このコラムは、技術系商材を扱う製造業・IT企業のマーケティング担当者、営業企画担当者、マーケティング責任者向けに作成している。特に、営業から「リードが多すぎて追えない」「営業人員が足りない」「マーケティングから渡されるリードをすべて追えない」と言われ、マーケティング部門として何を見直すべきか悩んでいる企業を想定している。
営業リソース不足は、人員不足や営業担当者の能力不足だけで発生するわけではない。多くの場合、追うべきリードの優先順位が設計されておらず、営業が限られた時間をどこに使うべきか判断できないことが原因である。本コラムでは、営業リソースが足りなくなる構造を整理し、ICPを活用して追うべきリードを見極め、BBM(Balance Based Marketing)によって営業とマーケティングが連携する方法を解説する。
最後まで読むことで、営業リソース不足の本当の原因、マーケティング部門が見直すべきリード受け渡しの基準、ICP率を使ったリード品質の可視化、さらに質と量のバランスを意識した施策運用のヒントが得られる。
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営業リソース不足とは何か|なぜ営業は常に忙しいのか
営業リソース不足とは、単に営業担当者の人数が少ない状態を指すわけではない。営業担当者が使える時間、架電やメールの工数、商談対応、提案書作成、見積作成、技術部門との調整、社内稟議支援、受注後の引き継ぎまで、営業活動に必要なすべての工数が限界に近づいている状態である。
特に技術系商材を扱う製造業やIT企業では、営業リソースは営業担当者だけで完結しない。製品仕様の確認、技術要件の整理、デモ環境の準備、SEや技術者の同行、導入後の運用設計など、営業以外の専門人材の工数も必要になる。つまり、営業が1件のリードを追うということは、営業担当者だけでなく、組織全体の限られたリソースを使うということである。
営業が常に忙しい企業では、リード件数や商談数が増えていること自体が問題になっている場合がある。マーケティング部門から見ると、リード件数の増加は成果に見える。しかし営業部門から見ると、調査、連絡、商談化、提案準備が必要な対象が増えていることを意味する。すべてのリードを同じように追えば、営業リソースはすぐに不足する。
したがって、営業リソース不足を考える際には、「営業を増やすべきか」だけでなく、「営業が本当に追うべきリードに集中できているか」を見る必要がある。営業リソース不足の本質は、人の数ではなく、優先順位設計にある場合が多いのである。
営業リソース不足の本当の原因とは
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営業リソース不足の原因は、営業人員が少ないことだけではない。むしろ、追うべき対象が整理されていないことによって、営業が本来使うべきではないリードに時間を使っているケースが多い。問い合わせが来たら営業へ渡す、展示会で名刺を獲得したらすべて営業が追う、資料ダウンロードしたリードを一律で架電する。このような運用では、営業は大量のリード処理に追われる。
マーケティング部門はリード獲得件数を成果として見やすい。一方で営業部門は、受注可能性や案件化の近さを重視する。そのため、マーケティングが成果として渡したリードでも、営業から見ると優先度が低い場合がある。このズレが積み重なると、営業は「リードが多すぎる」「追っても成果にならない」と感じるようになる。
営業リソース不足を解消するには、まず原因を分解する必要がある。すべてのリードを同じように扱っていないか。営業とマーケティングで優先順位が違っていないか。追うべき企業が定義されているか。将来性の低いリードに工数を使っていないか。営業リソース配分が感覚的に決まっていないか。これらを見直すことが出発点になる。
原因1:すべてのリードを同じ優先順位で扱っている
営業リソースが足りなくなる企業では、問い合わせ、展示会名刺、ウェビナー参加、資料ダウンロード、広告経由のCVなどを同じように営業へ渡していることがある。しかし、リードの状態はそれぞれ異なる。今すぐ課題を解決したいリードもいれば、情報収集段階のリードもいる。所属企業が自社の重点ターゲットに近い場合もあれば、対象外に近いケースもある。
すべてのリードを同じ優先順位で扱うと、営業は本来集中すべきリードを見つけにくくなる。結果として、受注可能性の低いリードへの対応に時間を使い、質の高いリードへの対応が遅れる。マーケティング部門は、リード件数を増やすだけでなく、営業が追うべき順番を判断できる情報を渡す必要がある。
