BtoBマーケティングでWEBマーケティングを行う際には、「WEB活用はどこまで効果的か?」を事前に判断することは非常に重要である。しかし、BtoBの製造業の場合、製品がニッチであるがゆえに、この判断が非常に難しいことが多い。
「ニッチな製品でも集客ができるのかどうか?」や「集客できても見込み獲得ができるのかどうか?」など、情報が少ないため判断しにくいのである。この結果、社内の理解が得られにくく、WEBは効果がないと(勝手に)判断されてしまうこともある。そうなると予算も取りにくく、WEB活用は進まない。実は弊社にもこのような内容に関連するご相談をよくいただく。例えば下記の2つが良い例である。
例1:電気機器などの製造を行う総合電気メーカーからのご相談
「弊社の製品は、非常にニッチな事業領域で、WEBを使ったマーケティングがどれほど効果があるのか一度、荻野様のアドバイスを頂戴したいと考えております。」
例2:輸送用機器、環境・エネルギー分野の部品や機械の製造・販売を行う企業の営業担当者様からのご相談
「本社の広報にてWEBサイトの改善を行っています。でも、それはあくまで広報活動の一環であり、営業として使うという認識がありません。そのため、広報部からWEB活用の可能性を探ってほしいと言われました。当社の製品はニッチなので、実際にWEBが使えるのかどうか、わからないんです」
上記2社とも、自社製品がニッチであるがゆえに、WEBマーケティングが効果的なのかどうか、判断する材料がなく、困っているという状況である。
そこで、今回のコラムでは、ニッチな製品・事業領域でも、WEBマーケティングが効果を発揮するかどうかを判断するための4つの手順をご紹介する。無料でできる上にやり方さえ覚えれば、いますぐにでもできる。1つの判断基準として、この4つの手順を活用していただければ幸いだ。
ニッチな事業領域におけるWEBマーケティングの効果を事前に判断する4つの手順
4つの手順とは下記のような手順である。
(1)自社製品に関連するキーワードをリストアップ
(2)サジェスト分析で検索キーワードの種類を把握
(3)キーワードプランナーで検索回数を把握
(4)検索回数とサジェストの内容を分類表で分類して判断する
それでは1つ1つ詳細にご紹介しよう。なお、詳細にご紹介するにあたり、例があるとわかりやすいので、実際にご相談をいただいた「サーボプレス」を例にご紹介する。御社はサーボプレスを製造するメーカーで、自社製品として「ALUHAサーボプレス」という名前の製品があると想定して、話を進める。また御社の社名もALUHAという社名で話を進める。
サーボプレスとは
サーボプレスとは、サーボモータを使用したプレス方法。油圧式プレスに比べ油が不要なので管理がしやすく保守が容易である。スピード、位置、加圧力などの細かい制御ができるので、条件設定を正確に行うことができる。引用「サーボプレスとは」
(1)自社製品に関連するキーワードをリストアップ
最初の手順は、「自社製品に関するキーワードをリストアップ」である。
リストアップの方法は、あなたが知っているキーワードが中心である。当然専門用語(業界では一般用語)でもよいし、御社名、御社製品名でも良い。とにかく、ひたすら関連しそうなキーワードをリストアップするのだ。この段階では可能性を探ることになるので、まずは思いつく限り関連しそうなキーワードをリストアップしていこう。ただでさえニッチな商材であるため、キーワードの幅を広げることを優先的に考えよう。
例えば、サーボプレスの場合は、「サーボプレス」というキーワード以外にも、プレス加工、機械加工、プレス機というような関連する用語が考えられる。自社製品名の「ALUHAサーボプレス」や自社名である「ALUHA」も当然リストアップする。リストアップできたら、エクセルに箇条書きで良いので、記入していこう。
ここで1つ注意点がある。業界の専門用語とはいえ、キーワードが被っているケースがある。分かりやすく言うと、「POP」というキーワードは、「売り場で使うPOP」もあれば、JPOPのような音楽関係のもあるし、POP3のようにメールのプロトコルもある。
