デジタルカメラやプリンター、複合機、スキャナー、プロジェクターなどの機器をメインに扱うキヤノン株式会社。日本国内でキヤノン製品の販売、サポートをおこなうのがキヤノンマーケティングジャパン株式会社(以下、キヤノンMJ)である。近年は医療や教育、流通を支援するソリューションビジネスも拡大。活躍の場を広げている。
キヤノンMJは、ビジネスの拡大に伴い取扱商品も多くなり、営業の効率化が必須となった。そこでデジタルマーケティングの活用を模索しALUHAにBtoBマーケティングのコンサルティングを依頼。ALUHAの荻野のコンサルティングを受けWebサイトを改善すると、それぞれの製品について「月間PVが5~6倍、ほとんどなかったCVが毎日来るように」「月間CVが対前年比2.6倍」「自社ECサイトでの売上が年間20%以上成長」などの成果があった。
ALUHAはどんな施策を打ったのだろうか。具体的なコンサルティングの内容をキヤノンMJの担当者に聞いた。
取材協力
キヤノンマーケティングジャパン株式会社
- オフィスデバイス企画部 AED企画課 課長代理 星野 将史氏
- プリンティング企画本部 ページプリンタ企画部 ページプリンタ商品企画第二課 主任 佐藤 武稔氏
- オフィスデバイス企画部 ビジュアルソリューション企画課 鈴木 敬済氏
- オフィスデバイス企画部 ビジュアルソリューション企画課 相馬 奈緒氏
- スモールフォーマットプリンタ企画課 桂川氏
(桂川氏のみメールによる取材を実施)
左から荻野、佐藤氏、鈴木氏、相馬氏、星野氏
オフィスのあらゆる情報機器を販売
キヤノンMJは1961年2月1日に設立された。オフィスに必要なあらゆる機器を扱っているが、ALUHAのコンサルティングを受けているのはプロジェクター、A4レーザー複合機、テレビ会議システムといった事業である。まずはそれぞれの担当者に、各事業の製品について聞いた。
「プロジェクターについては会議室で使う一般的なものから、ポケットに入るサイズのミニプロジェクター、プロジェクションマッピングに使用するものまで幅広く取り揃えています。」(鈴木氏)
会議室はもちろんのこと、博物館や美術館、水族館など幅広い用途でプロジェクターが活用されているという。
「A4レーザー複合機は1台でコピー、プリンター、スキャナー、ファックスという4役をこなします。操作パネルも非常にわかりやすく設計されているので初めて使用する方も操作に迷わず使えるのが製品の魅力です」(佐藤氏)
A4レーザー複合機は非常にコンパクトサイズなので、SOHOや個人事業主によく使われている。
「私の担当はテレビ会議システムです。このシステムは少し特殊で、キヤノン製品ではなく複数のメーカーから適切なものを選定して販売しています。マルチベンダとして公平な目線で企画することが大切です」(相馬氏)
働き方改革の推進に伴い、テレビ会議システムはいまではオフィスの必需品となりつつある。
「私は業務用の特殊なプリンターを担当しています。」(桂川氏)
まさにオフィスに必要なあらゆる機器を扱っているキヤノンMJ。営業手法やチャネルは完成しているように思える。なぜALUHAのコンサルティングを受けることになったのだろうか。
コンサルティングを受ける前の営業方法と課題
ALUHAのコンサルティングを受ける前、キヤノンマーケティングジャパンの商品企画部門にはある課題があった。
「弊社では基本的に、営業担当がお客様となる企業を訪問して製品を販売する方法を取っています。ただ扱っている製品が多い一方で、営業担当の数が限られています。こうした状況では、すべての製品をお客様に紹介することはできません。また時代とともに、お客様の購買行動は変化しています。かつては営業担当が製品を紹介し、そのなかから購入するものを検討していました。ところが最近はWebサイトで検討してから、製品を購入するようになったのです。この2点に対応する必要性を感じていました」(星野氏)
確かにインターネットの普及により、人の購買パターンはかつてとは大きく変わった。その対応策を検討するのは、ある意味で当然の流れだったのだろう。
またこのころ、星野氏にはあるミッションが与えられたという。
「営業に負担をかけずに、製品を販売する方法を考えるよう言われました。そこで検討したのがWebサイトの活用です。当時BtoCのWebページはすでに充実していましたが、BtoBのサイトには力を入れていませんでした。お客様の購買行動の変化を考えれば、これは非常にもったいないことだと考えたのです」(星野氏)
