WEBサイトを制作する際には、必ず「サイトマップ」を作る。サイトマップの目的は、WEBサイトの構造を可視化し、どのような情報を提供するかをわかりやすくすることだ。WEBサイトの全体像を俯瞰視するためのものと言える。
しかし、「会社概要のパンフレット、商品説明資料の内容をそのままサイトマップにしただけ」といったように、WEBサイトでコンバージョンを得るために必要な「ユーザの導線設計」と「検索ニーズを盛り込んだコンテンツ設計」が、サイトマップに反映されていないことが多い。
そうなると・・・
- サイトマップを作ったはいいけど、コンバージョンへと誘導する導線設計がうまくできていない
- サイトマップを作ったはいいけど、見込み客の検索ニーズを満たしたコンテンツになっているのかわからない
- サイトマップを作ったはいいけど、検索ニーズを満たした内部SEO対策ができているのかわからない
といった状態のサイトマップが作成されてしまう。実際にもしあなたが今WEBサイト制作に関わっているなら、サイト制作の責任者・企画担当に対して「このサイトマップはユーザーの導線設計はどうなっているの?」や「見込み客の検索ニーズを満たすコンテンツはどこにあるの?」と聞いてみよう。
逆にあなたがサイトマップを作った当人であれば、上記のような質問をされたら明確に答えられるだろうか?
明確な回答ができないようであれば、ぜひこの記事を参考にしてサイトマップを再検討してほしい。おそらくWEBサイトの構造や今後の運用方法( PDCAによるサイト改善とアクセス解析 )が大きく変わるだろう。
それでは、「コンバージョンへと誘導する導線設計」と「見込み客の検索ニーズを満たしたコンテンツ設計」を反映したサイトマップの作り方をご紹介しよう。記事の最後にはサイトマップのサンプルもダウンロードできるのでぜひ次回のWEB戦略会議や打ち合わせで活用していただければと思う。
WEBサイト活用はBtoBマーケティングにおいて、非常に重要な手法の1つであるため、ぜひ参考にしてほしい。
サイトマップ作成「4つの手順」
「コンバージョンへと誘導する導線設計」と「見込み客の検索ニーズを満たしたコンテンツ設計」を反映したサイトマップを作成するには、4つの手順が必要だ。
(1)サジェスト分析で検索ニーズを知り必要なコンテンツを洗い出す
(2)コンバージョンまでの導線を設計する
(3)導線の各段階にあわせてコンテンツを割り振る
(4)サイトマップを作る
それでは各手順について詳しくご説明する。
(1)サジェスト分析で検索ニーズを知り必要なコンテンツを洗い出す
サイトマップを作成する前に、まずすべきことは、見込み客の検索ニーズを知ることだ。WEBは情報を探すメディアであるため、見込み客は何かの情報が知りたくて、YahooやGoogleで検索し、情報を得ようとする。したがって、「見込み客がどんな情報を知りたがっているのか?」を把握した上で、WEBサイトに必要なコンテンツを設計し、サイトマップを作成しなければならない。
そうしなければ、「このサイトにはほしい情報がない」となり、コンバージョンにはつながらない。加えて、「見込み客がどんな情報を知りたがっているのか?」を把握しなければ、どのようなキーワードで内部SEO対策すべきかも判断できない。
では、「見込み客はどんな情報を知りたがっているのか?」をどのように把握すれば良いだろうか?方法はいくつかあるが、無料で今すぐできる方法の1つに、サジェスト分析がある。このサジェスト分析を行うことで、サイトマップに必要なコンテンツを洗い出すことができる。
サジェスト分析によるコンテンツの洗い出しについては、下記の記事を参考にしてほしい。この記事ではサジェスト分析の仕方、コンテンツ設計の仕方、そして効果的な内部SEO対策の仕方を説明している。
効果的なSEO対策を実現するWEBコンテンツ設計の仕方「4つの手順」
少々手間のかかる手順ではあるが、検索ニーズをつかんだコンテンツ設計と内部SEO対策を行うためにも、ぜひ最後までやってみてほしい。
(2)コンバージョンまでの導線を設計する
手順(1)のサジェスト分析とコンテンツ設計が完了したら、次はコンバージョン(問い合わせ・資料請求といったWEBサイトの成果)までの導線を設計する。導線とは、「問い合わせフォーム」に誘導する為の仕組み・シナリオのことだ。
WEBサイトにおいて、コンバージョンを得るためには「問い合わせフォーム」に誘導しなければ、絶対にコンバージョンは発生しないため、この導線がなければ、効率よくコンバージョンを獲得できない。
では、この導線、どのように設計すべきだろうか??
