営業とマーケティングで「質の高いリード」の定義が違う理由|部門間の認識を一致させる方法

なぜ営業とマーケで質の高いリードの定義は ズレるのか?
Last Updated on 2026年8月7日 by 荻野永策

このコラムは、製造業・IT企業など技術系商材を扱うBtoBマーケティング担当者、営業企画担当者、マーケティング責任者向けに作成している。特に、営業から「マーケティングのリードは質が低い」と言われる、マーケティング側では成果を出しているつもりなのに営業が動かない、営業とマーケティングで「質の高いリード」の認識が合わないという課題を抱える企業を想定している。

営業とマーケティングで質の高いリードの定義が違う原因は、単なるコミュニケーション不足ではない。営業は受注確度や短期売上を重視しやすく、マーケティングはリード件数や反応率を重視しやすい。さらに、どのリードを一般ターゲットとし、どのリードをICP(理想的な重点ターゲット)とするのかが合意されていなければ、リード獲得、商談創出、受注、LTV向上までの流れが分断される。本コラムでは、この認識差をICP定義とBBM(Balance Based Marketing)の考え方で解消する方法を解説する。

最後まで読むことで、営業とマーケティングでリード評価がズレる理由、質の高いリードを定義するための条件、ICP率を使ってリードや商談の質を可視化する方法、さらにBBMによって質と量のバランスを調整する実務上のヒントが得られる。

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質の高いリードとは?営業とマーケティングで定義が違う理由

質の高いリードとは、自社の商品やサービスとの相性が良く、受注可能性があり、受注後に高いLTVが期待できる顧客企業のことである。ただし、この定義は一見シンプルでありながら、実務では非常に曖昧になりやすい。なぜなら、営業とマーケティングでは、顧客を見る視点、評価される指標、日々接している情報が異なるからである。

営業にとっての質の高いリードは、受注に近いリードであることが多い。課題が明確で、予算があり、導入時期が近く、決裁者や推進者と接点があり、競合状況も把握できているリードは、営業にとって優先度が高い。営業は売上や受注責任を持つため、短期的な確度条件を重視しやすい。

一方で、マーケティングにとっての質の高いリードは、リード化しやすい企業や施策に反応しやすい企業になりやすい。資料ダウンロード、ウェビナー参加、問い合わせ、展示会での名刺交換など、行動として可視化されるリードは成果として報告しやすい。マーケティング部門がリード件数やMQL件数をKPIにしている場合、反応率の高いテーマやチャネルに施策が寄ることも自然である。

しかし、BtoBマーケティングで本当に重要なのは、受注しやすいかどうかだけではない。受注後に継続取引ができるか、追加提案や他部署展開が可能か、サポート負荷が適正か、事例化できるか、長期的な利益に貢献するかまで見る必要がある。短期の受注確度が高くても、単発で終わる顧客ばかりでは事業の利益は安定しにくい。反対に、今すぐ受注しなくても、大手企業や成長企業のように将来の大口化が期待できる顧客は戦略的に重要である。

そのため、質の高いリードは、確度条件、相性条件、LTV条件の3つで整理する必要がある。確度条件は受注にどれだけ近いか、相性条件は顧客課題と自社の強みがどれだけ合っているか、LTV条件は受注後のLTVのポテンシャルがあるかである。この3つを整理しなければ、営業とマーケティングは同じリードを見ても異なる判断をしてしまう。

営業とマーケティングで質の高いリードの認識がずれる原因

営業とマーケティングで質の高いリードの定義がズレる最大の理由は、評価指標の違いである。営業は売上、受注件数、受注率、案件金額などで評価される。一方でマーケティングは、リード件数、MQL件数、商談創出数、ウェビナー参加者数、展示会名刺数などで評価されることが多い。評価される指標が違えば、自然とリードの見方も変わる。

営業は、今期の売上目標を達成するために、短期的に受注できるリードを重視しやすい。購買意欲が高い、予算がある、導入時期が近いといったリードは営業にとって価値が高い。一方で、将来的には重要でも、今すぐ案件化しないリードは後回しになりやすい。これは営業の姿勢の問題ではなく、営業が担う役割と評価指標の結果である。

マーケティングは、リード接点を増やし、リードや商談の母数を作る役割を担う。そのため、すぐ受注するかどうかよりも、反応が得られるか、ターゲット市場に接点を作れるか、コンテンツで関心を引けるかを重視しやすい。結果として、営業が追いたいリードと、マーケティングが獲得しやすいリードの間にズレが生まれる。

