リードは増えたのに売上が伸びない理由|量偏重のBtoBマーケティングを見直す方法

リードは増えたそれなのに売上が伸びない理由

このコラムは、技術系商材を扱う製造業・IT企業のBtoBマーケティング担当者、特にリード獲得件数は増えているにもかかわらず、商談化、受注、売上への貢献が伸びないという課題を抱えるマーケティング部門向けに作成している。

リードは増えたのに売上が伸びない原因は、リード獲得施策そのものが失敗しているからとは限らない。むしろ、リード件数という量を重視しすぎることで、営業が追うべきリードや受注につながる顧客が見えなくなっていることが本質的な原因であるケースが多い。本コラムでは、量偏重のBtoBマーケティングがなぜ売上停滞を招くのかを整理し、ICP率を使ってリードの質を可視化し、BBM(Balance Based Marketing)の考え方で質と量のバランスを見直す方法を解説する。

最後まで読むことで、リード件数を増やすだけではなぜ売上につながらないのか、営業に負荷をかけずに商談化率や受注率を高めるには何を見直すべきか、そしてマーケティングKPIをどのように再設計すべきかという実務上のヒントが得られる。

リード増加と売上停滞

BtoBマーケティングに取り組む企業では、広告、SEO、展示会、ウェビナー、ホワイトペーパー、メールマーケティング、MAなどの施策を通じて、リード獲得や育成施策を展開し、リード獲得件数の増加に成功している企業も多い。

デジタル施策の発展により、見込み客との接点は増え、Webサイトのコンバージョンや資料ダウンロード、セミナー申込なども可視化しやすくなった。マーケティング部門としては、リード獲得件数が増えているため、一定の成果が出ているように見える。

しかし、リード件数の増加がそのまま売上増加につながるとは限らない。「リードは増えているが、商談化率が低い」、「商談は増えているが受注率が上がらない」、「受注しても小口案件が多く売上や利益に大きく貢献しない」、このような状態は、BtoBマーケティングの現場でよく発生する。特に技術系商材を扱う製造業やIT企業では、製品の専門性が高く、導入条件や課題適合性も複雑である。そのため、単にリードを増やすだけでは、営業が求める案件や受注につながる顧客を十分に生み出せないことがある。

リードは増えたのに売上が伸びない状態とは
リードは増えたのに売上が伸びない状態とは、リード獲得件数は増加しているにもかかわらず、商談化率、受注率、受注単価、LTVなどの売上関連指標が改善していない状態である。

リードが増えたのに売上が伸びない状態では、マーケティング部門と営業部門の見方も分かれやすい。マーケティング部門は「リードは増えている」と考える。一方で営業部門は「売れるリードが増えていない」と感じる。この認識差が大きくなると、マーケティング部門は成果を出しているつもりでも、営業や経営からは売上貢献が見えにくいと評価される。

この問題を解決するには、リード数だけを見るのではなく、獲得したリードがどの程度売上につながる可能性を持っているのかを評価する必要がある。つまり、量だけでなく質を見る必要がある。ここでいう質とは、単に検討度が高いという意味だけではない。自社が狙うべき業界、企業規模、用途、導入可能性、LTV、解決したい課題(リードのニーズ)と解決できる課題(強み・特長)の相性などを含めた総合的な評価である。

量偏重の問題

量偏重のBtoBマーケティングとは、リード獲得件数やコンバージョン数などの量的指標を重視しすぎる状態である。リード件数は分かりやすい指標であり、社内報告もしやすい。例えば、前月よりリードが増えた、展示会で多くの名刺を獲得した、ホワイトペーパーのダウンロード数が増えた、広告経由のCV数が増えた、といった成果は数字で示しやすい。しかし、件数が増えたからといって、売上に近いリードが増えているとは限らない。

量偏重が起きる背景には、マーケティング部門の評価構造がある。営業部門は売上や受注で評価されるが、マーケティング部門は売上までの距離が遠いため、リード数、MQL数、セミナー参加者数、問い合わせ件数などで評価されることが多い。その結果、マーケティング部門は自然と件数を増やす施策を選びやすくなる。狙うべき顧客に深く刺さるコンテンツよりも、幅広い層に反応されやすいコンテンツを作る。ターゲットを絞った広告よりも、CV単価が安い広告に寄る。専門性の高いセミナーよりも、参加者を集めやすい一般テーマに寄る。こうした判断が積み重なると、リード件数は増えるが、質は下がる。

量偏重の問題は、リードの中に自社が本来狙うべき顧客がどれだけ含まれているかを見失う点にある。例えば、資料ダウンロードが300件あっても、その多くが情報収集だけの企業、課題が顕在化していない企業、興味本位だけの企業であれば、営業にとっての価値は限定的である。件数だけを見れば成功だが、売上貢献という観点では改善余地が大きい。

また、量偏重はコンテンツ戦略にも影響する。広いテーマの記事や資料は流入やCVを増やしやすい一方で、リードのばらつきも大きくなる。技術系商材の場合、本来は特定業界、特定用途、特定課題に絞ったコンテンツが有効であることが多い。しかし件数を優先すると、ターゲット外の読者にも広く届くコンテンツが増え、結果として営業が追いにくいリードが増加する。

