BtoBにおいて、営業戦略やBtoBマーケティングをデジタル化する「デジタルマーケティング」では、「何から始めれば良いか?」「効果の出やすい施策は何か?」「費用をかけずスモールスタートで始めるにはどうすればいいか?」といったご相談をいただくことが多い。
実際に、以前、下記のようなご相談をいただいた。
そこで今回のコラムでは、BtoBにおいて、「比較的、短期間で効果が出やすく」、かつ、「スモールスタート」で始めることができる2つのパターンについて解説する。なお、誤解の無いように記載するが、「必ず効果が出る」「必ず短期間でできる」というような保証は一切できないため、ヒントの1つにしていただけたら幸いだ。
デジタルマーケティングで短期間で効果が出やすい2つのパターン
デジタルマーケティングをスモールスタートで始めて早めに成果を出すには、2つのパターンがある。それが下記の2パターンだ。
(1)WEBアクセスの多い事業・製品の新規リード獲得件数増加
(2)リードの個人情報を大量に保有している事業・製品のリードナーチャリング
この2パターンに当てはまる事業・製品からデジタルマーケティングを始めると、比較的短期間で、かつ、スモールスタートで効果が出ることがある。それぞれ詳しく解説しよう。
(1)WEBアクセスの多い事業・製品の新規リード獲得件数増加
多数ある事業や製品の中で、すでにWebサイトのアクセス数が多い事業や製品からデジタルマーケティングを実施すると、短期間かつスモールスタートで効果(新規リード獲得という効果)がでることがある(効果が出やすい)。
理由は簡単である。自社サイトを活用して新規リードを獲得するには、「アクセス数の増加」は必須の業務になるが、既にアクセス数が多い場合は、「アクセス数の増加」をやらなくてよいのである。そのため、短期間かつスモールスタートでデジタルマーケティングを実施できる。
では、どのようにして進めていくと良いか、その概要をご紹介しよう。
手順1「事業や製品の選定」
まずは、Webアクセス数の多い事業・製品を選定しよう。Googleアナリティクスなどのアクセス解析ツールを活用すれば、どの事業・製品のアクセス数が多いか、すぐに数字で判断できる。過去1年分くらいのアクセス数をみて、判断するとよいだろう。
加えて、コンバージョン(問い合わせや資料請求)件数の推移も過去1年分くらいで確認しよう。アクセス数が多いのに、コンバージョン(問い合わせや資料請求)件数が少ない場合は、デジタルマーケティングを実施する候補となる。
判断の目安は、アクセス数に対して、コンバージョン件数が1%前後の割合で獲得できているかどうか?で判断するといい。1%未満の場合はより多くのコンバージョンを獲得できる可能性を十分に秘めている。
手順2「訪問ユーザー分析」
手順1でアクセス数の多い事業・製品を選定したら、その事業・製品のWebサイトにどのような企業が訪問しているのか?を分析しよう。BtoBの場合、アクセス数が多いからといって、全てのアクセスユーザーが御社のリードであるという保証はどこにもない。もしかしたら全く関係のないユーザーが訪問している可能性もある。
だからこそ、どのような企業がサイトに訪問しているのかを確認することは重要だ。確認する方法としては、Webアクセス解析ツールには、「企業分析機能」を実装しているツールがある。例えば、「らくらくログ解析(2020年8月13日、らくらくログ解析のWebサイトで実装していることを確認)」などである。
こういったツールを活用すれば、どのような企業が自社サイトに訪問しているのか、企業名リストを確認することができ、そこからリードになり得そうかどうかの判断ができるようになる。
手順3「CVR(コンバージョン率)の改善」
手順1、2で見込みのありそうな製品・事業が選定できたら、次は、CVR(コンバージョン率)の改善を行う。
CVRを改善する方法はいくつかあるが、短期間かつ低コストでできるのが、導線改善である。導線改善とは、問い合わせフォームへの誘導力を強化することを言う。BtoBでは、問い合わせフォームから問い合わせをもらうことがリード獲得につながるため、Webサイトに訪問しているユーザーを「いかにフォームに誘導するか?」がキーポイントになる。
そのため、Webサイト内のあらゆるページに、フォームへの導線を設置し、フォームへの誘導力を高めるのである。導線をサイト内に設置するだけの業務になるため、比較的、短期間かつ低コストで実施できる施策なのである。
デジタルマーケティングの成功事例
実際にこのやり方で成功した弊社の事例があるのでご紹介しよう。BtoBの製造業である「フジモリ産業様」だ。準備期間は1、2ヶ月程度で、上記の手順1から手順3を実施した。詳しくは下記の成功事例インタビューをご覧いただければと思う。