そのためには、見込み客がサイトを訪問してから、問い合わせに至るまでの心理的シナリオを理解する必要がある。このシナリオの一例として、有名なのがAIDMAプロセスである。
AIDMA(アイドマ)とは1920年代にアメリカ合衆国の販売・広告の実務書の著作者であったサミュエル・ローランド・ホールが著作中で示した広告宣伝に対する消費者の心理のプロセスを示した略語である。日本語圏において「AIDMAの法則」として、2004年に広告代理店の電通等により提唱されたAISASとの比較により知られる。AIDMAの法則では、消費者がある商品を知って購入に至るまでに次のような段階があるとされる。
Attention(注意)
Interest(関心)
Desire(欲求)
Memory(記憶)
Action(行動)ウィキペディア AIDMA
このAIDMAのように、見込み客がWEBサイトを訪問してからコンバージョンに至るまでの心理プロセスを、御社のWEBサイト上でも明確にし、それを導線の「骨子」とすることで、導線設計が可能となる。
ではどのような心理プロセスがよいだろうか?これは商材特性によって変るが、一般的なBtoBサイトにおける心理プロセスを1つご紹介しよう。著者はIUCOF(ユーコフ)と呼称している。
<著者が考えるBtoBサイトの導線設計骨子 IUCOF(ユーコフ)>
このIUCOFはInterest(興味付け)→Understanding(理解促進)→Conviction(確信)→Offer(行動促進)→Form(行動)という導線の骨子で、わかりやすく言えば、商品に対して興味をもち、内容を理解して、これはいいと確信し、もっとこういう情報が欲しいと考え、問い合わせするというプロセスだ。
BtoBではネットショップとは違い、その場ですぐに購入が決まるようなことはほとんどなく、大抵は興味をもって内容が知りたくて問い合わせしてくるというケースが多い。そのため、このような心理プロセスとなっている。
御社の商品・サービスにも、コンバージョンを得るためのこのような導線の骨子が必ず存在する。IUCOFが御社の商品特性・業界特性に合わないようであれば、別な骨子を考案しても良いが、骨子は長くなればなるほど、フォームまでの誘導が遠くなるので、コンバージョン数が減ってしまう。その点も考慮した上で、導線の骨子を設計してほしい。
IUCOFがそのまま使える場合はそのまま使っていただいた構わない(ただし、あなたがWEB業界の方でIUCOFをまるで自分が考えたかのように商用利用するのは論外である)。
(3)導線の各段階にあわせてコンテンツを割り振る
手順(2)でコンバージョンの導線の骨子が設計できたら、次は手順(1)のコンテンツと手順(2)の導線設計を合体させる。つまり、導線の各段階にあわせてコンテンツを割り振るのである。
まず、IUCOFの一般的なコンテンツの割り振りは下記のようになる。
このように割り振ると各ページの役目が明確になる。例えば、上記の課題解決のページは「興味付け」の段階なので、次に誘導すべきは商品理解のページとなる。そのため、ページのナビゲーションは「商品理解」へのナビゲーションを強化するというわけだ。こうやってナビゲーションをつないでいけば、問い合わせフォームまでの導線が作れ、誘導できるようになる。
しかし、この一般的な割り振りだけでは意味がなく、手順(1)で行った検索ニーズを反映させたコンテンツも割り振らなければならない。なぜなら、検索ニーズが把握できているコンテンツであるため、内部SEO対策として必須のコンテンツだからだ。
この作業は、下記のような表をつくって割り振っていくとよいだろう。そして、検索は発生していないがサイトに最低限必要なページは一般的な割り振りにあわせてページを割り振っていく。
表1(検索ニーズを反映させたコンテンツ設計とIUCOF(ユーコフ)の割り振り)
上記の表が完成したら、IUCOF(ユーコフ)とコンテンツの割り振りは完了である。ここまでできたらあとは、上記の表をサイトマップ化するだけである。
(4)サイトマップを作る
いよいよ最後の手順、サイトマップを作る。サイトマップは、サイトの全体構造を可視化するものなので、IUCOFなどの導線もちゃんと見えるように作ろう。その方が、プレゼンするときにも導線を説明しやすい。
