ITパッケージ製品(以下、IT製品)を販売するIT企業では、主に顧客の情報システム部門を対象にBtoBマーケティング戦略、営業戦略を立案し、それに連動して、デジタルマーケティングも展開されることが多い。
しかし、IT製品には、業務部門が活用するIT製品も多数存在する。このようなIT製品の場合、情報システム部門を対象にしたマーケーティング戦略、営業戦略だけでは不十分で、業務部門に対するマーケーティング戦略、営業戦略も検討しなければならない。
そこで、今回のコラムでは、普段は情報システム部門向けにWEBやメールコンテンツを配信している、IT企業のマーケティング部門のマーケティング担当者向けに、業務部門向けのデジタルコンテンツの作り方についてご紹介しよう。
そもそも業務部門向けのデジタルコンテンツとは?
そもそも、「業務部門向けデジタルコンテンツ」とはどのようなものだろうか?まずはその定義をしよう。
デジタルコンテンツとは、BtoBの場合、基本的にはWEBコンテンツ、もしくは、メールコンテンツを意味する。つまり、WEBページとマーケティングオートメーション(MA)などから配信されるメールのことだ。
では、「業務部門向けデジタルコンテンツ」とはなんだろうか?それは、業務部門が抱えている「業務の課題を解決するコンテンツ」、つまり、ソリューションコンテンツのことだ(以下、ソリューションコンテンツと記載)。
企業には様々な部門がある。経理部門、営業部門、企画部門、設計部門、購買部門、マーケティング部門、SCM部門などだ。こういった部門には常に課題がある。例えば、SCM部門なら「在庫削減できない、精度の高い需要予測ができない」、経理部門なら「帳票が多く残業が減らない」、営業部門なら「売上があがらない、売れる体制が作れない」などだ。こういった課題を解決する方法を具体的に紹介するのが「ソリューションコンテンツ」である。
ソリューションコンテンツ作りの2つの課題
ソリューションコンテンツを作る際には、弊社が把握しているだけでも大きな課題が2つある。
ソリューションコンテンツ作りの課題1「SE目線のコンテンツになってしまう・・」
1つ目の課題は「コンテンツ作りの目線のギャップ」だ。
ソリューションコンテンツは業務部門の課題を解決する方法を紹介するコンテンツであるため、IT製品は、ソリューションコンテンツから見れば「課題を解決するための手段」となる。わかりやすく言えば、ソリューションコンテンツは「こういう業務部門の課題を、IT製品Aをこう使うことで、こんな風に課題を解決できる」といったコンテンツとなり、IT製品は課題解決の手段となるのである。
つまり、ソリューションコンテンツは「リードの課題目線」でコンテンツを作らなければならないのである。ソリューションコンテンツを作る場合はこのことを肝に命じなければ、コンテンツを作ることはできない。
しかし、SEの立場に立つと、自社のIT製品の特徴や機能、魅力を伝えたいがために、製品目線、SE目線でコンテンツを作ろうとする。これは当然のことで、製品を売り込むためには重要な目線だ。
この結果、目線にギャップが発生し、ソリューションコンテンツを作ろうとしても、なかなか目線が合わない、コンテンツイメージが合わないという結果を生み出してしまう。
ソリューションコンテンツ作りの課題2「業務部門の課題のレベル感」
2つ目の課題は「業務部門の課題のレベル感」だ。
ソリューションコンテンツを作成する際には、業務部門の課題にもレベル感があることを意識しなければならない。
では、業務部門の課題のレベル感とはどのようなものか、その概要をご紹介しよう。あくまで私が考えるレベル感であるため、御社でもこれを参考にレベル感を調整していただければと思う。
業務部門の課題レベル1「個人課題」
個人課題とは、業務担当者レベルの課題のことだ。たとえば、エクセルで何かの業務を行なっている担当者が、「関数がうまく使えない」「簡単なマクロを組みたいがわからない」といったようなレベルだ。