従来とは違う営業手法の構築。この課題を解決するためにデジタルマーケティングの可能性を探りはじめた星野氏は、Web検索でALUHAの存在を知った。
ALUHA自らがノウハウの信頼性を証明
ALUHAのWebサイトでは、主にBtoBデジタルマーケティングの手法を解説した記事を無料で公開している。これを読んだ星野氏はすぐに資料請求した。
「資料請求すると、荻野さんから『無料のデジタルマーケティング勉強会を開催しませんか』という提案をいただきました。当時、桂川の部門はデジタルマーケティングに取り組んでいたのですが、他のメンバーは私も含めてまだまだ知的強化が必要でした。そんな私たちにとって、無料で勉強会を開いていただけるのは本当にありがたいことでした」(星野氏)
勉強会には企画担当者を中心に約10人が参加した。どのような感想を持ったのだろうか。
「この勉強会では『Webでリードを取るにはどうしたらいいか?』、『SEO的なキーワードの分析方法』など、デジタルマーケティングの基本中の基本を教えていただきました。それでも私たちにとっては『なるほど、こんなふうにWebを使えばいいのか』と目から鱗の落ちる思いでした」(星野氏)
このころ星野氏は、ALUHAだけを検討していたわけではない。実は他の企業の無料セミナーにも参加していた。しかし結果的には、これがALUHAに依頼する決め手となった。
「他社のセミナーは、どこも“売り込み色”が強い印象がありました。すぐにツールの話が出てきて、『この商品を売るためのセミナーなんだろうな』と感じることが多かったのです。一方、ALUHAさんの勉強会には売り込みがありませんでした。ノウハウだけを丁寧に教えてくれたのです」(星野氏)
荻野のノウハウは、自分自身が知識ゼロのところから15年以上かけて少しずつ蓄積してきたものだ。その知識を惜しみなくシェアしてもらえたからこそ、星野氏は「我々にはALUHAの力が必要だ」と感じたという。
もう一つ、キヤノンMJがALUHAを選んだ理由があった。実は星野氏がALUHAにコンタクトを取ったのと同じころ、桂川氏も独自にALUHAに連絡していたのである。
「私と桂川は偶然にも同じALUHAを選んで資料請求しました。これこそが荻野さんのノウハウの高さを証明していると思います。競合がひしめくWeb上で高い検索順位を獲得し、サイトで公開しているノウハウで人を引きつけたということですから」(星野氏)
BtoBに特化したデジタルマーケティングのコンサルティング企業であるALUHAが自らのサイトで結果を出していること。これもALUHAを選んだ理由になったのである。
コンサルティングの効果は? すべての事業で高い成果を達成
鈴木氏
ALUHAと一緒にデジタルマーケティングに取り組むことを決めたキヤノンMJ。ただ、はじめは暗闇のなかを手探りで進む感覚があった。
「荻野さんに教えていただいて施策を打っていくわけですが、正直に言うと半信半疑でした。事前に他社さんでの成功事例などをうかがってはいたのですが、『私が担当するテレビ会議システムでも、本当に同じ成果が出るの?』という気持ちがあったんです」(相馬氏)
成功事例はあくまでも他社のもの。自分の会社での成功を確信できないのは無理もない。同じように、こんな声もあった。
「最初はWebサイトを作ることでどれくらいの効果があるのかわかりませんでした。そのため『作業にこれだけの時間を使うのであれば、営業と少しでも会話をしたほうがプロジェクターの売上につながるのでは?』と思うこともありました」(鈴木氏)
デジタルマーケティングで成功するにはPDCAが必須だ。当然、その分だけ時間がかかる。その間は成果が見えづらいため、不要な時間を使っているような錯覚に陥ってしまうのは仕方ないことだ。
ではALUHAのコンサルティングがスタートしてから、どれくらいの効果があったのだろうか。
「私が担当しているテレビ会議システムの場合、コンサルティングを受ける前は月間PVが非常に少なく、CVも全く取れていませんでした。ところがALUHAさんと一緒にデジタルマーケティングに取り組むようになってからPVは5~6倍。問い合わせや資料請求も毎日来るようになり、あるメーカーの製品では全体の売上の25%程度をWebから取れるようになりました」(相馬氏)
ALUHAのノウハウはテレビ会議システムにもしっかり対応できたということだ。