サイトマップは手順3で作った表1をベースに作成する。IUCOF(ユーコフ)とコンテンツの割り振りをそのままサイトマップ化するイメージで作ると良い。下記は著者が作ったサイトマップのサンプルだ。
手順3で作った表1を見ると、IUCOF(ユーコフ)の各段階には複数のページが存在する。そのため、トップページ、カテゴリページ、下層ページというように3段階の構造をもつサイトマップにしよう。
そしてサイトマップの左側に導線の骨子であるIUCOF(ユーコフ)を掲載し、どのカテゴリとページがIUCOF(ユーコフ)のどのプロセスに対応しているのかを一目でわかるようにしよう。こうすると、全体の導線の流れがイメージできるようになる。
サンプルで言えば、下記のようにカテゴリとIUCOF(ユーコフ)が対応し、カテゴリレベルでの導線が設計できるようになる。
( I 興味付け )→( U 理解促進 )→( C 確信 )→( O 行動促進 )→( F 行動 )
(課題・魅力)→(製品について)→(強み・事例)→(ホワイトペーパー・セミナー)→(申込ページ)
また、サジェスト分析から検索ニーズがあるコンテンツは「必須コンテンツ」になるため、背景色をつけて色を分けるなど、少し目立つように工夫しよう。
そしてWEB戦略会議でのプレゼンの際に、「サジェスト分析により、このような検索ニーズがあることが判明しました。そのため、このコンテンツではこのようなことを掲載したいのですが、情報収集・原稿作成は可能でしょうか?検索ニーズもあるし、検索回数も毎月このくらいあるようです。内部SEO対策として必要なページです。是非ご協力ください」と説明しよう。
このとき「サジェスト分析ってなんだ?」と聞かれることもあるので、そのときは、効果的なSEO対策を実現するWEBコンテンツ設計の仕方「4つの手順」を印刷し、説明用資料として使っていただいても構わない。
こうすることで、客観的な検索ニーズの根拠が明確になり、コンテンツ制作において重要な情報収集や原稿作成の協力を得られやすくなる上に、説得力が高くなり、議論が先に進む。
そして、このサイトマップ通りにWEBサイトが完成すれば、検索ニーズと導線設計を反映させたサイト運用が可能となり、コンバージョン獲得への第一歩となる。
設計したサイトマップの効果を分析するアクセス解析
サイトマップを作成し、サイトを制作、そして公開すると、アクセス解析の段階に入る。アクセス解析については、上述の手順で作った「導線設計」があるので、その導線に従ってユーザが「流れているか」を確認し、どこかで流出しているようであれば、そのコンテンツを改善しよう。
アクセス解析の仕方については、著者が以前書いたユーザ導線を強化してコンバージョン率を改善するアクセス解析の仕方「3つの手順」が参考になるだろう。IUCOF(ユーコフ)を活用したアクセス解析の仕方についてまとめてある。
4つの手順まとめとサイトマップサンプルのダウンロード
以上、検索ニーズを満たしコンバージョンへの導線を設計するサイトマップの作り方についてご紹介した。その手順は下記の通りである。
(1)サジェスト分析により検索ニーズを知り必要なコンテンツを洗い出す
(2)コンバージョンへの導線を設計し骨子を作る(IUCOF(ユーコフ)など)
(3)コンテンツをIUCOF(ユーコフ)に従い割り振る
(4)サイトマップを作る
もし、お手元に「今進めているサイトマップ」があるならば、上記の手順を踏まえて作成したサイトマップと比較してほしい。導線設計が可視化できているだろうか??検索ニーズは満たしているだろうか?そのあたり、比較項目として考察していただければ幸いだ。
最後に、著者が作ったサイトマップのサンプルをPDFでダウンロードできるようにした。次回の社内会議などで、関係者に配布し、情報共有のツールにしていただければ幸いである。
またユーザ導線を強化してコンバージョン率を改善するアクセス解析の仕方「3つの手順」では、アクセス解析レポートのサンプルのPDFダウンロードもあるので、このサンプルを活用して「公開後はこのようなアクセス解析を行います」とWEB戦略会議で発表し、サイト改善がどのように行われていくのかを事前に明確にしておこう。
そうすれば、導線設計・コンテンツ設計を反映したサイトマップによるサイト作りと公開後の運用・改善の仕方が社内で共有でき、あなたの仕事が進めやすくなるだろう。