BtoBマーケティングでは、「まずはリードを増やすことが重要だ」と考えられることが少なくありません。実際に、多くの企業がSEO、広告、展示会、ホワイトペーパー、ウェビナーなどを活用しながら、リード獲得数の拡大に取り組んでいます。この考え方の中心にあるのが、LBM(Lead Based Marketing)です。
LBMは、リードの母数を増やし、その中から案件や受注を創出する有効なマーケティング手法です。しかし一方で、「リードは増えているのに売上が伸びない」「営業がリードを追わない」「案件数はあるのに利益につながらない」といった課題を抱える企業も少なくありません。
こうした課題に対し、顧客の質と量の両方を管理する考え方として提唱されたのがBBM(Balance Based Marketing)です。BBMでは、ICP(Ideal Customer Profile)とICP率を活用して顧客の質を可視化し、リード件数や案件件数などの量とのバランスを継続的に管理します。そして、単なる件数の最大化ではなく、利益が最大化する状態を目指します。
本記事では、LBMとBBMの定義や特徴を整理したうえで、目的、重視する指標、顧客の考え方、営業リソース、利益の考え方などの違いを比較しながら解説します。また、それぞれの手法が向いている企業や活用のポイントについても詳しく紹介します。
LBM(Lead Based Marketing)とは
LBMの定義
LBM(Lead Based Marketing)とは、リード(見込み客)の獲得と育成を中心に展開するBtoBマーケティング手法です。展示会、Webサイト、SEO、広告、ウェビナー、ホワイトペーパーなどを活用して多くのリードを獲得し、その中から商談や受注につながる企業を育成していきます。
LBMでは、まず十分なリード数を確保することを重視します。市場との接点を増やし、多数の見込み客の中から案件や顧客を創出する考え方であり、多くのBtoB企業が取り組むデマンドジェネレーションの中心的な考え方でもあります。
そのためLBMは、「まずは母数を確保する」という発想を持つマーケティング手法であり、リード獲得数や商談数の拡大を目指す企業で広く活用されています。
LBMが注目される理由
LBMが注目される理由は、安定した売上を生み出すためには一定数のリードが必要だからです。
どれほど優れた営業組織であっても、商談の母数となるリードがなければ受注は生まれません。そのため多くのBtoB企業では、展示会、SEO、広告、メディア掲載、ホワイトペーパー、ウェビナーなどを活用しながらリード獲得を強化しています。
近年では顧客自身がインターネットやAIを利用して情報収集を行うため、営業担当者と接触する前に比較検討が進むケースも増えています。こうした購買行動の変化に対応するためにも、幅広い見込み客との接点を構築できるLBMの重要性は高まっています。
また、市場の変化が早い業界では、継続的に新規リードを獲得することが事業成長に直結します。そのため、案件数や新規顧客数を増やしたい企業にとってLBMは有効な考え方となっています。
LBMのメリット
LBMの最大のメリットは、営業活動の母数を確保しやすいことです。
リード数を増やすことで商談機会が増加し、新規顧客の獲得可能性も高まります。市場と継続的に接点を持てるため、新しい業界や新しい用途への展開を進めやすいことも特徴です。
また、SEO、広告、ウェビナー、ホワイトペーパーなどのマーケティング施策を活用することで、多数の企業へ効率的にアプローチできます。そのため、限られたマーケティング予算でも接触機会を増やしやすくなります。
さらに、獲得したリードを継続的に育成できることもメリットです。現時点では案件化していないリードであっても、将来的に案件化や受注につながる可能性があります。新規市場の開拓や将来顧客の育成という観点でも、LBMは有効なマーケティング手法といえるでしょう。
LBMの課題
一方で、LBMにはいくつかの課題もあります。
最もよくある課題は、リード件数が増えても売上や利益が増えないことです。多くのリードを獲得できても、その中に営業価値の高い企業が少なければ、案件化率や受注率は向上しません。
また、営業部門がすべてのリードに対応できないという問題も発生します。展示会や広告によって大量のリードを獲得しても、営業リソースには限界があります。その結果、営業がリードを追わない、MQLが機能しない、案件化率が低下するといった問題が発生する場合があります。
