BtoBデジタルマーケティングの課題|WEBで獲得したリードの質と量のバランス

量と質のバランスを意識したホワイトペーパーの作り方
Last Updated on 2025年10月31日 by 荻野永策

BtoBマーケティングでは、自社のWEBサイトでホワイトペーパーなどを活用して新規リードを獲得する施策を展開する。しかし、BtoBのWEB活用では、「獲得したリードの質と量のバランス」が悪化するという課題が発生する。特にリード獲得の量を追求すると、どんどん質が悪くなるという現象が発生する。

実際に弊社にも以下のようなご相談をいただいている。

ホワイトペーパーは、製品直結の内容であればあるほど反応が鈍く、製品と親和性の低いホットトピックに近い内容ほど数字はよくなる傾向があります。これはジレンマで、数字で成果を見せる必要がある以上、バランスの最適化には苦労しています。

つまり、リードの量が欲しい場合は「製品との親和性が犠牲になり、リードの質が悪くなる(イコール、なかなか売れない)」、逆に、リードの質が欲しい場合は「反応が鈍く量が取れない」というジレンマが発生するのだ。これはBtoBビジネスの特性であるため、質も量も同時に向上させることは非常に難しい。だからこそ、「リードの質と量のバランス」を最適にしてく必要がある。

そこで、このコラムでは、リードの質と量のバランスを最適にするバランスベースドマーケティングの概要とホワイトペーパーの作り方についてご紹介する。

リードの質と量のバランスを重視するバランスベースドマーケティングとは

バランスベースドマーケティングとは、リードや顧客の質(LTVの高さ)と量(件数)のバランスを重視し、自社の利益の最大化を狙うBtoBマーケティング手法だ。

バランスベースドマーケティングの入門書「ABMやLBMとの違いも解説」

バランスベースドマーケティングでは、リードの質と量のバランスを重視するため、ホワイトペーパーの作り方も大きく2つ存在する。1つ目が獲得件数(量)を重視するホワイトペーパー、もう1つが、質(LTVの高さや受注確度)を重視するホワイトペーパーだ。

量を重視したホワイトペーパーばかり作っていると、リードの獲得量は増加するものの、受注になりにくい(ならない)といった課題が発生する。その結果、営業部門との連携もうまくいかない。

逆に質(LTVの高さや受注確度)を重視するホワイトペーパーばかり作っていると、リードの量が確保できない。その結果、マーケティング部門の評価も下がってしまう。

そのため、バランスベースドマーケティングでは、質と量の最適なバランスを目指してホワイトペーパーのラインナップを充実させていく。

獲得件数(量)を重視するホワイトペーパー

それでは、最初に、獲得件数(量)を重視するホワイトペーパーの作り方をご紹介する。

量を重視するため、大口・小口顧客関係なく、ほとんどのターゲット企業が興味を示すようなホワイトペーパーを設計する必要がある。このようなホワイトペーパーは主に以下の2つの方向性で設計・作成を進めると良い。

獲得件数(量)を重視するホワイトペーパー
  1. トレンド(ホットトピック)に関連するホワイトペーパー
  2. 検索回数の多いキーワードに関連するホワイトペーパー

トレンド(ホットトピック)に関連するホワイトペーパー

トレンドに関連するホワイトペーパーは、その名の通り、業界で話題になっているテーマを題材にしたホワイトペーパーだ。わかりやすいのは法令関連の話題だ。例えば、以前話題になっていた「インボイス制度」「電子帳簿保存法」などである。

そのほか、DX推進、生成AI、物流2024年問題などが例として挙げられる。

御社の業界でも最近トレンドになっているテーマはないだろうか?それをホワイトペーパー化すると獲得件数を増やせる可能性がある。

しかし、その反面、情報収集段階や興味本位のリードも多いため、受注確度が低くなる傾向がある。

検索回数の多いキーワードに関連するホワイトペーパー

検索回数の多いキーワードとは、自社製品に関連する検索キーワードの中で、毎月の検索回数が多いワードのことを指す。トレンド(ホットトピック)に関連するキーワードは必然的に検索回数は多くなるが、トレンドでなくても、検索回数が常に多いキーワードが存在する。

例えば、弊社は営業戦略の立案などの支援を行っているが、「営業戦略」というキーワードは、トレンドに関係なく毎月安定した検索がある。本記事執筆時点の毎月の平均検索回数は1300回だ。

こういったキーワードを軸にしてホワイトペーパーを作成すると、安定したリード獲得が実現する。しかし、トレンドに関連するホワイトペーパーと同様に、情報収集段階や興味本位のリードも多いため、受注確度が低くなる傾向がある。

獲得件数(量)を重視するホワイトペーパーの作り方を2つご紹介したが、2つともリード獲得の量は期待できるが、反面、質(確度)が悪いことが多い。しかし、将来的に顧客化する可能性がある以上、重要なホワイトペーパーとなるだろう。

質(LTVの高さや受注確度)を重視するホワイトペーパー

次は、質(LTVの高さや受注確度)を重視するホワイトペーパーだ。主に以下の3つを意識してホワイトペーパーを作成すると良い。

質(LTVの高さや受注確度)を重視するホワイトペーパー
  1. もし受注できたらLTVが高くなる可能性のある企業像を意識すること
  2. 営業リードタイムが短いかどうかを意識すること
  3. リードが解決したい課題を意識すること

