BtoBマーケティングの3手法(ABM・BBM・LBM)の違い|メリット・デメリットや向いている・向いていない企業

「質(LTVの高さ)と量(件数)」のバランスを最適化するBBMとは?

このコラムは、BtoB商材(専門性が高く検討期間の長い商材)を扱う製造業やIT企業のマーケティング担当者および責任者向けに、BtoBマーケティングの3つの手法であるABM(アカウントベースドマーケティング)・BBM(バランスベースドマーケティング)・LBM(リードベースドマーケティング)を紹介する。

BtoBマーケティングの3手法の定義

最初に、BtoBマーケティングの3手法(ABM・BBM・LBM)の定義をする。

ABMとは?

ABM(アカウントベースドマーケティング)とは、あらかじめ重点的に攻略すべき企業(アカウント)や高いLTVが期待できる理想的な顧客像(ICP)を定め、その企業の組織構造や課題、意思決定プロセスに合わせてマーケティングと営業が連携し、個別最適化した施策を展開する手法である。技術理解が不可欠で検討関与者も多いBtoB製造業やIT企業においては、リード単位ではなく企業単位で関係性を構築できる点が特長であり、受注確度の向上や長期的な取引創出(LTVの向上)に効果が期待できる。

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BBMとは?

BBM(バランスベースドマーケティング)とは、リードや顧客の質(LTV)と量(件数)の関係性に着目し、利益最大化とリソース効率の向上を目指すBtoBマーケティング手法である。ALUHAが提唱している。

高いLTVが期待できる理想的な顧客像(ICP)を具体的に定義し、リード獲得・育成、商談創出、受注、顧客維持の各プロセスにおいて、ICPに該当するリードや顧客の割合をICP率として可視化する点に特徴がある。BBMは質と量を同時に追求するのではなく、営業方針や営業リソース、市場動向に応じて両者のバランスを調整し、各プロセスのICP率と自社の利益を見比べながら、利益が最大化する最適なICP率を見極め、継続的に施策を最適化していく手法である。

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LBMとは?

LBM(リードベースドマーケティング)とは、展示会やWeb、広告などを通じて獲得したリード(個人)を起点に、育成・選別を行いながら商談化を目指すBtoBマーケティング手法である。比較的広い層に情報を届けやすく、認知拡大や新規リード創出に適している点が特長である。また、技術理解が必要で関与者が多い商材においても、個々の関心テーマや検討フェーズに応じた情報提供をデジタルを使って効率よく行うことで、検討初期からの接点づくりや市場啓蒙を効率的に進めることができる。

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ABMとBBM、LBMの違い

概念・思想の違い

概念・思想の違い
項目ABMBBMLBM
基本思想重点アカウントへの深耕質と量のバランス最適化リード量の最大化
起点企業(アカウント)企業×リード(両方)個人(リード)
主な目的LTVを高めて利益を増やすバランスを調整して利益を増やす商談・受注数最大化して利益を増やす
重視するKPILTV、案件単価ICP率(バランス)リード数、CV数
質と量の考え方質を最優先状況に応じて可変量を最優先
前提となる考え方「狙う企業は限られる」「最適なバランスを追求する」「母数を取らないと始まらない」
失敗しやすいポイント工数過多・スケールしない設計せずに運用すると迷走営業疲弊・LTV低下

戦略判断の違い

戦略判断の違い
項目ABMBBMLBM
営業リソースアカウントに集中状況に応じて配分大量フォローが前提
市場の広さ限定的な市場大口と小口が混在した市場広範な市場
ICPの数少ない少ない〜多い多い前提
営業方針との相性大口集中型方針に合わせて調整件数重視型
短期成果への対応弱い状況に応じて可強い
中長期のLTV非常に高い高く保ちやすい低くなりがち
マーケと営業の連携密だが属人化しやすい共通言語(ICP率)で連携連携が難しい
リアル×デジタルリアル寄りになりがち最適配分デジタル寄り

ABMとBBM、LBMのメリットとデメリット

ABMとBBM、LBMのメリットとデメリット
手法メリットデメリット
ABM
  1. LTVの高い企業に集中でき、案件単価・受注確度が高い
  2. 営業とマーケの連携が深まりやすい
  3. バイインググループ全体を攻略しやすい
  4. 技術理解が必要な高難度商材と相性が良い
  1. 対象企業数が限られ、スケールしにくい
  2. 1社あたりの施策工数が大きい
  3. 営業・マーケ双方に高いスキルと顧客理解が必要
  4. 市場や営業方針が変わると柔軟に動きにくい
  5. 顧客流出時の売上への影響が甚大
BBM
  1. 質(LTV)と量(件数)の最適バランスを設計できる
  2. 営業方針やリソース変化に合わせて軸足を調整できる
  3. ICP率という共通指標で営業と連携しやすい
  4. ABM/LBM両方の施策を使い分けられる
  5. 短期成果と中長期LTVの両立が可能
  1. ABM/LBM両方の知識・運用力が必要
  2. ターゲティングやデータ整備に時間がかかる
  3. 設計せずに始めると「なんでもやる状態」になりやすい
  4. KPI設計・可視化が不十分だと効果が見えにくい
LBM
  1. 認知拡大・新規リード獲得に強い
  2. 短期的にリード数を増やしやすい
  3. デジタル施策と相性が良く自動化しやすい
  4. 新市場開拓や市場啓蒙に向いている
  1. 小口リードが増えやすい
  2. 営業のフォロー負荷が増大しやすい
  3. LTVが低くなりがち
  4. マーケと営業の評価軸がズレやすい