さらに、件数だけを重視すると、自社との相性が低い企業やLTVが低い企業も増加しやすくなります。商談数は増えても利益につながらない、営業負荷だけが増加するといった状況に陥ることもあります。
そのためLBMを成功させるためには、単にリード件数を追うのではなく、「どのようなリードを獲得しているのか」という顧客の質も合わせて管理することが重要になります。
BBM(Balance Based Marketing)とは
BBMの定義
BBM(Balance Based Marketing)とは、顧客やリードの質と量のバランスに焦点を当てたBtoBマーケティング手法です。ABM(Account Based Marketing)とLBM(Lead Based Marketing)の間に位置する考え方であり、両者の長所を取り入れながら、自社の利益が最大化する質と量のバランスを追求します。
BBMでは、質をICP率、量をリード件数・案件件数・顧客件数として管理し、営業とマーケティングが共通の基準で顧客を評価します。
BtoBマーケティングでは、質だけを重視すると案件数が不足し、量だけを重視すると営業負荷が増加する可能性があります。そのためBBMでは、ICP(Ideal Customer Profile)とICP率を活用して顧客の質を可視化しながら、件数とのバランスを継続的に管理します。
重要なのは、ICP率を最大化することでも、件数を最大化することでもありません。自社の売上、利益、LTV(顧客生涯価値)、営業リソースを踏まえながら、利益が最大化する質と量のバランスを追求することがBBMの目的です。
なぜBBMが生まれたのか
BBMは、ABM(Account Based Marketing)とLBM(Lead Based Marketing)のそれぞれが抱える課題を解決するために生まれました。
ABMは、重点企業へのアプローチを強化することで高いLTVや大口案件の獲得を目指す手法です。しかし、ターゲットを絞り込みすぎると案件数が不足しやすくなり、売上機会の減少や特定顧客への依存につながる場合があります。
一方、LBMは、リード件数を増やすことで案件や受注を創出する手法です。しかし、件数ばかりを追求すると営業が対応しきれないほどのリードが発生し、案件化率や受注率の低下を招くことがあります。
実際のBtoB企業では、質を重視すべき場面もあれば、量を確保すべき場面も存在します。そこでBBMでは、ICPとICP率を活用して顧客の質を可視化しながら、件数とのバランスを調整する考え方を採用しました。質か量のどちらか一方を選ぶのではなく、自社にとって利益が最大化する状態を目指すことがBBM誕生の背景です。
BBMのメリット
BBMの最大のメリットは、営業とマーケティングが共通の指標を持ちながら、顧客の質と量を同時に管理できることです。ICPとICP率を定義することで、「どの顧客を優先すべきか」「どの施策が成果につながっているか」を客観的に判断できるようになります。
また、件数だけでは見えない顧客の質を可視化できることも特徴です。リード件数や案件件数が増加していても、ICP率が低ければ営業価値の高い顧客を十分に獲得できていない可能性があります。反対に、件数が少なくてもICP率が高ければ、将来的な売上や利益につながる可能性があります。
さらにBBMでは、リードICP率、案件ICP率、顧客ICP率を継続的に測定することで、マーケティングから営業、受注後までを一貫した基準で評価できます。その結果、営業リソースの最適化、営業とマーケティングの連携強化、利益の最大化につながる意思決定を行いやすくなります。BBMは、質重視でも量重視でもなく、自社にとって最適なバランスを追求できることが大きなメリットです。
BBMとLBMの違い
違い① 目的
LBM(Lead Based Marketing)とBBM(Balance Based Marketing)では、マーケティング活動の目的が異なります。
LBMの目的は、できるだけ多くのリードを獲得し、その中から案件や受注を創出することです。そのため、展示会、SEO、広告、ウェビナー、ホワイトペーパーなどを活用しながら、市場との接点を増やし、リード件数の拡大を目指します。
一方、BBMの目的は、顧客の質と量のバランスを最適化し、利益を最大化することです。リード件数の確保も重視しますが、それと同時にICP(Ideal Customer Profile)に該当する顧客をどれだけ獲得できているかを評価します。