課題の規模感としては小さく、解決のために何かのIT製品を導入するかというと、かなり微妙なレベルだ。個人レベルであるため、予算どりも難しいだろう。しかし、こういった課題が積み重なっていくと、次に紹介する部門課題にまでレベルが上がる可能性があるため、この段階からデジタルマーケティング上で接点を作っておくと、後々、大きな効果につながる可能性が高い。
業務部門の課題レベル2「部門課題」
部門課題とは、個人課題が積み重なり、部門全体の課題として認識されている課題のことだ。たとえば、ある部門のメンバーが同じエクセルファイルを共有して使っているような業務があるとしよう。この時、Aさんの業務が終了しないとBさんの業務ができないというような、ワークフローが必ず存在する。このワークフローに何かしらの課題がある場合は、部門課題として、業務の効率化を考えなければならない。
こういった課題をIT製品で解決できるのであれば、個人課題よりも高確率で導入の検討は進むだろう。
業務部門の課題レベル3「企業課題」
企業課題とは、部門をまたいだ課題のことだ。部門課題が企業内で多数存在し、その結果、会社経営の課題が発生しているといったレベルの課題感だ。このレベルにまでいくと、高額な投資を行い、IT製品の導入を検討するだろう。
このように、ソリューションコンテンツで扱う課題にはレベル感がある。このレベル感がソリューションコンテンツを作成する関係者間で一致していないと、ソリューションコンテンツを作ることはできない。チグハグな議論がなされ、論点が集約せず、コンテンツがまとまらなくなるだろう。
ソリューションコンテンツを作るメリット
ソリューションコンテンツには課題も多いが、逆に、メリットも多い。差別化強化や価格競争、御用聞きからの脱却といったマーケティング戦略、営業戦略上のメリットも当然あるが、デジタルマーケティング上のメリットといえば、「ソリューションキーワードの活用」といったメリットが大きい。
例えば、在庫管理システムであれば、通常、在庫管理や在庫管理システムといったキーワードでデジタルマーケティングを展開する。これは、製品ワードとして、十分活用できる。
しかし、ソリューションコンテンツがあれば、「在庫管理 エクセル」「在庫削減」「在庫回転率」「欠品在庫」「滞留在庫」「過剰在庫」というようなソリューションワードでのデジタルマーケティング展開が可能となる。
当然、このようなキーワードはソリューションの数だけ存在するため、IT製品を販売する間口が広くなり、リードジェネレーションからリードナーチャリングまで、様々な切り口で展開できるようになる。コンテンツとしての武器が増えるため、デジタルマーケティングの効果も大きく改善するだろう。
ソリューションコンテンツの作り方
それでは、ソリューションコンテンツの作り方をご紹介しよう。その手順を4段階に分類しているので、ぜひ参考にしていただければと思う。
(1)業務部門のターゲットイメージを具体化
最初のプロセスは、「業務部門の業務担当者のイメージを固める」だ。複数のマーケティング担当者間でイメージを共有したい場合は、業務部門の担当者のペルソナシートを作ると良い。ペルソナシートは前述した業務部門の課題レベルに合わせて作ると良い。
個人課題であればペルソナシートは1人分、部門課題であれば部門内の主要メンバーの人数分、企業課題であれば各部門毎に必要な人数分を用意すると良い。
そして、各ペルソナシートで最もイメージを深めなければならない項目は「今、どのようにして業務を進めているか?」である。どんなツールを使い、どのような手順で業務を進めているのか?を具体化しよう。わからない場合はネットで調査しても良いし、実際のお客様の事例をモデルにして組み立てていくのもOKだ。
100%正確に具体化することはできないため、どこまで具体化できるかが勝負どころだ。よくわからないからといってこのプロセスを端折ると失敗の要因にもなるので、できるところまでやろう。
また、ABM(アカウントベースドマーケティング)とも連動させるのであれば、ターゲットアカウントとして設定している企業を細かく調査し、できるだけ具体化していくのもよいだろう。そうすれば、ABMのデジタルコンテンツとしてもソリューションコンテンツが役に立つ。