ABMとBBM、LBMの向いてる企業・向いていない企業

ABMとBBM、LBMの向いてる企業・向いていない企業
区分企業像
ABMに向いている企業特定業界・特定用途向けの商材を持ち、対象企業数が限られ、1社ごとに高いLTVが期待できる商材を持つBtoB企業。営業とマーケが密に連携できる企業。
BBMに向いている企業技術や製品は大口案件から小口案件まで対応可能で、営業リソースや市場環境の変化に応じて、量重視と質重視を切り替えながら、利益最大化を図りたい企業。
LBMに向いている企業市場啓蒙や認知拡大が必要で、比較的標準化された商材を持ち、まずは幅広くリード母数を確保したい企業
ABMに向いていない企業薄利多売が経営方針・営業方針となっており、受注件数を重視するBtoB企業
BBMに向いていない企業技術や製品が大口案件か小口案件のどちらかに偏っていて、営業やマーケの施策も質・量のどちらかに重点を置かざるをえないBtoB企業
LBMに向いていない企業1社あたりのLTVの高さを重視する営業方針を持つBtoB企業。受注件数よりも受注金額やLTVを重視するBtoB企業

ALUHAの体験談「LBM→ABM→BBMの順に手法を切り替え」

ALUHAは2008年からBtoBマーケティングの支援事業を行っている。特にデジタルとリアルを融合させたマーケティング支援を強みとしており、自社自身のマーケティングにおいても、一貫して「デジタルとリアルが融合したマーケティング」に取り組んできた。

ALUHAのLBM時代の成功と失敗談

ALUHAのマーケティング施策は、まずLBMからスタートした。2008年頃より、自社のWEBサイトを活用したリード獲得に力を入れ始め、当初はSEOやホワイトペーパーの作り方も手探りの状態であった。しかし試行錯誤を重ねる中で徐々に成果が出始め、リード獲得数は着実に増加していった。ある時期には、お客様から「どんな検索をしてもALUHAのサイトがヒットする」と言われるほどであった。

一方で、状況は次第に変化していく。弊社は少数精鋭の組織であるため、問い合わせ件数の増加に対応しきれなくなり、「リードを十分にフォローできない」という課題が顕在化した。結果として、せっかく獲得したリードを活かしきれない状況が生まれてしまった。

LBMからABMへ、成功と失敗談

そこで次に検討したのがABMである。弊社には特定の企業名で狙うターゲットアカウントが存在しなかったため、まずはICPを定義し、それを軸にABMを進めることにした。しかし初期段階では、ICPの定義が十分に具体化できておらず、企業規模や業種といった表層的な条件に基づいた施策展開となっていた。その結果、「顧客が解決したい課題」と「自社が解決できる課題」にズレが生じ、One to Oneで工数をかけても商談につながらないケースが多く発生した。営業工数に対して受注が伸びない状態が続き、大きな課題となった。

そこで、自社に蓄積されていた顧客の課題データ(弊社では課題データベースと呼称)をエビデンスとして、ICPを再定義し、ABM施策を全面的に見直した。ICPに該当するリードの獲得と育成にリソースを集中し、顧客の組織全体との関係構築を重視したABMを展開した結果、ホワイトスペースの開拓にも成功し、継続的なLTV向上を実現することができた。

しかし、ここで新たな課題が生まれた。弊社のコンサルティングサービスは永続的なものではないため、プロジェクトが終了すると、それまで確保していた売上はなくなる。特定の顧客企業への依存度が高まることで、自社事業全体に与える影響が大きくなるリスクが見えてきた。こうした経験を踏まえ、検討を重ねてたどり着いたのがBBMである。LBMやABMのいずれかに偏るのではなく、その時々の状況に応じて最適なバランスを取るマーケティングが必要であると考えた。

ABMからBBMへ

BBMを考案してからは、自社でもすぐに取り組みを開始した。毎年ICP率を可視化しながら、利益が最大化するバランスを追求し続けた結果、LBMやABM単体で取り組んでいた時期と比べ、売上・利益ともに継続的な成長を実現し、自社リソースを最大限に活かした経営が可能となった。

本記事執筆時点においても、弊社はBBMに継続的に取り組み、自社の利益が最大化するICP率の追求を続けている。ICP率は自社の営業・マーケティングリソースの影響を受けるだけでなく、競合の動きや顧客ニーズといった市場環境の変化にも左右される。そのため、ICP率を常に確認しながら、状況に応じてスピーディーかつ柔軟に施策を切り替えていく必要がある点が、BBMの難しさでもある。しかし、人手不足や高齢化が進む中、少人数で安定的に売上を伸ばしていく重要性は今後さらに高まると考えており、弊社はBBMの実践と高度化を進め、さまざまな企業へ展開していきたいと考えている。

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ABOUTこの記事をかいた人

株式会社ALUHA代表取締役社長。1979年兵庫生まれのBtoBマーケティングコンサルタント。金沢工業大学大学院にて情報工学を専攻し2003年3月に修士課程を修了。同年4月にALUHAを創業。2008年からBtoBに特化したマーケティング支援、営業戦略支援を開始。2025年7月に顧客の質と量のバランスを重視するBBM(バランスベースドマーケティング)を考案。大手IT企業、製造業(日立Gr、富士フイルムGr、キヤノンGr、積水Grなど)を顧客に持つ。→セミナー講演実績→コンサル実績