このようなキーワードの場合、次の手順で分析するサジェスト分析に影響がでるため、この段階でキーワードが被っていないかどうか実際に検索しながら確認しておこう。
(2)サジェスト分析で検索キーワードの種類を把握
キーワードがリストアップできたらリストアップした全てのキーワードのサジェストを調べる。サジェストとは、GoogleやYahooが提供している検索補助機能の1つで、検索ニーズを把握する1つの判断基準になるものだ。
例えば、Googleの検索ボックスに「サーボプレス」と入力してみよう。すると、下図のように、プルダウンで検索の候補キーワードが表示される。
これは、あるキーワードと入力すると、そのキーワードとセットでよく検索されているキーワードを自動的に表示してくれる検索補助機能の1つである。これをサジェストという。サジェストは日本全国で検索されているキーワードであるため、このサジェストの中に検索ニーズが含まれている可能性があるのだ。そのため、どんなサジェストがあるのか、全て調べることで検索ニーズの全体像をつかむことができる。
上記のサジェストは最大でも5つくらいしか表示されないため、全てを表示することができない。そこで活用するのがサジェストの分析ツールである。私が知る限り、下記の分析ツールがある。
サジェスト分析ツール GoodKeyWord
使い方は簡単である。サイトにアクセスし、GoodKeyWordのロゴマークの下にある「Googleサジェスト」をクリック、そしてキーワードを入力し、「検索」をクリックすればOKである。
例えば今回の場合、「サーボプレス」であるため、サーボプレスと入力し、検索をクリックする。すると下記のようにサジェスト一覧を取得することができる。
GoodKeyWordの右側に「表示されたキーワードをすべてコピー ※重複キーワードは削除済」というのがあるので、そこからキーワードコピーしてエクセルなどに貼り付ける。この作業をリストアップした全てのキーワードで実行しよう。
サジェスト一覧が取得できたら、下記のような表をつくり、サジェスト一覧表を完成させよう。下図は「サーボプレス」というキーワードのみのサジェスト一覧表であるが、手順1でリストアップした全てのキーワードについて、サジェスト一覧表を作ろう。エクセルで言えば、シートを変えるなどすればよい。
表にある検索回数などは次の手順で調査するので、現段階では空欄でよい。また、手順1で確認した「被っているキーワード」がある場合は、関係のないサジェストが多数あるので、削除しておこう。
(3)キーワードプランナーで検索回数を把握
リストアップしたキーワードのサジェスト一覧表が完成したら、次は検索回数を調べる。検索回数の調査とは、例えば、「サーボプレス」がGoogleやYahooで月間どのくらい検索されているのかを調べることである。
YahooもGoogleもキーワードの検索回数を調査できる仕組みを用意しているので、それを使って検索回数を調べ、WEBマーケティングの可能性を探る判断基準の1つにするのである。ニッチな商材の場合、検索が発生していないようなことも考えられる。検索がなければ、WEBマーケティングの可能性は下がるため、判断基準の1つとして活用できるのである、
調査方法は、Googleを中心にご紹介すると、下記のような手順になる。
Googleキーワードプランナーにアクセス
まずはGoogleのキーワードプランナーにアクセスする。
キーワードプランナー
https://adwords.google.co.jp/keywordplanner
Googleアドワーズにログインして検索回数を調査
キーワードプランナーのページにアクセスすると、2016年7月現在においては、アドワーズにログインしないと使えない状況になっている。そのため、アドワーズにあなたが持っているGoogleのアカウントでログインしよう。アカウントを持っていない場合は無料で取得できるので取得しよう。
アドワーズにログインすると、下記のようなメニューが画面上部に表示される。
メニューにある「運用ツール」をクリックすると、下記のようなメニューが表示される。