「私の担当するプロジェクターは今年に入ってから、対前年比月間CVが2.6倍になりました。Webサイトは1つ制作すると自走してくれます。はじめにデジタルマーケティングにかけた時間が将来の大きな売上につながっているわけです」(鈴木氏)
当初、無意味であるようにも思えた作業は、いま確かな成果になっている。もちろん他の製品でも大きな収穫につながった。
「私が担当しているA4レーザー複合機では、自社のECサイトでの販売台数が20%成長しました。荻野さんのアイディアで資料請求ページへの導線を強化したのがよかったのだと思います。小さな工夫が大きな成果につながるのだとわかりました」(佐藤氏)
この「20%の成長」という数字は、資料をダウンロードしたあとにオンラインショップで購入したユーザーの数を分析して出したものである。実際にはダウンロードした資料で製品スペックや特徴などを確認後、量販店や事務機専門店で購入するユーザーもいるはずだ。そんなユーザーも含めれば、さらに高い成長率となっている可能性もある。
また、もともとデジタルマーケティングの知識があった桂川氏が手掛ける製品にも変化があった。
「業務用の特殊プリンターでは集客数が3倍。リードが1.7倍になりました。現在MA(マーケティングオートメーション)ツールを活用したコミュニケーションシナリオ設計を行い、顧客の購買プロセス別にシナリオを10本程度走らせています。その結果、従来では拾えなかった重点ターゲット層への訴求と製品導入が進み、事業が大きく伸びています」(桂川氏)
ステップメールや全体の俯瞰図の作成方法、事業のどこを伸ばしていくかなどのアドバイスが特に参考になっていると、桂川氏は語る。
「いまでは荻野さんとデジタルマーケティングに取り組んだ経験をベースに、社内の他事業を支援しています」(桂川氏)
ALUHAと一緒にデジタルマーケティングを取り入れた結果、どの事業も飛躍的に成長したのである。
ALUHAのコンサルティングの魅力は?
高い成果をあげているキヤノンMJとALUHA。一緒にデジタルマーケティングに取り組んできた担当者たちは、ALUHAのコンサルティングをどのように振り返るだろうか。この質問には特に多くの声があがった。
「コンサルティングと言うと『私の言うことを聞いていれば間違いありませんよ』と命じられるイメージがあったのですが、そんなことはありませんでした。こちらの状況によって成果を出すための仮説を立ててくださり、その結果によって次にすべき施策を教えてくださったというイメージです。一緒に協力して仕事を進めている感覚がありましたね」(佐藤氏)
仮説からデータを取得し、その結果によって取るべき施策を決定する。これは荻野が得意とするマーケティング手法だ。また佐藤氏は、こうも話している。
「実は荻野さんからやるように言われたことを私がやり切れず、手伝ってもらうこともあったんですよ」(佐藤氏)
“教科書通り”の指示を出し、実作業には関わらないコンサルタントはいる。一方、荻野はコンテンツ設計書やワイヤーフレーム、コンテンツ改善指示書などを自ら作成。クライアントの負担が軽くなるよう支援している。佐藤氏と同じような声は別の担当者からも聞かれた。
「PDCAがまわせるようになるまでは他の業務に時間をとられ優先順位が下がってしまい、作業が捗らないことがありました。荻野さんはそんなとき、私の仕事のペースに合わせてやれる範囲からコツコツとコンサルティングをしてくれました」(鈴木氏)
ALUHAのコンサルティングを受けているメンバーは、専業でデジタルマーケティングに取り組んでいるわけではない。別の業務を抱えながらWebサイトの改善などの業務にあたっている。作業をこなせなくなることがあるのは仕方ないことだろう。荻野はそんな事情に配慮し、可能な限りクライアントのペースに合わせながらコンサルティングしていくのである。
また社内や業界で当然とされていることに対し、荻野が客観的な目を向けることを評価する担当者もいた。
「私たちは長く同じ製品を担当するなかで一般的には通じない言葉を当たり前に使ってしまうことがあります。それにストップをかけてくれたのもありがたかったです。これは荻野さんが弊社の製品をよく勉強してくれているからこそのことだと思います」(相馬氏)
特定の業界だけで通じる業界用語や専門用語、当たり前とされている慣習はある。また仕事を続けているうちに、それが一般的には通用しないことを忘れてしまうことも確かにあるだろう。それに荻野が気づき、しっかりと指摘したのだ。これに関連して一つのエピソードがある。