(2)業務プロセスの課題をリストアップ
(1)を具体化したら、その業務の進め方における課題をリストアップする。エクセルを活用しているなら、「エクセルに詳しい担当者に業務が集中し属人化している、その結果、ノウハウ伝承などができない」といった内容が課題だ。
思いつく限り、課題をリストアップするのがポイントだ。できるだけ多くの課題を見つけ出そう。ネットで検索して課題を見つけるのもこの段階ではOKだ。抜け・モレ・ダブりのないようにできるだけリストアップしよう。こういう業務をしているなら、こんな課題もあるのではないか?と課題の仮説を立てるのもOKだ。
(3)課題の精査・エビデンス確認
課題をリストアップしたら、その課題の「エビデンス」を探そう。ここでいう「エビデンス」とは、「その課題、本当にターゲットの業務部門が課題として感じているのかどうか?」の確証のことだ。
エビデンスを得る方法として、例えば、社内で詳しい人間がいればその人に聞いて回るなどだ。さらに確実なエビデンスが欲しい場合は、既存のお客様に業務部門の担当者を紹介してもらい、確認するのもOKだ。BtoB版のマーケティングリサーチといってもよいだろう。
ただ、IT製品によっては、こういった調査ができない場合がある。業務担当者に絶対会うことができないようなケースもあるからだ。そういった場合は、WEB上でテストマーケティングを行い、リサーチを進め、課題のエビデンスを確認する方法もある。具体的な手法は弊社の独自ノウハウであるため、ここでは紹介できないが、この手法を用いれば、業務部門の課題の仮説を立てた上で、低予算でその仮説の確証を確認することができるようになる。
この方法をうまく使えば、課題がよくわからない曖昧なケースでも、ある程度確証を得ながら、ソリューションページのコンテンツを洗練していくことができる。
(4)課題をベースに「ソリューションページ」を設計
課題が確認できたら、ソリューションページを作成する。ソリューションページとは、ソリューションコンテンツをWEB化したページのことだ。わかりやすく言えば、業務部門の課題を自社のIT製品でどのように解決するのかを説明したランディングページのようなものだ。
「こういう課題をこういう製品をこう使ってこんな風に解決できます」という内容をWEBページでしっかり説明するとよいだろう。当然、WEBページでなくても、メールにライティングすれば、ソリューションメールとなり、リードナーチャリングでも活用できるだろう。
ソリューションページの作り方、業務部門の課題の調べ方のまとめ
業務部門の課題を解決するソリューションコンテンツの作り方をご紹介した。作り方のプロセスからもわかるように、ソリューションコンテンツは「課題調査とエビデンス作り」が成功を左右する最大のポイントとなる。ここにリソースを最大限に使うようにしよう。逆に言えば課題調査でミスると、いくら集客しようが、いくらデザインをかっこよくしても、コンバージョンはなかなかとれない。
また、「自社のIT製品で解決できる課題」ではなく、「リードが解決したい課題、お金を払ってでも解決したい課題」をしっかり調査し、その解決方法を提案するようにしよう。ここが成功のポイントとなる。
さらに詳しい作り方については、下記のPDFで詳細をまとめている。
〜「課題から製品を探す」のページはこうやって作るべき!〜
https://btobmarketing.aluha.net/contact/white-paper/#r11
上記のPDFでは、ソリューションコンテンツの作り方を詳しくご紹介している。さらに、業務部門の課題を調べる方法についても、いくつかご紹介しているので、参考になるだろう。
PDFでは紹介できないような具体的なノウハウもあるので、それもまとめて勉強したい方は、「リードに刺さるコンテンツの作り方セミナー」にお申し込みいただければと思う。
上記は2019年5月現在、弊社にて毎月行っている無料の個別出張セミナーだ。予告なく終了することもあるため、ご興味があれば早めにお問い合わせいただければと思う。