしていくとキリがなく、それらをすべて知識化するのも非常に大変である。
そこで今回のコラムでは「営業戦略を策定する上で必要なマーケティングの知識」の中でも、絶対にこれだけは抑えておこうという知識を1つだけ絞り、その知識について考察する。
営業戦略を策定する上で最も重要なマーケティングの知識
営業戦略を策定する上で必要なマーケティングの知識は、上述した通り、キリがないほどでてくるだろう。ターゲティング、ニーズ、ウォンツ、差別化、ベネフィットなど営業戦略立案には非常に多くの知識を要する。
しかし、営業戦略の目的は「クロージング、つまり売ること」であるため、最も重要なマーケティングの知識とすれば、「クロージングの知識」となる。
なぜなら、たとえデジタルマーケティングやリアルの展示会・セミナーなどで案件や商談を創出しても、「クロージングの知識」がなければ売れないからだ。クロージングに関連するマーケティングの知識がなければ、ただの商品提案・見積もりに終わってしまい、売れる可能性が減るのだ(受注率が下がる)。
だからこそ、「クロージングの知識」は営業戦略を策定する上で最も重要なマーケティングの知識と言える。
「クロージングの知識」で知っておくべきこと「ペインポイント」
「クロージングの知識」として知っておくべきこととして、「ペインポイント」がある。ペインポイントは下記のように定義されている。
ペインポイントとは、「お金を払ってでも解決したいポイント」のことを言う。「ペイン」は痛みのことで、その痛みを取り除くためにお金を払うというわけだ。
https://www.finchjapan.co.jp/3984/から引用
「お金を払ってでも解決したいポイント」という定義は非常に分かりやすい。お客様の「一番痛いところ」、「一番痒いところ」、「お金を払った方が楽なポイント」といった定義の展開も可能だろう。
ペインポイントは、新規事業のテーマやアイディアを模索する際に、「本当にこのアイディアで大丈夫なのか?」の判断を行う際の1つの指標となる。「お金を払ってでも解決したいポイント」があるからこそ、「新規事業」を展開する価値があると判断できるわけだ。
さらにペインポイントは、「クロージングの知識」として非常に大きな効果を発揮する。なぜなら、顧客の「お金を払ってでも解決したいポイント」を売り手が把握していると、そこを訴求したクロージングが展開できるからだ。
「ペインポイント」が営業戦略立案で重要な理由
ペインポイントはクロージングの際に役立つだけではない。営業戦略の立案やマーケティング戦略の立案でも非常に重要な役割を果たす。
なぜなら、ペインポイントとターゲティングと強み(差別化)には連動性があるからだ。まず、強み・差別化であるが、「お金を払ってでも解決したいポイント」を解決できる独自の仕組みが自社にあるからこそ「差別化の要素」として顧客に認知される。さらに、「お金を払ってでも解決したいポイント」を持っている企業が「ターゲティング」されるため、セグメンテーションやターゲティングを行う際の1つの大きな軸となる。
このため、ペインポイントを起点にしてマーケティングや営業戦略の具体化に展開していくことができるのである。
BtoBで「ペインポイント」をどうやって見つけるか?
では、BtoBでペインポイントをどうやって見つけるべきだろうか?方法としては2つ考えられる。
1つは過去の受注実績から受注時の営業記録を確認し、顧客からの要望や課題の相談などのデータを把握することだ。そこにペインポイントのヒントがあるはずだ。もう1つは既存の顧客に満足度調査などを実施し、成約時の課題をヒヤリングすることだ。
どちらにしても、BtoBの場合は製品や流通のチャネルなどによってはやりにくいケースが多い。だからこそ、ペインポイントをBtoBで見つけ出すことは難しく、デジタルを活用しても、商談・案件作りに苦労するといったことにつながっているのだろう。
しかし、見つけるのが難しいからといって諦める必要はない。ペインポイントは何か?を常に考え顧客の課題データを蓄積し続ければ、「これがペインポイントではないか?」という仮説を立てることができる。そのため、今できることとすれば、顧客の課題をデータベース化することである。
そして、その課題データベースから「結局、お客様は何にお金を払ったのか?」を追求していくことが、ペインポイントの発見につながるのではないか?と考えられる。
そのため、「ペインポイントを見つけよう」といって、サクっと見つかるようなものでもなく、日々の積み重ねで中長期的に「これではないか?」と見つかるものなのだ。ある種の「宝物」である。
そう考えれば、「営業部門の営業報告書の重要性」、「営業報告書に正確な情報を記載することの重要性」、「営業報告書は商談管理に使うだけでなくペインポイントの分析に使うことの重要性」がいかに重要であるかがご理解いただけるだろう。
御社でも改めて「顧客の課題の重要性」と「営業報告書の重要性」を再認識していただけたら幸いである。
まとめ
今回のコラムではペインポイントについてご紹介した。コラムの冒頭に記載した下記の質問の回答をまとめる。
営業戦略を策定する上で必要なマーケティングの知識は?どういったデータを集積すべきで、どういったデータがあればどのようなアウトプットが出せるのか?
(製造業N社S様)
(1)営業戦略を策定する上で必要なマーケティングの知識は?
ペインポイントを知識として蓄積すべき
(2)どういったデータを集積すべきで、どういったデータがあればどのようなアウトプットが出せるのか?
ペインポイントを見つけるために、「顧客の課題データ」を集積すべきで、そこから、定量的・定性的にデータを分析することで、ペインポイントの仮説がアウトプットできる。ペインポイントがこれではないか?と仮説立てられれば、そこから営業戦略の策定、さらにはクロージングシナリオの策定などに展開できる。
(製造業N社S様)