原因2:営業とマーケティングでリードの優先順位が違う
営業とマーケティングでは、リードを見る視点が異なる。営業は売上責任を持つため、受注確度、予算、導入時期、決裁者との接点を重視する。一方でマーケティングは、リード件数、反応率、コンテンツ閲覧、ウェビナー参加、MQL件数などを重視しやすい。評価指標が違えば、優先順位も変わる。
例えば、マーケティングは複数回資料をダウンロードしたリードを優先したいと考える。しかし営業は、その所属企業が自社商材と合っていなければ優先度を下げる。逆に、行動履歴は少なくても、自社にとって重要な企業に所属するリードであれば、営業は早く接点を作りたいと考える。このようなズレを放置すると、営業リソースは効率的に使われない。
原因3:追うべき企業がICPとして定義されていない
営業リソース不足の根本には、追うべき企業が定義されていない問題がある。一般ターゲットとして「製造業」「小売業」「大手企業」「中小企業」といった表現はあっても、その中で特に優先すべき企業がどこなのかが決まっていなければ、営業は判断に迷う。
ここで重要になるのがICPである。ICP(Ideal Customer Profile)とは、一般ターゲットの中でも、自社の商品やサービスとの相性が良く、受注可能性があり、受注後に高いLTVが期待できる理想的な重点ターゲットである。ICPは単なるターゲット条件ではなく、営業とマーケティングの合意形成条件でもある。
営業リソースを有効に使うには、マーケティング部門が獲得したリードの所属企業がICPに該当するのか、将来ICP候補なのか、一般ターゲットなのかを判断できる状態にする必要がある。追うべき企業が定義されていなければ、どのリードを優先すべきかも決まらない。
原因4:将来性の低いリードにも営業工数を使っている
営業リソースが足りなくなる企業では、将来性の低いリードにも多くの工数を使っている場合がある。もちろん、すべてのリードを一律に切り捨てるべきではない。しかし、今後も高いLTVが期待できない企業、成長性が低い企業、横展開や追加提案が見込みにくい企業を手厚く追い続けると、営業リソースは不足する。
原因5:営業リソース配分が感覚的に決まっている
営業リソース配分が、営業担当者の経験や営業マネージャーの感覚だけで決まっている場合もある。経験は重要である。しかし、属人的な判断だけでは、マーケティング施策との連携が難しい。どのチャネルから来たリードが質の高いリードなのか、どの業界や企業規模に営業工数を使うべきかが可視化されなければ、改善は難しい。
追うべきリードを見極めるICPとは
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追うべきリードを見極めるためには、ICPを定義する必要がある。
ICPは、営業とマーケティングが「このような企業に所属するリードを優先する」と合意するための基準である。ICPがなければ、マーケティングは反応が取れるリードを集め、営業は受注に近いリードだけを追うというズレが生まれる。
ICPを定義する際は、確度条件、相性条件、LTV条件を整理する。確度条件は受注にどれだけ近いか、相性条件は顧客課題と自社の強みがどれだけ合っているか、LTV条件は受注後に高い価値が期待できるかである。技術系商材では、業界や企業規模だけでなく、用途、導入環境、既存システム、技術課題まで含めて定義する必要がある。
営業リソース不足を改善するICP活用方法
ICPを定義したら、営業へ渡すリードを分類する。
1つ目は、ICP該当リードである。営業が優先的に追うべきリードで、確度条件、相性条件、LTV条件を満たすリードである。2つ目は、将来ICP候補のリードである。現時点では受注確度が高くなくても、将来的に大口化や高LTV化が期待できる企業に所属するリードである。3つ目は、一般リードである。現時点でも将来的にもICPになりにくい企業に所属するリードだ。
この分類によって、営業はすべてのリードを同じように追う必要がなくなる。ICP該当リードには早期対応し、将来ICP候補にはナーチャリングや定期接点を設計し、一般リードには自動化された情報提供や低工数の対応を行う。このように営業リソースの使い方を変えることで、営業人員を増やさなくても成果を改善できる可能性がある。
ICP率で営業リソース配分を可視化する