(2)リードの個人情報を大量に保有している事業・製品のリードナーチャリング
すでに、リードの個人情報(名刺などが中心)を大量に保有している事業・製品からリードナーチャリングを開始すると、比較的短期間で効果が出ることがある(効果が出やすい)。
「(1)WEBアクセスの多い事業・製品の新規リード獲得件数増加」のパターンに比べると、手間も時間もかかるが、その代わり、案件・商談を作り出せる可能性を秘めているため、効果が出れば会社への影響力(デジタルマーケティングの評価)も大きく変わるだろう。
では、その主なプロセスについてご紹介しよう。
手順1:名刺データをリスト化しメール配信システムに登録
まずは、リードの名刺を大量に保有していると思われる事業・製品を選定し、その営業担当者から名刺を収集しよう。収集した名刺はエクセルでリスト化する。会社の規模感や名刺の精度、商材特性にもよるが、名刺は1000件以上あれば、ある程度の効果は期待できる可能性がある。
名刺をエクセルにリスト化したら、そのリストをメール配信ツールに流し込む。メール配信ツールは、もしMAを会社で契約しているならMAで十分である。ツールがないなら、「メール配信システム」を1つ契約しよう。低額なものなら月数千円くらいから活用可能だ。
手順2:課題調査アンケートをメールで実施し課題を把握
リスト化した名刺のデータをメール配信システムに流し込んだら、次は、アンケート調査のメールをライティングする。ここでいうアンケート調査とは、「リードの課題や悩みを把握するアンケート」のことだ。対象となっている事業・製品に関連するリードの課題や悩みをアンケート形式で確認するメールを作成する。
アンケートを作成したらメールで一斉配信し、回答をもらう。アンケートの回答率については、「クオカードなどのお礼」がある場合とない場合とで大きく異なる。また、普段からメール配信を定期的に実施しているような場合(例えば、会社の広報メールなど)では、お礼がなくても回答していただける可能性は十分にある。
事実、弊社のお客様でも、10万件にアンケートのメール(お礼なし)を配信したら、2%弱から回答を得たと言う実績データもある。そのため、もしリードの件数は1000件くらいであれば、20件から30件くらいの回答があることを想定し、実施すれば良いだろう。
手順3:課題解決のためのコンテンツを作成
アンケートのメールを配信したら、その回答結果を集計・分析しよう。課題を確認するアンケートであるため、リードが抱えている課題について記載があるはずだ。その内容を確認し、リードの抱える課題を解決する方法を社内で検討しよう。
御社の製品がリードの課題解決にどう役立つのか?それを明確にするのである。そして、その明確にした内容を、提案書としてまとめてPDF化する。PDFのタイトルは、「ナントカの課題を解決する具体的プロセス・方法」といった具合だ。
手順4:課題解決コンテンツをメールで配信し問い合わせ獲得
「ナントカの課題を解決する具体的プロセス・方法」のようなPDFを課題別に作成し、完成したら、そのPDFをアンケート回答者に送付し、案件・商談を作っていく。送付したメールに対して返信が来れば、案件・商談化の第一歩である。
リードから見れば、自分の課題に合致した提案書がPDFで送付されてくるため、反応する可能性は十分に高い。
デジタルマーケティングの成功事例
実際にこの手順に近いやり方でリードナーチャリングを短期間で成功させた企業がある。その概要を下記のコラムでまとめているので是非ご覧いただけたらと思う。
まとめ
今回のコラムでは、BtoBにおいて、「比較的、短期間で効果が出やすく」、かつ、「スモールスタート」で始めることができる2つのパターンについて解説した。
1つ目は、Webを活用してリードを獲得するパターンだ。これは「導線改善」が肝になるだろう。
2つ目は、メールを活用してリードを育成する(案件や商談を作る)パターンだ。これは「アンケート調査と課題解決のPDF作成」が肝になるだろう。
2つ目は御社の状況によっては短期間というわけにはいかないケースもある。しかし、メール配信できる状況を一度作っておけば、次からはメール配信するだけで良くなるため、だんだん時間は短期化していく。さらにアンケートもやればやるほど、課題のデータが社内に蓄積され、そのうちやらなくても提案書(課題解決のコンテンツ)を作成できるようになるだろう。そうなれば、より早く効果につなげることも可能だ。
当然、これ以外にも比較的短期間で、かつ、スモールスタートで実施する方法がある可能性もあるが、弊社ではまずはこのどちらかを現段階ではおススメしている。
ぜひ、御社でもチャレンジしていただけたら幸いである。