このメニュー内のキーワードプランナーをクリックしよう。すると、Googleでの検索回数を調査できる「キーワードプランナー」の画面が表示される。2016年7月現在、下記のような画面となっている。
この画面の検索ボリュームと傾向を取得をクリックする。すると下記のようになる。
この画面のキーワード入力の欄に、手順2で作ったサジェスト一覧表のキーワードをコピー&ペーストする。サーボプレスの場合は下記のようになる。
貼り付けたら、「検索ボリュームを取得」をクリックする。すると、下記のように検索回数が表示される。
キーワードのおおよその検索回数が表示されているので、検索回数をサジェスト一覧表に追記し、下記のようなイメージのエクセルを作ろう。これで検索回数の調査は完了である。
なお、検索回数の結果はCSVでダウンロードできるので、ダウンロードしてサジェスト一覧表を作ると作業はラクになる。
また、Googleのみご紹介したが、Yahooの検索回数は、2016年7月現在、「Yahooビジネスセンター」からログインし、スポンサードサーチのキーワードアドバイスツールを活用すれば、Yahooの検索回数も調査できる。
余談であるが、GoogleとYahooは検索回数がそれぞれ異なるので、キーワードによっては、Yahooが多い・Googleが多いということがある。そのため、両方調査するのがベストである。
(4)検索回数とサジェストの内容を分類表で分類して判断する
サジェストと検索回数の一覧表ができたら、それらを下記の分類表を使って分類しよう。これがWEBマーケティングで見込み開拓できるかどうか?の判断を行う基準の1つになる。
上記は私が基本的に分類するときに使っている分類表の基本パターンである。
まず、分類表にある「業界用語」とは、「サーボプレス」のように、製品名・自社名ではなく業界の用語のことを意味するキーワードのことである。専門用語などもここに入る。
「ブランド名」は、「御社の製品名・型番」や「御社名」などである。御社特有の固有名詞が該当する。例で言えば、製品名である「ALUHAサーボプレス」や社名である「ALUHA」が該当する。
WEBマーケティングの可能性を探る分類表「G1グループ」
ここには、「価格調査」や「御社以外の製品の型番」、「御社以外のメーカー名(競合名)」や「要望」に関するワードなどを含むサジェストをグルーピングする。例えば、下記のようなキーワードになる。
「サーボプレス 価格」「サーボプレス メーカー」「競合製品名 価格」など
このようなキーワードで検索するユーザーは、製品の情報、メーカーの情報、価格を調査しているため、検索者は御社の見込み客である可能性が高い。つまり、WEBマーケティングの可能性は十分にあるというわけだ。
なお、余談であるが、競合のブランド名(競合社名や製品名)での検索が多い場合は、自社製品が認知度で負けている可能性を意味する。そのため、もっと検索されるようにプロモーションを強化することも重要となる。
WEBマーケティングの可能性を探る分類表「G2グループ」
ここには、「自社社名や自社製品名に関するワードなどを含むサジェスト」をグルーピングする。例えば、下記のようなキーワードである。
「ALUHA サーボプレス」「ALUHAサーボプレス 価格」「ALUHAサーボプレス 特徴」など
つまり、自社について調べている可能性が高いことを意味する。そのため、展示会やリアルの営業活動など、検索を発生させている何かしらの要因があるので、WEB以外のプロモーション活動が効果を発揮している可能性が高い。当然、WEBマーケティングの可能性も十分ある。
逆に、こういった検索が多いにもかかわらず、WEB経由での引き合いが少ない場合は、大問題である。WEBが集客した見込み客に対して必要な情報を提供できておらず、みすみす逃している可能性すらあるからだ。
WEBマーケティングの可能性を探る分類表「G3グループ」
ここには、見込み客が検索する可能性が低いサジェストをグルーピングする。例えば、下記のようなワードである。
「サーボプレス 営業方法」「サーボプレス 卒論」など
