BtoBマーケティングの「質(LTVの高さ)と量(件数)」のバランスを最適化するBBM(バランスベースドマーケティング)とは?

「質(LTVの高さ)と量(件数)」のバランスを最適化するBBMとは?
Last Updated on 2025年7月12日 by 荻野永策

BtoBマーケティングでは、顧客(既存顧客)やリード(見込み客)の「質(LTVの高さ)と量(件数)」のバランスが課題になることが多い。顧客やリードの数を重視すると、質が悪化し、質を重視すると量が減るのだ。これは質と量のジレンマで両方同時に高めることは難しい。そのため、自社の利益にとって、質と量の最適なバランスを追求していくことが重要だ。

そこで今回のコラムでは、質と量の最適なバランスを追求するBBM(バランスベースドマーケティング)についてご紹介する。

そもそも質と量とは?

リードの質と量とは

リードの質(質の高いリード)とは、LTVが高くなる可能性のある理想的な顧客像(ICP)に合致するリードのことだ。ホットリード(購入の確度が高いリード)かつ、受注できたらLTVが高くなる可能性のあるリードのことである。こういったリードは、質は高いが数が少ない。BtoBマーケティングの手法としてはABM(アカウントベースドマーケティング)と相性がよく、ABM施策を展開することで、質の高いリードを獲得できる可能性が高まる。本コラムでは質の高いリードのことを、「ICP該当リード」と呼称する。

リードの量とは、LTVの高低は関係なく、自社製品を買ってくれそうなリードのことだ。本コラムでは、こういったリードを「ICP非該当リード」と呼称する。数が多いが質は悪くなる(もし受注となってもLTVが低くなる)傾向がある。BtoBマーケティングの手法としては、LBM(リードベースドマーケティング)やデマンドジェネレーションと相性がいい。これらの手法は、リードを獲得・育成し、商談を創出してホットリードを営業に送客するというプロセスを持っており、数多くのリードを獲得できる可能性が高まる。

顧客の質と量とは

顧客の質とは、LTVが高い既存顧客のことだ。言い換えれば、優良顧客のことで、理想的な顧客像(ICP)に合致している顧客である。本コラムではこのような顧客のことを、「ICP該当顧客」と呼称する。当然、顧客の質を求めると顧客数(量)が減ることになる。

顧客の量とは、自社製品を購入している顧客の総数のことだ。本コラムではこのような顧客のことを、「ICP非該当顧客」と呼称する。当然、量を求めると顧客の質(LTV)が悪化することになる。

BtoBマーケティングの質と量のよくある5つのあるある課題

弊社は、2008年からBtoBマーケティングの支援を行ってきているが、マーケティングの現場では、質と量を基点とした5つの課題がよく発生していると感じている。

リード獲得件数を増やそうとすると質の低いリードばかりが増える

SEO対策、ホワイトペーパー、メディア活用、広告、展示会、セミナーなど、リード獲得の量を重視した施策を中心に展開すると、リードの獲得の量は増えるが、質の低いリード(ICP非該当リード)が増える傾向がある。これはLBMの限界とも言える現象だ。質の低いリード(ICP非該当リード)が増えると、「営業送客しても売れない」「売れたとしても金額が低い」といった事態が発生する。こうなると、ICP非該当顧客が増え、マーケティングROMIが悪化するだけでなく、インサイドセールスや営業の工数が増大していくことになる。ただでさえ、人手不足、営業の高齢化が進む中、工数増大は非常に問題である。

量重視のマーケティングと質重視の営業で連携がうまくいかない

これは弊社のお客様からよく聞く話であるが、マーケティング部門は売上で社内評価ができないため、「リード獲得の量」で評価される傾向がある。その結果、マーケティング部門はリードの量を重視する。多くのリードを獲得すれば、社内から評価されるためだ。

逆に営業部門は、「売上」で評価される。そのため、10万円の売上を100社から獲得するよりも、1000万円の売上を1社から獲得する方がよい。その結果、営業部門はリードの質を重視する。

この結果、量と質で視点が合致していないため、BtoB企業ではマーケティングと営業の連携がなかなかうまくいかない。さらに、営業が属人化している場合、営業方針や営業戦略が社内に浸透していないケースもある。こういった場合、営業部門の担当者によって、「量を重視する担当者」と「質を重視する担当者」に分かれていることもある。こうなると、ますます営業との連携は複雑化していく。

質重視の営業が何らかの理由で急に量重視になる

量と質の問題をさらにややこしくしているのは、その時々で変わる量重視と質重視だ。変化する理由は、「予算未達」や「人事異動」などが挙げられる。例えば、「予算未達なのでリードの量が必要だ」「営業部長が代わり、量重視の方針になった」などである。

このように、その時々で、量重視か質重視かがコロコロ変わることもあるのだ。こうなると、ますます営業部門との連携は複雑になる。

質重視ばかりしているとビジネスをスケールできない

営業部門の要望に沿って、質重視のマーケティング施策を展開すると、当然、量が獲得できない。その結果、ビジネスがスケールできなくなる。常に、似たような顧客ばかり獲得し新たな市場開拓ができなくなるのだ。本来は、戦える他の市場はないか?を探すのもマーケティングの仕事であるが、それができなくなるのだ。

質重視ばかりしていると業績への影響が大きくなる

さらに、質重視ばかりしていると、ICP該当顧客に業績を左右されてしまうことになる。ICP該当顧客は数が少ないため、万が一、競合に流出してしまうと、業績に与えるダメージが非常に大きい。事業を安定させる、経営を安定させるという意味では、質ばかり狙うのではなく、量も狙い続ける必要があるのだ。

このように、BtoBマーケティングでは、量と質の問題が発生しており、これらを解決するマーケティング手法が必要になってきていると弊社では考えている。

質と量の問題を解消するBBM(バランスベースドマーケティング)とは?

