BtoBマーケティングや営業戦略といえば、リードジェネレーションやリードナーチャリング、ABM(アカウントベースドマーケティング)、MA(マーケティングオートメーション)などが注目を集めているが、実はそもそも論である差別化に関する相談も非常に多い。
その理由は明確で、「差別化」は、リードジェネレーションでは「見込み客の興味付けの切り口作り」に、リードナーチャリングでは「定期的な接点作りや信頼関係の構築」に、クロージングでは「自社からの購入を決める判断材料」になるため、営業・マーケティングの根幹といってもよいくらい重要な要素だからだ。
そういった理由から、差別化に関するご相談は非常に多いが、その相談内容から差別化の課題をピックアップすると下記のような4つの課題があるようだ。下記は実際にお客様から頂いた相談メールの内容(一部)である。
- 商品差別化がはかれない。結果として自社の収益向上につながらないとともに エンドユーザー(企業)も業者選定に苦労し、採否決定に多大な労力がかかる。
- ホテルや旅館業に対しての商材を主に扱っており、業界に特化した競合他社との差別化の図り方や戦略の練り方など、営業としての攻め方が定まっていない。
- 弊社の強み(他社との差別化)の見つけ方 がわからない
- 顧客視点での自社サービスの企画ができない
そこで、今回のコラムでは、BtoBの差別化戦略に焦点をあて、差別化戦略の立て方・差別化の図り方についてご紹介する。
ご紹介する内容としては、弊社がいつも差別化を具体化する際に活用している「4つの目線」を中心にご紹介する。そして、この4つの目線によって、「この目線が抜けていた」という具合に、新しい気づきを得て、差別化を考え直そうという良いきっかけになれば幸いである。
BtoB企業の差別化とは?
そもそも、差別化というのは「競合他社・同業他社と比べて何が良いか?」を具体化し、強化していくことである。ネットで検索すると、下記のように定義されていた。
差別化戦略(さべつかせんりゃく)とは、マイケル・ポーターによって提唱された競争戦略のうちの一つで、特定商品(製品やサービスを含む)における市場を同質とみなし、競合他社の商品と比較して機能やサービス面において差異を設けることで、競争上の優位性を得ようとすることである。
※出典:差別化戦略
このあたりは、いわずもがなであろう。では、この差別化であるが、上記の定義から、2つの重要なポイントがあることに気づかれただろうか?
それこそが、「比較対象」と「比較項目」である。
BtoB企業の差別化「比較対象」とは
まず、「比較対象」とは、あなたの製品・サービスを「どの製品・サービスと比較するか?」のことである。「**と比べてここが良い」というのが差別化であるため、比較対象がなければ、差別化にならないのである。
BtoB企業の差別化「比較項目」とは
次に、「比較項目」とは、比較対象と「どういう項目で比較するか?」のことである。分かりやすいのが、品質・値段・納期(QCD)である。品質が高いか低いか、値段が安いか高いか、納期が早いか遅いかで比較されるというわけだ。
これは、製品・サービスによってどのような比較項目が重要視されるのかが異なる。さらに、細かく分類すれば、購入する背景・活用シーン(利用シーン)によっても比較項目が異なる。そのため、比較項目を知ることは非常に難しい。
比較対象には「自社目線」と「顧客目線」がある
それでは、比較対象に話をもどして、比較対象について詳しく説明しよう。そもそも、比較対象は、2つの目線で比較対象を作ることができる。それが、「自社目線」と「顧客目線」である。
BtoB企業の差別化「自社目線の比較対象」とは
自社目線の比較対象とは、「あなた・御社」が自分の基準でリストアップした「比較対象」のことをいう。分かりやすく言えば、「あなたの競合はどこですか?」と聞かれて、「あなたが答えた相手」が「自社目線の比較対象」である。これは、あなた自身が自分の目線で作った比較対象であることが大きな特徴となる。
BtoB企業の差別化「顧客目線の比較対象」とは
反対に、顧客目線の比較対象とは、「あなた・御社の顧客」が実際に購入を検討する時に、購入先の候補としてリストアップした「比較対象」のことである。そのため、自社目線の比較対象とは異なる可能性もある。
「自社目線の比較対象」と「顧客目線の比較対象」は、飲食店に例えるとわかりやすい。あるイタリアンレストランAの店長が、「競合はどこか?」と聞かれ、「近くにあるイタリアンレストランBと少し遠いけど値段の安いイタリアンレストランC」と答えたとしよう。この場合、BとCが「自社目線の比較対象」となる。
反対に、あなたは今日、結婚記念日(20年目)であるとしよう。そして、奥さんに「今日は記念日だから外食しよう。どこに行きたい?」と聞くと、「イタリアンレストランAか和食レストランD、もしくはあそこのホテルの中国料理店Eかな」と奥さんが答えたとしよう。この場合、「イタリアンレストランAの店長」からみた「顧客目線の比較対象」は、DとEとなる。
この例のように、自社目線と顧客目線で比較対象は大きく異なるのである。そのため、自社目線だけで差別化戦略を考えるのではなく、顧客目線での差別化戦略も検討する必要があるのだ。その方が、視野の広い戦略を検討できるようになる。
比較項目には「物目線」と「価値目線」がある
次に、比較項目の詳細をご紹介しよう。比較項目にも、比較対象と同様に、2つの目線がある。それが、「物目線」と「価値目線」である。
BtoB企業の差別化「物目線の比較項目」とは
「物目線の比較項目」とは、「製品・サービス」の機能・スペックを中心とした項目のことである。IT系製品であれば、「●●機能」という具合に、製品に様々な機能があるが、こういう機能レベルでの比較を行う際の項目が「物目線の比較項目」となる。
製品や業界特性にもよるが、導入前のサービス内容、導入後のフォロー内容、機能面、性能面、品質面、値段、納期などのような項目が考えられる。
BtoB企業の差別化「価値目線の比較項目」とは
「価値目線の比較項目」とは、その製品・サービスでどんな課題・悩みが解決できるのか?そのプロセスはどうか?に着目した比較項目である。
物目線よりも、比較項目としての難易度は高いが、BtoBの場合、顧客は自社の課題を解決するために製品やサービスを購入するため、価値目線の比較項目は非常に重要である。
この「物目線の比較項目」と「価値目線の比較項目」についても、飲食店を例に考えてみるとわかりやすい。「物目線の比較項目」の場合、単純に、値段、料理の提供スピード、使っている材料、店員の接客態度などが考えられる。逆に「価値目線の比較項目」の場合だと、「楽しい時間を過ごせるか?」「思い出に残る時間になるか?」などとなるだろう。
BtoBの差別化戦略「4つの目線」
以上、ご紹介した4つの目線(「自社目線の比較対象」「顧客目線の比較対象」「物目線の比較項目」「価値目線の比較項目」)を図解化すると下図のようになる。
上図をご覧いただければわかるが、この4つの目線から(1)「物・自社」の差別化、(2)「価値・自社」の差別化、(3)「物・顧客」の差別化、(4)「価値・顧客」の差別化の4つの差別化があることがわかる。
BtoBの差別化戦略「4つの差別化」を具体化する
それでは、4つの差別化についてさらに詳細をご紹介しよう。長くなるため、下記の後編にて詳細をご紹介している。