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営業リソース配分を改善するには、ICP率を使うことが重要である。ICP率とは、獲得したリード、案件、顧客のうち、ICPに該当する割合を示す指標である。主に以下の3つのICP率がある。
| リードICP率 | 獲得したリードのうちICPに該当する割合 |
| 案件ICP率 | 案件化したリードのうちICPに該当する割合 |
| 顧客ICP率 | 受注した顧客のうちICPに該当する割合 |
マーケティング部門は、施策ごとのリードICP率を確認することで、どの施策が営業に渡す価値の高いリードを生み出しているかを判断できる。
例えば、展示会Aはリード件数が多いがリードICP率が低い。一方、ウェビナーBは件数は少ないがリードICP率が高い。この場合、営業リソース不足の企業では、単純な件数ではなく、営業が追う価値の高いリードを生み出している施策を重視すべきである。
さらに、案件ICP率や顧客ICP率も確認することで、営業プロセスのどこで選別が進んでいるかが見える。リードICP率が低くても案件ICP率が高い場合、営業やインサイドセールスの選別が機能している可能性がある。逆に、リードICP率が高いのに案件ICP率が低い場合は、商談化条件や営業受け渡しに問題がある可能性がある。
BBMによる営業とマーケティングの連携方法
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営業リソース不足を改善するための選択肢の一つがBBMである。BBM(Balance Based Marketing)とは、顧客やリードの質と量のバランスを重視するBtoBマーケティング手法である。ABMとLBMの中間に位置し、件数とICP率を重要KPIとして、リード・案件・顧客の質と量を管理する。
BBMでは、質とはICP該当であり、量とはICP非該当である。ただし、ICP非該当は悪いという意味ではない。ICP非該当の中には将来ICP候補も存在する。営業リソース不足を解消するには、ICP該当リード、将来ICP候補、一般リードを分け、営業とマーケティングが同じ優先順位で運用することが重要である。
また、BBMはICP率を最大化する手法ではない。ICP率が100%に近づけばABMになり、案件不足になりやすい。逆にICP率が低すぎればLBMに近づき、営業が疲弊しやすい。BBMの狙いは、利益が最大化するICP率と件数のバランスを探すことである。営業リソース不足の企業では、この質と量のバランスを意識した施策運用が必要になる。
営業リソース不足を解消するためにマーケ部門がやるべきこと
営業リソース不足を解消するために、マーケティング部門ができることは多い。まず、一般ターゲットとICPを明確に分けることである。次に、リード獲得施策ごとのICP率を測定することである。そして、営業へ渡すリードの受け渡し基準を営業と合意することである。
マーケティング部門は、単にリード件数を増やすだけでなく、営業が追うべきリードを見極めやすい状態を作る必要がある。そのためには、リード獲得時点で企業属性、課題、用途、導入環境、検討段階をできるだけ取得し、ICP該当度を判断できるようにする。
営業から「リソースが足りない」と言われた時、マーケティング部門が取るべき対応は、単にリード件数を減らすことではない。追うべきリードを明確にし、追わなくてよいリードの対応方法を設計し、営業が限られた時間を質の高いリードに使えるようにすることである。
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まとめ
営業リソース不足の原因は、営業人員の不足や営業担当者の能力不足だけではない。多くの場合、追うべきリードの優先順位が設計されておらず、営業が限られた時間をどこに使うべきか判断できないことが原因である。
マーケティング部門は、リード件数を増やすだけでなく、営業が追うべきリードを明確にする役割を担う必要がある。そのためには、ICPを定義し、ICP率を測定し、営業とマーケティングでリードの優先順位を合意することが重要である。
BBMは、件数とICP率を重要KPIとして、質と量のバランスを管理するBtoBマーケティング手法である。営業リソース不足に悩む企業にとって、BBMは営業とマーケティングが連携し、限られた営業リソースを成果につながるリードへ集中させるための有効な選択肢になる。