BBMとは、Balance-Based Marketing(バランスベースドマーケティング)のことで、顧客(既存顧客)やリード(見込み客)の質(LTVの高さ)と量(件数)のバランスに焦点を当てたBtoBマーケティング手法だ。株式会社ALUHAが提唱している。ABMとLBMの中間に位置付き、以下表のような違いがある。

項目ABMLBMBBM
重視するポイント顧客やリードの質重視(LTV重視)顧客やリードの量重視(受注件数やシェア)顧客やリードの質と量のバランス重視
施策の方向性One-to-One化シェア拡大・認知拡大質と量のバランスを見て、その時々でどんな施策を打つかを決定(量に偏っている時は質重視の施策を打つ等)
向いている商材特定市場向け商材、大企業向け商材が中心不特定多数に販売可能な商材、低価格商材小規模企業から大企業まで販売可能な商材

BBMの重要なKPI「ICP率」

BBMでは、質と量のバランスを可視化するため、ICP率というKPIを重視する。

そもそも、ICPとは、理想的な顧客像のことだ。理想的な顧客像とは、「自社事業と相性が良く、受注になれば高いLTVが期待できるリードや顧客のこと」である。「次の優良顧客の候補となるリードや顧客像」ともいえる。自社製品と相性がよいということなので、受注率、商談化率が高くなる可能性を秘めている。そして、受注になれば高いLTVが期待できるため、将来の優良顧客になる可能性を秘めている。それがICPである。

BBMでは、ICP数とICP率を以下のように可視化する。

ICP数とICP率の可視化

ICP数とICP率の可視化

ICP数とは、BtoBマーケティングの各種施策において、ICPに該当するリードや顧客の数を示す数値だ。例えば、上図の見込み客の獲得では、400件のリードを獲得しているが、そのうちICPに該当する数は150だったとなる。残りの250はICPに該当しないリードだ。ICP率は、ICPに該当したリードや顧客の割合のことで、質を数値化したKPIとなる。

このように可視化することで、量重視に偏っていないか、質重視に偏っていないか?を数値で判断できる。例えば、量重視に偏ると、ICP率が異常に低くなる傾向がある。その場合、予算達成のためには数を売らねばならなくなり、営業工数が増大する。逆にICP率が異常に高い場合は、質重視に偏っていることになり、ビジネスのスケールができない可能性がある。

このICP率を軸に、量重視のマーケティング施策と質重視のマーケティング施策を使い分け、バランスを最適化するのがBBMである。

BBMと相性のよいBtoB企業

BBMはICP率というKPIを重視し、量と質のバランスを最適化する施策を展開する。各企業のリソースや利益を見ながら、最適なバランスを追求していくこととなる。そのため、BBMと相性のよいBtoB企業は、「ABM」も「LBM」も両方実現できる製品やサービスを展開しているBtoB企業となる。「ABM」も「LBM」も両方実現できる製品やサービスを展開しているからこそ、前述した以下の5つのあるある課題が発生するのだ。

  1. リード獲得件数を増やそうとすると質の低いリードばかりが増える
  2. 量重視のマーケティングと質重視の営業で連携がうまくいかない
  3. 質重視の営業が何らかの理由で急に量重視になる
  4. 質重視ばかりしているとビジネスをスケールできない
  5. 質重視ばかりしていると業績への影響が大きくなる

では、具体的にどのような製品・サービスと相性がいいのか、具体例をご紹介しよう。最も相性がよいのは、小規模企業から大企業まで導入可能な製品だ。例えば、監視カメラ、複合機、医療機器(クリニックと大病院)、生成AI、ワークフロー、工程管理、セキュリティー製品(エンドポイントセキュリティー)、人材派遣サービス、人材育成サービスなどだ。

また、価格体系が「小規模向けプラン」「大企業向けプラン」といったラインナップが揃っている商材も相性が良い。

このため、基本的にはLBMと相性の良い商材であれば、BBMは相性が良い可能性が高い。しかし、ABMと相性の良い商材は、BBMと相性がよいか?というとそうでもないケースがある。

たとえば、「年間100棟以上の注文住宅を受注しているハウスメーカーにしか売れない商材」や「自動車メーカーや自動車の電装メーカーにしか売れない商材」などである。こういった場合、そもそもビジネスのスケールが難しい(他の業界を狙うなど)ため、ABMでLTVを高めていく施策がよいだろう。

まとめ

以上、BtoBマーケティングの「質(LTVの高さ)と量(件数)の課題」を解消するBBMの概要についてご紹介した。BBMについては、入門書をPDF資料にまとめた。ご興味ある方はぜひPDFをご覧いただき、御社でも導入を検討いただけたら幸いである。

BtoBマーケティングの基礎コラム

ABOUTこの記事をかいた人

株式会社ALUHA代表取締役。1979年兵庫生まれのBtoBマーケティングコンサルタント。金沢工業大学大学院にて情報工学を専攻し2003年4月にALUHAを創業。2008年からBtoBに特化したマーケティング支援、営業戦略支援を開始。BtoBマーケティングや営業戦略の戦略立案から、計画実行とPDCA、そして人材育成を伴走型で支援。デジタルとリアルを融合させた戦略設計が得意。毎月全国各地の様々な企業でBtoBマーケティングセミナーを実施中。100社以上でのセミナー講演実績を持つ。大手IT企業、製造業(日立Gr、富士フイルムGr、キヤノンGr、積水Grなど)を顧客に持つコンサルタント。→セミナー講演実績→コンサル実績