AI時代のBtoBマーケティングでは、生成AIが情報を要約・比較するため、「情報を多く持っている側が有利」という従来の前提は崩れ、単なる情報提供や資料ダウンロード中心の施策は成果につながりにくくなっている。
これから重要なのは、(1)顧客の意思決定を支援するコンテンツ、(2)ポジショニングとターゲティングが具体的なコンテンツの2つが特に重要になる。本コラムでは、購買プロセスの変化を起点に、技術系BtoB企業が取るべきBtoBマーケティング戦略設計の考え方を整理する。
このコラムの対象読者
本記事は、技術系商材を扱うIT企業・製造業のBtoBマーケティングや営業に関わる担当者を対象とする。商材は専門性が高く、検討期間が長い、関係者が多い、単価が高いといった特徴を持つケースを想定する。AI時代への突入により、従来のSEO中心・資料ダウンロード中心の進め方に限界を感じ、BtoBマーケティングの方針を見直したい担当者向けに解説する。
AI時代でBtoB購買プロセスが変化
AIの普及により、BtoBの購買プロセスは大きく変化している。顧客は営業に接触する前から、生成AIを使って課題整理、解決策の比較、候補ベンダーの絞り込みなどを行っている。その結果、企業のWebサイトや資料が「検討初期に読まれる情報」ではなく、「AIに要約・参照される情報」へと役割を変えつつある。
以下がAI時代の変化のイメージ図だ。今までは、SEO対策、ホワイトペーパー、メルマガなどでリード獲得や育成を行っていた。しかし今後は、リードがAIと相談しながら課題整理、解決策の比較、候補ベンダーの絞り込みまでを進める可能性が高い。

AIによって変化したBtoB購買プロセス「変化前と変化後」
これからのBtoBマーケティングは、問い合わせ前に顧客がAIと進めている「課題整理・比較・候補選定」のプロセスに対して、「自社のWEBコンテンツがAIにどう活用されるか?」、「AIの判断材料として参照され候補として挙げられるコンテンツをどう設計するか?」が中核となる。
BtoB購買プロセスが変化したと言える2つの理由
なぜこのような変化が発生していると言えるのか、その2つの理由をご紹介する。
2026年、取り組みたい施策のNo1がAI対策(GEO対策)
1つ目は、2025年に実施したALUHA(弊社)の独自調査結果だ。約72%のBtoB企業の売り手がAI対策(GEO対策)をしなければならないと認識していることが判明した。
ALUHAは、技術系BtoB商材のBtoBマーケティング支援を行う企業である。毎年年末に、顧客満足度調査を実施しており、「顧客企業に今後取り組みたいBtoBマーケティングの施策」を確認している。その回答において、約72%の顧客企業はAIによる影響を懸念し対策を検討していることが判明している。
【実例】ALUHAがAI対策を進めて見えた「初期シグナル」
2つ目は、ALUHA自身で発生している初期シグナルだ。まだ件数は少ないが、AI時代の購買プロセス変化を捉えるための実務的な観測記録としてご紹介しよう。
ある企業からの問い合わせは、2026年1月下旬に発生した。Web検索を一切行わず、生成AI(Copilot)との壁打ちを起点として発生したCVであった。問い合わせ内容によれば、「今、自社で求められていることに応える方法論はないか」という問いに対し、AIとの対話の中で次のように思考が整理されたという。
- ABMという枠組みが存在する
- ABMをより深く理解し、デジタル施策も併用した方法論が必要である
- そのためには書籍やセミナーなど、体系的に学ぶ手段が適している
- では、どこで学ぶべきか
この検討プロセスの結果として、ALUHAがAIにより推薦され、問い合わせに至った。特筆すべき点は、検索を経由せず、生成AIとの対話だけで「相談先の選定」まで完了している点である。
この問い合わせをきっかけに、約10名規模の個別勉強会を開催した。本記事執筆時点で、まだ商談や受注といった成果には至っていないものの、複数の関与者と一度に接点を持つ機会が生まれている。
技術系商材ほどAIの影響が大きくなる理由は何か?
技術系商材ほどAIの影響が大きくなる理由は、顧客が意思決定に必要とする情報量と複雑さにある。専門性が高い商材では、用語解説、方式比較、導入条件、他社事例など多くの情報収集が前提となる。
従来は、WEBサイトや資料(ホワイトペーパー)が情報収集の中心であった。しかし現在は、生成AIがこれらの情報を横断的に整理し、比較・要約して提示する。結果として、顧客は個別企業のサイトを細かく回遊しなくても「検討の全体像」を把握できるようになった。
だからこそ、技術的な説明そのものよりも、「自社に当てはめるとどう判断すべきか」「どの選択肢が適切か」を支援するコンテンツが重要になるのである。まさに、「意思決定支援コンテンツ」といえるようなコンテンツだ。
AI時代のBtoBマーケティングの進め方はどうすればいいか?
