リードナーチャリング手法「変化するリードのニーズに合わせたコンテンツの設計方法」

リードに刺さるコンテンツを提供する方法
Last Updated on 2024年9月9日 by 荻野永策

BtoBマーケティングにおいて、リードを育成するリードナーチャリングでは、定期的なタッチポイント(顧客接点)を作っていく必要がある。その「タッチポイント」を作るためによく活用されるのがデジタルコンテンツ(メールやWebコンテンツなど)だ。

しかし、タッチポイントを作るためのデジタルコンテンツとして、どのようなコンテンツをリードに配信すればいいのか、わからなくなることは多々ある。

リードにはどんな課題があるのか?何に興味があるのか?どんなコンテンツを欲しがっているのか?などのリードのニーズを把握するのに時間がかかり、良いタッチポイント作りに繋げられないことが多い。

実際に、弊社のアンケート調査でも下記のような回答があった。

  • リードにとって価値のあるコンテンツの選択方法がわからない(2020年3月6日 製造業 N社 Sさん)
  • お客様の興味・関心事の把握が長期にわたり、営業部門で提案シナリオが組めない。 (2020年3月19日 IT企業 F社 Sさん)

そこで、今回は、リードナーチャリングにおいて、時間と共に変化するリードのニーズを把握し、的確なコンテンツを作成する方法をご紹介する。

どのようなコンテンツをリードに提供すべきかわからなくなる理由

最初に、リードナーチャリングにおいて、リードにコンテンツを提供する際に、「どのようなコンテンツがいいのかわからなくなる理由」について考察する。弊社では、その理由は3つあると考えている。

理由1:時間と共に変わるニーズ

1つ目は、いわずもがな、時間と共にニーズ(興味・関心)が変化するからだ。「上司・担当者・組織体制が変わる」、「KGIやKPIが変わる」、「ニーズの背景にあるリードの課題が変わる」といったリードの社内事情により、リードのニーズは時間と共に変化する。そのため、リード1人1人に対してニーズを追いかけ、それに答えるコンテンツを提供するのは非常に難しいのである。

理由2:アンケート調査の限界

2つ目は、「リードの興味・関心を調査することの難しさ」である。BtoBならではとでもいえるだろうか。リードにアンケート調査をしても回答率は100%ではない上に、コンプライアンスの問題もからんで、なかなか回答してくれないケースが多い。そうなると、ますますニーズを把握することが難しくなり、リードに対してどんなコンテンツを提供すればいいのかも判断できなくなる。

理由3:増え続けるリード

3つ目は、「リードが増えることによるニーズの多様化」である。リードのニーズを把握できたとしても、数が多くなるとニーズの全体像を俯瞰することが困難となり、大量のリードに対してどんなコンテンツを提供すればいいのか、わからなくなる。

このように、時間と共に変わる、アンケート調査にも限界がある中で、リードが増え続けると、「リードのニーズは一体何なのか?」を俯瞰することができなくなり、その結果、コンテンツ提供に大きな影響が出てくる。

最終的には、どんなコンテンツがいいのか、誰も判断できなくなり、「自社目線のプロダクトアウトなコンテンツ」が提供されてしまう。もしくは声の大きな人の意見が反映され、最悪の場合、効果のないコンテンツ提供が継続されてしまう。

リードナーチャリングで的確なコンテンツを提供するためのニーズデータベース

では、このような課題がある中でどのようにして、的確なコンテンツをリードに届けるべきだろうか?

理想論を言えば、リード1人1人に対して、定期的にアンケート調査を行い、ニーズを把握したのち、ニーズに合わせてコンテンツを提供するのが理想である。まさに、究極のOneToOneといえるかもしれない。

しかし、現実的にリソースの問題やアンケート回答100%が無理である以上、これは机上の空論である。

そこで、解決の方法として考えられるのが、リードのニーズデータベースの構築である。

リードのニーズデータベースとは?

リードのニーズデータベースとは、自社のリードが抱える興味・関心・課題・悩み・不安といったニーズにつながる情報を、データベースとして蓄積したものだ。

当然、日時、社名、回答者名、部署、役職といったニーズに関連する付加情報もデータベースの項目として必要になる。

弊社では、このリードのニーズデータベースが、リードナーチャリングの的確なコンテンツ提供の実現の課題解決につながる可能性があると考えている。

リードのニーズデータベースがなぜ解決策になるのか?

リードのニーズデータベースは、リードのニーズを蓄積しておく仕組みである。そのため、ニーズが蓄積されればされるほど、リードのニーズに対して「抜け漏れが最小化」する。その上で、蓄積されたリードのニーズに対して、コンテンツを提供する。コンテンツは、オウンドメディアとしてWebコンテンツ化するのもよし、PDF資料にしてダウンロード資料にするのもよし、FAQサイトでコンテンツ化するのもよいだろう。

このように、「抜け漏れが最小化されたリードのニーズデータベース」をベースにして、コンテンツも連動して蓄積していくのである。つまり、ニーズAに対するコンテンツA、ニーズBに対するコンテンツB、ニーズCに対するコンテンツCという具合にニーズもコンテンツも蓄積するのだ。

その結果、上述した課題を解決できる可能性が生まれてくる。

なぜなら、あらゆるニーズに答えるコンテンツが既に準備されている状態になるからだ。

例えば、あるリードのニーズが、ニーズAからニーズBに変化したとしよう。この変化に対してその都度、ニーズの変化を捉えようとしていては、上述の課題は解決できない。しかし、ニーズデータベースとそれに対応するコンテンツ蓄積があれば、ニーズAからニーズBに変化したとしても、すでにニーズBに対するコンテンツBも存在するため、変化しても問題ないのである。