「デジタルマーケティングをはじめる前、私たちは紙の製品チラシをPDF化してWebサイトにアップしていました。これを荻野さんにご指摘いただいたんです。実はチラシの裏面には製品の販売代理店やパートナーの連絡先をスタンプするスペースがあります。これはチラシを印刷して代理店やパートナーがお客様に配布するときに自社の連絡先を明確にするためのものです。いま考えれば恥ずかしいことなのですが、私たちはこのチラシのスタンプ欄を空白にしたままサイトに掲載していたのです。これではサイトでこのチラシを見てくださったお客様は、どこに連絡すればいいかわかりません。本来はスタンプ欄に製品サイトへのリンクボタンを設置するべきだったんですね」(佐藤氏)
このエピソードは、ALUHAが社内の人間では気づきづらいことに目を向け、客観的に改善策を提案している好例と言えるだろう。
コンサルティングというと料金体系が不明瞭であるケースもある。ALUHAの場合はどうだろうか。
「追加料金がないのがいいですね。私たちは会社のプロジェクトとしてデジタルマーケティングに取り組んでいるので、どうしても予算に制限があります。たとえばある施策を打とうと考えているときに『ここから先はオプションで……』といったことがあると、社内稟議や上司への報告に困ることがあるんです。ALUHAさんの場合、予算の範囲内でできることを教えてくれるので大変助かっています」(鈴木氏)
明朗な料金体系のなかで、成果を出すための的確な提案をする。これもALUHAのコンサルティングの魅力である。
キヤノンマーケティングジャパン株式会社の今後の展望
最後にキヤノンMJとALUHAが今後どのようにデジタルマーケティングを展開していくのかを聞いた
「まず、私たちはアナログな仕事をしながらデジタルマーケティングに取り組んでいます。そのためデジタルマーケティングに必要な作業が後手にまわりがちです。ALUHAさんには引き続きアドバイスいただきつつ、ペースメーカーとして伴走していただきたいです。いつも『いつまでに』『なにを』やればいいのか明確に助言してくださいますから」(星野氏)
同様の声は桂川氏からもあがった。
「ALUHAさんには私たちとともに考え苦労し、時には発破をかけながら伴走してくださる存在であってほしいです。また、外部の視点でのアドバイスをいただければと思います」(桂川氏)
日々の業務が忙しいとデジタルマーケティングの施策をつい後まわしにしてしまうもの。だからこそ、ALUHAにはプロジェクトを外部から管理する役割を期待しているようだ。
またWebサイトを中心としたデジタルマーケティングの手法だけでなく、別の側面から売上を作っていきたいと考えるメンバーもいる。
「弊社には営業部門がありますので、彼らの営業力と私たちのデジタルマーケティングをうまく掛け算してより大きな成果を出せればと思っています。なかなか難しいのですが、私の今後の目標です」(鈴木氏)
リアルの営業力とデジタルのマーケティング力。本当にこの2つを融合できたら、かなりの成果があがるはずだ。キヤノンMJとALUHAは、どのように実現していくのだろうか。さらなる成長が期待される。
荻野から一言
キヤノンMJ様とは長期間にわたり、多くの事業部に対してコンサルティングをさせていただきました。その中で、小さな工夫で資料請求の導線を強化できたというエピソードは、私もとても嬉しかったです。
ほんの些細な工夫なんですが、導線が大きく強化でき、そのノウハウはプロジェクターでも横展開でき、大きな成果につながりました。こういった小さな工夫の積み重ねで大きな結果が出るということを改めて認識させていただきました。
これからも、パートナーとして一緒に二人三脚でマーケティング業務をご支援させていただければと思います。
お客様ご紹介(取材日時点の情報)
社名 | キヤノンマーケティングジャパン株式会社 |
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設立 | 1968年2月1日 |
本社 | 〒108-0075 東京都港区港南2-16-6 |
資本金 | 73,303百万円 |
従業員数 | 連結:17,398名 単独:5,393名(2019年4月1日現在) |
事業内容 | キヤノン製品ならびに関連ソリューションの国内マーケティング |