また、リードを見る情報源も異なる。営業は商談、提案、失注理由、リードとの会話から顧客を理解する。マーケティングはWeb行動、広告反応、コンテンツ閲覧、イベント参加、スコアリングからリードを理解する。営業は個別リードの深い事情を知っている一方で、マーケティングは市場全体の反応を把握しやすい。この違いはどちらが正しいという話ではない。見ている情報が違うのである。

さらに、過去の成功体験もズレを生む。営業は過去に受注できた業界や企業規模を質の高いリードと考えやすい。マーケティングは過去にCVが多かったテーマや展示会、広告キーワードを質の高いリード接点と考えやすい。この二つが一致していなければ、リードは増えても営業が価値を感じにくい状態になる。

このズレは、会議で意見交換しているだけでは解消しにくい。営業は「実際に売れた経験」を根拠に話し、マーケティングは「施策データ」を根拠に話すためである。どちらの情報も重要だが、同じ判断基準に変換しなければ議論は平行線になりやすい。だからこそ、リード像を言語化し、共通の評価軸として管理する必要がある。

質の高いリードの定義が一致しないことで起こる課題

営業とマーケティングで質の高いリードの定義が違うと、まず営業がマーケティングリードを追わなくなる。マーケティングが質の高いリードだと判断して営業へ渡しても、営業から見ると受注に近くない、対象企業ではない、課題が合わない、LTVが期待できないと評価されることがある。その結果、営業はマーケティングリードの優先順位を下げる。

次に、商談化率や受注率が低下する。マーケティングはリード件数を増やしているにもかかわらず、商談や受注に結び付かない。営業は「リードの質が低い」と感じ、マーケティングは「営業が追ってくれない」と感じる。この状態が続くと、部門間の信頼関係が弱くなる。

認識差はMQLやスコアリングの形骸化にもつながる。マーケティングが行動スコアをもとにMQLを定義しても、営業がその基準に納得していなければ、MQLは営業にとって重要な指標にならない。メールを開封した、資料をダウンロードした、ウェビナーに参加したという行動があっても、その企業が営業の求めるリード像に合っていなければ、優先度は上がらない。

また、経営層から見ても問題が分かりにくくなる。リード件数は増えている。商談数も増えている。しかし売上が伸びない。こうした状況では、マーケティング施策が悪いのか、営業活動が悪いのか、ターゲット設定が悪いのかが判断しにくい。実際には、営業とマーケティングで質の高いリードの定義が一致していないことが根本原因である場合がある。

さらに、この状態ではマーケティング投資の判断も難しくなる。リード件数が増えた施策を強化すべきなのか、件数は少なくても受注率の高い施策を伸ばすべきなのかが判断できないためである。結果として、広告、展示会、ウェビナー、SEO、ホワイトペーパーなどの施策評価が件数中心になり、営業や経営が求める成果との距離が広がっていく。

質の高いリードの定義が曖昧なままでは、リード獲得、商談創出、受注、LTV向上までの流れが分断される。これは単なるコミュニケーション不足ではなく、評価指標、顧客理解、ターゲット戦略、営業リソース配分に関わる経営課題である。

ICPとは?質の高いリードを共通定義する方法

営業とマーケティングの認識差を解消するために必要なのがICPである。ICP(Ideal Customer Profile)とは、自社の商品やサービスとの相性が良く、受注可能性が高く、さらに受注後に高いLTVが期待できる理想的な顧客像のことである。

例えば、製品Aの一般ターゲットを「製造業」と定めたとする。その製造業の中でも、特定の企業規模、課題、導入環境、用途などの条件を満たす企業がICPである。言い換えれば、一般ターゲットは製品Aが狙っている全ターゲットであり、ICPはその中でも特に重点的に狙うべきターゲット(理想的なリード像)である。この区別を営業とマーケティングで合意することが重要である。

ICPを定義する際は、まず過去の優良顧客を分析する。受注金額が大きい顧客だけでなく、継続取引がある顧客、追加提案につながった顧客、他部署展開やグループ企業展開ができた顧客を確認する。短期的な売上だけではなく、LTVの観点で優良顧客を見直すことが重要である。

次に、失注顧客や低LTV顧客も分析する。受注したが継続しなかった顧客、要件が合わずトラブル化した顧客、価格競争になりやすかった顧客、営業工数が大きい割に利益が小さかった顧客を確認する。質の高いリードを定義するには、狙うべき顧客だけでなく、狙わない顧客も明確にする必要がある。