量を否定する必要はない。BtoBマーケティングにおいて、一定のリード件数は必要である。問題は、量だけで良し悪しを判断することである。リードの量を増やすことと、売上につながるリードを増やすことは同じではない。量偏重の状態では、この違いが見えにくくなるのである。

営業への影響

リード件数が増えても売上が伸びない場合、その負荷は営業部門に集中する。営業はマーケティングから渡されたリードに対して架電、メール、商談打診、情報収集、SFA入力などを行う。しかし、リードの質が低い場合、接触しても返信がない、会話が進まない、課題が明確ではない、そもそも対象企業ではないといった状況が増える。これにより営業工数は増えるが、商談や受注にはつながりにくくなる。

この状態が続くと、営業はマーケティングリードへの期待値を下げる。最初はフォローしていたとしても、成果が出ない経験が重なると、優先度を下げるようになる。結果として、マーケティング部門は「リードを渡しているのに営業が追わない」と感じ、営業部門は「追っても売れないリードばかり渡される」と感じる。これは営業とマーケティングの対立を生む典型的な構造である。

営業への影響は、単なる工数増加にとどまらない。質の低いリードが増えると、営業の時間配分が悪化する。本来であれば、受注可能性が高い企業、LTVが高い企業、自社商材と相性の良い企業に時間を使うべきである。しかし、リード件数が多すぎると、営業はどれを優先すべきか判断しにくくなる。優先順位が不明確なまま全件対応を求められれば、重要な見込み客への対応が遅れる可能性もある。

さらに、営業がマーケティングリードを信頼しなくなると、マーケティング施策全体の価値も下がる。営業がフォローしないリードは、どれだけ多く獲得しても売上にはつながりにくい。マーケティング部門がリードを増やすほど、営業にとっては負担が増えるだけになり、部門間連携は弱まる。

このような悪循環を断ち切るには、営業に渡すリードの量を単純に減らすのではなく、優先順位を明確にする必要がある。どのリードをすぐ営業が追うべきか、どのリードは育成対象にすべきか、どのリードは現時点では追わないべきかを判断できる基準が必要である。その基準になるのがICPであり、その割合を可視化するための指標がICP率である。

ICP率とは

ICP率(Ideal Customer Profile Rate)とは、獲得したリードや顧客のうち、自社が定義したICP(理想的な顧客像)に該当する割合を示す指標である。BtoBマーケティングにおいて、リード獲得件数や商談数だけではリードの質を評価できない。そこで、獲得したリードの中にどれだけICPに該当するリードが含まれているかを可視化したものがICP率である。例えば、100件のリードを獲得し、そのうち40件がICPに該当する場合、ICP率は40%となる。

ICPとは、自社の商品やサービスとの相性が良く、受注可能性が高く、さらに受注後に高いLTVが期待できる理想的な顧客像のことである。業界、企業規模、拠点、導入部門、課題、用途、予算、意思決定体制、既存設備やシステム環境など、自社にとって重要な条件をもとに定義する。技術系商材の場合、特に用途適合性や技術課題との一致、導入後の運用体制なども重要な条件になる。

ICPとは?
ICP(Ideal Customer Profile)とは、自社の商品やサービスとの相性が良く、受注につながる可能性が高く、かつ受注後に高いLTV(顧客生涯価値)が期待できる理想的な顧客像のことである。BtoB企業においては、すべてのリードや顧客が同じ営業価値を持つわけではない。業界、企業規模、導入目的、課題、予算、意思決定体制などの条件によって、自社との相性は大きく異なる。ICPは、営業とマーケティングが「どのような顧客を重点的に獲得・育成すべきか」を共通認識として定義するものであり、リードや顧客の質を判断する基準となる。
ICP率(Ideal Customer Profile Rate)とは
ICP率(Ideal Customer Profile Rate)とは、獲得したリードや顧客のうち、自社が定義したICP(理想的な顧客像)に該当する割合を示す指標である。BtoBマーケティングにおいて、リード獲得件数や商談数だけではリードの質を評価できない。そこで、獲得したリードの中にどれだけICPに該当するリードが含まれているかを可視化したものがICP率である。例えば、100件のリードを獲得し、そのうち40件がICPに該当する場合、ICP率は40%となる。ICP率を活用することで、企業はリード獲得件数という「量」だけでなく、理想的な顧客をどれだけ獲得できているかという「質」も評価できるようになる。BBM(Balance Based Marketing)では、このICP率を営業とマーケティングの共通KPIとして活用し、リードや顧客の質と量のバランスを可視化しながら施策の方向性を調整する。

ICP率を活用すると、リード件数という量だけでなく、リードの質も数値で把握できる。例えば、A施策は300件のリードを獲得したがICP率が10%、B施策は80件のリードしか獲得していないがICP率が60%だったとする。件数だけを見ればA施策が優れているように見える。しかし営業が追うべきリードの数や受注可能性を考えると、B施策の方が売上に近い可能性がある。このように、ICP率は施策評価の見方を変える。