「サーボプレス 営業方法」などの場合、検索者は見込み客ではなく、むしろ売り手であり、競合である可能性が高い。「サーボプレス 卒論」は、学生が研究で調査しているのか?と判断できる。製品や業界によってはこういった検索がなされていることもあるので注意が必要である。この場合は、WEBマーケティングの可能性は低い。
WEBマーケティングの可能性を探る分類表「G4グループ」
ここには、御社の会社情報に関するサジェストをグルーピングする。例えば、下記のようなキーワードである。
「ALUHA 採用」「ALUHA 株価」「ALUHA 求人」「ALUHA 年収」など
このようなキーワードは、見込み客ではない可能性が高く、WEBマーケティングの可能性は低い。
WEBマーケティングの可能性を探る分類表「G5グループ」
ここには、技術やノウハウに関連するサジェストをグルーピングする。例えば、サーボプレスの場合、下記のようなキーワードである。
「サーボプレス 位置決め精度」「サーボプレス 圧力制御」など
見込み客が製品を探している可能性も否定はできないが、買う意思があるのか?というと判断は不能である。そのため、判断が難しいが、見込み客ではないと否定できない以上、可能性が多少あると考えるべきである。
WEBマーケティングの可能性を探る分類表「G6グループ」
ここには、「自社製品名 故障」のような、既存顧客か見込み客か判断がしにくいサジェストをグルーピングする。例えば下記のようなキーワードである。
「ALUHAサーボプレス 故障」「ALUHAサーボプレス 部品」など
このようなキーワードは、既存客が購入後のサポート情報を調べている可能性と、見込み客が購入前にアフターサービスを調べている可能性、そして、競合が調査している可能性が考えられるため、判断がしにくい。そのため、G5同様、可能性がゼロではないと判断すべきである。
WEBマーケティングの可能性を探る分類表の例
では実際にサーボプレスで分類表を作ってみよう。あくまでサンプルではあるが、おおむね下記のようなイメージになる。
分類表には、上記のようにキーワードと合計検索回数を記載する。このような分類表を作り、G1やG2、G5などが多い場合は、可能性があると考えても良いだろう。それ以外が多い場合は、他のキーワードでも検証しつつ、可能性を探ってみよう。
なお、検索回数が測定不能という場合も多々ある。その場合は、サジェストの種類数をカウントして、種類数の多さで判断しても良い。サジェストが多いとそれだけ検索している人も多いと判断できるので、1つの基準として活用できる。
WEBマーケティングの可能性の判断に迷う場合はどうするか?
このようなサジェストの分析を行っても判断に迷うことが多い。
なぜなら、WEBであるがゆえのジレンマであるが、検索者の顔は決して見えないので、結局想像でしかないためだ。たとえば、「ALUHAサーボプレス 価格」と検索されている場合、前向きに考えれば見込み客が価格を調べていると判断できるが、逆を考えれば競合が価格調査しているとも判断できる。これについては、サジェスト分析だけでは確証は得られない。
しかし、判断基準が何もない状況で勝手に決めつけるよりも、確度の高い判断はできるだろう。
また、より判断基準のデータを収集したいのであれば、今のWEBサイトのアクセス分析をすることをお勧めする。どんなキーワードで集客できていて、どんな引き合いが来ているのか?をサジェスト分析を合わせて行うことで、より確度は高くなるだろう。
サジェスト分析を行い、実際にWEBマーケティングを成功させた事例
ご紹介した方法の実例として、実際にサジェスト分析から検索ニーズを見つけ出し、WEBマーケティングに成功した企業がある。詳細はブログでは公開できないので、PDFにまとめてある。
見込み客を獲得するWEBページのコンテンツ設計の仕方
〜自社の強みを生かして見込み客を獲得する方法〜
上記資料では、どのようにしてサジェスト分析し、どのようなWEBを作り、どうやって見込み獲得したのかなどを詳細に説明している。WEBページの作り方まで言及してあるため、テスト的に何かやってみたい方は、参考になるのでぜひお申し込みいただければ幸いである。