もし受注できたらLTVが高くなる可能性のある企業像を意識すること

質(LTVの高さや受注確度)を重視するホワイトペーパーは、「受注すればLTVが高くなる可能性のあるリードを獲得できるか?」を意識しなければならない。

そのためには、そのホワイトペーパーをどんな企業に読んで欲しいか?の企業像が重要になる。「企業像」は、業種、年商、従業員数、部門などのような属性情報を具体化することから始まる。

例えば、「製造業で年商500億円以上、従業員数1000人以上、生産品目数は1000以上」といったイメージだ。属性情報が曖昧であればあるほど、抽象的なイメージ像になるため、できるだけ多くの属性情報を具体化すると良い。

営業リードタイムが短いかどうかを意識すること

次に、質(LTVの高さや受注確度)を重視するホワイトペーパーは、「受注確度」を意識しなければならない。当然、高い方がよい。受注確度が高い場合、受注率も高くなる可能性がある上に、営業リードタイムも短くなる可能性がある。

受注確度は「BANT情報」などを確認することである程度、把握することもできるが、ホワイトペーパーでも把握することが可能だ。

例えば、在庫管理システムを開発・販売している場合を考えてみよう。もし、以下AとBの2つのホワイトペーパーがある場合、どちらのほうが受注確度の高いCVと言えるだろうか?

(A)在庫管理システムの導入手順書「3ヶ月で導入できる効率の良い方法」
(B)在庫管理システムとは?「機能や導入メリットがわかる資料」

弊社はAではないかと考えている。なぜなら、「3ヶ月で導入できる手順」に興味を示すということは、数ヶ月以内に導入したいという意図がその背景にあると考えられるからだ。100%ではないが、導入が近いことは間違いないだろう。

さらに、Bは、在庫管理システムに興味のある企業であればどのような企業でも資料請求する可能性があるため、Aよりは受注確度が低いと考えられる。

このように、ホワイトペーパーのタイトルや内容を「受注確度の高い企業が欲しがる内容」にすることで、確度を把握することが可能だ。

そして、A案をもう一工夫してみよう。

「もし受注できたらLTVが高くなる可能性のある企業像を意識すること」でもご紹介したように、LTVが高くなる可能性のある企業を意識したホワイトペーパーにすることが重要だ。

それをA案に当てはめてみると以下のようなタイトルになる。

【生産品目数1000以上の製造業向け】
在庫管理システムの導入手順書「3ヶ月で導入できる効率の良い方法」

このように工夫することで、「LTVが高くなる可能性のある企業像を意識」したホワイトペーパーにより近づいていく。

リードが解決したい課題を意識すること

最後に、質(LTVの高さや受注確度)を重視するホワイトペーパーは、「リードが解決したい課題」を意識しなければならない。なぜなら、「解決したい課題の解決方法」にリードは興味を示すからだ。

「自社が解決できる課題」を中心にホワイトペーパー作成すると、「自社が解決できる課題」と「リードが解決したい課題」が合致していなければ、どうなるだろうか。リードはそのホワイトペーパーに興味を持たないだろう。つまり、CVは発生しない。

そのため、「自社が解決できる課題」ではなく、「リードが解決したい課題」を意識することが重要だ。

そのためには、リードの課題は何か?を知っておく必要がある。アンケート調査や顧客満足度調査などBtoBでも活用できるさまざまな調査手法を活用して、リードの課題を把握できるようにしておこう。これがなければ、質(LTVの高さや受注確度)を重視するホワイトペーパーの作成はより困難になる。

以上が質(LTVの高さや受注確度)を重視するホワイトペーパーの作り方のコツだ。

「受注できたらLTVが高くなる可能性のある企業」に対して、「営業リードタイムが短いと判断できるホワイトペーパー」や「その企業が解決したい課題を軸にしたホワイトペーパー」を作成・公開することで、質の高いリード獲得が実現する可能性がある。ぜひ御社でも検討して欲しい。

まとめ

リードの質と量のバランスを重視するためのホワイトペーパーの作り方をご紹介した。この作り方をベースにホワイトペーパーを充実させていくことで、リードの質と量のバランスを最適化できる可能性がある。

そして、バランスベースドマーケティングでは、リードの質と量のバランスをICP率というKPIで可視化するため、成果を数値で確認することもできる。ぜひ、御社でもバランスベースドマーケティングの考え方を取り入れ、リードの質と量のバランスを最適化してほしい。

バランスベースドマーケティングの入門書「ABMやLBMとの違いも解説」

ABOUTこの記事をかいた人

株式会社ALUHA代表取締役。1979年兵庫生まれのBtoBマーケティングコンサルタント。金沢工業大学大学院にて情報工学を専攻し2003年4月にALUHAを創業。2008年からBtoBに特化したマーケティング支援、営業戦略支援を開始。BtoBマーケティングや営業戦略の戦略立案から、計画実行とPDCA、そして人材育成を伴走型で支援。デジタルとリアルを融合させた戦略設計が得意。毎月全国各地の様々な企業でBtoBマーケティングセミナーを実施中。100社以上でのセミナー講演実績を持つ。大手IT企業、製造業(日立Gr、富士フイルムGr、キヤノンGr、積水Grなど)を顧客に持つコンサルタント。→セミナー講演実績→コンサル実績