その上で、確度条件(受注にどれだけ近いかの条件)、相性条件(顧客課題と自社の強みがどれだけ合っているかの条件)、LTV条件(受注後のLTVのポテンシャルがあるかの条件)を整理する。確度条件、相性条件、LTV条件を具体的に定義できれば、それが理想的な顧客像の定義であり、自社が狙うべき顧客像の定義となる。それをICPとして定義し共通言語化する。

リード獲得・育成段階ではLTV条件や相性条件が重要になる。なぜなら、まだ受注には遠い段階であるため、「受注率に影響を与える相性条件」と「受注後の売上金額に影響を与えるLTV条件」の2つが条件としての重みが強くなる。

案件・商談化段階では確度条件、相性条件、LTV条件を組み合わせて判断する。この段階では、確度条件が特に重要だ。案件・商談化といっても、「製品説明をしてほしいという段階」なのか「製品のトライアルがしたいという段階」なのかで受注までの距離感が異なる。この距離感は営業が動くかどうかの大きな基準になるため、案件・商談化段階では重要度が高くなる。

受注段階では、確度条件や相性条件よりもLTV条件が重要になる。LTV条件は受注金額や将来期待できるLTVの高さに影響するため、ポテンシャルのある企業からの受注であるかが重要になる。

つまり、ICP条件の重みはマーケティングや営業の段階によって変わる。

さらに、ICP率を測定することも重要である。ICP率とは、獲得したリード、案件、顧客のうち、ICPに該当する割合を示す指標である。

ICP率(Ideal Customer Profile Rate)とは
ICP率(Ideal Customer Profile Rate)とは、獲得したリードや顧客のうち、自社が定義したICP(理想的な顧客像)に該当する割合を示す指標である。BtoBマーケティングにおいて、リード獲得件数や商談数だけではリードの質を評価できない。そこで、獲得したリードの中にどれだけICPに該当するリードが含まれているかを可視化したものがICP率である。例えば、100件のリードを獲得し、そのうち40件がICPに該当する場合、ICP率は40%となる。ICP率を活用することで、企業はリード獲得件数という「量」だけでなく、理想的な顧客をどれだけ獲得できているかという「質」も評価できるようになる。BBM(Balance Based Marketing)では、このICP率を営業とマーケティングの共通KPIとして活用し、リードや顧客の質と量のバランスを可視化しながら施策の方向性を調整する。

リード獲得・育成段階では、獲得・育成できたリードの中に、ICPに該当するリードがどれだけいたかをリードICP率として計測する。案件・商談化段階では、獲得した案件・商談の中に、ICPに該当する案件がどれだけあったかを案件ICP率として計測する。そして、受注段階では、受注した顧客の中に、ICPに該当する顧客がどれだけいたかを顧客ICP率として計測する。

ALUHAの経験則では、リードICP率より案件ICP率が高く、案件ICP率より顧客ICP率が高くなる傾向がある。これは、営業プロセスが進むにつれてICPに近い顧客が選別されていくためである。特に営業リソースが少ない技術系商材に多い。

BBMとは?ICP率を活用して営業とマーケティングの評価をそろえる方法

営業とマーケティングで質の高いリードの定義を一致させるには、ICPを定義するだけでなく、その基準をマーケティング施策と営業活動に反映する必要がある。ここで有効になるのがBBM(Balance Based Marketing)である。BBMとは、顧客やリードの質と量のバランスを重視するBtoBマーケティング手法である。ABMとLBMの中間に位置し、ICP率を重要KPIとして可視化・運用し、リード・案件・顧客の質と量を管理する。

営業とマーケティングで質の高いリードの定義が違う場合、BBMは共通の判断基準を作る役割を持つ。営業が「質の高いリードを獲得してほしい」と言う場合、それが確度条件の話なのか、相性条件の話なのか、LTV条件の話なのかを分解できる。マーケティングが「一定の件数も必要だ」と考える場合も、ただ対象を広げるのではなく、一般ターゲットとICPを区別しながら量を確保できる。

また、BBMでは件数とICP率の両方を共通KPIとして見る。リード件数だけでは質が見えない。ICP率だけでは必要な母数が見えない。件数とICP率を合わせて見ることで、営業とマーケティングは「量は足りているのか」「質は足りているのか」「どの段階でICP率が変化しているのか」を確認できる。