つまり、LBMは「リード数の最大化」、BBMは「利益につながる質と量の最適化」を目的とした考え方です。
違い② 重視する指標
LBMとBBMでは、成果を評価するための指標にも違いがあります。
LBMでは、リード獲得件数、資料請求数、セミナー参加者数、問い合わせ件数、商談数などが重要な指標になります。どれだけ多くの見込み客を獲得し、案件へ転換できたかを重視します。
一方、BBMでは件数だけではなく、顧客の質を示すICP率も重要な指標として管理します。具体的には、リードICP率、案件ICP率、顧客ICP率を測定し、各段階においてどれだけICPに該当する対象を獲得できているかを確認します。
LBMが件数中心で成果を評価するのに対し、BBMは件数とICP率(質)の両方を管理することが大きな違いです。
違い③ 顧客の考え方
LBMとBBMでは、顧客の捉え方にも違いがあります。
LBMでは、多くのリードを獲得し、その中から受注につながる企業を見つけ出すという考え方が基本になります。そのため、まずは市場との接点を広げることを優先します。
一方、BBMでは、最初にICPを定義し、ICP該当とICP非該当を区別して管理します。どちらか一方だけを重視するのではなく、それぞれの構成比や役割を可視化しながら事業全体を管理します。
そのためLBMは「まず母数を増やす考え方」、BBMは「顧客構成を最適化する考え方」と整理できます。
違い④ 営業リソースの考え方
営業リソースに対する考え方も異なります。
LBMでは、獲得したリードの中から案件化や受注を増やそうとするため、リード件数が増えるほど営業フォローの対象も増加します。その結果、営業部門が対応しきれず、リード放置や案件化率の低下につながることがあります。
一方、BBMでは、営業リソースも重要な経営資源として考えます。ICP率と件数を確認しながら、営業が優先的に対応すべき対象を判断し、リソース配分を最適化します。
つまり、LBMはリード増加に応じて営業負荷も増える傾向がありますが、BBMは営業リソースを踏まえて質と量のバランスを調整する考え方です。
違い⑤ 利益の考え方
LBMとBBMの最も大きな違いは、利益に対する考え方です。
LBMでは、多くのリードを獲得することで案件数や受注数を増やし、結果として売上や利益を拡大しようと考えます。しかし、件数の増加が必ずしも利益の増加につながるとは限りません。営業負荷が増加したり、LTVの低い顧客ばかりが増えたりする可能性もあります。
一方、BBMでは、利益は件数だけで決まるものではないと考えます。ICP率が高すぎると件数が不足し、件数が多すぎると営業負荷が増えるためです。そのため、ICP率と件数を組み合わせて分析し、自社にとって利益が最大化するバランスを探ります。
この考え方が「利益最大ICP率」です。LBMが件数拡大による成長を重視するのに対し、BBMは質と量の両面から利益の最大化を目指す点が大きな違いです。
比較表|BBMとLBMの違い
| 項目 | LBM | BBM |
|---|---|---|
| 正式名称 | Lead Based Marketing | Balance Based Marketing |
| 基本思想 | リード量の最大化 | 顧客の質と量のバランス最適化 |
| 起点 | リード(見込み客) | ICPとICP率 |
| 主な目的 | リード数や商談数を増やし受注を拡大する | 利益が最大化する質と量のバランスを実現する |
| 重視する指標 | リード件数、CV数、商談数 | ICP率、リード件数、案件件数、顧客件数 |
| 顧客の考え方 | まずは幅広くリードを獲得する | ICP該当・ICP非該当を区別して管理する |
| 営業リソース | 大量のリードフォローが前提 | ICP率と件数を見ながら最適に配分する |
| 質と量の考え方 | 量を最優先する | 状況に応じて質と量のバランスを調整する |
| 前提となる考え方 | まずは母数を確保しなければ始まらない | 利益につながる最適なバランスを追求する |
| 向いている企業 | 市場が広く、新規リード獲得が重要な企業 | 大口顧客と小口顧客が混在する企業 |
| 起こりやすい課題 | 営業負荷の増大、案件化率の低下、リードの放置 | ICP定義が曖昧だと運用が難しい |
| 利益の考え方 | 件数を増やして利益拡大を目指す | 利益最大ICP率を見つけて利益を最大化する |