このようなAI時代において、BtoBマーケティングはどう進めるべきであろうか?現在のWEBサイトやホワイトペーパーの内容を資産として活かしながら、以下の2つの方針が重要になる。
方針① 情報提供ではなく「意思決定を支援するコンテンツ」を中心にする
AI時代において、コンテンツの方針は「情報提供」から「判断を助ける、意思決定を支援する」へ転換する必要がある。
理由は、顧客が必要とする基礎情報や比較情報の多くを、生成AIが収集・要約できるようになったためである。製品概要や機能説明、一般的な導入メリットを並べるだけでは、顧客の検討プロセスに入り込めなくなっている。
これから求められるのは、「どの条件なら導入すべきか」「自社の場合は何を重視すべきか」「検討を進める際の注意点は何か」といった判断材料を整理した「意思決定をスムーズに進めるためのコンテンツ」である。
この「意思決定をスムーズに進めるためのコンテンツ」は、顧客の思考を具体化し、営業接触前に検討の質を高める役割を果たす。その結果、マーケティングは単なる集客ではなく、営業活動を前倒しする戦略的機能を担うようになる。
方針②ポジショニングとターゲティングが具体的なコンテンツ
AI時代においては、「誰に向けた、どんな位置付けのコンテンツなのか」が曖昧なコンテンツは、顧客にもAIにも選ばれにくくなる。
そのため、マーケティングコンテンツには、ポジショニングとターゲティングを具体的に示す役割が強く求められる。生成AIは製品やサービスを横断的に比較するが、その際に参照するのは「どの条件に向いているか」「どんな前提なら有効か」といった情報である。
対象業種、企業規模、既存環境、解決できる課題とできない課題を明確に示すことで、自社が“選ばれるべき領域”が可視化される。結果として、ミスマッチなリードを減らし、相性の良いリードと商談を前に進めていくことができる。
ポジショニングとターゲティングを具体化したコンテンツは、集客のためだけでなく、購買プロセス全体の効率を高める戦略的コンテンツとなる。
御社のBtoBマーケティング戦略はAI時代に対応できているか?簡易チェックリスト
ここからは、御社の現状を確認できるよう、簡易セルフチェックを行ってみて欲しい。以下のチェックリストは、AI時代のBtoBマーケティング戦略設計ができているかどうかを、実務の言葉に落として点検するリストだ。気になる項目があれば、その項目から改善を進めてみてはどうだろうか?
【購買プロセス理解】
- リードの購買プロセスを整理・明確化している。
- リードがどの段階で、どんな不安や判断をしているかを具体化できている。
- リードが購買プロセスの各段階において、どんなプロンプトを入力しているか想定できている
【ターゲティングとポジショニング】
- 誰向けにコンテンツを発信するのかのターゲティングが具体化されている。
- 自社製品・サービス・技術のポジショニングを具体化できている。
【コンテンツの役割】
- Webコンテンツは「情報提供」ではなく「判断支援」を目的に設計している。
- 営業が商談で説明している内容が、Web上に再現されている。
【AI前提の構造】
- 記事は冒頭で結論がわかる構造になっている。
- 比較・選び方・向き不向きが明示されている。
- 箇条書きや表で、要点が抜き出せる。
- 誰が書いているか、なぜ信頼できるかが明確である。
【独自体験の情報】
- 実体験や支援事例、数値が含まれている。
- 失敗・例外・注意点もあえて書いている。
御社はいかがだっただろうか?もし気になる項目があれば、こちらからお問い合わせいただけたらと思う。具体的なコンテンツの見本をお見せしながら、御社の改善方針の具体化のご支援をさせていただく。無料相談として承っているので、早めに手を打ちたい方はご連絡いただけたら幸いだ。
チェック結果から見える典型パターン
このチェックを行うと、典型的な3つのパターンに分かれることが多い。
1つ目は、「情報提供型」に偏っているパターンである。用語解説や概論が多く、読むと理解はできるが、意思決定に使える材料が少ない。自戒を込めて記載するが、記事執筆時点のALUHAのWEBサイトもこの傾向が強い状況だ。SEO時代の名残といってもよい。これからAI時代に向けて、改善を強化していかねばならない。
2つ目は、営業依存が強く、マーケが判断支援になっていないパターンである。営業が毎回説明している論点がWebに載っておらず、顧客の理解は営業接触後にしか進まない。
3つ目は、AIに引用される前提で構造設計されていないパターンである。結論が遅く、段落が長く、要点が抽出しづらい。結果としてAIの回答の中に自社の情報が入りにくい。
まとめ|AI時代のBtoBマーケティングは「正解を教える」より「決められる状態を作る」
AIの登場により、リードや顧客は容易に情報収集ができるようになった。その結果、情報格差は縮小し、検索を起点にした従来型のリード獲得は難易度が上がる。
BtoBマーケティングは、単なる情報発信ではなく、リードや顧客の「意思決定を支援する仕組み」へ進化すべきである。「決めるための判断材料をどこまでWEBに掲載できるか?」が今後の勝負どころと言えそうだ。
最後になるが、このAI時代のBtoBマーケティングについて、相談や質問があれば、お気軽にお問い合わせいただけたらと思う。弊社や弊社の顧客の取り組み内容や成果、苦労している点(失敗した点)、何からどう進めていくべきか?など、一緒に検討できたらと思う。