BBMの考え方を取り入れることで、営業とマーケティングの会話は「良い」「悪い」という感覚的な表現から、「どの条件が不足しているのか」「どの施策がICP率を高めているのか」「利益につながる顧客構成になっているのか」という具体的な議論に変わる。質の高いリードの定義が違う問題は、BBMによって共通基準と共通KPIに変換できるのである。

まとめると、営業とマーケティングで質の高いリードの定義が違う原因は、立場、評価指標、顧客理解、成功体験の違いにある。そのズレを解消するには、ICPをターゲット条件かつ合意形成条件として定義し、件数とICP率を共通KPIとして管理し、BBMによって質と量のバランスを調整することが重要である。

営業とマーケティングで質の高いリードの定義を一致させる5つのポイント

営業とマーケティングで質の高いリードの認識差を解消するためには、単に会議を増やしたり、コミュニケーションを活発にしたりするだけでは不十分である。重要なのは、双方が同じ基準でリードを評価できる状態を作ることである。そのために押さえておきたいのが次の5つのポイントである。

1.ICPを定義する
2.一般ターゲットとICPを分ける
3.KPIを合わせる
4.ICP率を見る
5.営業・マーケティングの定例レビューを行う

営業とマーケティングで質の高いリードの定義を一致させるためには、どれか一つだけを実施すればよいわけではない。ICPを定義するだけでは運用されず、KPIを合わせるだけではターゲットの認識が揃わない。重要なのは、誰を重点的に狙うのかをICPとして明確化し、一般ターゲットとの違いを整理し、その上で共通KPIとして件数とICP率を管理することである。

また、市場環境や顧客ニーズは変化し続けるため、一度決めた基準を固定化するのではなく、営業とマーケティングが定期的にレビューを行いながら改善していく必要がある。実際に受注した顧客や失注した案件を振り返りながら、「現在のICP定義は適切か」「ICP率は改善しているか」「営業が本当に追いたいリードを獲得できているか」を確認する。定例レビューを継続することで、質の高いリードの定義は組織の共通言語として定着していく。

営業とマーケティングの認識差は、多くの企業で発生する課題である。しかし、共通の顧客像と共通の評価指標を持つことで、「リードの質が低い」「営業が追ってくれない」といった感覚的な議論から脱却できる。質の高いリードの定義を組織全体で共有し、継続的に改善していくことが、商談創出率や受注率の向上につながるのである。

営業とマーケティングの認識差を営業対立4象限で分析する

営業とマーケティングで質の高いリードの定義が違う場合、その原因は担当者個人の理解不足だけではない。戦略が曖昧なこと、KPIが部門ごとに違うこと、営業とマーケティングの役割分担が不明確なこと、過去の成功体験に引きずられていることなど、複数の要因が絡んでいることが多い。そこで活用したいのが「営業対立4象限」である。

営業とマーケが連携できない要因を分析する「営業対立4象限」

営業とマーケが連携できない要因を分析する「営業対立4象限」

営業対立4象限は、営業とマーケティングの対立や認識差が、戦略と実行のどちらで発生しているのか、また人と組織のどちらに原因があるのかを整理するための分析フレームである。

質の高いリードの定義が合わない場合、営業担当者の意識の問題なのか、マーケティング施策の設計の問題なのか、KPIや評価制度の問題なのか、そもそもターゲット戦略の合意不足なのかを切り分ける必要がある。営業対立4象限を使うことで、自社の課題がどこにあるのかを整理し、改善の優先順位を検討しやすくなる。

質の高いリードの定義をすり合わせることは、単なるマーケティング施策の改善ではない。営業活動、KPI設計、ターゲット戦略、コンテンツ設計、展示会やウェビナーの評価基準まで影響する。営業対立4象限で対立の原因を整理し、その上でICPとBBMを使って共通基準を作ることで、営業とマーケティングは同じ顧客像に向かって活動しやすくなる。

ABOUTこの記事をかいた人

株式会社ALUHA代表取締役社長。1979年兵庫生まれのBtoBマーケティングコンサルタント。金沢工業大学大学院にて情報工学を専攻し2003年3月に修士課程を修了。同年4月にALUHAを創業。2008年からBtoBに特化したマーケティング支援、営業戦略支援を開始。2025年7月に顧客の質と量のバランスを重視するBBM(バランスベースドマーケティング)を考案。大手IT企業、製造業(日立Gr、富士フイルムGr、キヤノンGr、積水Grなど)を顧客に持つ。→セミナー講演実績→コンサル実績