LBMとBBMは対立する考え方ではありません。LBMは市場との接点を増やしリードの母数を確保する考え方であり、BBMはその中で顧客の質と量を可視化しながら利益が最大化するバランスを追求する考え方です。重要なのはリード件数だけを見ることでも、ICP率だけを見ることでもありません。リード件数、案件件数、顧客件数とICP率を組み合わせ、自社にとって最適な営業・マーケティング戦略を構築することです。
LBMが向いている企業
LBMは、市場との接点を増やしながら多くのリードを獲得したい企業(シェアを伸ばしたい企業)に向いています。
例えば、市場規模が大きく、幅広い業界や企業へ販売できる商材を扱う企業は、LBMとの相性が良いといえます。また、新規市場の開拓を進めている企業や、認知度向上とリード獲得を優先したい企業にも適した考え方です。
さらに、営業組織やインサイドセールス組織が充実しており、多数のリードを継続的にフォローできる体制が整っている企業もLBMを活用しやすいでしょう。リード件数を増やしながら案件創出数を拡大したい企業にとって、LBMは有効なマーケティング手法です。
一方で、営業リソースが限られている場合や、獲得したリードの品質にばらつきがある場合は、件数だけを追う運用によって営業負荷が増大する可能性があります。そのため、リード件数だけでなく、案件化率や受注率なども合わせて確認することが重要です。
BBMが向いている企業
BBMは、大口顧客と小口顧客が混在している企業や、顧客の質と量のバランスに課題を抱えている企業に向いています。
例えば、「リード獲得数は多いが受注につながらない」「営業がリードを追わない」「案件数はあるが利益が伸びない」といった課題を抱える企業では、件数だけでは状況を正しく判断できません。
また、営業リソースが限られており、すべてのリードへ同じ対応を行うことが難しい企業にもBBMは有効です。ICP(Ideal Customer Profile)とICP率を活用することで、どのリードや案件を優先すべきかを客観的に判断できるようになります。
さらに、大口案件も小口案件も存在する市場や、営業方針が状況によって変化する企業にも適しています。BBMは、質を重視するべきか、量を重視するべきかを固定的に決めるのではなく、利益が最大化するバランスを継続的に探し続けることを重視する考え方です。
LBMとBBMは対立概念ではない
LBMとBBMは、どちらか一方を選ばなければならない対立概念ではありません。
LBMは、市場との接点を増やし、リードの母数を確保するための有効な考え方です。実際に多くのBtoB企業では、SEO、広告、展示会、ウェビナー、ホワイトペーパーなどを活用してリードを獲得しています。
一方、BBMは、そのリードの中にどれだけ理想顧客が含まれているのかを可視化し、質と量のバランスを管理するための考え方です。つまり、LBMによるリード獲得活動を否定するものではありません。
BBMは、リード件数だけに注目するのではなく、ICP率やICP該当件数も合わせて評価します。そのため、「件数を増やす活動」と「質を高める活動」を両立しながら、自社にとって最適な状態を目指すことができます。
LBMがリード獲得の考え方だとすれば、BBMはその成果を質と量の両面から評価し、利益につなげるための考え方といえるでしょう。
まとめ
LBM(Lead Based Marketing)は、多くのリードを獲得し、その中から案件や受注を創出するBtoBマーケティング手法です。市場との接点を広げやすく、新規顧客開拓やリード獲得に強みがあります。
一方、BBM(Balance Based Marketing)は、顧客やリードの質と量のバランスを管理しながら、利益の最大化を目指すBtoBマーケティング手法です。ICP(Ideal Customer Profile)とICP率を活用し、営業とマーケティングが共通の基準で顧客を評価します。
LBMが重視するのはリード件数の確保であり、BBMが重視するのはICP率と件数のバランスです。どちらが優れているということではなく、自社の市場環境、営業リソース、事業戦略によって最適な考え方は異なります。
重要なのは、リード件数だけを見ることでも、ICP率だけを見ることでもありません。リード件数、案件件数、顧客件数とICP率を継続的に可視化し、自社にとって利益が最大化する質と量のバランスを見つけることが、BtoBマーケティングの成果向上につながります。