これは、ニーズの変化だけでなく、アンケートの回答がなくても、リードの数が増えても、ニーズデータベースとコンテンツ蓄積があれば、解決できる可能性が高くなるのだ。

リードのニーズデータベースの作り方・運用の仕方のポイント

では、このリードのニーズデータベースであるが、どのように作り、どのように運用すればいいだろうか?弊社では下記の3つのポイントに注意しながら構築と運用を行なっている。

リードのニーズを収集するアンケートの間口を広げる

リードのニーズデータベースを構築するには、リードのニーズを収集する仕組みが必要になる。しかし、アンケートの回答率は100%は無理だ。そのため、アンケートの回答をしてもらえる接点やタイミングを弊社では複数作成している。その結果、回答率は100%でなくても、回答数という意味では十分な量が蓄積できるようになる。

例えば、セミナーアンケート、Webからの資料請求時のアンケート、メルマガでのアンケート調査のお願いなどである。1つのアンケートに対して回答はゼロでもよいが、全体として有効な回答が収集できればいいので、まずはアンケートの間口を広げ回答してもらえる接点をたくさん作ろう。

リードのニーズ収集には時間がかかるので時間を味方につける

次に、リードのニーズデータベースを作るには、絶対に時間がかかる。そのため、早くやり始めた方がいいという結論になる。弊社では、2016年7月からニーズデータベースを作り始め、現在では、858件(記事執筆時点)のニーズを蓄積できている。弊社の場合、すべてデジタルマーケティング(自社サイト・自社ハウスリストのみ)でのニーズ調査であるためこの程度の数しか収集できていないが、リアルのイベント(展示会など)でも実施すれば、もっと多くのニーズが収集できるはずだ。

コンテンツ化は戦略的にする

そして、最後のポイントは「ニーズデータベースからのコンテンツ化」についてだ。ニーズが集まれば集まるほど、コンテンツは無限に、無数に作らなければならないというような状態に陥る可能性がある(商材にもよるが)。

その場合は、ターゲティングのモデルであるペルソナに近しいリードのニーズのみに回答するようなコンテンツ作成を計画すればいい。別な言い方をすれば、自社のUSPと連動性があるニーズに対してコンテンツ化することになる。

そうすれば、そのようなコンテンツを見てリードナーチャリングされたリードは、クロージングの際に受注率が高くなる可能性がある。自社のUSPと相性のよいリードになるため、受注率に大きな影響がでてくる。

リードのニーズデータベースからのコンテンツ配信の仕方

以上の3つのポイントを参考に、リードのニーズデータベースを作成し、そこから必要なコンテンツを着々と作っていこう。そしてコンテンツを作れば、下記の方法で配信すると良い。

1つは、当然メルマガである。ターゲットリストがある程度セグメンテーションできるような情報が整理されているのであれば、セグメントに分けてコンテンツを配信することにより、リードの興味・関心にあったコンテンツ配信が可能となるだろう。

リードの数が多すぎる、リード情報が正確にクレンジングされていないといった場合は、最低限のセグメンテーションのみ行い、メール配信するといい。

上記、どちらの配信方法についても、リード全員に刺さるようなコンテンツにはならない。しかし、少なくともあるリードが持っていたニーズにそったコンテンツを配信しているため、オプトアウトは最小化できる可能性がある。なぜなら、あるリードが持っているニーズというのは、他のリードも同じニーズを持っている可能性があるからだ。

余談ではあるが、MAからのメール配信でどのようにすれば開封率・クリック率があがるのか、そのテクニック論をまとめたPDFがあるので、本コラムに合わせてご興味があれば、ぜひダウンロードしていただければと思う。

BtoBメルマガの開封率・クリック率を高める7つの法則
〜MA活用の効果を高めるメールマーケティングテクニック〜
https://btobmarketing.aluha.net/contact/white-paper/#r18

もう1つは、Webコンテンツ化するとよいだろう。Webコンテンツ化すると、リードはいつでも検索からコンテンツを確認することができる。そうすれば、タッチポイントは増える。さらに、そのコンテンツにSEOワードも織り交ぜれば、リードジェネレーションにも繋がり、そのCV時にアンケートを実施しておけば、リードのニーズデータベースの蓄積にもつながる。

以上が、弊社の考える「リードナーチャリングにおけるリードに対する的確なコンテンツの提供方法」の概要だ。御社でもこのようなことができないか、そして他の案がないか、検討してみてはいかがだろうか?

BtoBリードナーチャリングの基礎コラム


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ABOUTこの記事をかいた人

株式会社ALUHA代表取締役。1979年兵庫生まれのBtoBマーケティングコンサルタント。金沢工業大学大学院にて情報工学を専攻し2003年4月にALUHAを創業。2008年からBtoBに特化したマーケティング支援、営業戦略支援を開始。BtoBマーケティングや営業戦略の戦略立案から、計画実行とPDCA、そして人材育成を伴走型で支援。デジタルとリアルを融合させた戦略設計が得意。毎月全国各地の様々な企業でBtoBマーケティングセミナーを実施中。100社以上でのセミナー講演実績を持つ。大手IT企業、製造業(日立Gr、富士フイルムGr、キヤノンGr、積水Grなど)を顧客に持つコンサルタント。→セミナー講演実績→コンサル実績