ICP率は営業とマーケティングの共通言語にもなる。営業が「リードの質が悪い」と言っても、基準がなければ感覚論になりやすい。マーケティングが「件数は増えている」と言っても、営業は納得しにくい。そこでICP率を使えば、どの施策が営業にとって価値のあるリードを生み出しているのか、どの施策が量に偏っているのかを客観的に確認できる。

重要なのは、ICP率を単独で見るのではなく、リード件数と合わせて見ることである。ICP率が高くても件数が少なすぎれば、案件数が不足する。逆に件数が多くてもICP率が低ければ、営業工数が増え、売上につながりにくくなる。リードは増えたのに売上が伸びない企業は、この質と量の両方を見る仕組みが不足していることが多い。

BBMの考え方

リードは増えたのに売上が伸びないという課題を解決するには、量を増やすマーケティングから、質と量のバランスを見ながら改善するマーケティングへ移行する必要がある。この考え方がBBM(Balance Based Marketing)である。BBMとは、営業とマーケティングが共通のICPを定義し、顧客やリードの質と量のバランスを見ながら施策の方向性を調整するBtoBマーケティング手法である。

BBM(Balance Based Marketing)とは?
BBM(Balance Based Marketing)とは、営業とマーケティングが共通のICP(理想的な顧客像)を定義し、顧客やリードの「質」と「量」のバランスを見ながら施策の方向性を調整するBtoBマーケティング手法である。従来のABMが質を重視し、LBM(リードベースドマーケティング)が量を重視するのに対し、BBMはどちらか一方に偏るのではなく、自社にとって最適なバランスを追求する。営業とマーケティングの連携を強化し、売上最大化を目指すための考え方である。BBMでは、獲得したリードのうちICPに該当する割合を示す「ICP率」を活用し、質と量のバランスを可視化しながら改善を進める。

従来のABMは、特定アカウントや重要顧客に深くアプローチする質重視の考え方である。一方、LBMやデマンドジェネレーションは、リード獲得や育成を通じて多くの見込み客を生み出す量重視の考え方になりやすい。どちらも重要な手法であるが、どちらか一方に偏ると問題が起きる。質だけを追うと案件数が不足し、量だけを追うと営業が疲弊して売上につながりにくくなる。BBMは、この二分法を超えて、自社にとって最適なバランスを追求する考え方である。

BBMでは、まずICPを定義し、営業とマーケティングで合意する。次に、各施策で獲得したリードのICP率を確認する。そして、件数とICP率の両方を見ながら、施策を評価する。例えば、SEO記事は流入とリード件数を増やす役割を持つが、ICP率が低いならテーマやCTAを見直す。展示会は名刺数が多くても案件化しないなら、出展テーマ、ブース訴求、フォロー基準を見直す。ウェビナーは参加者数が少なくてもICP率が高ければ、営業連携を強める価値がある。

また、BBMでは営業方針や市場環境の変化に合わせてバランスを調整する。売上目標に対して案件数が足りない場合は、ICP条件を維持しながらリード量を増やす施策を強化する。営業工数が不足している場合は、ICP率を高め、優先順位を絞る。新規市場を開拓したい場合は、既存ICPに近い周辺市場を試す。つまりBBMは、一度決めたターゲットを固定する考え方ではなく、営業とマーケティングが同じ指標を見ながら方向性を調整する運用方法である。

リードは増えたのに売上が伸びない企業に必要なのは、リード件数をさらに増やすことだけではない。必要なのは、どのリードが売上に近いのか、どの施策がICPに該当する顧客を生み出しているのか、どの段階で営業工数が無駄になっているのかを可視化することである。BBMを導入すれば、リード獲得件数という量の評価に加えて、ICP率という質の評価を組み合わせられる。

まとめると、リードが増えても売上が伸びない原因は、量を増やすこと自体ではなく、量だけを成果として評価してしまうことにある。リード件数、商談数、CV数は重要である。しかし、それらがICPに該当する顧客をどれだけ含んでいるのか、営業が追う価値のあるリードなのか、受注後に高いLTVが期待できるのかを見なければ、売上貢献は見えにくい。ICP率を活用し、BBMの考え方で質と量のバランスを調整することが、量偏重のBtoBマーケティングを見直す第一歩である。

ABOUTこの記事をかいた人

株式会社ALUHA代表取締役社長。1979年兵庫生まれのBtoBマーケティングコンサルタント。金沢工業大学大学院にて情報工学を専攻し2003年3月に修士課程を修了。同年4月にALUHAを創業。2008年からBtoBに特化したマーケティング支援、営業戦略支援を開始。2025年7月に顧客の質と量のバランスを重視するBBM(バランスベースドマーケティング)を考案。大手IT企業、製造業(日立Gr、富士フイルムGr、キヤノンGr、積水Grなど)を顧客に持つ。→セミナー講演実績→コンサル実績